平成15年7月3日(木) 安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会(第5回)

◎ 会議に付した案件

安全保障及び国際協力等に関する件(憲法第9条(戦争放棄・戦力不保持・交戦権否認)―自衛隊の海外派遣をめぐる憲法的諸問題―)

上記の件について委員近藤基彦君及び藤井裕久君から基調発言を聴取した後、質疑又は発言を行った。その後、委員間で自由討議を行った。

(基調発言者)

  近藤 基彦君(自民)

  藤井 裕久君(自由)

(質疑又は発言を行った者)

  谷川 和穗君(自民)

  今野 東君(民主)

  遠藤 和良君(公明)

  春名 直章君(共産)

  植田 至紀君(社民)

  井上 喜一君(保守新党)


◎ 近藤基彦委員の基調発言の要点

1.現在の国際情勢に対する認識及び現行憲法に対する評価

  • 現行憲法は、その当時の国際情勢等を前提に占領下において制定されたものである以上、当時の考え方ではとらえ切れない問題が生じている今日の国際情勢の変化に十分な対応ができるとは思えない。
  • 解釈改憲の積重ねにより、憲法規定と解釈運用との乖離が顕著なものとなっており、これは、法治主義の原則に照らし問題がある。したがって、憲法改正を視野に入れた防衛体制の整備及び国際貢献の推進を考えるべきである。

2.防衛体制の整備の必要性と憲法改正

  • 国の主権及び国民の生命・財産を守ることが政治の責務であることにかんがみれば、「万が一」の事態に備え防衛体制を整備することは当然であり、その意味で、自衛権の保持、自衛隊の存在等を憲法上明記する必要がある。
  • 侵略、大規模自然災害等の非常事態への対応に関する条項を憲法に設けるべきであるが、その際、国会等のコントロールを及ぼすことにより首相等の権限濫用を防止することも必要であるが、首相等の裁量を狭めることで国民の利益を損なうことのないよう、慎重な制度設計が必要である。
  • 日本、ひいてはアジア地域における安全保障の基軸として、日米同盟を発展させていく必要があるが、その際、集団的自衛権の行使を認めることを通じて、対等かつ双務的な日米関係を築く必要がある。
  • 防衛体制の整備を図ると同時に、近隣諸国との信頼醸成をも図るべきである。

3.国際貢献の推進の必要性と憲法改正

  • 貧困等に起因する今日の紛争は主権国家の枠組みでとらえることのできないものであることから、日本は、平和と安全を最終的には武力により担保することもあり得るという立場に立った上で、個々の人間の安全保障に着目する「(人道上の)人間の安全保障」という考え方を未来志向の強靱な「平和主義」の形として提示し、国際の平和及び安全の維持に向けた取組に積極的に関与する姿勢を示す必要がある。
  • このような国際貢献を実践するに当たっては、9条の改正が不可避である。

4.憲法改正に向けた若干の提言

  • 以上から、(1)侵略戦争を放棄する9条1項の理念は堅持した上で、国際平和の維持に積極的に関与するという立場から、「(人道上の)人間の安全保障」の考え方を具体化すること、(2)同条2項を削除した上で、個別的・集団的自衛の権利及び自衛隊の存在を明記すること、(3)非常事態の要件、手続等を定める規定を設けること等を内容とする9条の改正を提言する。
  • 今後、21世紀にふさわしい国民のための憲法の制定に向けた議論を深めると同時に、憲法改正国民投票法等の整備を図るべきである。

◎ 藤井裕久委員の基調発言の要点

1.安全保障の基本原則を憲法に規定することの必要性

  • 自由党は、「新しい憲法を創る基本方針」の安全保障基本方針に基づいて、平成14年、15年に安全保障基本法案を提出した。国の平和確立の基本については、憲法に明記するか、少なくとも安全保障基本法を制定することにより国民に提示し、国際社会、とりわけ近隣諸国の信頼を得ることが必要であると考える。

