平成15年1月30日(木)(第1回)

◎会議に付した案件

1. 幹事の辞任及び補欠選任

  補欠選任 平林鴻三君(自民) 西田 司君(自民)委員辞任に伴いその補欠

       古川元久君(民主) 中川正春君(民主)幹事辞任に伴いその補欠

2. 小委員会設置に関する件

最高法規としての憲法のあり方に関する調査小委員会、安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会、基本的人権の保障に関する調査小委員会、統治機構のあり方に関する調査小委員会を設置することに、協議決定した。

3. 参考人出頭要求に関する件

小委員会における参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。

4. 日本国憲法に関する件

現在の国際情勢と国際協力、特にイラク問題・北朝鮮問題について自由討議を行った。なお、中山会長から、今回の自由討議において、特にイラク問題、北朝鮮問題をテーマとする趣旨について、発言があった。


◎自由討議における各委員の発言の概要(発言順)

●各会派一巡目の発言

中川 昭一君(自民)

  • 我が国は、国際紛争を自国のこととして主体的に捉えるという国際感覚に欠けている。今後、「他人事でない国際貢献」を行うに当たっては、集団的自衛権に対する考え方を整理すべきである。
  • イラク問題については、法的な問題と外交戦略上の問題とを区別して考えるべきである。法的問題については、これまでのような対症療法によるのではなく、PKO等の自衛隊の海外での活動を本来的な任務と位置づけるため、自衛隊法を改正すべきである。
  • 北朝鮮による拉致問題は、我が国の主権を侵害する国家犯罪であり、重大な人権侵害である。個人的な見解として、拉致被害者全員の帰国、原状回復、補償を求める。
  • 我が国は、北朝鮮の持つミサイルに対し迎撃装備を保有しておらず、また、これまでの憲法や安全保障に対する考え方では我が国の安全は確保できない。北朝鮮の核兵器とミサイルの脅威にさらされたまま、また、拉致問題が解決されないうちに、国交正常化や経済協力を行うべきでない。
  • 国の主権を守ることは、外からの侵害に対し国民の人権を守ることの前提である。また、自国の安全保障の確立なくして真の国際貢献はあり得ない。このことから、憲法や自衛隊法の改正等を行うべきである。


島 聡君(民主)

  • 1999年に決定された民主党の安全保障政策に基づき発言する。
  • 米国はイラクに対し先制攻撃を辞さないと表明しているが、国際法や政府見解で示されている個別的自衛権行使の3要件に照らし、先制攻撃が国際的にどのような影響を及ぼすかを検討する必要がある。また、我が国は、テロに対し毅然とした対応を示した上で、イラク攻撃には慎重な態度をとるとともに、国連決議の必要性を訴えるべきである。
  • 民主党の安全保障政策においては、国連決議に基づく武力行使を伴う多国籍軍は、指揮権が各国にあることや参加の選択が各国に委ねられていることから、これへの参加は、「国権の発動」でないとは言えず、9条の下では許されないと考える。他方、国際治安活動に対する後方支援や国連のPKO活動には、積極的に参加すべきであると考える。
  • 北朝鮮のNPT(核兵器の不拡散に関する条約)脱退表明や核関連施設の再稼働、核ミサイルは、我が国の脅威である。個別的自衛権の行使がいつの時点で可能なのかについては、去る1月24日の予算委員会における末松議員の質疑において、議論がなされたところである。
  • 集団的自衛権の行使を認めるとしても、憲法解釈により安易に認めるべきでなく、憲法改正によるべきである。
  • 小泉総理は、先制攻撃に対する見解を問われたのに対し、仮定の問題であるので判断を差し控えると発言したが、安全保障政策は仮定の下での議論が必要であり、その際生じる憲法問題は、憲法調査会で整理すべきであると考える。


赤松 正雄君(公明)

