平成26年11月6日(木)(第2回)

◎会議に付した案件

日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(今後の憲法審査会で議論すべきこと)

自由討議を行った。

◎自由討議

●各会派の代表者からの意見表明の概要

船田 元君(自民)

  • 先の常会で憲法改正国民投票法の改正を行い、名実ともに憲法改正が実施できる環境が整った。この改正は8党合意の下で行ったが、更に同じ参政権グループである選挙権年齢もできるだけ速やかに18歳に引き下げるため、公職選挙法を改正するという課題にも鋭意取り組んでいる。それとともに中立的な政治教育、歴史教育を充実させることも大きな課題として浮上している。
  • 憲法改正国民投票法が改正され、18歳から投票権が与えられることになることなどについては、国民の認知度がまだ低いため、当審査会としても地方公聴会を始め様々な手段で広報活動を行っていく必要がある。
  • 当審査会では、いよいよ憲法改正の中身を真剣に議論すべき時を迎えた。憲法に付け加えなければならないこと、憲法が現実と乖離する箇所が出てきたことなど、憲法改正の必要性は論をまたない。我が党は既に2年前に日本国憲法改正草案を発表しており、各政党からも憲法改正の全体像をお示しいただきたい。
  • 我が党の草案では、前文に憲法の3原則を明記し、日本国籍を持った前文に書き換えるほか、1章では天皇は国家元首であることを明記し、2章では9条1項は改正せず、2項以降に国防軍及び自衛権を規定することとしている。3章では、環境権やプライバシー権を加え、家族の尊重を明記し、権利には義務が伴うことを自覚すべきこと、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」と変更しその概念を明確化することとしている。
  • 4章では国会の会期の設定を柔軟にすることなど、5章では内閣総理大臣の権限強化、7章では財政規律条項の新設等、8章では地方自治の本旨の明確化等を定めている。また、新たに緊急事態条項を創設し、9章の憲法改正手続における国会の発議要件を2分の1に緩和することとしている。これらの改正項目を参考にしつつ、各党と精力的に議論していきたい。
  • 憲法改正においては個別発議の原則が定められており、改正は何回かに分けて行うこととなるが、憲法全体のバランスを失しないよう配慮すべきである。初回の憲法改正は、国会も国民も初めての経験であることから、できるだけ多くの政党が合意できる項目から取り上げていくのが適切ではないか。具体的には、先般の海外派遣の際にも派遣議員から関心が高かった環境権、緊急事態、財政規律などが挙げられる。
  • 裁判官の報酬減額を禁止した79条や、公の支配に属さない教育への公金支出を禁じた89条は、明らかに現実と乖離しており、早急に改正が必要である。
  • 憲法改正の国会発議の要件を定めた96条の改正も視野に入れたい。現状では、いずれかの院の3分の1の議員が反対すれば国民の憲法判断の機会が奪われることとなり、憲法についての民意が反映されなくなる。
  • 各論点について、今後審査会で深掘りの議論を行い、初回の憲法改正の原案作成につなげる必要がある。与党だけで憲法改正ができるとは考えておらず、これまでの憲法改正国民投票法の環境整備でも大切にしてきた幅広い合意を、憲法改正の時こそ大切にしていかなければならない。憲法審査会は、憲法を本来の意味で国民の手に取り戻すために、勇気と忍耐を持って議論を進めていくべきである。

武正 公一君(民主)

