平成26年5月8日(木)(第5回)

◎会議に付した案件

日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(船田元君外7名提出、衆法第14号)

1.上記案について、参考人田中治彦君、南部義典君、松繁美和君及び水地啓子君から意見を聴取した後、質疑を行った。

(参考人)

上智大学総合人間科学部教育学科教授    田中 治彦君   

元慶應義塾大学大学院法学研究科講師    南部 義典君   

日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長 松繁 美和君   

日本弁護士連合会副会長          水地 啓子君

(参考人に対する質疑者)

大口 善徳君(公明)

長島 昭久君(民主)

坂本祐之輔君(維新)

泉原 保二君(自民)

三谷 英弘君(みんな)

畠中 光成君(結い)

笠井  亮君(共産)

鈴木 克昌君(生活)

2.上記案について、提出者船田元君(自民)、枝野幸男君(民主)、中谷元君(自民)、北側一雄君(公明)、馬場伸幸君(維新)、三谷英弘君(みんな)、畠中光成君(結い)及び鈴木克昌君(生活)に質疑を行い、質疑を終局した。

(提出者に対する質疑者)

保岡 興治君(自民)

細野 豪志君(民主)

新原 秀人君(維新)

大口 善徳君(公明)

大熊 利昭君(みんな)

小池 政就君(結い)

笠井  亮君(共産)

小宮山泰子君(生活)

吉川  元君(社民)(※委員外議員)

3.笠井亮君(共産)が討論を行った。

4.採決を行った結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した。

(賛成−自民、民主、維新、公明、みんな、結い、生活 反対−共産)

5.中谷元君外6名(自民、民主、維新、公明、みんな、結い、生活)から提出された附帯決議案について、武正公一君(民主)から趣旨説明を聴取した。

6.採決を行った結果、賛成多数をもって附帯決議を付することに決した。

(賛成−自民、民主、維新、公明、みんな、結い、生活 反対−共産)


◎田中治彦参考人の意見陳述の概要

1.参考人について

  • 現在、上智大学で生涯教育、開発教育を教えている。特に、青少年期の社会教育を中心に、子どもから大人への移行の支援をどう行うのか、生涯教育の立場から研究してきた。また、ESD(持続可能な開発のための教育)について専門に研究し、教えている。
  • 18歳選挙権の問題への関わりは平成13年の「荒れる成人式」以来であり、20歳は区切りになるか、18歳に下げてはどうかと議論した。その後、国民投票法や民法改正の審議の度に発言を行ってきた。

2.18歳選挙権が必要な理由

  • 18歳といえば、一般には大学生や専門学校生とのイメージがあるが、3割近くが働いて自活しており、その人たちの権利を認め守っていくことが大事である。
  • 少子高齢化の中で、20代から30代前半の政治参加、投票率が低い上にもともと若者の人口が少ないので、国政あるいは地方自治体の政治に意見が反映できていない。しかし、若者ほど年金、国債等で長く関わってくることから、若者の参加を促すことが政治、社会の活性化につながる。
  • 世界では9割以上の国が18歳以下の選挙権を実現している。G8でもG20でも日本のみが20歳選挙権であり、児童の権利条約でも18歳以上を成人と定義している。世界標準からしても、18歳選挙権が妥当である。

3.18歳選挙権についての否定的な見解

  • 18歳はまだ未熟であって、政治的判断は難しいのではないか、18歳では親から仕送りを受けている等でまだ自活していない等の理由で国政に参加するのはいかがなものか、との意見がある。
  • しかし、18歳の3割が自活しているし、政治的判断力については、既に小・中・高の12年間教育を受けている。世界の中には、これから中等教育を充実させていこうという国もあるが、そうした国々と比べ、日本の若者の判断力がないとの根拠はない。18歳以下の高校生に模擬投票をさせているNPO法人もあるが、20歳以上の投票行動と大きく異なるものではなかった。

4.18歳選挙権が実現した際のメリット

  • 若者の投票率の増加が期待される。18歳は高校3年生であり、親元にいる。地元で投票することができる。これに対し20歳の場合、地元から離れていることが多く、実家に帰省しないと投票することがない。投票は習慣にもなり、最初の投票に足を運ぶことが重要である。高校3年生の場合は、学校で投票を呼びかけることが可能であり、友人や知人が投票に行ったり、話題にしたりすることから、自覚が生まれたり、投票行動を促したりすることができる。
  • また、若者が自らの将来の決定に関わることになり、政治的意識、若者の社会参加につながる。

5.18歳選挙権の課題

  • 中学・高校における公民教育、市民教育、政治教育の充実が必須である。
  • 現在の中学校における「公民」や高校における「現代社会」等は知識中心になりがちで、問題が起きた場合、どう行動するのかといったスキルや態度の側面は養われない。
  • そのため、参加型の公民教育や市民教育が大事である。特に、地域の課題を発見し、どう解決するのかといった体験型の学習が大事である。これにより、大人社会とのつながりを感じ、(無力感の反対である)効力感を高めることにつながる。
  • 18歳選挙権の実現で、高校3年生から大人社会に入っていくわけであるが、それにより、大人になるための教育が実現でき、若年層の投票率が向上し、政治や日本社会の活性化につながる。

◎南部義典参考人の意見陳述の概要

1.前回の対政府質疑における政府参考人答弁の問題

  • 前回の政府参考人質疑で、法務省は、少年法の改正は不要であるとの見解を示す一方、内閣官房は、政府部内では成案を得るに至っていないとの見解を示した。政府内の見解不一致が現時点で露呈するようでは、改正法施行後の各党プロジェクトチームの運営、法整備に向けた合意形成に対する不安を禁じえない。