  • 昨日、公明党が英国駐日大使を招いてイラク問題について懇談をした際、大使から、「イラク攻撃に際しては国連決議があるのが望ましいが、時間的な制約もあり、決議が不可能な場合は、各国は自国の責任において対処するしかない」との見解が表明されたのに対し、我が党からは、「英国は米国に対し、よき同調者ではなく、歯止め役として適切な助言を行うべきである」との意見が相次いだ。
  • 公明党は、我が国の領域においては自衛権に基づく実力行使は可能であるが、他国の領域における武力行使は許されないとの立場をとっており、また、今後もその立場を堅持すべきと考えている。
  • 湾岸戦争後、安全保障問題については、周辺事態法、船舶検査法、対テロ特措法等の法整備が図られてきたことに対し一定の評価をするが、さらに有事法制の整備を行うべきであると考える。
  • 国際平和への貢献の観点からは、多国籍軍への協力が残された課題である。昨年12月18日の国際平和協力懇談会(明石康座長)による、国連決議で派遣される多国籍軍への協力について一般的な法整備を検討すべきとする提言を高く評価する。また、いわゆるBタイプの武器使用(PKOの任務遂行に対する実力を伴う妨害を排除する場合の武器使用)について、政府は9条との関係から問題があるとするが、同提言ではこれを可能とすべきとされており、これに対する検討が当面の課題であると考える。


武山 百合子君(自由)

  • 国民の生命、財産、自由等を守ることは国家の責任であり、テロや災害を含む非常事態に関する規定を憲法に設けるべきである。自由党は、非常事態に関する憲法規定の不備を補うため、また、安全保障の原則や自衛行動の原則を確立しこれを内外に示すために安全保障基本法を制定すべきとの立場から、法案を提出している。
  • 自由党は、(a)憲法の理念に基づき、武力による急迫不正の侵害に限り、武力による阻止・反撃を行うことができ、それ以外の場合には、個別的であると集団的であるとにかかわらず自衛権の名の下にいかなる武力行使・武力による威嚇も行わない、(b)我が国は日米安保条約を堅持し、アジア太平洋地域の要として信頼を高める一方で、自国の防衛力を整備する、(c)平和活動に関する国連決議がある場合には、これを尊重し、その活動に積極的に参加をする、という3点を主張している。
  • イラク問題については、安保理決議1441は武力行使を容認するものではなく、今後もイラクの査察を継続し、事実の検証に努めるべきである。また、米国が同時テロに対してアフガンを攻撃した際に行われたような自衛隊による後方支援は、集団的自衛権の行使に当たると解され、自衛隊を派遣するのであれば、政府が集団的自衛権の行使に関する憲法解釈を変更した上で、これを行うべきである。なお、イラク攻撃については、武力行使容認決議がない限り、我が国は協力すべきではない。
  • 北朝鮮のNPT脱退宣言は国際ルールに反することであり、容認できない。我が国は、北朝鮮によるNPT脱退宣言の撤回、核開発計画の放棄、核査察の受入れの要求を内容とする国連決議を求めるとともに、安全保障面からあらゆる事態に備えるべきであると考える。


春名 直章君(共産)

  • 今国会において四つの小委員会が設置されたが、各小委員会の調査テーマ等は最終報告書の提出に向けて決定されたものであり、憲法の運用実態に関する多面的かつ多角的な調査を可能とするものであるかは疑問である。
  • イラク問題については、米国による武力行使は認められず、査察の継続や経済制裁等の非軍事的措置による平和的な解決に努力することを原則とすべきである。
  • 我が国によるイージス艦のインド洋への派遣は、中東諸国及びその周辺国の我が国に対する友好的なイメージを破壊するものであり、また、平和憲法に反する行為であることから、イージス艦は即時撤退させるべきである。
  • NPTは、条約自体に核保有国を優遇するなどの問題があるが、北朝鮮のNPT脱退宣言は、国際的な取決めを遵守するとする平壌宣言に反しており、我が国は、唯一の被爆国として脱退宣言の撤回や核開発計画の放棄を求めるべきである。