  • 当審査会においては、憲法調査会以来14年超の議論の経過を尊重・継承することが基本である。この間、与野党による丁寧な合意形成が努められてきたのは、衆参両院の3分の2以上の賛成が憲法改正の発議要件とされていたからであり、第一次、第二次安倍内閣による強引な動きはあったものの、与野党の冷静・真摯な対応が今般の憲法改正国民投票法の改正に結び付いた。
  • 憲法調査会以来の議論、例えば、「GHQによる一連の押し付けを問題視する意見はあったが、その点ばかりを強調すべきではない」旨の意見が、3分の2以上の多数であることを示す「多く述べられた」意見として憲法調査会報告書に記されていることなどを確認しておく必要がある。
  • 民主党としては、現に生じている社会問題として、現行憲法に足らざる点、補うべき点として明確になっているものから、優先的に議論していくことを提案する。以下2点は、最近のテーマとして取り上げるべきである。
  • まず、立憲主義について。本年7月1日の集団的自衛権行使を容認する閣議決定は、個人の権利を守るために国家権力を制限するという近代立憲主義の観点からすれば、一内閣による恣意的な憲法解釈の変更であり、あってはならないことである。
  • 二点目は、人権についてである。ヘイトスピーチへの対処が不十分であると国際社会から指摘されているが、団体側は表現の自由を重視し、政府は憲法上の権利の制限には及び腰であり、早急な検討が必要である。
  • その他、民主党政権が目指した、@統治機構分野における縦割り行政の弊害の是正、A補完性の原理に基づいた分権型国家の実現や、道州制を含めた地方の権限・財源の問題、B国民の知る権利の保障等、といった事項については道半ば又は後退しているのが現状であり、議論を深掘りする必要があると考える。また、C憲法に対する国民の信頼を取り戻し、憲法秩序をより確かに維持するための、違憲立法審査を専門に行う憲法裁判所の設置の検討についても、最高裁のあり方も含めて議論を深掘りする必要があると考える。
  • 「憲法提言」では、憲法の根本規範としての平和主義を基調とした上で、@国連憲章上の「制約された自衛権」、A国連の集団安全保障、B民主的統制について、憲法に明確に位置付ける旨を明記し、その上で、@武力行使は最大限抑制的であること、A憲法附属法としての安全保障基本法(仮称)を定めること、の2条件を明示した。我が党は、様々な国際情勢の変化に対し、与野党の垣根を越えた現実的な対応をとるよう努めている。
  • 本年の海外派遣調査でテーマとした4点に関して述べると、環境権については、国家、企業や家族などの協力が必要となる環境保全のような社会共通の課題に挑戦するため、「国民の義務」に代えて「共同の責務」を提示したところであり、再生可能エネルギーの振興といった問題も含め、議論の深掘りが必要であると考える。
  • 緊急事態については、@基本的人権の制限への歯止め、A国会による民主的統制の確保を主張し、国家緊急権を憲法に明示して、非常事態時においても、国民主権や基本的人権の尊重が侵されることなく、憲法秩序が維持されるよう、仕組みの明確化や首相の解散権の制限を唱えている。
  • 財政規律については、財政再建目標は国際公約であり、また、「憲法提言」では、「現在及び将来の国民に与える影響の予測」・「未来への責任」としたところであり、憲法又は法律による何らかの手当てが必要であると考える。
  • 憲法・政治・歴史教育については、18歳投票権等の実現に伴って高校生への教育を充実しなければならず、教育現場での対応・措置には更なる工夫が必要であると考える。
  • 先の常会で憲法改正国民投票法の改正法を制定した際に8党で合意したとおり、一般的国民投票については、憲法審査会において定期的に議論しなければならない。
  • 多くの国民は改正法施行について承知していないのではないか。国民への周知なしに国会の論議のみが先走るのはいかがなものか。今月17日に盛岡市で地方公聴会を開催するが、このような会議の開催は、憲法改正の機運を醸成するためにも必要なことである。

伊東 信久君(維新)