2.民法成年年齢の引下げに向けた、強力な政治主導を

  • 民法の成年年齢引下げに関しては、法務省が制定法の立法者意思を別誘導し、あたかも選挙権年齢とは方向性の異なった議論が可能であるかのような論理を後付けに挟み込むなど、政権の枠組にかかわらず、直接・間接の遅延行為が続けられている。
  • 改正法附則3項は制定法と同様、「民法」が頭出しになっている。現行法制定時の立法者意思が、7年の歳月を経て8党間で広く再確認され、政治主導の機運が高まっているのではないか。
  • ひとつの立法提案としては、成年年齢の引下げを「是」とする法制審答申を逆手にとって、施行期日を工夫した上で民法等の改正法案を提出し、まず、成立させる方法がある。もし法務省が反対すれば、本音は、成年年齢の引下げに反対であることを自白することになる。

3.次回国政選挙は、18歳選挙権の保障の下で

  • 国民投票権年齢、選挙権年齢、成年年齢、少年法適用対象年齢の四つは、いわば車のタイヤのサイズのように一致して扱われるべきというのが制定法附則3条の原意であり、この立法理念は各党プロジェクトチームに継承されていくものと確信している。今や公布から施行までの期間をどう設定するかという政策判断、政治決断のフェーズにあり、各党プロジェクトチームで、具体的なロードマップを策定すべきである。
  • まず、参政権グループに属する選挙権年齢の引下げを可及的速やかに実現する必要がある。確認書項目1の「2年以内」は、現段階では改正公選法の成立・公布までが目標設定されており、施行までではないことを周知する必要がある。
  • 改正法附則3項に「国民投票の投票権を有する者の年齢と選挙権を有する者との年齢との均衡等を勘案し」とあるが、「均衡」には消極、積極の両方向がある。また、「等」には民法成年年齢とのバランスが含まれる。
  • 次回の国政選挙は必ず18歳選挙権の下で行うことが答弁で担保されることを期待したい。
  • 改正少年法の施行期日が改正公選法よりも後になる場合、国民投票犯罪、選挙犯罪にコミットした18歳、19歳の者を成人の刑事手続で取り扱うには、少年法の該当規定を適用除外する措置が必要となり、この検討を加速すべきと考える。

4.公務員による国民投票運動等に関する「ガイドライン」の整備

  • 本改正案100条の2は、公務員による純粋な勧誘行為を特例としているが、どこまでが純粋なのか画一的な判断は困難である。
  • 地位利用型、非利用型を問わず、公務員による国民投票運動等が許容される範囲につき、法規解釈、各種事例への適用関係を分かりやすく整理したガイドラインが不可欠である。昨年、インターネット選挙運動等に関する各党協議会が政府側と協議作成したQ&Aが、優れた先行事例である。

5.公務員による組織的な勧誘運動等の規制の検討

  • 現行法附則11条の検討・措置は、あくまで公務員が国民投票に際して行う賛否の勧誘行為や意見表明が制限されることとならないよう、というのが出発点である。この意味で、改正附則4項の組織的な勧誘運動等の規制の検討は、同条の趣旨と逆向きに、国民投票運動への公務員の関与を強く規制するもので、そもそも、宿題の範囲外といえる。
  • また、組織的な運動の判断基準が明確でないため、恣意的運用と萎縮効果をもたらしかねず、この論点は、法制上、慎重な取扱いを要望する。

6.国民投票の対象拡大

  • 改正法附則5項の憲法改正問題国民投票は、制定法附則12条が想定した、憲法96条の周辺部分に位置する予備的国民投票の制度理念を踏襲し、検討が進められることを希望する。予備的国民投票は、任意、諮問的な性格のものとして投票結果の法的拘束力は否定されるものの、実施手続を定める法律案の審査過程、投票期日までの国会の役割付けに一定の工夫の余地がある。

◎松繁美和参考人の意見陳述の概要

1.日本自治体労働組合総連合について

  • 日本自治体労働組合総連合は、全国の地方自治体で働く憲法尊重擁護義務を宣誓した公務員労働者を中心に組織する労働組合として、憲法をいかした国と自治体づくりに取り組んでいる。

2.「改憲手続法」に対するスタンス

  • 改憲手続法は、明文改憲のレールを敷くためのものであり、国民側ではなく、政府側の要求により制定されたもので、権力の手を縛るとの「立憲主義の原則」に反するものであり、参議院で18項目もの附帯決議が付されるなど、制定過程から問題が山積した欠陥法である。
  • 欠陥の原因は、国民の十分な議論が尽くされず、「改憲ありき」で結論を急いだことにあり、今回も同じ過ちを繰り返してはならない。

3.「改正」法案に関して

  • 今回の改定案は、次の諸点において、公務員の国民投票運動を原則自由とした7年前の議論の到達点から後退している。
  • 特定公務員の範囲を裁判官等に拡大したことは、7年前の当初自公案の考え方に逆戻りしており、当時の到達点は、憲法尊重擁護義務の宣誓をしている公務員こそ、憲法に精通した者として積極的に国民投票運動に関与すべきであり、その規制は国民運動を萎縮させるとの判断であったはずである。今回の「改正」案は当時の国会審議を軽視するものであり、当時の到達点に立脚した法整備をすべきである。
  • 組織により行われる国民投票運動の制限の検討は、公務員労組にとどまらず、公務員が加わった市民団体等の活動の規制につながり、結社の自由に反するもので、市民の自由な活動も制限されかねないものである。
  • 労組は、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とし、労働者の要求を基礎に、その目的の達成に必要な政治活動等を行うことができる。そして、@憲法は国民のものであるから、多様な議論が必須であり、その一つとして労組の議論が保障され、そのアピールの機会が保障されるべきであること、A個人としてはもとより、労働組合として「憲法をいかした住民のための仕事」をしたいとの組合員の要求を実現する責任があること、B憲法理念に反する政策を進める政権の下、自治体・公務公共労働者は、労組に参加して初めて当局から独立して、憲法をいかし、守る仕事が可能となることから、附則4項(組織的な勧誘運動等に関する検討条項)は削除すべきである。
  • 8党合意の確認書に、地位利用による国民投票運動について罰則を設ける検討が盛り込まれたことは、公務員に規制をかけることにより、主権者である国民や市民団体に対しても萎縮効果を生み、国民の政治離れにつながる。地位利用はあってはならないことだが、公務員法制上の懲戒処分で十分に対応できる。

