平成24年4月5日(木)(第4回)

◎会議に付した案件

日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(憲法改正問題についての国民投票制度等)

衆議院法制局当局から説明を聴取した後、自由討議を行った。

◎衆議院法制局当局からの説明聴取の概要

1.衆議院憲法調査特別委員会での議論に先行する議論の経過と概要

  • 日本国憲法は、「国民主権」の原理に基づくことを明確にしている。国民主権の意味の最大公約数的なところは、「国家の政治の在り方を最終的に決める力が国民にあること」であると理解されている。
  • ただ、そのような力を国民がどのような形で行使できるかについては、議論がある。選挙権の行使以外に日本国憲法が明文で認めているのは、@最高裁判所裁判官の国民審査(79条)、A地方自治特別立法における投票(95条)、B憲法改正国民投票(96条)の3つである。これら以外の場面で、国民主権の原理に基づき、法律で国民投票のような直接民主制を創設することができるか、できるとすればそれはどのような条件の下においてであるか、という問題が、本日のテーマの基底にある。前文第一項の冒頭や憲法第41条などに鑑みて、日本国憲法は代表民主制・間接民主制の原則を採用しているとの解釈が一般的になされているからである。
  • 昭和30年代に内閣に設置された憲法調査会でも、一般的な国民投票制度については活発な議論がなされており、その報告書で「国民投票制度」と題する一節が設けられている。そこでは、「特定の問題に対する国民投票制度」について積極・消極の両論があったことを紹介しており、消極論が大多数の意見であったと総括されている。
  • 衆議院憲法調査会においても、一般的な国民投票制度に関して活発な議論が繰り広げられ、最終報告書では、「直接民主制」と題する独立した項目の中の一項目として取り上げられている。そこでは、積極・消極の両論が併記されており、いずれの見解も多数意見となるには至らなかったとされている。参考人の意見陳述でも、積極的な意見・慎重な意見の両方が見られた。

2.衆議院憲法調査特別委員会における議論の経過と概要@(法案提出まで)

  • 第163回特別国会に、憲法改正国民投票法制の整備のために設置されたのが、衆議院の憲法調査特別委員会だった。同特別委員会では、国民投票法制の制度設計をするに際して、網羅的な論点整理を行う観点から、まずは諸外国の国民投票法制を含めた広範な調査を行うこととされた。
  • 同特別委員会では、2度にわたって欧州各国の国民投票法制に関する調査を行った。調査対象となった国では、基本的に憲法改正以外の事項についても国民投票の対象とされており、そのような国民投票の根拠は、憲法の中に明文規定として設けられている。
  • 国民投票の対象については、国民投票を行うことが義務的か任意的か、国民投票の結果に法的拘束力を持たせているか否かといった論点のほかに、@国民投票に付するかどうか及びその案件を誰が決めるのかといった発案権の所在、A国民投票に付してはいけない案件を想定しているか、といった論点がある。
  • @の発案者に関する論点については、いずれの国も、大体において議会が発案のイニシアティブをとることを基本としていると言えるが、政府提案を認めている場合もあり、一定数以上の署名をもってすれば国民発案を認めている国もある。Aの国民投票の付議禁止事項に関する論点については、租税や予算等を対象外とする国が少なくないほか、基本的人権に関する事項も国民投票の対象外とされている国もある。イタリアでは、憲法改正以外の国民投票の対象は「法律等の廃止」であって「法律等の制定」ではないとされている。これは、一旦議会制民主主義のルートに乗せた上で、その行き過ぎを補正するのが直接民主制であることから、そのような仕組みとなっているようである。
  • 平成18年4月に「憲法改正国民投票法制に関する論点一覧表」がとりまとめられ、これに基づいて、全会派参加の下、理事懇談会の形で行われた実務者協議の場で議論が行われた。そこでも、今回は憲法改正国民投票に限定するべきである意見、国政問題に関する一般的国民投票をも規定するべきである意見の両方が述べられた。

3.衆議院憲法調査特別委員会における議論の経過と概要A(法案提出以降)

