平成25年6月6日(木)(第11回)

◎会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の改正手続に関する法律における「3つの宿題」)

 政府当局及び衆議院法制局当局から説明を聴取した後、自由討議を行った。


【選挙権年齢・成年年齢の18歳への引下げについて】
◎自由討議

●委員からの発言の概要(発言順)

船田 元君(自民)

  • 憲法改正国民投票の投票権年齢を 18歳に定めた主な理由は、国のルールを決める憲法の投票には収監者、公民権停止の者も含め、より多くの人に参加してほしいこと、及び選挙権年齢の世界標準は 18歳であることである。
  • 平成 19年から3年の間に、選挙権年齢と成年年齢を 18歳にすることを政府に求めてきたが、実現されていない。政府は速やかに措置すべきだが、それが困難であれば、憲法改正国民投票法とその他の法律を切り離して考えることも視野に入れなければならない。
  • 投票権年齢が 18歳以上とされた場合、高校までの憲法教育の内容はどのようにすべきか。特に憲法教育は高校2年間で修了しておく必要があり、学習指導要領の変更も必要となるのではないか。
  • 消費者教育推進法の基本方針が 6月に閣議決定される予定であり、これにより成年年齢の18歳引下げの条件がある程度整うのではないかと思うが、法務省はこうした動きをどう評価するか。

武正 公一君(民主)

  • 憲法改正の発議要件が 3分の2であることを前提に、丁寧な議論を重ねた結果、特に 18歳投票権年齢が象徴的ではあるが、憲法改正国民投票法が与野党合意形成の努力の上に施行することができた。
  • 選挙権年齢と成年年齢の引下げについて、政府はその取組みのスピードアップを図らなければならない。
  • 民法・公選法の年齢引下げを待たず、国民投票法を切り分けて処理すべきだという意見や実際に議員立法も提出されている。しかし、政府の取組みが前提であり、提出者の意向からも、仮に切り分けたとしても、選挙権年齢などの引下げについては、何年か後を目途として必要な法制上の措置を講ずるという前提のもとで取り組むという方法もあるのではないか。
  • 附則 3条1項の規定ぶり、及び船田筆頭幹事をはじめとした立法者が成年年齢を引き下げるよう検討すべきと主張されてきたにもかかわらず、法制審では民法の成年年齢引下げの「是非について」との諮問が行われたことには疑問を感じる。

保利 耕輔会長

  • 政府の取組みのまとめ役として、内閣官房は環境整備に努めるとしているが、具体的にどのような環境整備を行うのか。
  • 各年齢条項の 18歳への引下げについて、文部科学省はどのような意見を持っているか。高校3年生の中に 18歳に達した者と達していない者が混在することになるが、現場ではどのような対応をするのか。また、中教審では、これについてどのような議論をしているか。

斉藤 鉄夫君(公明)

  • 総務省は、選挙権年齢と成年年齢は、引下げ時期も含めて一致することが適当との考えのようだが、国民投票権年齢についても一致する必要はあるか。もしその必要はないという場合には、総務省は未成年者に選挙権を与えることは社会常識的に適当でないとの説明をしていたが、それとの整合性はどのように考えるか。同様に、少年法、連座制の問題との整合性はどうか。
  • 法務省は、成年年齢は 18歳に引き下げるのが適当だが、時間が必要であり、選挙権年齢と一致する必要はないとの立場のようだ。法務省は、国民投票年齢も成年年齢と一致する必要はないと考えるか。また、将来的には成年年齢を 18歳にすべきとの立場のようだが、その理由は何か。
  • 高校は中等教育の位置づけとなっているが、初等中等教育は、生活指導のない高等教育とは根本的に異なるものである。後期中等教育と位置づけられる高校の途中に、成年年齢、選挙権年齢、国民投票年齢が入ることとなる場合、教育現場への影響についてどう考えるか。

畠中 光成君(みんな)

  • 附則 3条では、施行日である平成22年5月 18日までに公選法が改正されるはずであったが、そうなっていない。そうすると現状の選挙権に関する規定が違法状態にあると言えるか。政府において附則に基づく検討が放置された理由は何か。
  • 我が国の戦後民主主義の発展において、現行憲法の果たしてきた役割を忘れてはいけないが、内外の情勢が変転する中で、国を覆う閉塞感を取り払うためにも憲法の見直しが必要である。憲法改正についてはできる限り多くの人の意見を問うべきであり、国民投票権年齢と選挙権年齢の引下げは即時に行うべきである。立法府において附則に基づく検討が放置された理由は何か。

中谷 元君(自民)

