平成15年3月13日(木) 統治機構のあり方に関する調査小委員会(第2回)

◎会議に付した案件

統治機構のあり方に関する件(地方自治−小規模自治体の実態−)

 上記の件について参考人阿部學雄君から意見を聴取した後、質疑を行った。その後、委員間で自由討議を行った。

(参考人)

  新潟県亀田町長            阿部 學雄君

(阿部學雄参考人に対する質疑者)

  福井  照君(自民) 

  古川 元久君(民主)

  斉藤 鉄夫君(公明)

  武山 百合子君(自由)

  山口 富男君(共産)

  北川 れん子君(社民)

  井上 喜一君(保守新党)

  佐藤 勉君(自民)

  中川 正春君(民主)

  伊藤 公介君(自民)


◎阿部學雄参考人の意見陳述の要点

1.亀田町の概要について

  • 亀田町は、人口は3万2千人余、面積は約16平方キロであり、地理的には、新潟市の東南、横越町の西に位置し、同市への通勤・通学者の割合も高く、日常生活においても、町の3分の2を囲む新潟市との関係が密接である。


2.亀田町都市づくり構想について

  • 亀田町では、平成5年に都市計画マスタープランを策定し、駅の東側に福祉ゾーンを設置するなど、福祉、文教の分野に力を入れてきている。


3.広域合併について

  • 市と町村の行政では財政面や権限において大きな差があることを踏まえ、市制化を目指すため、亀田町と同じく、昭和の大合併の際に新潟市と合併しなかった横越町との合併を行う「5万人都市構想」を当初持っていた。
  • その後、地方分権一括法の施行や合併特例法を背景に、亀田町商工会議所等の諸団体からの要望を契機として、平成13年には「新潟市・亀田町・横越町合併問題協議会」が設置され、協議が進められたが、近隣市町村における合併論議を受け、平成14年、同協議会は発展的に解消され、4市4町4村からなり、政令指定都市を目指す「新潟地域合併問題協議会」が設けられた。


4.新潟都市圏ビジョンについて

  • 政令指定都市が実現すれば、日本海側では初めてであり、人口においては新潟県の3分の1を占めることになる。また、地理的にも日本の中心にあり、東南アジア等との交流が容易であるという利点を活かした上で、空港等の拡充、近隣県との交流、商業の集積等を通じてさらなる発展を目指したい。
  • 「新潟都市圏ビジョン」においては、「活力ある産業が展開するまち」等、五つの「目指すべき都市の姿」を掲げているが、亀田町としては、これまでの新潟市のサブとしての位置付けから、新しくできる「市」の副都心として、発展していきたいと考える。

◎阿部學雄参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

福井 照君(自民)

  • 亀田町は、横越町との合併による「5万人都市構想」から、新潟市等を含めた合併による政令指定都市構想へと、合併についての考え方を変えたが、両構想のメリット及びデメリットについて、参考人の考えを伺いたい。
  • 現在、日本人は倫理、道徳観を培う場を失っており、日本人としての価値観等を大切にするためにも、広域合併を進める際には、地域のコミュニティを大事にすることも必要であると考えるが、この点について参考人はどのように考えるか。
  • 広域合併を進めるに当たり、住民投票という段階を踏む場合もあると考えるが、民意の捉え方についての参考人の意見を伺いたい。


古川 元久君(民主)

  • 不景気の下で地方が疲弊している現状を踏まえ、地方の活性化の視点からも都道府県を再編し道州制を導入すべきであると考える。亀田町が政令指定都市となった場合、県の役割が相対的に縮小すると考えるが、都道府県の役割について、道州制の導入も含め、どのように考えるか。
  • 小さな自治体が自立するためのポイントとしては、人口増加を図ることや産業振興による財源確保が考えられるが、この点について、参考人はどのように考えるか。


斉藤 鉄夫君(公明)

  • 亀田町は、当初、横越町との合併による「5万人都市構想」を志向していたとのことであるが、なぜ最初から新潟市との合併を考えなかったのか。まず、「5万人都市構想」を実現し、その後、政令指定都市を目指すということを考えていたのか。
  • 政令指定都市制度は、市と国とが直結するものであり、県との関係が難しく、また、事業等において重複・無駄が生じる場合があり、通常の「市−県−国」の制度との間に、一国二制度的な矛盾があると考える。参考人は、なぜ政令指定都市を強く志向しているのか。
  • 教育の分野における国と地方の役割分担について、地方分権の観点から、参考人はどのように考えるか。
  • 合併に対する反対論として、福祉等に関して地域住民の要望が汲み上げられなくなるとの意見があるが、広域合併と地域住民の声の反映との関係について、参考人はどのように考えるか。


武山 百合子君(自由)