  • 維新の党は、統治機構改革により国のかたちを決める仕組みをグレートリセットする必要があると考える。
  • 我が国は2060年までの出生中位推計でみても、総人口の減少、生産年齢人口比率の低下、高齢化率の上昇が予測されている。このままでは、地方は疲弊し、国全体の統治機構に重大な影響を与える。加えて、有識者の人口問題研究会は、全国で896の自治体が人口減少によって消滅する可能性に言及している。
  • 我が国は経済のグローバル化の中で、新陳代謝の遅れにより国力が停滞・弱体化し、国民は不安を抱えている。この閉塞感から脱却し、国民の安全及び豊かな生活の確保、伝統的価値及び文化等の国益を守り、国の将来を切り開くためには、より効率的で自律分散型の統治機構の確立が急務である。
  • そのような統治機構の確立のため、国の役割を外交、安全保障、マクロ経済政策等の国家的課題に集中させる一方、地方にできることは地方に任せるといった抜本的な見直しが必要である。住民に身近な課題は基礎自治体が担い、広域地方政府としての道州を導入し、権限と財源の地方への移譲や規制緩和によって、地域、個人の自立可能な社会システムを確立すべきである。道州制は、地域、個人の創意工夫や民間の自由競争により、経済社会の活性化を促す成長戦略の可能性を有する。
  • 国家的課題に取り組むため、天皇を元首とし、首相公選制の導入、政治主導の体制整備を図るべきである。併せて、国の会計制度における発生主義や複式簿記の導入、強力な会計検査機関の国会設置、財政運営のコントロール及び財政健全化を憲法に盛り込むべきである。
  • 我が国を取り巻く国際情勢は、アジア太平洋地域の重要性が急速に高まる一方、北東アジア地域では、大規模な軍事力を有する国や核開発を強行する国が存在している。我が国に向けてミサイルが設置されるといった緊迫した状況下において、地域の平和・安全を確保する基軸としての日米同盟の意義はいまだ大きいといえる。
  • 我が国の安全と防衛のために、維新の党は自衛権の再定義が必要と考える。従来の政府見解では、自国に対する武力攻撃の発生の有無により個別的自衛権と集団的自衛権とを区別し、その上で憲法が許容するのは個別的自衛権のみとしてきた。しかし、我が国が直接的に武力攻撃を受けていない状況下であっても、密接な関係にある他国に対する攻撃の結果、我が国に攻撃が及ぶ必然性が高く、国民が被る犠牲が深刻となる場合は、自衛権の行使は憲法解釈上、許容されると考える。
  • 自衛権の再定義等を行う場合、恣意的な憲法解釈及びそれに基づく運用は避けなければならない。憲法解釈は、最終的に憲法裁判所もしくは最高裁判所憲法部等の、憲法判断を担う司法機関による判断が必要である。
  • 以上の提案を実現するためには、憲法改正が必要である。大幅な統治機構の改革には、主権者国民による意思決定が重要である。国民的な憲法議論を喚起するためにも、96条の憲法改正発議要件のハードルを下げることが重要である。
  • 国民の直接的な主権行使である国民投票を行うための環境整備として、一日も早く投票権年齢を18歳に引き下げるとともに、選挙権年齢も18歳に引き下げるべきである。その際、検討すべき課題が残されているが、成人年齢を18歳に引き下げることを前提に議論を進めるべきである。
  • 日本国憲法は、施行後68年経過した今も、一度も改正されておらず、現実に即した条文が整備されるべきである。大規模な自然災害、感染症のパンデミック、有事の際などに国民の生命、国土を守るため、緊急事態条項を検討することが喫緊の課題である。
  • 憲法改正に関する諸問題について、国民が直接判断できる機会を早急に整えるべきである。

斉藤 鉄夫君(公明)

  • 現行憲法は、戦後の復興と平和に大きく貢献し、国民に定着しており、特に基本的人権の尊重、国民主権、恒久平和主義の3原則は立憲主義の立場からも、今後も堅持すべきである。その上で、時代の進展に伴い新たな理念を加えて補強する「加憲」が最も現実的で妥当な憲法改正の方式なのではないか。以下、加憲の対象となりうるテーマについて党内の意見を紹介する。
  • 前文については、基本的人権の尊重等の憲法3原則を明確に盛り込むべきである。国際貢献についてはより明確にし、人間の安全保障の理念をより強く反映すべきである、地球環境、生命倫理等人類普遍の原理に通ずる価値や日本固有の価値の記述も必要であるとの意見もあった。
  • 第1章については、象徴天皇制と国民主権の関係を明確にするため、独立した条文で国民主権の明記が必要との意見が大勢である。
  • 第2章については、9条1項、2項を堅持の上、専守防衛の実力行使主体としての自衛隊の存在を明文化すべきという意見と、あえて書き込む必要はないという意見の両方がある。国際貢献の明確化を望む声があるが、どの規定に盛り込むか、あるいは法律で対応すべきかについては意見が分かれている。核廃絶については、その非人道性の指摘等の内容が盛り込まれるべきである。
  • 第3章では、新しい人権全般について積極的な立法措置を可能とするよう明文化すべきとの意見がある。一方、新しい人権を規定する際には、それが他人の人権を侵害しないか等を慎重に検討する必要がある、権利のインフレを引き起こすべきではない、立法で対応すべきである、といった意見もある。
  • 環境権については、13条と環境基本法で十分であるという意見と、自然との共生を含んだエコロジカルな視点に立ち、開発と環境は相反するものではなく環境保全こそ成長の基盤であるという考え方に立った環境権を定める必要があるという意見がある。国と国民の環境保全の責任について定める必要があるとの意見もある。
  • 生命倫理のあり方については、23条の学問の自由とのバランス上、生命の尊厳という概念を憲法に明記すべきである。
  • 第4章については、両議院の役割分担を明確にし、参議院の良識の府・再考の府としての位置付けを明確にするべきである。
  • 第7章については、私学助成の重要性を踏まえて憲法上の表現について検討すべきである。財政規律や財政の健全化、複数年度予算等を憲法に規定すべきとの意見もある。
  • 第8章は条文がわずか四つしかなく、抽象的で脆弱な規定であり、地方自治の本旨としての「団体自治」「住民自治」の具体的な内容を明確にすべきではないかという意見もある。財政的自立を明確にすべきとの意見もある。
  • 第9章については、3分の2という発議要件は高過ぎることはないが、3原則以外の改正における発議要件の緩和については議論の余地がある。
  • 緊急事態についても衆議院解散時における対処方法等、現行憲法には大きな空白があり、憲法に規定した上で法律を整備する等、何らかの対処が必要だという意見が大勢である。