  • 総務省が未成年者に選挙権を与えるのは適当ではないというならば、 18歳としている国民投票権年齢も適当ではないということになる。両者は、判断の重要性からしても同じであり、選挙権年齢も 18歳に引き下げるべきである。成年年齢と同時にする必要はないとの考え方のもとで立法府が選挙権年齢引下げを提案した場合でも、同じ主張となるか。
  • 昨日、 6回目の年齢条項見直しの検討委員会が開かれたとのことだ。内閣官房からは、年齢引下げの環境整備を進めるとのことだが、その成果について目標時期を定めているか。
  • (国民意識の醸成を待つより)まず、制度を改めて、成年年齢を 18歳とし、成年としての意識を高め、消費者対策を進めていくということもあり得るのではないか。
  • 初等中等教育の中に義務教育である小学校、中学校とそうでない高校が含まれているのはなぜか。

笠井 亮君(共産)

  • 政府の年齢条項の見直しに関する検討委員会の第 7回は、いつ開催されるか。
  • 2006年5月末に提出された自民、公明の改憲手続法案は投票権年齢を 20歳としていたが、投票権年齢を18歳とし、選挙権年齢、成年年齢も 18歳にしていく旨の併合修正案が2007年 3月末に提出された。併合修正案は採決まで3回しか審議されておらず、本日議論されているような内容は、本来であればこの時期に議論されなければならなかったことである。
  • 当時、法案提出者は、投票権年齢とともに、選挙権年齢、成年年齢も 18歳に引き下げる、少なくとも選挙権年齢を引き下げることが最低限の条件であるとした上で、3年間で公選法、民法等の規定を改めると明言して、この法律を成立させた。確たる見通しもなく約束していた訳だが、結局、成立後 6年を経てもなお解決の見通しすら立たないのが、今日の状況だ。
  • この状況下で、当の法案提出者自身が当時の約束を反故にして、選挙権年齢、成年年齢の 18歳への引下げを棚上げし、投票権年齢を先行して18歳に引き下げることを考えなければと発言している。法案提出者としてこだわった前提と、最低限の条件が崩れ、 6年を経ても見通せないのが現実なのであるから、元に戻って、改憲手続法を廃止するのが筋である。
  • 選挙権年齢、成年年齢については、世界の趨勢にならい、改憲手続法とは関わりなく、速やかに 18歳に引き下げるべきであると我々は考えている。

山口 壯君(民主)

  • 18歳への年齢引下げに対する国会内のコンセンサスはほぼできているが、前例踏襲の役所とギャップがあるようだ。
  • 学習指導要領で人間が作られるのではない。人間はいつまで経っても、何をやっても完全ではないことに鑑みれば、まずは 18歳に引き下げて、それで消費者被害などの問題が起こるのであれば、それに対するセーフティーネットをどう作っていくかを考えればよい。政治の側から役所に対し、そのような指示・メッセージを出す時期に来ている。

山下 貴司君(自民)

  • 総務省として、法律体系全体の整合性を図る以外に、選挙権年齢を引き下げる影響について独自の理由があるか。成年年齢と選挙権年齢を一致させる理由として、法律行為を行う能力の有無を選挙権にかからしめるとのことだが、先般成年被後見人の選挙権を認めるという政治判断をした時点で、その説明は破綻しているのではないか。
  • 少年法は少年保護の観点から手続等を規定しており、少年法対象年齢と選挙権年齢とは違うのではないか。選挙権年齢の引下げは、刑事罰に係る問題ではなく、大学生等若年者の政治参加をどのように認めるかとの観点から考えるべきである。総務省として、民法、少年法の議論とは別に、選挙権年齢を引き下げることについてどのようなデメリットがあると考えるか。
  • 選挙権年齢は成年年齢や少年法適用年齢と切り分けられるとの判断があった場合、総務省としては選挙権年齢を引き下げることには特段問題はないと考えてよいか。

坂本 祐之輔君(維新)

  • 平成 19年の憲法改正国民投票法の成立後、憲法審査会が衆参両院に設置されたにもかかわらず、その後 4年以上にわたり、憲法審査会が活動せず、宿題に何ら対応もせず放置してしまった現在の状況は、国会の怠慢と言わざるを得ない。
  • 憲法審査会始動後、憲法議論が進んでいる現在、このような国会の不作為の状況を一刻も早く解消することが、国会議員の責務であり、我が党の役割である。
  • 我が党は、 3つの宿題に対応するため、5月16日に国民投票法の改正案を提出し、特に選挙権年齢や成年年齢等の 18歳への引下げについては、国民投票の投票権年齢を先行して引き下げ、選挙権年齢や成年年齢についても引き続き検討していくとした。 3つの宿題の解決は喫緊の課題である。

