平成13年3月8日(木)(第3回)

◎会議に付した案件

 日本国憲法に関する件(21世紀の日本のあるべき姿)

  上記の件について参考人孫正義君から意見を聴取した後、質疑を行った。

(参考人)

  ソフトバンク株式会社代表取締役社長   孫 正義君

(孫正義参考人に対する質疑者)

  伊藤 達也君(自民)

  細野 豪志君(民主)

  小池 百合子君(保守)

  藤島 正之君(自由)

  春名 直章君(共産)

  大島 令子君(社民)

  斉藤 鉄夫君(公明)

  近藤 基彦君(21クラブ)


◎孫正義参考人の意見陳述の要点

はじめに

  • 人類は、「農業革命」、「産業革命」を経て、現在「情報革命」の時代にある。
  • 「情報革命」の時代において、プロセッサー(中央処理装置)の素子数の増加、脳型コンピューターの開発等によりコンピューターの能力が人間を超える可能性がある。機械に使われるのではなく、人間が機械を使いこなすことが大切である。
  • アジアにおいて、高速インターネット網の整備が進んでいるが、この点において、日本は決定的に遅れており、規制緩和、競争の促進により、高速インターネット網を早急に整備すべきである。

21世紀の憲法

21世紀の憲法は、IT革命やグローバル化を前提として制定されるべきであり、その際には、以下の点が重要である。

  • インターネットの普及に対応し、憲法に、情報に自由・平等にアクセスできるネット・アクセス権を規定するとともに、プライバシー保護の権利を保障すべきである。また、コンピューター・ウィルスやハッカーによるインターネットへの攻撃の危険が現実的なものとなっており、ネット・セキュリティの確立を図る必要がある。
  • インターネットを活用した電子投票制度を導入し、大統領制のような国民が直接リーダーを選出する制度を実現すべきである。また、投票を事実上義務化し、18歳以上の国民に投票権を付与すべきである。
  • 我が国は、国連軍のような集団安全保障に参加し、紛争の解決はそれに委ねるべきである。ただし、侵略を受けた場合の自衛権の行使は当然認められる。
  • 国連の安全保障理事会の常任理事国入りを果たしたり、世銀、IMF等を通じ、エネルギー問題や温暖化問題等の世界的な問題の解決に向け積極的なリーダーシップを発揮したりすることで、国際社会へ積極的に貢献すべきである。
  • 将来の人口減少による経済の停滞が予想される中、我が国に役立つ人材を獲得するため、国籍取得の要件を緩和する等、積極的に移民の受入れを図っていくべきである。
  • ベンチャー企業にも平等な機会を与えるため、いかなる独占企業も認めないことを憲法に明記すべきであり、独占禁止法の運用の徹底を図るべきである。


◎孫正義参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

伊藤 達也君(自民)

  • IT戦略本部が発表した“e-Japan”計画をどのように評価しているか。
  • 規制の見直し及び市場独占の排除により、民間主導に基づく競争政策を体系化していくべきであると考えるが、いかがか。
  • 欧米とアジアとの思想的・歴史的背景の差違を考慮した上で、欧米におけるIT社会の在り方とアジアにおけるIT社会の在り方は、同質のものと考えるか、それとも、異なったものと考えるか。
  • 21世紀における憲法を考えるに当たって、基本原理として付け加えるべきものは何か。
  • 国際的にもIT社会が進展していく中で、韓国、アメリカ等との二国間関係の在り方について、どのように考えるか。

細野 豪志君(民主)

  • IT革命を推進するに当たって、日本は、民間の競争に委ねるよりも官主導の立場に立っているように思うが、このような施策をどのように評価しているか。
  • 情報アクセス権やプライバシー権を憲法に明記することによって、どのような利点や効果があると考えるか。また、IT問題は世界レベルでの問題であるため、情報分野に係る国際法の制定等も視野に入れるべきと考えるが、いかがか。
  • 選挙運動に際してのインターネットの活用については、公職選挙法上、一定の規制がある。金のかからない選挙や政策等の広範囲にわたる伝播を実現するために、このような規制を撤廃すべきと考えるが、いかがか。
  • 国籍取得要件の緩和を実現した場合であっても、定住外国人に対する地方参政権の付与を図ることが必要であると考えるが、いかがか。

小池 百合子君(保守)

  • 参考人が、永住外国人に対して地方参政権を付与するよりも、国籍取得要件の緩和を優先すべきと主張する理由は何か。
  • IT革命は国民の政治参加の態様にも変化をもたらすと考えるが、参考人は、今後、政治に何を期待するか。

藤島 正之君(自由)

  • IT社会を発展させるためには、まず、多くの規制を撤廃することが必要と考えるが、いかがか。
  • ベンチャー企業を育成するためには、どのような資本市場の改革が必要と考えるか。また、ベンチャー企業に対する国の助成はどのようにあるべきか。
  • コンピューター・ウィルス対策は一国で措置すれば済む問題ではなく、世界が共同して対策を講じる必要があると考えるが、いかがか。

春名 直章君(共産)

  • 来年度のIT関係予算のほとんどが、地下に情報通信網を整備するための国土交通省所管の予算となっているが、これは有効な使い道と考えるか。
  • 今後、電子商取引等が活発になってくると、個人情報の保護、消費者の保護等が必要不可欠になってくると考えるが、いかがか。
  • IT革命は雇用を創出する面がある一方で、効率性の向上により失業者の増加も懸念されるが、アメリカのようにこれを雇用の拡大に結び付けていくためには何をすべきか。

大島 令子君(社民)

  • 参考人は、軍事力の行使に関しては日本は国連軍にのみ参加すべきとの考えだが、日本は軍隊を持つべきという立場なのか。
  • IT技術を平和のために利用するにはどうすればいいか。
  • 裁量労働制の全面的な導入により、職場での長時間労働や賃金水準の低下が問題となっているが、このような状況について、参考人は、経営者としてどのような認識を持っているか。
 

斉藤 鉄夫君(公明)

  • IT技術の進歩により、機械が人間に取って代わる危険さえ予想されるが、生命倫理、情報倫理について何らかの対策が必要ではないか。
  • IT社会の進展は、必然的に国民間のデジタル・デバイド(情報格差)を招来するが、それを是正する福祉政策をどのように講じればよいか。
  • 参考人は「大統領制」を主張しているが、国民が直接リーダーを選出できる制度であれば首相公選制のような制度でもよいという考えか。
 
 

近藤 基彦君(21クラブ)

  • インパク(インターネット博覧会)についてどう評価しているか。
  • ITに関するインフラ整備は、官と民間のどちらが中心となって行うべきか。また、民間主導にすると、僻地では十分な整備がなされないのではないか。
  • コンピューター・ウイルス対策やプライバシー保護対策を講じるには、ITに関する国際的な憲章を作り、それを踏まえて国内法制を整備することが必要ではないか。