  • 以上の調査を踏まえて、一般的国民投票制度に関する消極・積極それぞれの考え方から、平成18年5月26日に自民党・公明党の法案及び民主党の法案が提出された。自民・公明案は、憲法改正国民投票だけを対象とする一方、民主党案は、憲法改正国民投票に加えて、国会自身が発案し、かつ、その結果に拘束されないという制度設計の下に、「国政における重要問題に係る案件」についても国民投票を行うことができるものとしていた。
  • 両法案は、本会議で趣旨説明質疑が行われた後、第165回臨時国会では両法案審査のための小委員会が設けられ、そこで活発な議論及び一本化を目指した修正協議が行われた。
  • 一見対極にあるように見える両法案だったが、議論の過程では双方から柔軟な意見が述べられていた。民主党側からは、当初より、もし国民投票に付すべき案件について明確に限定をかけておく必要があるのであれば、今後の議論の中でこれを法律上限定することも含めて柔軟に対処していきたい旨の発言があった。他方、自民・公明案の提出者からも、一般的国民投票制度の中でも憲法改正に関連する問題に限った諮問的・予備的国民投票制度を念頭に置くのであれば検討に値する旨の発言がなされていた。
  • 以上のような両法案のそれぞれの立場からの歩み寄りが頂点に達したのが、平成18年12月14日の憲法調査特別委員会での、双方の提出者から示された修正要綱の提示とこれに基づく修正発言だった。
  • 自民・公明案の提出者からは、「@憲法改正を要する問題、及びA憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずる」旨の検討条項を設けたい旨の発言があり、民主党案の提出者からは、憲法改正以外の国政問題に係る国民投票については修正案を検討中であるとし、(A案)国政問題に係る案件について一定の限定を付する、(B案)国民投票の対象を憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題に限定する、(C案)憲法改正以外の国民投票法制の是非とその具体的な制度設計については検討条項とする、との3案が示された。
  • 上記の両法案提出者から述べられたそれぞれの修正発言は、条文化された。自民・公明提出の併合修正案では、上記の修正発言どおりの検討条項が設けられた(附則12条)。他方、民主党提出の全部修正案では、上記修正発言のA案の線に即して国民投票の対象範囲が限定されることになった。すなわち、国政における重要な問題のうち、@憲法改正の対象となり得る問題、A統治機構に関する問題、B生命倫理に関する問題の3つを例示した上で、そのより具体的な内容については「国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める」とされた。したがって、現在の附則第12条が直接に規定している検討対象の範囲よりも、民主党の全部修正案が想定していた一般的国民投票の対象範囲の方がやや広いかもしれないということになっている。
  • 現在の附則12条の検討には特段の期限は付されていないが、民主党の全部修正案では、具体的な国民投票の対象範囲について「別に定める法律」も本法施行までに整備するものとされていた。

◎自由討議における各委員の発言の概要(発言順)

照屋 寛徳君(社民)

  • 現行憲法が国会を唯一の立法機関と定め、間接民主制を採用しているという前提に立っても、諮問的国民投票としての一般的国民投票制度の導入を認めるべきである。一般的国民投票制度は、間接民主制である議会制民主主義の下、幅広く多様な国民意思を政治と国会に反映させるものである。特に衆議院における現行の小選挙区制度では各党の得票数と議席占有率に乖離があり、その結果国民意思と国会意思との乖離が生じているので、間接民主制を補完する役割を担うものである。
  • 自民党、公明党の憲法改正手続法提案者は、諮問的国民投票制度について、「憲法96条の周辺に位置するものと考えられる」と述べている。一方、自民党の保岡委員は当時、「憲法問題に限った諮問的、予備的国民投票制度というのは、憲法改正事項に直接民主制を取り入れた憲法96条そのものの趣旨からすると、憲法の許容するぎりぎりの範囲内とも考えられる」と述べている。その点に関する議論の詳細について伺いたい。
  • 附則12条は「国は、…必要な措置を講ずる」となっている。憲法改正問題についての国民投票制度に関する検討主体は、国なのか、憲法審査会なのか、参議院における附帯決議との関連を含めて伺いたい。

柴山 昌彦君(自民)

  • リコール等の形で直接民主制を広く導入している地方の案件と国の案件を同一に扱っていいのかという問題意識が必要である。国民は、例えばイラク問題など、関心が遠く、専門的かつ継続的に検討を加えるべき案件について十分な判断ができるのかという懸念を拭いきれない。様々な外交防衛についての知見がない状態で国民投票に付しても、責任を持った結論を導き出せるか、不安である。間接民主制を補完するという意義を評価する意見もあったが、国レベルの問題については、間接民主制を採用していることをむしろ積極的に評価すべきと考える。
  • 欧州には様々な任意的な国民投票の仕組みがあるが、運用の実態を精査すべきである。諸外国において最近実施された国民投票にはどのようなものがあったか、また、その結果どのような反応があったか。
  • 迷惑施設について住民投票や国民投票に付した場合、ロケーションが最終的に決まらないことによって大きな損失が生じてしまいかねない懸念がある。