  • 昭和28年の市町村の大合併の際に、亀田町が新潟市と合併しなかった理由は何か。
  • 亀田町が広域連携によって処理している事務の具体的な事例について伺いたい。
  • 亀田町がこれまで権限や財源が十分でない中で町の運営をしてきたことに対し、県はどのように対応してきたか。
  • 亀田町の合併構想の推進は、新潟市と同様の行政サービスを受けたいと住民が考えていることが理由となっているのか。
  • 参考人が亀田町と新潟市等との合併構想を推進する根本的な理由は何か。


山口 富男君(共産)

  • 参考人から、亀田町は福祉や文教分野に重点をおいているとの発言があったが、これらは、憲法や地方自治の趣旨から、地方自治体の仕事であると考える。これらの分野において施策を進める上で、国や県との関係で障害となっている点や改善して欲しい点はあるか。
  • 合併推進に当たっては、住民の意思が基本であるので、情報公開と住民の判断を重視すべきであり、また、合併によって行政サービスが後退しないように配慮しなければならないと考える。住民に対する6回にわたる説明会や、合併に対する意見が割れたとも評価できるアンケート結果にかんがみ、住民意思の尊重の観点から、今後、住民にどのような働きかけをすることを検討しているか。また、町議会においては、特別委員会等で常時意見交換が行われているのか。


北川 れん子君(社民)

  • 現代社会ではさまざまな意見の対立があり、その中で合併により住民に身近な従来の市町村の議会が消滅することは、住民自治や住民の政治参加の観点から問題である。また、合併により、地方公務員についてもリストラが行われ、地域経済に大きな影響を与えると思われる。したがって、合併について参考人が指摘する合併による経費節減の観点からのみ評価することはできないと考えるが、いかがか。
  • 全国町村会長による強制合併反対の意見や、亀田町周辺市町村の首長による合併反対の意見について、参考人はどのような認識をもっているのか。
  • 国や県からの権限・財源の移譲があれば、亀田町は、当初の横越町との合併による「5万人都市構想」の下においても、住民とともに発展できるのではないかと考えるが、いかがか。

井上 喜一君(保守新党)

  • 各自治体における画一的な土地利用による無駄な投資の回避や財政の効率化等を目指すならば合併が必要であると考えるが、亀田町が位置する新潟県の場合、さらに進めて、県自体を一つの市にしてしまう方がよいと考えるが、いかがか。
  • 都道府県知事と市町村長では事情が異なるが、首長の多選禁止は必要であると考えるか、また、必要であるならば何期までが適当であると考えるか。


佐藤 勉君(自民)

  • 亀田町が進める合併は、県内全域において合併を進め、市町村数を減らすべきであるとする考え方に基づくものであるのか。また、合併するに当たり、亀田町にとって有利となるよう協議を進めるべきであると考えるが、いかがか。
  • 合併のメリットとして、住民サービスの向上が挙げられているが、合併協議の資料を見ると児童福祉や高齢者福祉の分野では新潟市に優っている点もあるように思われる。こうした優位な分野での合併後の住民サービスについては、どのように考えているのか。
  • 地方分権の進展に伴い、自治体においては人材の育成が一層重要な課題となっていくと考えるが、この点についてどのように考えるか。また、亀田町における具体的な取組みがあれば教えて欲しい。


中川 正春君(民主)

  • 亀田町は、新潟市への通勤・通学率が高い等、同市等との合併の基礎的条件が整っていると思われるが、それにも関わらず、アンケート結果では3割程度の住民が合併協議について消極的である。参考人は、その理由は何であると考えるか。
  • 合併により政令指定都市となった場合、区を中心にして合併前の町や村の独自性を活かすことが可能になるとも考えられるが、その場合であっても、住民には、どのように行政・政治に参加することができるのか不安がある。この点についてどのように考えているのか。


伊藤 公介君(自民)

  • 亀田町が誇るものを三つ挙げるとすれば何か。
  • 今日、地方の行政には、廃棄物の処理、空港や原子力発電所の設置等、広域行政が必要な分野がある。また、都市や農村は、それぞれの「良さ」を追求すべきであるといった流れもある。こうしたことを踏まえたとき、亀田町の将来像として、どのようなものが考えられるか。

◎自由討議における委員の発言の概要(発言順)

島 聡君(民主)

  • (a)住民発議(有権者の50分の1以上の署名)による合併協議会の設置手続において、非常に多くの署名により住民発議がなされたにもかかわらず、関係市町村の一つの議会のみが反対したために協議会が設置されなかった事例、(b)都道府県合併の際に必要となる特別法が、95条の「一の地方公共団体のみに適用される特別法」に該当し、その制定に当たっては、その地方公共団体の住民投票が必要となること等を踏まえつつ、間接民主制・直接民主制と住民自治との関係について整理する必要がある。


谷川 和穗君(自民)

  • 現行憲法の93条、94条に規定されている住民自治、団体自治という切り口のみでは地方自治を考えることができない時代となっているのではないか。例えば、米国のオハイオ州デイトンで世界で初めて採用されたシティ・マネージャー制度は現行憲法の下では導入することはできないが、地方自治、地方分権の問題を現行憲法の枠内でのみ考えるべきなのか議論する必要がある。