西野 弘一君(次世代)

  • 次世代の党は、自主憲法制定を党是としている。占領下で押し付けられた「占領のための憲法」から早期に脱却し、「日本国民の自らの手による憲法」を制定すべきである。本来全文一括改正が望ましいが、現実的には逐条改正を繰り返し、最終的な全面改正を目指す。
  • 緊急事態条項の追加にまず取り組むべきである。現行憲法は、緊急時における行政機構のあり方が規定されていないため、昨今の国際情勢、大災害、伝染病の流行に適時に対応するには心もとない。緊急時には迅速かつ効果的に執行権限を行使できるようにし、かつ、憲法秩序を維持するための措置が必要である。
  • 現行憲法は、自衛権の明文規定がないため、幸福追求権を根拠に自衛権を導き出すという複雑な論理構成をとっている。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」するという大前提が崩れている以上、国家の独立と国民の平穏を守るため、新しい憲法には自衛権の保持が掲げられるべきである。
  • 次世代への責任という立場から、国家財政について、国会のチェック機能を明確にすべきである。また、環境についても、自然環境保護だけでなくエネルギー問題を含め次世代が享受すべき幸福を現役世代が乱費することを戒めるべきである。
  • 我が党は、基本政策の実例として、日本型州制度の導入とともに、首相公選制や一院制の方向で議論することを掲げたが、将来的に日本型州制度を導入するに当たって、ふさわしい国家機構とは何かという議論をゼロベースで深めていく。
  • 憲法前文は、我が国の国柄、精神、文化、伝統について、400字から800字程度で、子どもでも暗唱できるような美しい日本語で書かれていることが望ましい。
  • 憲法改正手続については、8党合意を尊重し、憲法改正の環境整備に尽力していく。選挙権年齢や成年年齢の引下げについては、国民投票における議論を参照しつつ、それぞれの法律において議論されるべきであり、憲法改正を議論する中で取り上げていく積極的理由はないと思う。
  • 9条はパリ不戦条約の流れをくむが、侵略戦争を禁ずる同条約は第二次世界大戦を防ぐことができなかった。戦後日本が国家間の戦争に直接巻き込まれなかったのは、日本国民の努力と自衛隊員の研鑽、日米安全保障条約の存在によるのであり、一方、9条があっても、北方領土や竹島・尖閣諸島の問題、北朝鮮による拉致問題など、現に日本の平和は侵され続けている。
  • 次世代の党は、日本の平和が侵されているという現状認識に立ち、いかに我が国の独立と国民の安全を取り戻すのか、世界の平和に貢献するのかを議論していきたい。
  • 昨今は、我が国の排他的経済水域で、中国漁船による違法なサンゴ漁が確認されているが、こういった事態を想定した法律が存在しなかったのも平和憲法に遠慮して議論を怠ってきた国会の不作為ではないか。
  • 憲法改正案の発議に必要な衆参両院の3分の2の勢力の結集を呼びかけ、再来年の参議院議員通常選挙と同時に憲法改正のための国民投票を実施すべく、国会での憲法改正原案作りに取り組んでいく。

三谷 英弘君(みんな)