緒方 林太郎君(民主)

  • 諸外国の国民投票制度について説明があったが、スイスは歴史的にも特殊であり、その制度を日本にそのまま導入できるかどうかは疑問である。
  • フランス憲法を勉強した経験から言えば、フランスの国民投票制度の根底には議会に対する不信感がある。国民投票制度は、議会が混乱した場合などに直接国民に聞くといった、君主的統治を行うためのツールとして使われることを念頭に置くべきである。
  • 政治的文脈に置き換えると、一般的国民投票制度とは言うが、政権が満を持して提出した案件が否決された時には、政権が崩壊することに直結する可能性がある。フランスでは、国民投票は2回否決されたが、1969年の否決時には大統領が、2004年の否決時には首相が辞任した。日本では、総理が全責任を負うことになり、解散総選挙の事態となる可能性があることは、よく検討する必要がある。
  • 仮に首相公選制が日本で導入され、首相を選出した勢力と議会の多数派が異なるときは、法案が一本も通らないことも想定される。その場合には、首相が次々に国民投票を行う事態が考えられる。
  • 国民投票制度導入に伴い、投票率の問題を検討する必要がある。国にとって重要だが特定の集団・地域に利害が集中する案件では、投票率が上がらない可能性がある。その場合、可決されても、案件自体が不信任されたような違和感が残ることも問題提起したい。
  • 仮に一般的国民投票を導入する際には、テーマを絞る、政府提出は避ける、投票率の問題を検討する、ということを強調したい。

近藤 三津枝君(自民)

  • 附則12条は、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、速やかに検討するように定めている。この条文にある「憲法改正の対象となり得る問題」とは、これまでの国会の議論及び憲法についての論文などに照らし、具体的にどのような事項を想定しているか。

赤松 正雄君(公明)

  • 冒頭の説明にあった予備的国民投票制度の発案者として、私の発言が引用されていたが、その趣旨を思い返して発言したい。
  • 戦後長きにわたり、個々の具体的な憲法改正に関する国民全体の議論の傾向は、世論調査の形で出ることはあっても、あまり明確には出てこない。そのような状況で、憲法96条に基づき憲法改正が発議されると、国民が普段考えていることとの間に大きな乖離が出てくる可能性もある。そのため、政党が考える憲法改正の方向性と乖離が生じないよう、国民の関心を把握する必要がある。
  • 各議院の総議員の3分の2という憲法改正の発議要件はハードルが高いが、国民の意見を聞くことで、実質的にこのハードルを下げることができるのではないか。国民の要望が強いということで、政党間の差異を超えて合意形成していくことに寄与できるのではないか。憲法をめぐる現在の硬直状態を打破するため、あらかじめ国民の意見を聞くことはあってよいのではないか。

柿澤 未途君(みんな)

  • 我が党は、憲法改正によらず、諮問的な国民投票で、誰が首相にふさわしいかを国民が推薦する制度を創設する法案を立案中であり、今国会に提出する方針である。
  • 国民投票の結果を国会議員が参考あるいは尊重して投票行動を行う制度設計であれば、国会は唯一の立法機関と規定する現行憲法には矛盾しないと考える。国民主権である以上、国会議員が国民の意見を直接取り上げて立法活動を行うことは何ら問題ないと理解している。
  • 諮問的国民投票を制限する根拠は何か。立法政策の問題なのか、それとも法的な根拠があるのか。我が党としては、それは立法政策の問題であり、憲法改正に関する問題は国民投票にかけられるがそれ以外はかけられないというわけではないと理解しているが、その理解でよいか。

橋本 勉君(民主)

  • 個人的な見解としては、国民投票制度をより積極的に導入していただきたい。直接民主制に慎重な意見は、民主主義の本質は討議の過程にあり、政策の是非を判断する手段を必ずしも有しない国民に判断を委ねるのは危険だとするが、現実には、国会がセレモニー的になっていたり、党議拘束に縛られたり、選挙を意識して政策が歪められたりしており、間接民主制が限界にきていると思わざるを得ない。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義が歪められるような事態になれば、むしろ間接民主制自体も疑問としなければならない。
  • 国民投票のコストは800億〜1000億円ともいわれるが、ヨーロッパには、よりコストのかからないインターネット投票等の事例はないのか。
  • 重大なテーマで衆議院解散となれば、より大きなコストが必要となり、国民に迷惑がかかる。国民投票の対象拡大で直接民主制を補うシステムこそ、むしろ我々の望むべきところではないか。

山花 郁夫君(民主)