金子 哲夫君(社民)

  • イラク問題は国連を中心に解決を図るべきであるが、我が国は、問題解決を国連任せにするのではなく、憲法前文及び9条の趣旨を踏まえて、加盟国として軍事行為の回避のために働きかけをすべきである。
  • 我が国は被爆国としての経験を踏まえた役割を果たすべきであるとの考えから、社民党は、核兵器の保有に反対し、その廃絶を訴えている。また、北朝鮮のNPT脱退は危険な行為であり、朝鮮半島の非核地帯化に全力で取り組む決意である。
  • 核兵器の保有については、9条解釈の問題である以前に、核兵器の非人道性を根拠として、憲法上その保持は許されないものであると考える。
  • 我が国は、米国の核政策に追随するのではなく、厳しい姿勢で臨むべきである。また、非核三原則を法制化すべきであると考える。


井上 喜一君(保守新党)

  • 国際社会に対する日本の対応の在り方を議論する前提として、(a)日本の非武装化を図る占領軍の政策及び国際関係への参画に消極的であった日本の政策に基づき、十分に議論を尽くすことなく憲法が制定されたこと、(b)敗戦直後と異なり、現在、日本は国際社会において応分の責任及び役割を担うべき立場にあることを踏まえる必要がある。
  • その上で、国益を擁護するという観点から、イラク問題、北朝鮮の核兵器開発問題、国際化するテロ問題等への対応について、憲法調査会において、制度整備の問題も含めて考えていく必要がある。
  • 国際情勢が急激に変化していく現状にかんがみれば、その変化に柔軟に対応できるよう、9条をはじめとする政府の憲法解釈の変更を考えるとともに、憲法改正をも視野に入れた上で、憲法を自前のかつ生きたものとしていく必要がある。


●各会派一巡後の発言

【イラク問題及びこれに関連する諸問題について】

葉梨 信行君(自民)

  • 憲法制定当時に比べ情勢が大きく変化していることを踏まえれば、現在は、日本一国だけで自国の安全が確保できる時代ではなく、その意味で、国際紛争に係る国際貢献を「他人事の国際貢献」ととらえるべきではないとする中川(昭)委員の意見は極めて適切な指摘である。
  • 戦後50有余年間、日本の平和が維持されてきた要因は、日米安保条約の存在にあると考えるが、共産党及び社民党の委員は、どのように考えるか。また、約130ヶ国の憲法において平和主義が規定されているにもかかわらず紛争が絶えない現状にかんがみれば、前文及び9条の理念だけで国家の安全、独立等を確保することは困難と考えるが、いかがか。
  • 米国の独自調査によってイラクの大量破壊兵器開発が事実であることが証明された場合、共産党の委員は、どのように対処すべきと考えるか。
  • 社民党の委員は、拉致問題について、どのような見解を持っているか。


>春名直章君(共産)

  • 前文や9条に示される平和主義と平和を希求する国民の努力こそが、戦後50有余年間の平和に大きく貢献してきたと考える。
  • ベトナム戦争において在日米軍基地がどのような形で使用されていたのかを考えれば、日米安保条約と憲法とは矛盾する。
  • イラク問題については、国連決議に基づいた平和的解決に向けた努力が必要である。米国は、有するすべての証拠を国連に提出して協議を行うべきであり、武力行使を前提とする対処は危険であると考える。


>金子哲夫君(社民)

  • 戦後50有余年間日本が戦争に巻き込まれなかった要因は、憲法の掲げる平和主義にあると考える。
  • 日米安保条約は、戦争の発生を前提としたものであり、他方、前文及び9条は、戦争を発生させない努力を紛争解決に係る理念として先駆的に掲げたものである。
  • 北朝鮮による拉致問題について、社民党は、犯罪行為と認定するとともに、その真相究明を要求しているところである。人権は擁護されるべきと考える。


首藤 信彦君(民主)