  • 憲法改正国民投票法が改正され、憲法改正が具体的に俎上に上ってきたことについては賛意を示したい。一人前の自由主義国家として必要な憲法改正は、積極的に行っていくべきである。
  • 天皇を、日本国の元首として、憲法に位置付けることが不可欠である。また日章旗を国旗とし、君が代を国歌として憲法上位置付けることも必要である。
  • 国際平和に貢献し、自国を防衛するため、自衛権のあり方を憲法上明確化すべきである。我が党は、内閣による憲法の解釈変更それ自体は可能との立場であるが、内閣法制局の解釈により憲法が不安定な状況に置かれることは、官僚統制が強まるとの懸念から、本来はあるべきではないと考える。個別的・集団的自衛権を認めるということであれば、憲法改正するべきと考える。
  • 地域主権型道州制を憲法上定めることが必要である。国に一極集中している人間・財源・権限の「3ゲン」を、地方に移譲していくことが不可欠である。従来国家が行ってきた役割を地方公共団体が行う仕組みとすることに伴い、外国人に地方参政権を認めることには慎重であるべきであり、反対である。
  • 首相が次々に変わることが、国民の不信感を増幅させてきたという経緯から、首相公選制を憲法上位置付けるべきと考える。現行憲法下でも導入は可能であると考えるが、将来的には、憲法を改正し首相公選制を定めるべきであると考える。
  • 道州制を導入し、地方へ権限を移譲することに伴い、国の立法事項を司法、外交、安全保障に限定すべきである。これにより国の役割が縮小するため、両院統合による一院制を実現するべきである。また、一票の較差の問題については、国民が等しい価値の投票権を持つことが重要である。また政党のあり方についても憲法上位置付けるべきである。
  • 首都直下型地震の発生が予想される中、非常事態法制を憲法上定めることが不可欠である。衆議院解散中の緊急時の対応などを考えなければならない。
  • 戦後一貫して憲法議論が深まらなかった最大の要因としては、憲法改正の発議要件があまりにも厳格過ぎることが指摘できる。憲法改正を具体化するために、従来の「各議院の総議員の3分の2」でよいのか議論し、手続を簡略化することで時代の変化に伴った憲法改正を行うことが必要である。
  • 新しい人権(環境権、プライバシー権など)については、あくまでも小さな政府が重要であるとの観点から、国家の統制が強くなり過ぎない形で、必要な人権を議論していくことが重要である。
  • 今まで憲法が1回も改正されてこなかったことは残念である。必要とされる憲法改正によって、戦後、初めて日本国民が、自らの手で憲法を定めた、ということになるのではないか。憲法改正が国家を挙げた議論となっていくことを期待する。

笠井 亮君(共産)

  • 国民は改憲のための議論は求めておらず、憲法審査会を動かす必要はない。むしろ、国民は憲法の諸原則に反する現実の政治に批判を強めており、国会はそれを正すことにこそ役割を発揮すべきである。
  • 日本の平和を巡っては、安倍政権による集団的自衛権の行使容認の閣議決定と、日米ガイドライン再改定が憲法上の重大問題となっている。閣議決定を直ちに撤回し、それを具体化する一切の作業は中止すべきである。今こそ9条の精神に立った外交で、紛争を絶対に戦争にせず、平和的に解決して北東アジアに平和協力の枠組みを作り、日本と世界の平和と安定を築くべきである。
  • 国民生活と経済について、円安による物価上昇に消費税増税が加わり、給料が目減りし、実質賃金は14か月連続のマイナスである。アベノミクスによって国民の暮らしや中小企業は苦境に立たされ、高齢者から現役世代まで、手当たり次第に医療費負担増を押しつけられようとしている。社会保障のためという消費税増税の口実がでたらめであることが、誰の目にも明らかになっている。
  • この臨時会において、直接雇用の原則に風穴を開ける労働者派遣法を更に改悪して、臨時的、一時的という労働者派遣の原則をも覆そうとしていることは、断じて許されない。憲法の基本的人権の尊重の原則に立って、企業から家計に軸足を移す経済政策に転換し、人間らしく働ける雇用のルールを作ることが必要である。
  • 去る5月に福井地裁は大飯原発の運転差し止めを認める判決を下した。そこでは、個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益全体を憲法上の人格権とし、これを超える価値を他に見いだすことはできないと述べ、この権利が極めて広範に奪われる具体的危険性が万が一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然と断じた。
  • こうした政治の現実を、憲法の国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重という諸原則に照らして正していくことこそ、国会に課せられた役割である。
  • これまでも、憲法審査会で議論すべき議題として環境権、緊急事態、財政規律の問題などが挙げられてきたが、環境権は、国民の戦いによって獲得されてきたものであり、憲法上、基本的人権として認められていることは、今日では当たり前となっている。問われているのは、憲法に明文の規定があるかどうかではなく、憲法を生かした立法政策に政治が本気で取り組むかどうかである。
  • 憲法に緊急事態の規定を設け、総理大臣に権限を集中すれば大規模災害に対処できるなどというのは問題のすり替えである。東日本大震災及び福島原発事故の被災者支援等のため、憲法を生かして必要な法律や制度の整備、国会事故調の設置などに国会が取り組んできたという現実とも異なる。
  • 外部からの武力攻撃への対処と言うが、そのような事態を起こさせないためにこそ日本国憲法があるのであって、この点でも憲法を生かす政治が求められている。
  • 今日の財政危機を口実に憲法に財政規律の規定を設けることも、歴代政権の財政運営が招いた危機を顧みない議論であり、問題のすり替えと言わねばならない。憲法は財政運営についても、国民主権に基づき、恒久平和主義、国民の人権保障に資するよう財政に関する諸原則を定めている。憲法に定められた諸原則に基づく財政運営へと正すことこそが政治の仕事である。
  • 本日の審査会も他の委員会と同時並行で開催されている。重複する日程で審査会を設定すべきではない、国民が改憲を望んでいないのに、国会を改憲のキャンペーンの場にしてはならないと重ねて主張したい。