  • 国民の判断能力について懸念する意見も出ていたが、実際に国民投票を実施すれば、ルクセンブルクの国民投票を視察した際に見たような、案件の是非について国民が語り合うという場面が出てくるのではないか。
  • 憲法上、法的効果がある直接民主制を取り入れた制度は、憲法改正国民投票、最高裁判所裁判官の国民審査、地方自治特別法の 3つだが、諮問的な国民投票であれば、その3つ以外にもできるだろうと考える。法的な拘束力を伴うのか事実上の拘束力かは、法律論としては極めて大きな違いである。
  • 法的効果を伴わない参議院の問責決議も事実上行われている。憲法に定められている法的な拘束力があるもの以外はやってはならないということではないと考える。
  • どのようなテーマが国民投票にふさわしいかについては、国会での判断が必要になる。例えば、日本国民統合の象徴とされている天皇の地位に関わることについて、あるいはまた、権利の享有主体としての終期をいつにするかに関係する脳死など生命倫理に関わることについては、国民投票の対象となり得るのではないか。
  • 国民投票は議会側で発議することを想定しているので、その結果が解散に結び付いたり、政府の責任になるといったことは想定していない。

小沢 鋭仁君(民主)

  • 幹事の立場であるので、今後の憲法審査会の進め方について提案したい。今日で3つの宿題それぞれのテーマをすべて取り扱った。国民投票法に関しては制定当時、与野党でほぼ合意ができつつあったし、現に法律もできており、附則12条の部分についても内容を決めるという話になってきている。民主党では一般的国民投票の対象について3つの例示を上げたうえで法律で定めると提案している。そろそろこれまでの憲法調査会から10年以上に渡る議論の積上げの成果、見解に基づいて、話を詰めていく段階にあるのではないか。話を詰めていく段階においては、委員各位の意見を最大限尊重するが、これまでの経緯を踏まえて話を進めていかないと、建設的な話にならない。幹事会でもそういった議論をしていきたい。

柴山 昌彦君(自民)

  • ルクセンブルクや特殊な歴史を持つスイスと日本との間では、国レベルの国民投票が求められる度合いは違うと考える。
  • 議会制民主主義が機能しないから国民投票を積極的に活用すべきと結論づけていいのか疑問がある。党議拘束等の問題については、むしろ、政党内のガバナンスや、政党法の策定による党内民主主義の確立などにより対処すべきであり、また、ねじれのために国会が機能しないことについては、それに即応した議論がなされるべきである。現状で物事が進まないから国民投票を行うというのは、議論が飛躍してしまわないか。
  • 国民投票は必ずしも解散等に直結しないという意見があったが、諮問的なものであっても国民投票が持つ政治的意義は場合によっては大きい。政府から提案するのは相当に政治的意味が強いため、慎重に考えるべきである。
  • 憲法改正に準じる問題等は国民投票になじむと思うが、脳死など生命倫理の問題は非常に微妙であり、投票率の問題も考慮しなければならない。これについてはもう少し検討を深めた上で決定すべきである。

笠井 亮君(共産)

  • 附則12条は、当時、自民党・公明党と民主党との間で妥協点を探る状況下、最終局面で盛り込まれたものであり、国民の要求があって盛り込まれたわけではないと認識している。
  • 国民投票法については与野党でほぼ合意があったとの発言があったが、野党の中には我々もおり、それ以外にも内容的に反対した会派もあり、民主党も最後は反対した。
  • 今日の審査会が終わっていない段階で、話し合いを詰める段階になっているという発言が出てくるのは、協議のルールから逸脱している。本日の審査会を踏まえ、今後の審査会をどうするかについて、幹事会等で幹事・オブザーバーを含めて協議していくのがルールであり、このようなやり方をされると、実りあるものにならない。

中谷 元君(自民)

  • 民主党提案の国民投票法案について趣旨を確認したい。国会自身が発案し、その結果に拘束されない国民投票という制度設計について、これは何を目的にした国民投票で、どういう意味を持つのか。ワンイシューを国民投票に付した場合、その結果は事実上拘束力を持つものとして無視できないのではないか。
  • 公明党の発案する予備的国民投票は、憲法改正のための予備調査や準備としての提案であり、原発問題等の個別事項の意見聴取は含まないのか。
  • 国民投票法の今後については、早期に国民が投票できる状態にしておく必要があり、選挙権年齢等の問題や公務員の政治的行為の問題など、今国会の会期内で結論が出せるものは、法律の改正をするなどして処理すべきである。各党の意見集約をするなら、幹事会の中で 各党の代表者による協議会を設置して協議する必要がある。