4.国民の声を聞き、議論を尽くすべき

  • 憲法9条の理念を大幅に変えて集団的自衛権行使を容認するなど、現政権が憲法改悪を目論む中、主権者である国民の萎縮することのない自由な意見表明が重要となってくる。公務員・公務員労組の政治活動への制限は、国民全体の意見表明の萎縮につながりかねない。
  • 良識の府として、「憲法は国民のもの、国民の意見を聞いて決めるべきもの」との考えを内外に明らかにし、国民の声を聞き、国会での徹底審議を求める。

◎水地啓子参考人の意見陳述の概要

  • 日弁連は憲法改正手続法について、2005年、2006年、2009年に意見書を発表しており、2009年意見書の概要は以下の8項目である。@投票方式については、原則として各項目ごと(場合によっては条文ごと)の個別投票方式とすること。A公務員、教育者に対する運動規制は削除すること。B組織的多数人買収・利害誘導罪は削除すること。C国民への情報提供について、国民投票広報協議会の人選、公費意見広告等は公平性・中立性が確保されるべき。D発議後国民投票までの期間は60日間では短すぎ、最低でも1年間は必要。E最低投票率は定められるべきであり、無効票を含めた総投票数を分母として、過半数を算定すべき。F30日以内という国民投票無効訴訟の提起期間は短すぎ、管轄裁判所が東京高等裁判所のみというのは、少なすぎる。G各議院の独立性確保の観点から、合同審査会や両院協議会の規定は、削除すること。
  • 憲法改正の作業は国民総体の力量の集大成であり、上記8項目は、国民が十分な情報をもとに、多様な意見を自由に交換した上で、自ら考え、判断し、意見表示するための提案である。
  • 改正法100条の2は公務員、教育者に対する国民投票運動を改善するものとして賛成できるが、102条の裁判官等による国民投票運動の全面禁止には反対する。
  • 憲法改正国民投票は主権者としての国民の意思決定をするものであり、選挙は特定の候補者・政党を支持するものであるため、性質が大きく異なる。したがって、公職選挙法等の手法を国民投票法に用いることには疑問がある。
  • 100条の趣旨のとおり、憲法上の人権は国民投票においてとりわけ保障されなければならず、投票事務関係者等以外のあらゆる公務員を含む国民の意見表明の自由が確保されなければならない。
  • 特に裁判官、検察官は法曹として、諸立法について専門家として意見を述べることが期待されているのであり、憲法自体の改正の是非について自由に意見表明することを規制されるということは理解しがたい。警察官等の国民投票運動の禁止についても合理的根拠はない。
  • 裁判官等は憲法99条の憲法尊重擁護義務の名宛人となっており、そのような人々からむしろ憲法改正について意見を聞くべきである。そもそも、これらの職務に就く人々は、最も自らの中立性を厳しく律しているのであり、法律による規制は必要ないと考える。
  • 組織による国民投票の勧誘運動等の規制については、現行の公務員職権濫用罪等で対処すればいいのであって、改めて規定を置く必要はない。公務員にも意見を表明したり、組織を結成し活動する自由はある。また「組織により」という概念も曖昧であり、このような規定が置かれること自体、公務員の意見表明や活動を萎縮させることになると危惧している。したがって、この点についてさらなる法制上の措置は不要と考える。

◎参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

大口 善徳君(公明)

<南部参考人に対して>

  • 今回、衆参8党の合意の下、憲法改正国民投票法改正案が7党共同提出で衆議院に提出されたが、その評価について、国民投票法制定当時の事情をよく知る南部参考人に伺いたい。

<田中参考人及び南部参考人に対して>

  • 8党の確認書では、2年以内に選挙権年齢の18歳への引下げを目指すとしているが、成年年齢の引下げと切り離し、選挙権年齢の引下げを先行することについての見解を伺いたい。
  • 我が党は、投票権年齢を4年後に自動的に引き下げ、選挙権年齢は2年以内を目指して先行して引き下げることで成年年齢引下げのインセンティブになると考えているが、このような考えについての見解を伺いたい。
  • 選挙権を認めた場合の課題を解消しない限り18歳選挙権は難しいと考えるのか、また、次回の国政選挙では18歳選挙権の下で行うべきだとの主張について、見解を伺いたい。

<田中参考人に対して>

  • 18歳選挙権を認めた場合、高校3年生で選挙権や国民投票権を持つ人と持たない人が混在することになるが、このことが教育に与える影響はあるか。

<松繁参考人に対して>

  • 公務員による国民投票運動について、純粋な賛否の勧誘行為及び意見表明については、法令により禁止される他の政治的行為を伴わない限り自由にすることになったが、これに対する意見を伺いたい。