  • 現行憲法は日本が国際社会の平和を乱さないことを企図して制定されたものであるため、冷戦後、国際社会が不安定化する中で、国際の平和の構築・維持に向けて日本が主体的な努力をどのように実践していくかが、現行憲法には実体化されていない。このことが、PKO、ODA等に十分な対応ができていない原因であると考える。
  • 9条により日本の軍事活動が制限されているにもかかわらず在日米軍基地が存在する現状にかんがみれば、日本は、他国等からの攻撃対象となるおそれがある。日本が攻撃を受けた場合の対応が現行憲法には示されていないことから、脅威に対する基本的な対応を定める安全保障基本法を制定すべきである。
  • 難民問題をはじめとする国際社会全体の問題について、主体的に関与するとともに、「助け合い」の精神が重視されるべきである。また、この「助け合い」の精神を憲法に明文化すべきである。


赤松 正雄君(公明)

  • 憲法と日米安保条約の両方が戦後における日本の平和を守ってきたのであって、両者は矛盾するものではない。
  • PKOへの参加について、平和協力の現場で必要とされてきている広範にわたる協力を実践していくことが前文及び9条に掲げる精神に合致するものであると考えるが、PKO法の制定に反対した共産党及び社民党の委員は、現在、どのように考えるか。


>山口富男君(共産)

  • イラク問題をめぐる米国の武力攻撃を前提とした対応は、国連の志向する紛争解決の在り方に動揺を与えるものであり、その意味で、各国が米国の武力攻撃に反対の意を表明していることは当然である。
  • 基地問題等を踏まえれば、憲法と日米安保条約とは矛盾する。
  • PKOについては、その活動自体を一切否定するものではないが、実際のPKOが、国連憲章の精神にのっとって行われているかを検証する必要がある。いずれにしても、日本が軍事面でPKOに参加することには反対である。


>金子哲夫君(社民)

  • 在日米軍基地が米国の武力行使に際し使用されてきた事実にかんがみれば、憲法と日米安保条約とは矛盾するものであるため、日米安保条約を廃棄すべきである。
  • PKOについては、活動自体を否定するものではないが、前文及び9条により日本のPKO参加が非軍事分野に限定されていることにかんがみ、PKO法に基づく自衛隊の海外派遣や、紛争にまきこまれるおそれを増大させる武器使用の拡大に反対するとともに、自衛隊とは別の組織を創設して参加させるべきである。


葉梨 信行君(自民)

  • PKOに対しより積極的な協力を図る観点から、具体的な参加の在り方を考えるべきである。
  • 共産党の委員は、イラクによる大量破壊兵器開発が事実であることが証明された場合であっても、制裁措置は認められないと考えるか。


>山口富男君(共産)

  • イラクによる大量破壊兵器開発が事実であるか否かの判断及びその後の措置の決定は、国連がなすべきである。また、その事実の証明は、直ちに武力行使を認めるものではなく、まず、大量破壊兵器を廃棄させることを考えるべきである。


仙谷 由人君(民主)

  • 米国の先制攻撃及びフセイン政権打倒を掲げての主権国家たるイラクへの武力攻撃には、国際法上の根拠が存在しないと考えるが、各委員は、このような国際法上の問題を踏まえた上で、イラク問題にどのように対処すべきと考えるか。
  • イラクによる大量破壊兵器開発が事実であるとしても、それに係る判断及び決定は、国連がなすべきものである。国連がイラクの違反行為を認定し、これに対する強制的な措置を決定した場合には、たとえ武力行使を伴うようなものであっても、日本は、応分の協力をすべきであると考える。


島 聡君(民主)

  • 米国はイラクに対して先制攻撃も辞さないと表明しているが、国連憲章では自衛権発動の要件が限定的であること等との関係で、先制攻撃の是非について、与党はどう考えるのか。、先制攻撃が許されるとするなら、国連による国際紛争解決の秩序を崩壊させ、国際社会における法の支配が空洞化するのではないか。
  • 春名委員によれば、日本はこれまで平和憲法により平和が維持されてきたとするが、その論理構成はどのようなものか。