赤松 正雄君(公明)

  • 我々が提案していた諮問的・予備的国民投票制度については、あくまで憲法改正に関わる問題だけを対象としており、原発問題とはじめとする政治的、一般的な問題を含むものではない。
  • 憲法審査会の今後の進め方に関する発言があったが、聞く限りにおいては、憲法に関する問題全体を詰めようというように聞こえた。 3つの宿題をめぐる問題を詰める必要があるということであれば、同意見だ。
  • 付言すると、自民、公明、民主の考え方の違いを詰めるに当たり、例えば二院制の在り方については、国会議員からは出しづらいものであり、民主党提案の中で、取り入れられる可能性がある。
  • 3つの宿題に関する議論と合わせて、憲法審査会において、憲法全般について改正の要否、法律による対応の可否等について、意見の双方を対峙する形での調査を行うべきである。

山花 郁夫君(民主)

  • 民主党提案では、政府の都合で国民投票を行うことは想定していない。あくまでも衆参で賛成を得て行うことが条件であると思っている。
  • 一般的国民投票制度が憲法上認められるのは、事実上の拘束力しかないからである。ただ、事実上の拘束力であったとしてもインパクトが大きいという指摘は、そのとおりである。憲法は授権規範として国会に立法権を与えており、同時に、立法権は国会以外の機関が行使してはならないという制限規範を定めている。したがって、立法権が国民投票の結果に縛られるのは憲法違反になるため、諮問的国民投票制度にしなければならないという認識である。他方、問責決議が可決されても結果として辞任した大臣がいることを踏まえれば、拘束力がないとはいえ、国民投票で示された意思は、政治的には重く受け止める必要があるだろうということである。

照屋 寛徳君(社民)

  • 会長においては、今後の憲法審査会について、幹事懇談会や幹事会における議論を踏まえて慎重に運営してほしい。
  • いわゆる3つの宿題については、いまだ議論が不十分である。実務者協議を開くことは拙速であり、憲法審査会においてさらに議論を深めるべきである。

橋本 勉君(民主)

  • 現状のねじれ国会の問題を直すには直接民主制(国民投票)の導入とは別の方法で解決すべきといった発言があったが、小選挙区制の下では過半数の票を得た人が当選し、当選してきた人の中の過半数で物事が決まっていくことになり、4分の1の民意で決まるのに対し、直接民主制においては、過半数で事が決することから、もともと間接民主制には根源的な問題があると思う。選挙制度の問題だとしても、なかなか是正できないことを考えると、国民投票で補う必要がある。
  • 欧州においては多くの国で拘束力のある国民投票制度が導入され、間接民主制の限界を補う役割を担っており、日本だけが遅れている。早めに拘束力のある国民投票制度を導入して、国民との間のギャップを埋める必要がある。

山尾 志桜里君(民主)

  • 国民投票制度については非常に慎重な立場であるが、必ずしも全てにおいて意義が見出せないものでもないので、附則 12条に沿って議論を進めていけばよいと考える。
  • 国家の決断に当たっては、民意の大勢とは一致せずとも、最終的には大局に立った決断をすることが求められる場合もあり得る。国民投票について多様な民意を反映できるという意見もあるが、むしろ逆に結果としての数の力で国民の意見の多様性が捨象されてしまう場合が多いのではないか。また、国民投票が実施されれば、民意の大勢と異なる大局に立った決断を行うことは、政治家にとっては非常に困難な状況になるだろう。
  • 国民の政治参加という意義については、まず、18歳に選挙権を広げる、その前提として学生に対する教育を深めることが先である。政治参加に資するための手段は国民投票の他にもある。
  • ただし、例えば一院制の問題のように憲法改正に関わるテーマであって、国会議員による発議の推進力が類型的に弱いと思われる場合には、諮問的・予備的な国民投票の制度設計についても高い意義が見出し得るかもしれない。

近藤 三津枝君(自民)

  • 私は先ほど、「附則12条は、速やかに検討するように定められている」と述べただけで、私の意見を述べたものではない。附則 12条はあくまでも検討を求める条項なので、私としてはこの審査会で十分に検討・議論をすべき問題だと考えている。

棚橋 泰文君(自民)

  • 憲法改正規定(憲法96条)は、時代の変化の中で硬直的なものであり、これをまず改正する必要があると考える。一方で、国民が憲法制定権力を有するという観点から、憲法改正規定自体の改正には憲法上問題があるという指摘がなされたことは、今までにあったか。