<水地参考人に対して>

  • 公務員や教育者の地位利用については実効性を期すため罰則を付すべきとの意見もあったが、構成要件が不明瞭であるとして8党合意の検討課題とされたことについて見解を伺いたい。

長島 昭久君(民主)

<南部参考人に対して>

  • 投票権年齢・選挙権年齢を引き下げる積極的な意義について、どのように考えるか。

<田中参考人に対して>

  • 消費者として契約主体になり得るのか、更生する可能性のある少年に対する厳罰化が適当であるのかといった、成年年齢の引下げ、少年法の適用年齢の引下げに対する批判・懸念に対して、どのように考えるか。

<田中参考人及び南部参考人に対して>

  • 選挙権年齢等の引下げには、教育の側面が重視されなければならない。田中参考人から、知識偏重ではなく、体験型・参加型の教育の重要性や、「無力感ではなく効力感を高める」必要が述べられたが、その具体的なカリキュラムについて提案があれば伺いたい。

<松繁参考人及び水地参考人に対して>

  • 先日の参考人質疑で「公務員・教員にも意見表明の自由は当然認められなければならないが、全体の奉仕者としての立場や地位の特殊性などに鑑みると、国民投票運動の弊害を防止するために、その組織的・党派的運動に一定の制約が加えられることは、猿払事件最高裁判決に照らしても当然である」旨、「選挙運動以上に高度の政治性を有する憲法改正国民投票運動に、政治的に中立であるべき公務員・教員が自由に、組織的に参加すれば、行政・教育の中立性、これに対する国民の信頼性が侵害される」旨を参考人が主張していたが、これについての所見を伺いたい。

<南部参考人及び水地参考人に対して>

  • 予備的国民投票制度について、改正法附則5項として新たに一歩進められた形で検討条項が設けられたが、同制度を創設することに対する所見を伺いたい。加えて、8党の確認書に、国政の重要課題に関する一般的国民投票制度の在り方についてもその検討が盛り込まれたが、これに対する所見も併せて伺いたい。

坂本 祐之輔君(維新)

<発言>

  • 日本維新の会は、決定でき、責任を負うことができる民主的な統治機構を構築するため、体制維新を実行したいと考えており、そのためには、現在の統治機構を規定している現行憲法の改正が不可避と考えており、一日も早い国民投票法の整備が必要と考えている。

<全参考人に対して>

  • 投票権年齢と選挙権年齢等は揃えて引き下げるべきと考えており、それには憲法教育や消費者教育が重要である。そこで、政治教育等を充実させて、ある程度の期間をおいて教育効果が浸透してから、選挙権年齢等の引下げを行うべきと考えるか、それとも、まずは選挙権年齢等の引下げを行うことで政治的判断能力を育てていくべきだと考えるか、見解を伺いたい。

<発言>

  • 我が国においては、教育における中立性とは政治と教育とを遮断することだと誤解されてきたのではないか。政治教育においては、様々な考え方を教え、若者の政治的判断能力を高めることこそが、本当の意味での政治的中立に資するのではないか。したがって、教育現場は政治に対してできるだけオープンにして、様々な考え方を持つ人々が、平等に教育の現場と関わる機会を持つことが重要ではないかと考える。

<田中参考人に対して>

  • 今回の改正案によって、投票権年齢等が引き下げられるに当たっては、こうした観点からの政治教育が重要になると考えるが、見解を伺いたい。
  • 具体的に、高校の体育館で憲法改正について全校生徒を集めて討論するというような事例があれば、教えてほしい。
  • スウェーデンや神奈川県の県立高校で行われているような模擬選挙等の取組は、若者の政治への興味関心を高める教育的効果もあると考えるが、見解を伺いたい。

<発言>

  • 将来の地域を担う青年たちは政治やどのような街づくりをしているか知ることによって、政治への関心につながっていく。市民教育、キャリア教育は若い頃からしっかり行われるべきである。

<南部参考人に対して>

  • 国民投票権年齢と選挙権年齢や成年年齢は揃えて引き下げるべきと考えているが、8党合意にある2年間という期間について、実現可能性をどのように考えるか伺いたい。また、民法の成年年齢についてはどのように考えるか。

泉原 保二君(自民)

<南部参考人に対して>

  • 18歳選挙権を導入している国は何か国か。

<田中参考人に対して>

  • 18歳選挙権を導入している国では、国民投票権年齢は定められているか。
  • 18歳選挙権を導入している国では、軍隊は保有しているか。それは軍隊か、自衛隊のようなものか。

<松繁参考人及び水地参考人に対して>

  • 18歳選挙権を導入している国では軍隊を保有していることを知っていたか。

<田中参考人及び南部参考人に対して>

  • 18歳選挙権を導入し、軍隊を保有している国では、徴兵制を採用しているか。

<発言>

  • 自分としては、戦前の25歳選挙権・30歳被選挙権が持論であった。社会に出て成人として生活してきたからである。また、少年法適用対象は義務教育までというのも持論である。
  • 18歳は高校3年生であり、受験戦争で余裕がない。秋入学制度を導入したら半年間の猶予があるので政治についても勉強できるとの声もあり、18歳選挙権に賛成する条件にしてはどうか。
  • 18歳選挙権については、権利ばかり主張してどのような義務を果たすのか、という議論がない。18歳選挙権・投票権には賛成するが、2年間の社会貢献、社会奉仕を条件としてはどうか。

<田中参考人に対して>

  • 18歳選挙権・投票権の条件に社会奉仕等の制度を導入すべきとの意見について、どう考えるか。

<南部参考人に対して>

  • 18歳未満の人間が、自分の国は自分で守るとの意思が芽生える教育が必要だと思うが、見解を伺いたい。

三谷 英弘君(みんな)