中川 昭一君(自民)

  • 米国は、これまで、2001年1月の一般教書演説でのイラク批判、イラクに対する大量破壊兵器開発に係る査察の受入れ要求等さまざまな手順を経ており、先制攻撃をするとは考えられない。
  • 政府は、日本がなぜ米国に協力的であるのかを国民にもっと分かりやすく説明する必要がある。

(平和憲法により平和が維持されきたとする論理構成に関する島委員の質問に対して)

>春名直章君(共産)

  • 日本がこれまで平和であったのは、9条及び前文が単に理念を述べるものではなく、軍事大国化に対する歯止めや平和運動、戦争への不参加等に対する現実の力となったからである。日本は、今後も平和外交に徹するべきである。


大出 彰君(民主)

  • 元米国司法長官のラムゼー・クラーク氏は、安保理に送った公開書簡の中で「イラクは、湾岸戦争時に多くの軍事施設等が破壊され、また、大量破壊兵器を保有しているという確証はなく、イラクが平和の脅威となっているとは考えられない等の理由から、イラクに対する武力攻撃には根拠がなく、国連も米国も平和を追求するべきである」との考えを明らかにしているが、私もその考えに同感である。また、侵略行為等が行われていない今回のケースにおける安保理決議1441の採択には、十分な根拠がないと考える。


今野 東君(民主)

  • イラク攻撃が行われた場合、日本がこれに協力することは、たとえ後方支援であっても憲法上許されない。イラクに対する査察を継続する過程において、その危険性等まで判断するための情報を収集する能力を持っていないことこそが、日本にとって問題である。


北川れん子君(社民)

  • パキスタンを訪問した際、市民との対話の中で、武力攻撃への協力は、たとえそれが後方支援であっても軍事行動であるとみなされることを認識した。日本は、積極的平和主義の観点から、「良心的軍事拒否国家」となるべきである。
  • 中川(昭)委員に伺いたいが、なぜ、日本は米国に協力すべきと考えるのか。また、なぜ、米国はイラクに対し先制攻撃をしないと確信するのか。


>中川昭一君(自民)

  • 米国は、これまでイラクに対し査察の受入れを要求する等さまざまな手順を踏み、また、国連、同盟国との話し合いを重視しており、先制攻撃をするとは考えられない。
  • 日本は、イラク問題を自国とは関係のない問題と捉えるのではなく、問題解決のために何ができるかを検討するべきである。


杉浦 正健君(自民)

  • 民主党の島委員に伺いたいが、イラク問題に関し、安保理が湾岸戦争時と同様の武力行使容認決議を採択した場合、日本がとるべき対応について、どのように考えているのか。


>島聡君(民主)

  • 私は、民主党の政策を統括する立場にないが、イラク攻撃を容認するには、少なくとも国連の決議が必要であると考える。その上で、イラク攻撃に対する日本の協力は、9条に照らし、武力行使に当たらない範囲内で行うべきであると考える。


末松 義規君(民主)

  • イラク攻撃を容認する安保理決議がなされた場合、日本は武力行使に当たらない範囲内で協力すべきであるということで、概ね意見の一致を見出し得る。
  • テロに対する武力行使は、果たして9条において「国際紛争を解決する手段として」禁止される武力行使に該当するものであるのか、また、北朝鮮からミサイルで攻撃された場合、自衛権の範囲内で何ができるかについて検討する必要がある。

【北朝鮮問題及びこれに関連する諸問題について】

伊藤 公介君(自民)

  • イラク問題も重要であるが、日本にとっては、北朝鮮問題の方がより深刻である。
  • 今日、テロや国際紛争により国家は瞬時にして危機にさらされる可能性があるので、いつの時点で武力攻撃が発生したと考えるか等、自衛権行使の3要件についての具体的な検討が必要である。その上で、国家が危機にさらされる事態に対し、どのように情報を収集して対応するかを考え、これを国民に知らせるのが平和と安全に責任を持つ国会議員の責務である。