2.自由党の安全保障基本原則

  • 自由党は、安全保障基本原則として、(1)自衛権保持の明確化及びその抑制的行使、(2)日米共同防衛体制の重要性、(3)国連中心の国際秩序維持への参加の三原則を主張する。
  • 9条の文言は難解であり、日本語としてなじんでおらず、また、現行憲法には自衛権の規定がない。したがって、直接侵略があった場合又はそのまま放置すればそのおそれがある場合において、他に方法がないときは、必要最小限の範囲内で、自衛のための武力行使を行うことができることを明記して、自衛権の保持を明確にするとともに、その行使が抑止的であることを明らかにすべきである。また、シビリアンコントロールの重要性にかんがみれば、自衛隊に対する総理の指揮監督権は、自衛隊法でなく憲法に規定すべきである。
  • 日米同盟は、戦後復興と繁栄の基礎となった。集団的自衛権については、安保条約改定時に議論され、その後「保持するが行使できない」との政府解釈が出されたが、これは、個別的自衛権と集団的自衛権を一体としてとらえるという国際常識に沿ったものではない。自由党は、この国際常識に沿った形で集団的自衛権を含む自衛権の行使を認める立場に立つが、その行使は抑制的であるべきである。日米安保条約に極東条項が設けられているのは、この考え方が基礎にある。なお、集団安全保障と集団的自衛権とは質的に異なるものであって、前者は主権の制約であり、後者は主権の行使そのものである。
  • 国連の平和活動(国際安全保障)は、日本や世界の安全の基礎となっているものであるから、我が国は、国連決議があれば、国連軍、多国籍軍、PKO等に積極的に参加すべきであり、これは、国連加盟国としての義務であるとも言える。このことを明確にするため、国連の平和活動への参加を憲法上明記すべきである。特にPKOについては、近年、その活動内容が変質し、重武装を伴う活動や強制的な活動も見られるが、我が国は、非強制、中立性、国際性というPKOの本来の在り方を求めつつ、これに積極的に参加すべきである。その際、武器使用基準を国際水準に合わせることは当然である。

◎ 主な質疑事項又は発言

谷川 和穗君(自民)

<藤井委員に対して>

  • 集団的自衛権に関する我が国の政府解釈は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、「自国が直接攻撃されていないにもかかわらず」、実力をもって阻止する権利とするが、本来、集団的自衛権は、「自国が直接攻撃されているか否か」とは関係のない問題である。藤井委員は、このような政府解釈を変更すべきと考えるのか、憲法に明記すべきと考えるのか。
  • 国連中心主義については、安全保障理事会の常任理事国は、自国の国益に従って拒否権を行使したりするのであって、拒否権等の安保理事会の慣行・仕組みを改めない限り、国連にすべてを委ねるようなことは国家としてとるべき道ではないと考えるが、いかがか。
  • 日本は安全保障に関しては「半主権国家」であると考えるが、いかがか。

>藤井裕久君(自由)

  • 日本の政府解釈と異なり、例えばNATO条約5条は、「他国への攻撃を自国への攻撃とみなす」旨規定しているが、私は、集団的自衛権の解釈としてはこちらが正しいと考える。ただし、個別的自衛権であろうと集団的自衛権であろうと、その行使は抑制的でなければならない。これに対し、集団的安全保障体制は、国連の決議により、ある程度主権を委譲するというものであり、主権の発動である集団的自衛権とは全く次元を異にする問題である。
  • 国連の機能低下を指摘する人もいるが、そのようなことはあってはならないことである。拒否権等の現在の国連の仕組みを見直すことは、あらゆる機会を通じて努力すべきであるとともに、憲法においても「国連の平和活動」について明記すべきであると考える。
  • 谷川委員は日本は「半主権国家」であると指摘したが、日本国憲法には自らの国は自ら守るということが一言も書かれておらず、新しい憲法には、自らの国を自ら守ることが崇高な使命であり責務であるということを明記すべきである。


今野 東君(民主)

<両委員に対して>

  • イラク復興支援法案が衆議院の委員会で可決されたが、戦闘がまだ継続し、非戦闘地域が存在しないような状況であるにもかかわらず、政府は、非戦闘地域における自衛隊の活動であるから憲法に違反しないというような説明をしている。このようなつじつまあわせの9条の解釈及びそれをもたらしている米国の圧力について、どのように考えるか。

<発言>

  • ホッブズの説く「力の専制」に親和性を持つ米国の現政権と、恒久平和を念願し国際協調主義に基づく日本国憲法の理念とは、相容れないものである。日本が米国の戦略に無批判に追随し、これに取り込まれてしまうことは、かえって国益に反することになると考える。日本は、憲法の理念を踏まえ、主体的に行動すべきである。
  • 9条改正論については、日本を、戦争をする国にしてしまうのか否か、国民に問うべきときが来ているように考える。

>近藤基彦君(自民)

  • つじつまあわせのような解釈をしなくてもよいように、9条を改正すべきであると考える。また、イラク復興支援には既に多数の国が参加しており、その足りないところを補うべく自己完結能力のある自衛隊を派遣しようというものと認識している。なお、与党調査団によれば非戦闘地域は存在するとのことである。

>藤井裕久君(自由)

  • 国連の決議があるのであれば、治安維持を任務とするPKOのようなものに参加することは何の問題もないと考える。また、イラク問題において米国の圧力がないと言えば嘘になる。しかし、イラク問題において米国の圧力があったということを日米安保体制と結びつけて議論すべきではない。