<発言>

  • 選挙権年齢を18歳以上としていない国は、G8では日本のみ、OECD加盟国では日本と韓国のみである。両国には大学受験の競争が激しいという共通点があるが、個人的には、この時期に、より社会に目を向けるきっかけがあればよいと考えている。高校の教育に「政治」を入れていくためにも、選挙権年齢の引下げは重要だ。

<田中参考人に対して>

  • 選挙権年齢を18歳に引き下げると有権者が約200万人増加するが、例えば、農協組合員・準組合員は約1000万人おり、これと比べれば、若者に選挙権を与えてもそれほど実際の政治へのインパクトは大きくはないとも言える。にもかかわらず、年齢を引き下げることに積極的な意義があることについて、考えを伺いたい。

<南部参考人に対して>

  • 選挙権年齢等の18歳への引下げに対する政府の取組について、ここ数年でできるかどうかについてどう考えるか。また、そうした閉塞状況を打破するには、何が必要と思われるか。

<水地参考人に対して>

  • 日弁連は、成年年齢の引下げに対しては慎重な姿勢をとっているとの認識でよいか。
  • 諸外国では、成年年齢と選挙権年齢は一致しているのが趨勢である。その状況下で、成年年齢を20歳で維持することに、どのような必然性や理由があると考えているのか。
  • 日弁連は、日本においては、若者に対する消費者問題をはじめとする保護施策が不十分であるとの認識か。

<発言>

  • 健全な判断能力とは何であるかが議論されるべきであり、若者の判断能力は低いと言われる一方で、高齢者の成年後見という制度もある。若者の保護が不十分であるとしても、日弁連が成年年齢の引下げに慎重であり続けることは、強制加入団体の在り方として、いかがなものかと思う。

<水地参考人に対して>

  • 憲法審査会に所属する弁護士出身の議員が年齢の引下げを熱心に唱える中、強制加入団体である日弁連がこれに慎重な立場をとり続けることに違和感を覚えるが、いかがか。

畠中 光成君(結い)

<発言>

  • 我が党は3つの宿題それぞれに意見を持っていたが、憲法改正の国民投票に関することなので、できるだけ多くの会派が合意した方が良いということで、7党合意に加わりながら議論してきた。

<全参考人に対して>

  • 我が党も主張している選挙権年齢の引下げについては、ほぼ全ての会派が一致するところであるが、やはり学校教育は重要である。ただし、情報収集、読み取り能力等のメディアリテラシーも重要である。こうした従来の学校教育とは別の観点の教育が必要になってくると思われるが、見解を伺う。

<発言>

  • 教育が重要であると同時に、その中身について、一つのテーマには様々な考え方があることを理解し、整理する力をつけるということを学校教育に取り入れていくべきである。

<全参考人に対して>

  • 公務員の組織による勧誘運動等の制限については、今後の検討課題となっているが、「組織」とはどのようなものをいうか、どうあるべきかの所見を伺う。

<田中参考人及び水地参考人に対して>

  • 国民投票運動に国民が広く参加すべきという趣旨には我が党も賛成だが、地位利用については、あってはならないという趣旨で罰則を設けるべきだと考えている。「萎縮効果」については格別、地位利用の範囲を明確化することは十分検討できると考えるが、どうか。また、地位利用そのものについての所見を伺う。

笠井 亮君(共産)

<松繁参考人及び水地参考人に対して>

  • 改憲手続法は、施行後3年の間に選挙権年齢及び成年年齢を18歳に引き下げることを義務付けたにもかかわらず、7年経った現在もそれができていない。今回の法案は、選挙権年齢の引下げについて期限を設けず、公務員の政治的行為についても規制を強化するなど、審議時の法案提出者の答弁と明らかに異なる内容である。自治労連、日弁連は7年前にも参考人として出席いただいたが、この経過についてどう見ているか。

<松繁参考人に対して>

  • 参考人は、「9条の改憲に対して国民の間では反対が多数を占めており、地方自治体も危惧している」との意見であるが、どのような危惧の声があるのか。特に、東日本大震災及び福島第一原発事故を経験した自治体からは、憲法との関係でどのような声が出されたか、ご紹介いただきたい。

<田中参考人、南部参考人及び水地参考人に対して>

  • 選挙権年齢等の18歳引下げについては、発議者は2年又は4年で行うとしているが、政府参考人は、年数を提示することは困難であるとしている。実際、選挙権年齢や成年年齢の18歳引下げについては、国民の間で賛否が割れている。国民の議論とコンセンサスがなければ、法律の附則に規定しても意味がなく、まずは、18歳引下げへの国民合意が必要ではないかと考えるが、見解を伺いたい。

<南部参考人に対して>

  • 参考人は、政府参考人の見解の不一致を指摘するとともに、答弁に係る事実の調査、確認を徹底してほしいと述べているが、それは、調査、確認がないうちは拙速に改憲手続法をつくるべきではないとの趣旨か。

<水地参考人に対して>

  • 改憲手続法に対して日弁連としてこれまで意見を出してきたと承知するが、最低投票率の問題も含めていまだ解決されていない問題がある中で、拙速ではなく徹底審議が必要との趣旨であると受け止めているが、見解を伺いたい。

鈴木 克昌君(生活)

<田中参考人に対して>

  • 田中参考人から、憲法教育や政治教育について、知識中心の「公民」・「現代社会」では不十分であり、参加型の市民教育で地域の課題を認識・解決することが重要である旨の意見が述べられた。その具体的な在り方について、意見を伺いたい。