小池 政就君(みんな)

  • 投票権年齢の引下げに関して、世代間格差が広がる中、若年層の声をくみ取ることは必要である。一方で、現状の国家体制に対する理解のないまま、一院制や首相公選制といった憲法に関するテーマを提示された場合に判断できるのか、疑問である。
  • 家庭、地域、社会教育における差はあるものの、学校教育の影響は否定できない。学校教育において、現代史や公民での政治・経済の比重は非常に少ない気がする。その比重がわかる資料や指標があるか。また、こうした観点からの分析も必要である。

【公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題】
◎自由討議

●委員からの発言の概要(発言順)

船田 元君(自民)

  • 憲法改正国民投票における公務員の政治的行為に関しては、@国民投票運動にはできるだけ多くの人に参加してほしい、A政党や人ではなく、高度な政策を選ぶものであることから、公務員といえども特定の政党を支持したり、地位を利用するものではない限り、意見表明や勧誘運動には制限を加えないようにしたいとの趣旨であった。しかし、禁止される政治的行為の範囲が国家公務員と地方公務員とで異なっており、混乱が起こりかねないことから、当時、公務員として同一の対応をしてほしいとの考えであった。
  • 公務員の政治的行為の制限対象に関する規定が、国家公務員では「公職の選挙での投票勧誘」、地方公務員では「公の選挙・投票での投票勧誘」と異なっているため、国民投票運動が規制対象となるか否かが異なることになる。これらは修正して、同一の表現にすべきである。
  • 公務員の政治的行為の制限規定に違反した場合、現在は、国家公務員には罰則があり、地方公務員には罰則がないが、その理由は何か。将来、これらの整合性をとる必要があるのではないか。

大島 敦君(民主)

  • 憲法改正が両院の 3分の2の賛成により発議される場合、その合意形成の際の様々な論点やその過程が報道等により国民にあまねく周知されると思われ、多くの国民が改正案についての理解を深めていることを想定している。憲法改正国民投票というのは、今後の統治、人権保障の在り方など将来の国の在り方を選ぶ投票でもあり、広く一般国民が議論をして判断していくことが重要だ。
  • 国民投票運動における公務員の政治的行為の禁止についても、もっと大らかであってよいと考える。平成 19年に我が党が提出した憲法改正国民投票法案の修正案で、公務員の政治的行為の制限等に関する規定について、全面適用除外としているのは、そうした考え方に基づくものである。

葉梨 康弘君(自民)

  • 国民投票法の立案過程では、全面適用除外との議論もあったが、国民投票に名を借りて、別途の目的を持った政治的行為が規制されないということであれば、問題である。
  • 地方公務員法において、どのような形で純粋な憲法改正の意見表明を自由に行えるようにするかという問題がある。一方で国家公務員法の問題として、一般職国家公務員が、現内閣の方針としての憲法改正に賛成であり、現内閣への支持を盛り上げようなどと述べて、人事院規則 14-7第6項各号に掲げる行為を行えば、憲法改正国民投票運動を装っていても、禁止される政治的行為に当たるのではないか。
  • 人事院として、国民投票運動を装っていても政治的行為として禁止される場合があるということを、具体例を挙げて分かりやすく示すことが必要である。特に一般職国家公務員の政治的行為の禁止規定は、教育公務員にも準用されるため、非常に大きな問題である。

坂本 祐之輔君(維新)

  • 我が党は去る 5月16日に提出した憲法改正国民投票法の改正案の中で、公務員の政治的行為の宿題についても方向性を提示している。その内容は、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘や意見の表明が制限されることのないよう、他の政治的目的をもった政治的行為を伴わない純粋な勧誘行為、意見表明に限って認めることとしている。公務員の政治的行為をいたずらに緩和するべきではなく、憲法改正の大義を実現するため必要最小限の範囲内で宿題に対応するべきだと考える。

西川 京子君(自民)

  • 附則 11条の「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう」という部分に疑問を持っている。公務員個人が憲法改正に関して意見を述べることは表現の自由により認められるとしても、勧誘を行うことは公務員の中立性を超える行為であり、投票の対象が憲法改正ならば、人事院規則 14-7に明らかに抵触すると思う。
  • 罰則について、国家公務員と地方公務員とで異なっているのは、奉仕の対象が市民・国民であり同一であることからしてもおかしい。やはり同じように罰則規定を設けるべきである。

畠中 光成君(みんな)

