平成15年3月20日(木)(第4回)

◎会議に付した案件

日本国憲法に関する件(条約と憲法(イラク問題・北朝鮮問題をめぐって)-日本国憲法及び国際連合憲章・日米安全保障条約の視点から-)

 上記の件について、自由討議を行った。


◎自由討議における各委員の発言の概要(発言順)

●各会派一巡目の発言

谷川 和穗君(自民)

  • 国際連盟が軍事的な制裁制度を持たなかったために機能しなかったことへの反省を受けて、国連憲章では、軍事的な制裁措置を定めており、この点が同憲章の大きな特徴であると言える。安保理決議678・687は、国連の軍事的な制裁措置を認めた事例である。
  • 9条2項後段の「交戦権」の政府解釈は、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称を意味するとするが、英文では、“the right of belligerency of the state”となっていることにかんがみれば、これは正しくないと考える。また、「前項の目的を達するため」という9条2項前段の文言が同項後段の「国の交戦権はこれを認めない」との文言にかかるものであるかどうかについては、(a)かかると解釈した場合には、国際紛争を解決する手段としての国権の発動たる戦争、武力による威嚇、武力の行使の場合以外における交戦権はあると解釈すべきなのかという疑問が生じるし、また、(b)かからないと解釈した場合には、自衛権の保持を認めながら、交戦権を否認するのかという疑問が生じる。これらの点について、議論すべきであると考える。


前原 誠司君(民主)

  • 国連憲章は、自衛権行使の場合及び安保理決議がある場合に限って例外的に武力行使を認めているが、イラク攻撃は、次の理由から、この例外に当たらないと考える。
  1. 米国が主張する先制攻撃はテロ活動への対処として全く理解できないわけではないが、自衛権行使の3要件(急迫不正の侵害があること、他にとる手段がないこと、侵害に反撃するために必要な限度であること)に該当せず、現時点における確立された国際法上認められないこと。
  2. 米国が法的根拠とする安保理決議について、1441に関しては、自動的に武力行使を認めたものとすることは恣意的な解釈であること及び678・687に関しては、武力行使を認めるものであるが、現在、平和が脅かされているか否かの判断は、安保理が決定すべき事項であることから、一部の国の決議の解釈により武力行使を行うことは国連憲章違反であること。
  • 国連憲章上正当化されないイラク攻撃を我が国が支持することは、98条2項の条約遵守義務や、99条の公務員の憲法遵守義務に違反しており、小泉首相の政治責任を追及したい。
  • 政府及び与党は、北朝鮮問題との関連で米国支持を打ち出さざるを得ないとするが、これは、国際協調主義と憲法に反するものであり、また、イラク攻撃により国連が機能不全に陥り、北朝鮮問題の国連での対処がむしろ困難になることを考慮すると、米国の単独主義的行動を支持するよりは、安保理の機能維持に努めることが大事であると考える。
  • 我が国は、米国にとって重要な基地を提供し、多くの経費を負担しているのであるから、その貢献を明らかにしつつ、我が国のスタンスを主張すべきである。


赤松 正雄君(公明)

  • 英国、日本、米国とも反対の世論があったにもかかわらず、イラク攻撃という事態に至ったことは残念である。しかし、(a)国際無差別テロに国際社会がどのように立ち向かうか答えが出ていない状況であること、(b)大量破壊兵器がテロリストの手に渡る可能性があること、(c)化学兵器の査察が困難であること等を考慮すると、武力行使を容認する新たな決議が採択されなかったといえども、今回の米国の行動を支持できないとは言い切れない。
  • テロへの対応において国際法や国連の仕組みは現実に追いついておらず、米国の行動は、国際社会犯罪の取締りのための国連警察軍的行動、あるいは「テロ撲滅介入」であるとも評価できる。
  • 日米同盟の堅持、武力行使への不参加、イラクの戦後復興への主体的協力等を内容とする小泉政権のイラク攻撃に対する方針には大筋賛成であるが、国民への説明不足は否めない。
  • 日米関係の在り方としては、我が国は友人として忠告すべきであるが、外務省をはじめとする我が国政府当局者には、米国に対し屈折した心理があるように感じられる。これは、戦後の占領期に醸成された卑屈な対米観や戦後民主主義教育の影響がある。
  • 9条や前文のみによって世界の現状に立ち向かえるか疑問である。我が国が日米安保条約を基軸とし、国際協調を重視することに異論はないが、これをより強固にしていくために、憲法を整理する必要がある。


藤島 正之君(自由)