<発言>

  • 私も7年前の法案提出者の一人であり、選挙権年齢等の引下げに係るこの間の状況には忸怩たる思いだ。

<南部参考人に対して>

  • 成年年齢を引き下げるためには、どのような条件・環境整備が必要と考えるか。政治が果たすべき役割も含めて伺いたい。

<田中参考人及び南部参考人に対して>

  • 我が党は、一般的国民投票制度を導入し、重要な問題については国民の審判を仰ぐべきだと考えている。また、この制度の導入が、若者の政治への関心を高めることにつながるのではないかとも考えるが、この点も含めて意見を伺いたい。

<松繁参考人及び水地参考人に対して>

  • 我が党は、公務員の国民投票運動を萎縮させることがないようにとの立場で、この改正案に係る8党合意に加わったのだが、萎縮的となる可能性の有無について、両参考人はどのように評価するか。

◎提出者に対する質疑者及び主な質疑事項等

保岡 興治君(自民)

<発言>

  • 国民投票法制定時、私は、当時の特別委員会の与党筆頭理事として取りまとめに当たった。あれから7年が経過し、制定時の議論の現場となった18委員室で、私たちが積み残した「3つの宿題」が、今まさに解かれようとしていることに感慨を覚える。
  • 憲法調査会会長、特別委員会委員長として一貫して憲法に携わってこられた中山太郎先生は、「憲法は、与野党一緒に力をあわせて作るべき」、「憲法は偉大なる妥協によって生まれるもの」という確固たる信念をお持ちであった。これは、憲法の制定・改正を何度も経験している欧州各国の海外調査から得られた知見である。その意味からは、憲法や憲法関連法規については、与野党が互いの立場を超えて真剣に向き合った上で、可能な限り幅広い合意形成を図るべきであるが、この改正案も、7会派の共同提出、8党で5項目の合意が確認されるという、「幅広い合意」が形成されており、高く評価したい。

<提出者に対して>

  • 「18歳選挙権年齢」は圧倒的な世界的潮流であり、また、「投票権年齢と選挙権年齢、更には、成年年齢が同一」であることも「世界標準」である。我が国でも、「18歳投票権」・「18歳選挙権」に加えて、「18歳成年年齢」の実現こそ、将来における我が国発展の基礎となるものである。柔軟で、夢や理想に向かう情熱を持つ若者が、その情熱を社会に生かすことができるように、若者の特性を、しっかりした教育の下で、国民としての自覚や責任に結び付けるような制度の確立こそ、心血を注ぐべき課題と考える。この点、選挙権年齢の引下げを目指して、8党間でプロジェクトチームが設置されるのは極めて意義深いことだが、同じ枠組で成年年齢の引下げも協議できるようすべきと考えるがいかがか。
  • 具体的な憲法改正においても、できるだけ幅広い会派で率直に意見を述べ合って合意形成を図るべきである。すべての政党が平等に発言の機会を与えられるといった、憲法調査会以来の方法で憲法審査会を運営し、憲法は国民のものという観点から良い憲法改正原案を逐次得ていくべきだと考えるが、いかがか。

細野 豪志君(民主)

<提出者に対して>

  • 公務員の国民投票運動が基本的に自由となったことが、民主党が共同提出に加わった大きな要因である。国民投票運動は国民の幅広い自由な活動を重要視すべきと考えており、100条の2が入った意義は大きいが、同条文については、参考人から萎縮効果を持つ、制限的なものに過ぎないかとの懸念も示されたところである。これをどのようにして制限的とならないよう運用していくのか、また、課題があるとすればどう乗り越えるのか、見解を伺いたい。

<発言>

  • 確認書では、公務員の政治的行為については、各党の担当部局に引き継ぐという、やや聞きなれない形になっており、各党の考え方に若干違いがあるようだ。この部分については課題があると思われるので、国民にしっかり開かれた環境を整えるよう、各会派に努力をお願いしたい。

<提出者に対して>

  • 本改正案が成立すると、憲法改正発議の環境が整うことになる。憲法改正の進め方について、船田議員からは、本改正案と同様に幅広い合意を目指してテーマを絞って進めたいとの答弁があったが、これは、自民党の方針として明確になっているのか、中谷議員の見解を伺いたい。
  • 与党内でも憲法について考え方の相違もあると思われるが、憲法改正について各会派でしっかりと議論をしてより良い案を作ることを目指すことについて、公明党の考え方を伺いたい。

<発言>

  • 憲法については、信頼関係の下に協議をする枠組を各党において大事にすべきであると考える。

新原 秀人君(維新)

<提出者に対して>

  • 本来、憲法の成立と同時に憲法改正の手続を整えるべきであった。憲法制定から70年近い年月が流れて一人前の立憲国家になったと言えるが、この議論がここまで遅れてきた理由は何か。

<発言>

  • 中山太郎議員が、私達の誇るべきは、憲法の変えやすさや変えにくさではなく、憲法改正に当たってどれだけフェアなルールを持っているかと述べていたが、今回フェアなルールが整ったので、憲法改正に関する議論が正式な場で喧々諤々になされることを願っている。

<提出者に対して>

  • 「18歳選挙権が実現すれば、高校3年生が国民投票あるいは国政に参加することができ、高校に政治の話題がおりてくる」という斎木参考人の意見もあったが、18歳と言わず、義務教育課程を修了した者には参政権を認めるといった考えも議論されるべきではないか。

<発言>

  • 選挙権も含めて投票権の取得要件を年齢でなく、学年で区切ってもよいのではないか。同じ学年が全て同じ権利を持つという考えもあるので、高校3年生になる4月からの投票権取得を検討していただきたい。

大口 善徳君(公明)