鈴木 克昌君(生活)

  • 小会派への十分な配慮を行い、平等に発言時間を割り当てるといった憲法調査会以来の議事運営は、我が国の憲法論議に多大な貢献をしている。この伝統は、憲法審査会における今後の憲法論議の前提であり、堅持してもらいたい。
  • 憲法は、より幸せに、より安全に生活するために皆で定めたルールであるから、国民生活の安定・向上のために存在する。国民一人一人が共同体メンバーと協力し合いながら、自由に自分の人生を生きていけるようにすることが「基本的人権の尊重」である。これを貫徹するために、憲法が国家権力を縛り、国家権力が憲法の範囲内でのみ行使されるようにすること、これが「立憲主義」の考え方である。
  • 我が党は昨年5月に「憲法についての考え方」をまとめた。そこでは、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、国際協調という憲法の四大原則は人類普遍の価値であり、時代が変わろうとも変えてはならない理念とした。これらを否定する改正は憲法の否定であり、到底認められない。
  • 他方で、時代・環境の変化に応じ、@国際平和に我が国が積極的に貢献するため、実力行使を含めた国連平和維持活動への自衛隊参加の根拠規定を設けること、A「決められない政治」の原因たる現行の二院制に内包された問題や、司法制度、国と地方の関係のあり方など統治機構を見直すこと、B緊急事態の際に政府による超法規的措置に頼るのではなく、立憲主義の枠内で対処できるよう、緊急事態宣言の根拠規定を設けることなど、現行憲法には見直し・加憲を行うべき部分もある。
  • 9条に関して言えば、本年7月1日の閣議決定は、戦後一貫した集団的自衛権に係る憲法解釈を一内閣の権限のみで変更するもので、立憲主義に関わる看過できない問題であり、今後の憲法審査会で議論するにふさわしい案件である。
  • 憲法改正手続の緩和は、四大原則を否定するような憲法改正が容易となってしまうため、許容できない。96条は堅持すべきであり、その改正を前提とした議論には賛成できない。
  • 憲法審査会には、先の常会で成立した憲法改正国民投票法の改正法に付随する事項、すなわち、18歳選挙権の実現に向けた政党間の議論をフォローする責任がある。また、選挙権年齢の引下げに伴い、若年者に対する憲法教育等を充実する議論も必要である。

    ●委員からの発言の概要(発言順)

    長島 昭久君(民主)

    • 本年7月1日の閣議決定は、我が国の平和主義を考える上での有益な素材が詰まっており、憲法審査会において徹底的に議論すべきである。
    • 当該閣議決定によって、集団的自衛権の行使が容認されたと一般的に理解されているが、個別的自衛権の拡張であるという議論があるとも仄聞している。私自身は、当該閣議決定は、憲法が許容する自衛権の範囲を再確定したものであると考える。その意味で、憲法附属法としての安全保障基本法について憲法審査会で議論を深めていくことは有益ではないか。
    • 9条が許容する自衛権の範囲に一定の制約が課されていることは自明である。私は30年来、集団的自衛権の行使を容認すべきという意見であるが、9条から他国の領土・領空・領海で武力を行使する意味での集団的自衛権の行使容認を導くことは難しい。しかし、国際情勢の変化、軍事技術の進歩等を勘案して憲法解釈は変更されてきており、今後も現実に合わせて国民の生命・財産を守るために憲法解釈は見直されるべきである。
    • 憲法解釈には、行政解釈、立法解釈、司法解釈があるが、立法解釈は行政解釈の後追いになっている。立法府としての憲法解釈を明確化するために、安全保障基本法の議論を憲法審査会で深めるべきである。