  • 米国の一極支配が続く国際社会において、国連の役割が問われている。イラク攻撃の法的根拠について、米国及び日本は、安保理決議678、687及び1441を挙げているが、これには国連事務総長及び各国から疑問が呈されており、国際法上違法と考えざるを得ない。国際の平和及び安全の維持に関する措置を米国が決定するという事態は、国連の機能に対する重大な問題を投げかけていると考える。
  • イラク問題に対するこれまでの政府の対応は、曖昧な態度に終始しており、経済大国としてとるべきものではない。また、これは、重要事項については意思決定過程においても国民に対する説明責任を果たすべきとする民主主義の要請にも反する。
  • 安全保障問題については、これまでのような場当たり的対応ではなく、憲法に有事への対応に関する規定を設けるとともに、恒久法を整備すべきである。また、自衛隊が、武器使用の問題も含め、他国の軍隊と同様の行動をとることができるようにすべきである。
  • 北朝鮮問題は、日本の安全保障に直結する問題である。平壌宣言の枠組みは破綻していると認識しており、今後、日本は、北朝鮮に対し、米韓との連携を図りつつ、経済制裁をも辞さない強い態度で臨むべきである。


春名 直章君(共産)

  • イラク攻撃については、(a)査察による平和的解決の道筋が示されていたにもかかわらず、米国が独断でこれを断ち切り、武力行使に訴えたこと、(b)国連憲章及び一連の安保理決議に基づくものでなく、また、フセイン政権打倒という目的は国連憲章上禁止されている内政干渉に当たるものであり、国際社会が築いてきた平和の枠組みを破壊しかねないこと、(c)一般市民等にもたらす被害が甚大であること等の理由から、道理や大義を認めることはできず、即刻中止を求める。
  • イラク問題に対する政府の対応については、(a)米国の方針を支持する根拠を説明できていないこと、(b)米国追随の態度は危険であり、米国の誤りを正すことこそが、日本の国益につながり、また、国民世論に合致すること、(c)日本は、戦争放棄及び戦力不保持を憲法に掲げ、また、イラクと良好な関係を保ってきた国家として、国際ルールの擁護に特別の責務を負っていること等の理由から問題であり、政府は、攻撃中止を米国に働きかけるべきである。


植田 至紀君(社民)

  • 小泉首相によるイラク攻撃に対する支持の表明は、憲法、国際社会の大勢、平和への努力等に背を向け、攻撃に加担することを意味する。日米同盟と国際協調との両立を図るというのであれば、米国に攻撃の自重を促すのが筋であり、日米同盟を抜きにして国際協調はあり得ないとする政府の考え方は、国連憲章の精神を確認する日米安保条約の前文の趣旨をも取り違えたものであり、主権国家としてとるべきものではない。
  • イラク攻撃の根拠として挙げられている安保理決議678、687及び1441は、武力行使を容認するものではなく、したがって、イラク攻撃は、国連憲章に違反する行為である。
  • 日本は、武力行使が国際秩序及び国際協調の枠組みに反する行為であることを認識した上で、「正しい戦争」をも否定するという点で国連憲章を進化させた内容を有する日本国憲法にのっとり、現実的な選択として、平和な未来を切り開くことに責任をもって対応していくべきである。


井上 喜一君(保守新党)

  • イラク・北朝鮮の問題は、現行憲法や条約を前提として、日本の安全保障をどのように考えるかという問題である。現在、日本の周辺地域には、さまざまな不安定要因があり、そのような状況を踏まえれば、日本の安全保障体制の強化が必要である。その際、日本一国のみで安全保障体制を完結させることは不可能であり、可能な限り日本の防衛力を整備することは当然として、他国との協調が不可欠である。
  • 我が国の安全保障の問題を考えるに当たっては、(a)専守防衛の考え方、(b)集団的自衛権の行使に関する考え方を見直す必要がある。集団的自衛権の行使に関しては、国連の活動に積極的に参加するとともに、米国との一層の協力関係を築くため、柔軟に考えるべきある。
  • 国連は、イラク問題等について、設立当初に期待された機能を果たしていないが、軍事力行使以外の分野、例えば、多国間の対話、復興の援助等の分野では、大きな成果を上げている。今後国連はこのような分野で積極的にその役割を果たすべきである。
  • 我が国の安全保障の問題を考えるに当たっては、国連に過度の期待をすることなく、あくまで日米安全保障体制の下での対処を中心とすべきである。

●各会派一巡後の発言(発言順)

葉梨 信行君(自民)