<提出者に対して>

  • 投票権年齢が4年後に自動的に18歳となることを踏まえ、同じ参政権グループの選挙権年齢は早期に引き下げるべきである。合意事項にある「改正法施行後2年以内」という文言は、次の国政選挙を視野に入れて規定したものと私は解釈している。参考人からは、政治教育の充実についての意見もあったが、選挙権年齢引下げと政治教育の充実は同時進行で行い、政治を活性化させるべきだと考える。合意事項の「2年以内」の意味及び選挙権年齢引下げのために解決すべき課題があるかどうかについて、北側提出者の見解を伺いたい。
  • 北側提出者は、選挙権年齢の引下げは政治決断との考え方を示しているところであり、周知期間を加味したとしても次期参院選挙までに年齢引下げは可能で、それを行うべきと考えるが、船田提出者の見解を伺いたい。
  • 本改正案が成立すると、憲法改正の中身の議論に入っていくこととなる。公明党は、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の憲法3原則は堅持した上で、環境権などの新しい人権を加える「加憲」という立場であるが、今後どういう形で憲法改正に関する議論を進めていくべきか北側提出者の見解を伺いたい。
  • 船田提出者は、「8党合意の枠組で議論して憲法改正原案を作り、4〜5回に分けて発議したい」という旨の発言をされているが、今後の憲法審査会の進め方について船田提出者の見解を伺いたい。

大熊 利昭君(みんな)

<提出者に対して>

  • 成人年齢や選挙権年齢について、18歳に引き下げることへの意気込みを聞かせてほしい。
  • 公務員の勧誘行為等における地位利用について、違反に対する罰則を設けないことへの見解を伺う。
  • 現行の公務員法制で具体的に禁止されている政治的行為について、国家公務員と地方公務員の間で取扱いが異なることへの見解を伺う。
  • 同じ国家公務員でも、内閣人事局により人事を一元化されていない検察官や内閣法制局の幹部は国民投票運動においてどのような扱いになるか。
  • 一般的国民投票について今後どのように検討していくか。
  • 本改正案により、憲法改正が今後議論の俎上に載った場合、特に統治機構改革に関する改憲を念頭におくべきだと考えるが、提出者の見解を伺う。
  • 憲法を変えないという改正案を提出できると考えてよいか。

小池 政就君(結い)

<提出者に対して>

  • 憲法裁判所あるいは最高裁判所憲法部の設置については、憲法審査会における中谷提出者及び船田提出者の意見は憲法判断機関の独立に賛成という点で一致していた。一方で、自民党としては明確な方針はなく、今後も議論していくとのことであるが、憲法裁判所あるいは、最高裁判所憲法部の意義及び自民党としての憲法判断機関の独立に関する方針について、中谷提出者及び船田提出者の見解を伺いたい。

<発言>

  • 憲法裁判所等の設置については、野党を含め多くの会派が主張しているところであり、集団的自衛権の解釈変更が議論される中、憲法改正の優先事項とすることについて期待したい。

<提出者に対して>

  • 合意事項にある選挙権年齢の2年以内の引下げを目指すことについては、非常に短期間であるため、今後のプロジェクトチームにおける具体的取組について早急に決める必要があると考えるが、現時点での考えを伺いたい。

笠井 亮君(共産)

<提出者に対して>

  • 年齢問題について、現行法の附則3条では公布後7年経っても実現できず、今回も引下げの年数を明示するのは困難と政府からの答弁があった。いくら附則で決めようと、これらの問題が進まない根本には、18歳への引下げに関して国民の中で賛否が割れている現実があると思うが、いかがか。
  • 日本共産党は、この手続法に関わりなく18歳選挙権を速やかに実現すべきだとかねてより主張しており、政治の決断が大事だと考えている。しかし、この間の経緯を見ると、国民的議論によるコンセンサス抜きに机上で議論して附則に規定しても実現の担保がないことは現実が示している。今やるべきは法改定ではなく、18歳引下げへの国民的合意作りではないか。
  • 公務員の地位利用について、今回は罰則を法律に規定せず、合意書で今後の検討課題としている。その理由について船田議員は「地位利用の形態がまだこなれていない」と述べ、北側議員は「選挙における地位利用は比較的明確だが、国民投票の地位利用はその範囲が明確でない」と述べているが、現行法にある地位利用についてもその形態・範囲は不明確だということなのか。

<発言>

  • 現行法は懲戒処分のみだが、それも範囲が明確でなければ処分できない。改憲手続法審議時に、当時の法案提出者は「『その地位を利用して』という規定では曖昧だから、併合修正案で『その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行いうるような影響力又は便益を利用して』と文言を改めて、概念をより明確にした」と説明した。この文言自身は1962年の公選法改正時に「その地位を利用して」の意味を説明した当時の自治省の局議決定を引用したもので、私はただ言葉を変えただけだと批判した。法案提出者はこれで地位利用の意味内容をさらに具体化したと説明したが、あの答弁は何だったのか。現行法の地位利用の形態・範囲というのは不明確ということではないか。こんな規定で公務員や教育者の国民投票運動を規制するのはとんでもないことだ。

<提出者に対して>

  • 今回法律に罰則を明確に規定しなかった理由について、船田議員は「罰則の構成要件を明確にすることが必要だが、それが非常に困難な状況である」と述べた。北側議員も「罰則を設ける以上はその構成要件が明確であることが大前提だが、設定することが現時点ではなかなか難しい」と説明している。2006年5月の自公案では、いわゆる地位利用違反に対し、明確な構成要件が設定されないままに罰則を設けていたのか。
  • 公務員が組織を使って行う勧誘運動等について、「公務員が組織を使って様々な活動をするということは国民に対する影響力が大きすぎる」と述べているが、なぜ公務員が組織を使って国民投票運動をすると国民への影響力が大きくなるのか。また、国民に対してどういう影響力が働くと思っているのか。
  • 組織的に行う投票運動ということを言うのならば、例えば大企業や日本経団連などが組織ぐるみで国民投票運動を行えば、国民への影響力は相当なものになる。なぜ公務員だけを問題にするのか。

