平成26年11月19日(水)(第3回)

◎会議に付した案件

日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件

盛岡地方公聴会(平成26年11月17日開催)の派遣報告を聴取した。

報告者 武正 公一君(民主)

◎武正副団長による盛岡地方公聴会の派遣報告

団長にかわり、派遣委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

派遣委員は、保利耕輔会長を団長として、幹事船田元君、幹事中谷元君、幹事馬場伸幸君、委員浜地雅一君、委員西野弘一君、委員三谷英弘君、委員笠井亮君、委員鈴木克昌君、それに私、武正公一を加えた10名であります。

なお、現地において、階猛議員が参加されました。

地方公聴会は、11月17日、盛岡市のホテルメトロポリタン盛岡NEW WINGにおいて、「改正国民投票法の施行を受けて、これからの憲法審査会に望むこと」をテーマとして開催し、まず、保利団長からこれまでの本審査会の活動経過及び今回の地方公聴会開会の趣旨の説明、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事運営の順序を含めて挨拶を行い、私からは憲法改正手続の概要及び本年6月に成立、施行された憲法改正国民投票法の改正法の概要についての報告を行った後、東北大学大学院法学研究科教授・糠塚康江君、弁護士・小笠原基也君、宮城県議会議員・相沢光哉君、岩手県生活協同組合連合会会長理事・加藤善正君及び日本大学名誉教授・小林宏晨君の5名から意見を聴取いたしました。

各意見陳述者の意見内容につきまして、簡単に申し上げますと、

糠塚君からは、

  1. 憲法改正の内容面においては、改正に限界があることは96条2項が示しており、合憲性が確保できないような改革を国民が望む場合には、憲法改正の機運が自ずから盛り上がると考える、
  2. 憲法改正の手続面においては、憲法改正を発議する国会議員を選出する有権者団と憲法改正の国民投票権者団は一致すべきであり、発議と国民投票の手続的一体性に鑑み、投票権年齢と選挙権年齢は優先的に合致させるべきである、そして、投票権年齢等の18歳引下げに伴い、政治参加教育の充実が必要である、
  3. 最低投票率制度の導入を検討すべきである、
  4. 国民投票に先行して国会が憲法改正案について議員同士の討論と説得を通じて熟議し、その過程を国民に発信することが重要である

との意見、 小笠原君からは、

  1. 改正国民投票法は選挙権年齢引下げを制定法附則で定めた期限内に行わず、最低投票率等の課題も議論していないため、一度廃止して審査会で再議論すべきである、
  2. 憲法審査会は、憲法の基本理念が改正で破壊されないよう擁護すべきである、
  3. 憲法審査会の今後の活動としては、本当に憲法改正の必要があるのか、単に立法政策上の問題に過ぎないのかを調査すべきであるとともに、集団的自衛権行使容認のための法制度など、憲法に密接に関連する法制についても憲法違反の疑義がないか十分調査を行うべきである

との意見、 相沢君からは、

  1. 改正国民投票法の施行を受け、憲法審査会は速やかに憲法改正に向けた行動をとるべきである、
  2. 前文は我が国の歴史・伝統・文化を踏まえたものとし、天皇は元首と規定すべきである、
  3. 9条1項は改正せず、2項に軍隊の保有と自衛権行使を明記すべきである、
  4. 憲法改正における国会の発議要件を5分の3に緩和するほか、緊急事態条項、家族、環境権、地方自治の本旨等について規定すべきである、
  5. 個別発議・個別投票の原則があるとしても、憲法の全文改正ができないことは問題であり、全文改正を行ってこそ申し述べた問題を解決することができる

との意見、 加藤君からは、

  1. 96条先行改正論や集団的自衛権の行使容認が閣議決定で強行されるような状況に国民は不信感を抱いており、現状では憲法改正を求める国民の声は少数である、
  2. 改正国民投票法は、投票権年齢と選挙権年齢や成人年齢との整合性がとれておらず、最低投票率の定めもない等、重要な点があいまいになっている、
  3. 憲法改正よりも、憲法が保障している「人権」が侵されている状況の改善、被災者に対する住宅再建等の支援などの立法政策を優先すべきである

との意見、 及び小林君からは、

  1. 集団的自衛権の行使を可能にするため、憲法の文言の変更なしに憲法規範の意味を本質的に変更する「憲法の変遷理論」を裏付けとすべきである、
  2. 憲法の不可欠な構成要件である「事情変更の原則」は「憲法の変遷」によっても実現されることは、自衛隊創設による再軍備の方向付けを見ても明らかである、
  3. 本年7月1日の閣議決定で集団的自衛権の適用可能性を容認したことにより、政府の9条解釈は慣習一般国際法と国連憲章に近付いた

との意見がそれぞれ開陳されました。

意見の陳述が行われた後、各委員から、憲法改正の発議要件の在り方、東日本大震災への対応を踏まえた緊急事態条項創設の必要性の有無、学校における憲法教育・政治教育充実の方策、環境権を規定する場合の規定の仕方、最低投票率制度導入の是非、今後の憲法審査会で取り上げるべきテーマ、本年7月1日の集団的自衛権行使容認に係る閣議決定に対する評価などについて質疑がありました。

なお、会議の内容を速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと思います。また、速記録ができ上がりましたならば、本審査会議録に参考として掲載されますよう、お取り計らいをお願いいたします。

 以上で報告を終わりますが、今回の会議の開催につきましては、関係者多数の御協力により、円滑に行うことができました。

ここに深く感謝の意を表する次第であります。

以上、御報告申し上げます。