  • 今回の米国のイラクに対する武力攻撃の法的根拠は、自衛権の行使であると考える。大量破壊兵器がイラクからテロリストの手に渡る危険性を考えれば、自衛権行使の要件である「急迫不正の侵害」があると言えるのではないか。また、安保理決議1441は、武力攻撃を政治的に正当化する理由となるのではないか。
  • 1999年のNATOによるユーゴ空爆は、人道的介入を理由として、フランス、ドイツも参加して行われたものであるが、その際、武力行使を容認する安保理決議はなされていない。その後、ユーゴ空爆については、国際社会において問題視されていないと認識しているが、委員各位は、この点についてどのように考えるか。


杉浦 正健君(自民)

  • 共産党、社民党の委員から憲法を金科玉条とするような発言があったが、憲法の制定過程において、左派社会党の議員が、国を自衛する武力を持つことができないような憲法には反対であると国会において発言し、共産党もこれに同調したと記憶している。
  • 葉梨委員の問題提起については、安保理がすべてを決めるものではないことを認識すべきである。安保理を過大評価してはならない。
  • イラク攻撃の法的根拠は、自衛権の行使であると考える。イラク攻撃については、米国の議会もこれを承認しており、また、安保理決議1441もその正当性を補強するものである。
  • 日本は、戦争の被害を最小限にとどめるよう努力すべきである。また、安保理は米国に対し適切な処置をとる義務があり、そのことを通じ、国連の機能回復を図るべきである。


島 聡君(民主)

  • 英国では、投票によって個々の国会議員がイラク攻撃に対する賛否を明確にする機会があった。同じ議院内閣制をとる日本において、イラク攻撃に対する態度を表明する機会がないのはおかしく、そのような機会を設けることができるかを検討すべきである。
  • 北朝鮮のミサイル問題等があるので米国を支持するのはやむを得ないとの雰囲気があるが、その事実認識が正しいのか、十分考える必要がある。また、ミサイル問題に関しては、集団的自衛権行使に係る政府解釈を見直す必要がある。
  • 小泉首相がイラク攻撃を支持していることは、98条2項、99条違反である。首相は、違反した責任をとって辞職すべきである。


中川 正春君(民主)

  • イラク問題について、日本が国としての意思を表明できていないことに無力感を感じる。また、国としての意思を明確にすることができないような首相を戴いている日本は、大変、不幸である。
  • イラク攻撃の法的根拠が安保理決議1441、678、687であるならば、なぜ武力行使を容認する新たな決議を得ようとしていたのか、明らかな論理矛盾ではないか。
  • イラク攻撃を支持するという小泉首相の判断について、北朝鮮問題とイラク問題の関係についての認識を含め、国会で議論すべきである。小泉首相の判断は、平和を構築していこうという国民の意思に明らかに反しており、小泉首相は直ちに退陣すべきである。


中川 昭一君(自民)

  • イラク問題と北朝鮮問題については、テロ、大量破壊兵器、自国民に対する人権弾圧等の共通点がある。
  • 北朝鮮問題は、日本にとってより直接的な問題であり、日本は当事者とも言える。平壌宣言については、日本の目論見がはずれたとの指摘があるが、むしろ目論見がはずれたのは、平壌宣言により経済援助等が期待できると考えていた北朝鮮の方である。
  • イラク攻撃は、国連憲章や国際ルールに違反していないと考える。
  • 英国においてイラク攻撃を支持する政府動議が賛成多数で可決された際、与党の反対も多かったが、野党の賛成も少なくなかったことは、健全な民主主義の姿である。


森岡 正宏君(自民)

  • 国連による平和の維持には限界がある。外交は「正義」を求めつつも、力と国際関係の中で決まっていくものであり、国連によって常に「正義」が行われるとは限らない。国連に頼りすぎるのは問題であり、どの国も国益によって行動していることを忘れてはならない。
  • 査察の継続では、大量破壊兵器の廃棄を実現することはできないのではないか。イラク攻撃に反対する野党委員は、どのような対案を持っているのか。また、テロや生物兵器の脅威についてどのように考えるか。
  • 谷川委員が指摘する9条2項の「交戦権」の問題を議論すべきである。また、北朝鮮問題を踏まえ、集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の解釈を早急に見直す必要がある。


山口 富男君(共産)

  • 日本は、憲法の平和主義及び国連憲章を守る立場から、米国の行う戦争の適法性について考えるべきである。国連のアナン事務総長やブリクス査察委員長が平和的解決を志向していることを踏まえれば、イラク攻撃には大きな問題があると考える。
  • 大量破壊兵器について、国連が査察の徹底による対処をしようとしていたにもかかわらず、米国がこれを妨げたことは問題であると考える。
  • 共産党が、憲法制定時に、自衛力を持たない憲法に反対する左派社会党の議員の意見に同調していたとの杉浦委員の発言については、私は中身を知らないが、そういう議論には同調しない。
  • NATOによるユーゴ空爆については、人道的介入論自体には議論もあろうが、正しくなかったという見解が国際的な認識であると考える。