<発言>

  • NPOなども組織的にやると問題になるという新たな問題も今言われた。非常に重大である。憲法の尊重擁護義務を負っている公務員が国民投票運動を積極的に行えば影響力が大きく、改憲案が否決されてしまうかもしれないからそれを押さえてしまおうという意図が働いているのではないか。

<提出者に対して>

  • 最低投票率の問題が改定案では一顧だにされていないことについて、参考人からも指摘があった。18項目の附帯決議についても、参議院で付されたものとはいえ、改定案を出すからには内容が検討されてしかるべきと考える。改定案策定に当たり、附帯決議の検討は行ったのか。
  • 法曹団体は、改憲手続法の成立後も、最低投票率の設定など抜本的な見直しを要求しており、午前中の参考人質疑でも水地参考人が日弁連の立場を改めて表明された。参議院の附帯決議は自民、公明、民主が共同で提出したものであり、3党には政府に対して附帯決議の実行を迫る責任があったのではないか。この審査会の場で説明もないのは、国会軽視も甚だしいのではないか。
  • 幹事会で附帯決議の提案が出されたが、この附帯決議は一言で言って支離滅裂である。一項目めの選挙権年齢の引下げについては、7年前も、名宛人が明確でなく、誰が行うのか、責任を持っているのかが不明で、政府と国会の間で責任のなすりつけ合いがあった。この問題についてどう考えるか。
  • (二項目めに)成年年齢等が18歳以上に「引き下げられることを踏まえ」とある。しかし、今回の改定でも引下げについて具体的な拘束力はなく、附則で年限を定めずに検討だけ目指すとしているものである。なぜそれを偽って述べてその周知啓発を政府にやらせるのか。
  • (五項目めに)地方公務員の政治的行為について「各党の担当部局に引き継ぐ」とある。先ほど細野委員からも「なかなか聞きなれない」との発言があったが、私もこのような附帯決議は寡聞にして見たことがない。なぜこういうことを盛り込むのか。私たちは公務員の規制には与しない立場であるが、「各党の担当部局に引き継ぐ」と国会決議をすれば、日本共産党の担当部局も義務付けられることになるのか。

<発言>

  • 7党の確認書をそのまま附帯決議にしてしまうから不明確なものになるのであり、かえって有害である。国民投票をいつでもできるようにするために、いい加減に憲法を扱うのでは国民が納得しない。本来法律で決めるべきことなら法律で決めて徹底審議すべきである。このようないい加減なことをやればやるほど改憲反対の国民世論が盛り上がることになる。さらなる徹底審議を求める。

小宮山泰子君(生活)

<提出者に対して>

  • 合意事項では、「選挙権年齢については、改正法施行後2年以内に18歳に引き下げることを目指し、各党間でプロジェクトチームを設置する」とされ、選挙権年齢を早期に引き下げる方向性が明確になったと考えるが、今後の選挙権年齢の引下げに対する取組及び決意を伺いたい。
  • 本改正案成立により、憲法改正国民投票の実施が可能となるが、生活の党の憲法全般に対する考え方及び今後の憲法改正に向けた議論の進め方について、見解を伺いたい。

<発言>

  • 我が党が主張する「基本的人権の尊重」、「国民主権」、「平和主義」、「国際協調」という憲法の四大原則は普遍であり、96条の趣旨に鑑みても多くの国民が賛同できるような憲法改正の発議をしなくてはならない。

吉川 元君(社民)

(※委員外議員)

<提出者に対して>

  • いわゆる「3つの宿題」を解いたということの意味を説明してほしい。

<発言>

  • 宿題を解いたとは思えない。現行法上の附則3条の立法意思は明確であり、解いたのは投票権年齢と選挙権年齢等のリンクである。確認書が担保になるのかも疑問であり、国民投票法を凍結して仕切り直すべきである。

<提出者に対して>

  • 現行法附則11条「公務員の政治的行為の制限に関する検討」の趣旨をどのように考えるか。また、この趣旨に照らして本改正案における公務員の政治的行為に係る措置をどのように評価しているか。
  • 改正案附則4項の公務員による組織的勧誘運動の企画等に係る検討条項は現行法の立法意思に反するのではないか。
  • 国民投票法制定時に参議院憲法調査特別委員会で議決された附帯決議は、最低投票率制度など国民投票の根幹に係る問題を提示しているが、本改正案の提出に当たってこの附帯決議を検討したか。
  • 我が党は集団的自衛権の行使容認そのものに反対しているが、少なくとも憲法解釈の変更による行使を認めるべきではない。憲法96条は、明文改正のみならず、解釈により国の基本的な形や憲法の根本原理を変える場合には憲法改正手続を要請していると考えるが、憲法の解釈変更の限界と96条の射程に関する見解を伺う。

<発言>

  • 憲法の解釈を変更する場合には、過去の解釈との論理的整合性が問われるが、集団的自衛権の行使を憲法9条の解釈変更により認めることは、法の支配に反する行為である。
  • 立法意思を無視して、解けていない宿題を解いたことにするのは乱暴であり、改憲したいがための弥縫策に国会が加担するのは、国権の最高機関としての地位を捨て去ることにつながる。また、我が党は国民投票法に反対であり、本法は廃止して議論をやり直すべきである。