    中谷 元君(自民)

    • 7月1日の閣議決定について審査会で議論することには賛成する。当該閣議決定は、昭和47年の政府見解で示された9条の定義を再確認した上で、現在の状況について検討した結論であって、我が国の安全保障上必要最小限の自衛の権利を定めており、国民の正しい理解のために立法府で議論していくことは重要である。
    • 司法の場でも、砂川判決等において9条のあり方等について見解が出されているが、そうした根幹的な根拠をもとに議論をしていくことは有意義である。

    古屋 圭司君(自民)

    • 憲法審査会は、それぞれの政党が平等に発言していく民主的な運営をしており、好ましいと思う。
    • 各党ごとに考え方は異なるが、日本共産党以外すべての党から言及されていたのが、緊急事態条項である。審査会で、一つのテーマとして議論することを提案したい。

    長妻 昭君(民主)

    • 個別案件と並行して、大括りなテーマとして権利と義務について議論し、委員間の認識共有を図るべきである。基本的人権は「公共の福祉」のみにより制限されるが、どのような考え方の下でどのような制約がかかるのかについて、委員や政党間で認識が異なっている。その上で、権利で認め過ぎたものや更に認めるべきものの有無、権利が満たされていない場合の国の関与のあり方について議論し、憲法に反映させることが必要である。
    • 「公共の福祉」による権利の制限で許される目的、手法、程度について緻密に議論すべきである。権利を認め過ぎているから義務をもっと課すべきとの抽象論がひとり歩きするのは大変問題である。
    • 明治憲法では、「公共の福祉」による権利の制限ではなかったが、その手法に問題があったのかどうか、その中でなぜ治安維持法のような法律ができて、戦前・戦中の日本が形作られてしまったのかという検証の結果を委員間や政党間で共有することは、立憲主義の上からも重要である。

    北側 一雄君(公明)

    • 憲法は国の根本規範であり、秩序を定めるものである。理念について、各政党で意見の違いが相当あると認識している。国のあるべき姿として、どう憲法を改正していくかは非常に大事であり、理念としてしっかり論議していくことが重要である。
    • 改正国民投票法が施行され、いつでも憲法改正の発議ができる状況にようやくなったが、我々も国民も憲法改正国民投票の経験が全くない。国民投票制度も、実際に投票を行ってみて、課題や問題があれば変えていかなければならない。
    • 具体的に憲法改正をどこから行うかについては、多くの政党、会派が憲法改正をした方がよいと考えるところから議論していくのが現実的である。
    • 私自身は憲法改正をした方がよいと思っている部分がいくつかある。例えば54条1項は、衆議院解散の日から40日以内に衆議院議員総選挙を行う旨規定されているが、大災害が起きたときに衆議院が解散されていた場合、憲法の規定のとおりに選挙をするということでよいのか。国として緊急事態の対処に集中しなければならない局面においてこの規定をどうするか、よく検討した方がよいとかねてから思っていた。まずはスタートとしてそのあたりを議論してはどうか。

    衛藤 征士郎君(自民)

    • 国会のあり方は国政の原点である。衆議院と参議院を対等に統合して一院制にすべきという議員連盟には、衆議院議員が341名も参加しており、これは衆議院の総議員の3分の2を超えている。よって、国会のあり方についても審査会の場で議論すべきである。

    中谷 元君(自民)

    • 衆参のあり方に加えて、議員定数及び配分のあり方も議論すべき時にきている。一票の較差について、司法判断が出ているが、本来は立法府が議論し、判断すべき問題である。
    • 43条の趣旨は、国会のあり方は国民を代表する国会議員で定めることにあると解される。情報化、交通網により人口移動があるのは確かだが、国民の意見を適切に反映するために、単に人口だけではなく、地方の行政区画、交通手段等の条件を要素とすることも考えられ、議員定数・配分、衆参の役割分担、国会の意思決定のあり方について議論することが求められている。

    保岡 興治君(自民)