  • 憲法改正については、幅広く国民の意見を問うべきという考え方から、基本的に全ての公務員について政治的行為の制限を見直すべきである。一方で、組織の活動に利用される懸念も拭い去れず、違法行為については厳しく処罰されるべきである。憲法改正国民投票法 103条の公務員、教育者の地位利用には罰則がないが、過去の選挙においては、公務員、教育者の地位利用について、どれ位の違反行為があり、どのような処罰がなされているか。

保利 耕輔会長

  • 公務員の政治的行為と国民投票運動の問題に関しては、教育公務員の問題が非常にセンシティブだと考える。例えば、生徒が先生に国民投票に対する考えを問うた場合、先生の答え方如何によって問題が生じるか否か等、教育公務員の扱いについて、文部科学省はどのように考えるか。

笠井 亮君(共産)

  • 改憲手続法案が審議された当初は、公務員の地位利用に対する禁止規定の議論が中心であり、公務員の政治的行為の制限については、提出者は気づいていなかったように見える。国家公務員法等による政治活動の禁止規定が国民投票運動にも適用されて委縮効果を生むこと、また、それを規定する国家公務員法そのものが憲法違反であることを、これまで指摘してきた。
  • 改憲手続法案の提出者は、 2006年12月に政治的行為の制限規定を全面適用除外とする修正を表明したのに、翌 2007年3月には、適用除外とはしない併合修正案を提出した。これは国民投票運動に関わる重大な変更であるにもかかわらず、その後十分議論せず、与党で強行採決されたものである。
  • 国民投票運動と政治的行為の切り分けは困難であると、与党の幹事も発言しているし、現場では、取り締まる側が拡大解釈をしかねない。どこまで可能であるか明らかでなければ、公務員の国民投票運動全体の委縮効果が大きくなり、ひいては国民の国民投票運動を抑え込んでしまうことになる。

斉藤 鉄夫君(公明)

  • 公務員の政治的行為については、実質的に特定の政党の支持、不支持を目的とした運動は禁止されるというが、現実的には政党がそれぞれ賛否を明らかにして国民投票運動の主体となる。したがって、実質的には特定の政党の支持、不支持となる運動になる可能性が高いと思うが、どのように考えるか、真剣に考えるべきである。
  • 教育公務員が初等中等教育の現場において、自分の受け持つクラスで国民投票権を持った生徒に意見表明を求められた場合、それは許されるのか。
  • 私立学校における教員は教育公務員ではないが、国民投票運動についてどのように考えるのか。

武正 公一君(民主)

  • 公務員が行う憲法改正に関する賛否の勧誘・意見表明等については、@特定の政治的目的を持つものであって、A特定の政治的行為に該当する行為についてのみ、国家公務員法等の政治的行為の制限に係る規定を適用するものとし、それ以外の行為については、これらの規定を適用しないものとすべきだ。これは、憲法改正国民投票に係る公務員の政治的行為については、原則自由であり、その制限は、一般的な政治活動以上に少なくなければならないとの考え方に基づくものである。
  • 公務員、教育公務員及び教育者の地位利用について、憲法改正国民投票法の制定過程においてどのような議論があったか。

平沢 勝栄君(自民)

  • 公務員が憲法改正について賛否を明らかにすることは、必ずしも政治的行為にはならないので自由であるとするのが人事院の考え方のようだ。しかし、現状では、憲法改正については、各政党が立場をそれぞれ明らかにすることとなる。そのような状況下で公務員がある立場を表明すれば、即、その立場を表明している政党に対する応援になるのは当然のことではないか。よって、憲法改正についての賛否と、政党に対する支持、不支持を区別することが、果たして可能なことであるのか疑問に思う。

中谷 元君(自民)

  • 教育者の地位利用による国民投票運動の禁止行為について、文科省は具体的な判断基準を検討し、どのような行為が禁止行為に当たるかを明示すべきである。

笠井 亮君(共産)

  • 3つの宿題の公務員の政治的行為の制限に係る検討条項で問題になっているのは、国家公務員法102条、人事院規則 14‐7、地方公務員法36条に関わる課題についての検討である。教育者の地位利用による国民投票運動については、改憲手続法 103条にあり、3つの宿題の対象ではなく、公選法との関係の議論であることを踏まえて議論を整理する必要がある。

武正 公一君(民主)

  • 公務員の政治的行為の制限については、当初、全面適用除外ということで自公修正要綱と民主案で一致していた。成立した併合修正案で、附則 11条に「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう」という前提が改めて確認された。
  • 公務員の地位利用については、憲法改正国民投票法の 103条において規定されていることから、その懸念は払拭されている。