金子 哲夫君(社民)

  • 現在、国際秩序の在り方として、国連や国連決議等に基づく「法の支配」によるのか、あるいは「力による支配」を認めるのかという分岐点に立たされていると考える。
  • 国連憲章では、(a)武力攻撃を受けた際の自衛権の発動の場合、(b)安保理決議に基づく国連の軍事的制裁の場合にのみ、武力行使を容認しているが、イラク攻撃は、このいずれの場合にも該当せず、国際社会のルールを無視するものであると考える。
  • 政府は、安保理決議1441のみでは武力行使はできないとしていたにもかかわらず、イラク攻撃を支持することは、「法の支配」を無視するものである。
  • 政府は、イラク攻撃の目的が、テロの撲滅から大量破壊兵器の廃棄へ、そしてフセイン体制の打倒へと変化してきていること、また、米国の単独行動主義が国際ルールへの参加等に消極的であることを十分に検証してから、日本としての態度を示すべきであり、またその際には、憲法が、国際紛争を解決する手段としては、武力の行使を認めていないことを再認識すべきである。


大出  彰君(民主)

  • 9条、国際法及び2000年5月30日の衆院本会議における「戦争決別宣言決議」に基づくならば、イラク問題については、当然、平和的な解決が図られるべきであり、当調査会としては、小泉首相の米国支持がこれらに反するということを指摘すべきである。
  • 安保理決議1441も武力行使を認めるものではないとするのが一致した解釈であり、また、武力行使を行うと中東和平のプロセスが壊れる以上、平和的に査察の方向で解決を図るべきである。
  • 日本としては、アメリカの戦略が先制攻撃をも辞さないと変わってきている点について、国連の枠組みに戻るようアメリカをいさめるべきである。


末松 義規君(民主)

  • 国際政治においては、力と正当性の両方が必要であるが、米国は、安保理でイラク攻撃の正当性を得られず、国際社会における正当性も得られなかった。小泉首相は、米国がイラク攻撃の正当性を失っても、日米同盟に基づいてこれを支持するとしたが、米国がたびたび正当性のない戦争を行う場合、日本もこれに巻き込まれ、実質的に集団的自衛権の行使に踏み込んでしまうおそれがある。
  • 査察を継続すれば、より少ない費用でイラクの大量破壊兵器の製造等が防止できたのに対し、米国の戦争を支持した場合、戦費や復興支援等に数十兆円の費用がかかり、日本もこれに対し応分の負担をすることになる。むしろ、北朝鮮などに対するミサイル防衛を充実させる方が、国民の不安を取り除き、よほど国益に適うと考える。
  • 20世紀型の戦争に訴えるのではなく、21世紀型の査察等による平和的な解決を図ることを模索すべきであり、また、そのことが憲法の趣旨に適うと考える。


大畠 章宏君(民主)

  • 小泉首相は、国民の多くが戦争に懐疑的な中、米国の行動を支持する旨を表明したが、この発言は、憲法の平和主義や国連中心主義に反すると考える。
  • 国連憲章前文は、二度にわたる戦争への反省から、武力行使は安保理の制約に服することを謳っているが、米英が安保理の制約から離れてイラク攻撃を行おうとしている現在、武力行使の際の基準が曖昧になっていると考える。
  • 日本としては、憲法と国連憲章に照らして、まずは国連で合意できる方法を模索することが必要であると考える。


仙谷 由人君(民主)

  • 武力攻撃を禁止する規範として結実した国連憲章の諸原則を踏まえ、イラク攻撃を考えるべきである。
  • イラク攻撃は、国連憲章2条の国連の行動でないとすると、53条に違反するものと考える。
  • 米国は、イラクが危険な存在であり、また、国連による解決が限界であるという自国のみの判断により、イラク攻撃をしようとする。これは、自力救済を認めないという近代法・現代法で築いてきた原則に照らして認められない。


杉浦 正健君(自民)

  • 小泉首相による米国の支持は、何ら憲法に違反するものではない。イラクに非があることは、安保理決議1441で既に決定している。
  • 英国議会においてイラク攻撃参加に関する政府動議が審議されたとの発言があったが、英国は、軍を武力行使に参加させるという日本とは全く異なった事情があり、英国と日本とを同一には論じられない。
  • イラク攻撃が国連憲章51条に定める要件を満たすのかどうかは議論があるが、米国議会と国内世論がイラクに対する予防的武力行使を支持していることなどの状況をも勘案する必要がある。