    • 現行憲法で一番問題なのは緊急事態の規定がないことである。これについては、東日本大震災や今後起こり得る首都直下型地震等もあり、国民共通の課題として受け止められやすく、また受け止めるべきある。
    • 阪神・淡路大震災の際は、公職選挙法を改正することによって地方選挙を延期することができた。しかし、国政選挙は、憲法に衆議院の解散や任期等の規定があり、緊急事態においてもこれに反する法律は制定できない。緊急時において緊急避難的に憲法にないことを行えば、憲法保障を根幹から危うくする。
    • 緊急時において、憲法保障をしつつ的確に具体的な対応を行うことが重要であり、そのための議論を深めることは、緊急時に国家が取り得る体制を整えるための重要なプロセスである。憲法改正の第一歩として、こうしたテーマについて、一つ一つ議論を重ね、絞り込むことや国民が関心を持ち、国家に必要な憲法規定を補完することが重要である。その観点からも、緊急事態についての検討は直ちに取りかかってよい課題といえる。

    三谷 英弘君(みんな)

    • 緊急事態法制については、日本共産党以外は各党賛成しているので、議論を進めていくことに賛成である。
    • 国会のあり方に関しては、一院制も見据えて議論を進めてほしい。また、一票の較差の問題については、現在の選挙制度は国民の声を正確に反映しておらず、民主制そのものの存立にかかわる問題でもあるので、議論する対象に加えていただきたい。

    中谷 元君(自民)

    • 国民の意思をどう量るかについては、議論すべきである。そのために、衆参両院の役割、違いをどう考えるかについて議論する必要がある。米国の上下両院は議員の選出方法に大きな違いがあるところ、それぞれの国において国民がどのように民主主義を形作っていくかという観点からも、議論すべき価値があると考える。

    衛藤 征士郎君(自民)

    • 国権の最高機関である国会議員の選挙結果について、最高裁判所は違憲状態にあるとしている。例えば、立法府において選挙区の最小定数を憲法に規定すれば、憲法違反ではなくなる。現状では選挙ごとに違憲状態が発生する可能性があり、審査会ではこのような点まで踏み込んだ議論をして欲しい。

    古屋 圭司君(自民)

    • 憲法改正手続の緩和について、8党中5党から言及があった。最大公約数なるものからテーマにしていくとして、緊急事態条項の次には96条改正である。審査会は、可能な限り共通点を見出す議論をしてきたところでもあり、その上からも具体的に議論すべきテーマとして提案したい。

    武正 公一君(民主)

    • 会長から「緊急事態条項には、災害だけでなく、国際的なフリクションにどう対応するか、という側面がある」との御発言があった。今回の海外調査の訪問国であるギリシャでは、憲法に緊急事態に関する規定があるが、リーマンショック後、当該規定に基づく大統領令が乱発されたとのことであり、それらの知見も踏まえて議論すべきである。
    • 憲法調査会以来、我々が丁寧な議論・合意形成を積み重ねてきたのも、96条に「3分の2条項」があったためである。この積み重ねは堅持すべきである。
    • Act18という18歳選挙権を目指す会が、本年6月に院内で開催した会合に出席したが、参加した高校生300名のうち、歴史の授業で第二次世界大戦まで習った高校生は3割しかいなかった。歴史に学ばなければ現在・未来は語れない。こうした歴史教育の現実に接し、歴史検証に関する不断の努力が憲法審査会においても必要であると感じている。

    船田 元君(自民)

    • 今日は、各党の憲法に対する率直な考え方について聞くことができ、意義のある会となった。憲法改正に向けて、我々は評論家であってはならず、各条項や項目について立法権者として見識をしっかり持ち、分析をして一歩でも前に進めていくことが重要であると改めて認識した。
    • 憲法調査会以来、議席の多寡はあるが各党とも同じ時間の中で議論してきた。審査会においてもこの手法は尊重されるべきと考える。
    • 今後どのように議論を進めていくかについては、幹事会等でテーマの絞り込みをしていくことになる。その際には憲法全体を俯瞰することが必要であり、個別の議論を重視する余り全体のバランスを崩すことがあってはならない。
    • 多くの委員から出た共通する課題としては、緊急事態、環境権を含めた新しい人権(権利と義務の関係も含む)、国会のあり方(一院制も含めた衆参の役割分担、選挙制度等)、96条があった。9条、集団的自衛権などについては、各党の認識が分かれており、難しい問題である。緊急事態や環境権を含めた新しい人権については、各党の考え方が同じ方向を向いていると感じており、テーマとしてふさわしいかと思う。他の項目についても幹事会において十分議論し、テーマとして取り上げる際には冷静に、客観的に取り組む必要がある。
    • 本日の議論は有意義であり、憲法改正に向け具体的な第一歩を踏み出せるかというところまで来たと思う。本日の議論を踏まえて、今後の審査会及び幹事会での議論を進めたいと思うので各党の理解・協力をお願いする。