金子 哲夫君(社民)

  • 政府は、憲法上は自衛のための必要最小限度にとどまるものであれば核兵器の保有もできると考えているようであるが、核兵器の非人道性にかんがみれば、すべての国について核兵器の保有を禁止すべきであると考えている。公明党の赤松委員に核兵器の保有についての認識を伺いたい。


赤松 正雄君(公明)

  • 公明党は、非核三原則に基づき日本が核兵器を「持たず」「つくらず」ということを堅持すべきことを主張するだけではなく、諸外国に対しても、「持たせず」「つくらせず」「持ち込ませず」という核兵器廃絶に向けての積極的な働きかけを行うという姿勢を明確にしている。


中川 昭一君(自民)

  • 北朝鮮の核の問題は、国際社会において日本と諸外国に共通の問題である。これに対して、北朝鮮による拉致の問題は、日本の主権、日本国民の基本的人権を直接に侵害する重大な問題であり、きちんとした対応が必要と考える。そのことを踏まえて、拉致問題についての共産党と社民党の委員の意見を伺いたい。


>春名直章君(共産)

  • 共産党は、北朝鮮による拉致は、国家犯罪であり、絶対に許されないものと考えており、被害者への補償や事実の究明が重要であると考えている。また、共産党は、1988年3月以降、国会においてもたびたび拉致問題を取り上げ、1999年の本会議では、交渉ルートを開くことを通じて拉致問題の解決に努力すべきことを主張した。なお、拉致問題については、現在、政府が交渉中であり、拉致に係る個々の問題について不十分な情報に基づいて発言することは、交渉を妨げるおそれがあると考え、発言を控えている。
  • 北朝鮮に対しては、敵対ではなく友好の立場に立ちつつ、相手が無法国家であるからこそ、理性をもって包括的な対処をすることが必要である。


>金子哲夫君(社民)

  • 北朝鮮による拉致は、国家犯罪であり、人道上からも許されるものではない。今後とも真相究明に努めていく必要があると考えている。
  • 我が党と朝鮮労働党との関係については、現在、朝鮮労働党に対し、拉致問題について書簡を送り、明確な回答がない限り、関係を凍結することとしている。なお、90年代の日本と北朝鮮の交渉・交流には、我が党のみならず自民党を含め他の党の議員も参加していた。また、拉致問題を行方不明者の問題として解決を図ろうとする当時の考え方も各党議員に共通だったものであり、我が党のみのものではなかった。
  • 拉致問題については、平壌宣言を踏まえ、交渉を通じて早期に解決すべき問題であると考えている。


中川 昭一君(自民)

  • 共産党が国会において最初に拉致問題を取り上げたのは否定しないが、いわゆる日本人妻を含め北朝鮮に多くの人を送った「帰還運動」の中心となったのは共産党である。北朝鮮が日本において現在も行っているさまざまな不法行為や人権侵害に対応するための必要な法律の改正に対し、共産党や社民党は賛成するのか。


>金子哲夫君(社民)

  • 北朝鮮の不法行為等に対応するための法律改正の必要性については、その法律の内容を見ないと意見を言うことができない。そもそも、現在の国内法による適切な対応を考えるのが先決なのではないか。


>中川昭一君(自民)

  • 北朝鮮の不法行為等に対応するためには、現行の法体系では不十分であるということが大前提である。そもそも、拉致問題の存在を否定し、現行法による適切な対処を妨げてきたのは、社民党ではないのか。


古川 元久君(民主)

  • 先日スイスのダボスで開かれた国際会議に出席したが、専らイラク問題のみが話題となり、北朝鮮問題についてはほとんど関心が持たれていなかった。北朝鮮の核問題は、国家の安全保障に大きな影響を与えるものであり、また、拉致は、重大な人権侵害の問題である。このような北朝鮮の問題が国際社会全体で取り組むべき問題として認識されるよう、日本として努力すべきである。
  • 今後は、国際協調の枠組みを日本が主体的に創る努力をすべきであり、そのことが憲法の精神にも合致すると考える。