奥野 誠亮君(自民)

  • イラク攻撃に関して日本の安全保障の観点からの議論が少ないが、国の安全を守ることが国にとって一番大事なことである。一昨年9月にテロを受けた米国は、国際社会からテロや大量破壊兵器をなくすことで、自国と世界の平和を守ろうとしているのであり、これは、日本の安全保障にも関連することである。
  • 国連によって平和を守ることを願うものであるが、日本は国連憲章においていまだ「敵国」とされており、安保理の常任理事国でもなく、また、国連の制裁制度も機能していない。他に比べて不安定な地域にある日本の安全を国連が守ることができないのなら、やはり、同盟国の力に頼る必要がある。その意味で、集団的自衛権について検討する必要がある。
  • テロや大量破壊兵器の問題は、日本にも関わることであり、日本の米国支持は当然である。テロや大量破壊兵器をなくそうと思えば、米国のやり方はやむを得ない。


野田  毅君(自民)

  • 米国の軍事的圧力によって査察が開始されたことにかんがみれば、単に査察の継続を主張するだけでは、大量破壊兵器の廃棄は期待できず、また、国連決議に基づいて多国籍軍が組織されることが望ましかったが、拒否権を有するフランスが反対していた事情等を勘案すれば、日本が米国を支持するのはやむを得ない。
  • 北朝鮮が核兵器や生物化学兵器を保有しようとする今、日本は、国連に過大な期待を抱いているが、テロや大量破壊兵器の問題について国連の枠組みで対処できることは限られており、日本の安全を国連に任せていいのかどうか疑問である。
  • 現在の国際秩序は、第二次世界大戦の戦勝国が作り出したものであるが、日本は、自分で自分を守る体制を築くことを前提に国際社会に関わるべきである。


首藤 信彦君(民主)

  • イラクの行為が国際社会の脅威となるのか、また、それに対してどのような行動をどのような範囲でなし得るかを決定するのは安保理である。問題が発生した場合に安保理が判断していないにもかかわらず独自の判断で行動することこそが、国際社会にとっての脅威である。
  • 日米同盟は国連憲章53条の「地域的取極」に当たるものであるが、国連憲章は、地域的取極を国連の目的に合致する限りにおいて認めているのであり、地域的取極である日米同盟を国際協調に優先させるという小泉首相の判断は問題であり、憲法98条2項に違反する。
  • ブッシュ大統領は、国連が立ち上がらないから米国が行動を起こすと述べているが、国連と米国を支持する有志連合との関係について議論すべきである。
  • 小泉首相の米国の支持は、98条2項に違反するものであると考えるが、小泉首相は、米国への支持が同項に違反しない理由を説明すべきである。


中山 正暉君(自民)

  • 世界連邦が成立し、世界平和が実現することを望むものであるが、いまだ国連は不完全な存在であること、平和実現に至るまでには悲しい戦争があるという歴史があること、12年かけてもイラクの大量破壊兵器の廃棄が実現しないこと等にかんがみれば、米国の行為はやむを得ないものであり、小泉首相による米国の支持は正しいといえる。


倉田 雅年君(自民)

  • 「法の支配」が「力による支配」に負けてはならないという意見は理解するが、国際社会では、「法の支配」が「力による支配」を上回るには至っていない。
  • 日本にとって、北朝鮮問題の方が急迫した問題であり、その中で小泉総理が米国を支持したのはやむを得ない。
  • 野党の委員は、米国に頼るのが情けないとするが、そうであるなら、日本は、自分の国を自分で守れるようにすべきである。自国を守ることができて初めて理想を語れるものである。
  • 9条が自己防衛の権利を禁じていないということは、共通の理解となっており、テロを撲滅するため自衛隊を海外に派遣することが許されるかどうかを検討すべきである。


中野 寛成君(民主)

  • 国連が不十分であるとの意見を認めるものであるが、そうであるならば、国連の機能を守り育てる日常的な努力が重要である。
  • 今回、イラクに非があるということは、ほぼ世界の一致した意見である。国連で決議を行ってイラクへの措置をまとめ、国連として対応するという方向で粘り強く努力すべきであった。
  • 日本は率先して国連を中心とした問題解決に努力したのか。さらに、日本は、安保理常任理事国の5分の3が反対し、国連の大勢が反対しているとも言える中で行動を起こした米国を支持していいのか疑問である。