桑原 豊君(民主)

  • 北朝鮮は、平壌宣言において、さまざまな障害を乗り越えて国交正常化に向け交渉しようという態度を示す一方で、核開発の継続を表明し、NPTを脱退するという、平壌宣言とは明らかに矛盾する行動に出た。この行動は、北朝鮮が、危機的状況にある国家体制の維持を図るために、米国を念頭に置いた瀬戸際外交を行っていることの結果であると考える。
  • この問題については、関係6カ国(中国、ロシア、北朝鮮、韓国、日本、アメリカ)が北東アジアの平和を保障する観点から、北朝鮮の体制維持等に配慮しつつ協議していくべきであり、その中において、日本は、外交努力を通じて、積極的役割を果たすべきである。


山口 富男君(共産)

  • 在日朝鮮人等の北朝鮮への帰国事業は、当時の自民党や社会党の議員も積極的に賛成し、1959年には閣議了解まで行われたものであり、共産党だけが積極的にこの事業を推進したとの中川(昭)委員の批判は当たらない。また、帰国者に対するその後の非人道的な扱いについての責任は、専ら北朝鮮の政権にあるものと考える。
  • 桑原委員が述べたように、北東アジアの平和と安全のためには、関係6カ国が外交努力を行うことが重要である。この中で、日本としては、ルールを破る北朝鮮を国際社会の一員とするために、道理をもって交渉に臨むべきである。


中川  昭一君(自民)

  • 日本としては、平壌宣言を尊重している。しかし、クアラルンプールで再開された日朝国交正常化交渉は結局物別れに終わり、拉致問題に関して156項目からなる質問状についても回答はないという状態である。北朝鮮はルールを無視する国家であることを認識し、それを踏まえて交渉を進める必要があるのではないか。


島  聡君(民主)

  • 各委員の間で活発な自由討議が行われているが、北朝鮮問題をめぐる憲法問題として、自衛権の発動要件に関する議論をすべきである。「武力攻撃の発生」の要件について、政府の中枢が一撃で破壊されたような場合に、誰がどのようにして判断していくのか、また、サイバーテロの発生をどの段階で認定するかも問題となろう。
  • 政府見解では、いわゆるBタイプの武器使用(PKOの任務遂行に対する実力を伴う妨害を排除する場合の武器使用)について、9条に違反するおそれがあるとしているが、この点についても議論すべきである。


葉梨  信行君(自民)

  • 国家が軍事力を保有することを否定するという北川委員の発言の真意は、どのようなことか。


>北川 れん子君(社民)

  • 「良心的軍事拒否国家」という考えから、国家の保持する軍事力は次第に縮小していくべきであるという立場をとっている。


葉梨  信行君(自民)

  • 北川委員に伺いたいが、社民党は、北朝鮮と長く友好関係にあったが、今までに、北朝鮮の有する日本を凌ぐほどの強大な軍事力を縮小するよう求めたことはあるのか。


>北川 れん子君(社民)

  • 社民党は、2001年の「21世紀の平和構想」において、北東アジアの非核化に向けての提言を行ってきている。
  • 北朝鮮と日本の軍事力について言及があったが、日本の軍事力は世界第2位であり、その事実を客観的に見つめるべきである。


金子  哲夫君(社民)

  • 中川(昭)委員からは、拉致問題をめぐる社民党の対応について批判がなされたが、社民党が拉致がなかったという公式見解を出したことはない。また、90年代には、不十分ながらもこの問題に対処してきた。


葉梨 信行君(自民)

  • 憲法上、自衛のための軍事力を持つことが認められているが、現在、社民党は、自衛隊をどう考えているのか。


>金子哲夫君(社民)

  • 社民党としては、自衛隊を縮小し、別組織へ改組すべきであるという方針である。