遠藤 和良君(公明)

<藤井委員に対して>

  • 藤井委員の発言は、国連との関わりを憲法に明確に規定すべきであるというものであると認識したが、それは9条に第3項を設けることを想定しているのか。また、その場合、1項及び2項は今のままでよいか。
  • 集団的安全保障について、日本国憲法は直接触れてはいないが、その前文の趣旨にはむしろ合致するものであるから、これに参加するため、憲法を改正する必要はないと考えるが、いかがか。

<近藤委員に対して>

  • 近藤委員の発言では、国連の動きとも関連する「人間の安全保障」については触れていたが、国連の役割等については触れていなかった。9条と国連との関係について、憲法に国連について明記すべきかどうかという点も含めて、どのように考えるか。
  • 集団的自衛権についての限界や在り方について、どのように考えるか。

>藤井裕久君(自由)

  • 9条に限らず、日本国憲法の条文は日本語というより翻訳調とも言える分かりにくいものであり、中学生でも分かる文章に書き換えるべきであると考える。また、自衛権は国家の主権の発動に係る問題である一方で、国連の平和活動は国家の主権を制約するものであり、両者は異なるものであるから、別々の条文に定めるべきであると考える。
  • 日本国憲法の前文には、国際協調主義という基本理念しか規定されておらず、それだけでは抽象的であり、より具体的に集団的安全保障への参加を定める条文も必要であろう。

>近藤基彦君(自民)

  • 人間の安全保障委員会において、政治・軍事等を包括的にとらえた戦略の必要性という国連よりも一歩先行く提言がなされていることから、「(人道上の)人間の安全保障」という考え方を未来志向の強靱な平和主義ととらえ、国際貢献を行うに当たっての理念とすべきと考える。
  • 9条2項を削除した上で、個別的か集団的かにかかわらず自衛権を行使できるような明文規定を置くべきである。また、有事への対応は、集団的自衛権という観点からのみ判断すべきではなく、国際的な合意も考慮に入れるべきである。


春名 直章君(共産)

<藤井委員に対して>

  • 「一国主義」とも批判される米国の戦略に無批判に従っている今の日本の姿勢には大いに疑問を感じるが、いかがか。

<近藤委員に対して>

  • 近藤委員は、政府の解釈改憲の積重ねにより憲法の理想と現実の運用の間に乖離が生じたと述べたが、政府のこれまでの対応は違憲であると認識しているのか。
  • なぜ、憲法の理想に現実を近づけることでその乖離を埋めるという選択肢が出てこないのか。
  • 「武力行使をしない、戦力を持たない」という9条の理念は、1928年の不戦条約での戦争の違法化及び1945年に採択された国連憲章の武力行使の原則禁止規定といった世界の平和主義の流れを受けたものである。しかし、今次の米国のイラク攻撃は、世界で認められているこのような原則に反するものであり、だからこそ世界の人民の怒りを買った。このようなことから、9条の改正は、合理性を持たないものであると考えるが、いかがか。

<発言>

  • 外交努力により平和を実現することこそ、憲法上の要請であることを強調したい。

>藤井裕久君(自由)

  • 今次の米国のイラク攻撃は国際平和、特に国連の機能を乱した行為であったと考える。もっとも、米国が国際平和の秩序形成に努力してきたという歴史的事実もあり、ふところの深い国家であることも認識すべきである。

>近藤基彦君(自民)

  • 政治が内閣法制局の解釈に服しているかのような現状が、その乖離に拍車をかけたという意味で述べたのであって、憲法はその時々の社会状況に沿って解釈され運用されており、私は、これまでの対応を違憲であるとは思っていない。しかし、そのような解釈・運用も限界に来ているのではないかという認識も抱いている。
  • 現実の憲法の運用に違憲状態のものがあるとは思っていない。その乖離の原因は、解釈によって生じた面もあれば、社会環境の変化によって生じた面もある。したがって、憲法のていねいな運用も必要であるが、改憲も視野に入れる必要がある。
  • 藤井委員のイラク攻撃に対する意見には賛同するところもある。しかし、一方、我が国には北朝鮮の脅威があることも忘れてはならないし、また、武力によらない平和というのは理想ではあるが、武力を使わざるを得ない局面もあるという現実を見据えなければならない。


植田 至紀君(社民)

<近藤委員に対して>

  • 先日成立した有事関連法制は、現行憲法と整合性を持つと考えるか。
  • 憲法には国家緊急権が明記されておらず、国家緊急権を発動する事態を想定していない。したがって、現行憲法との整合性を図ろうとすると、本来の有事への備えを考えた場合、不十分になってしまうと考えるが、いかがか。また、私自身は憲法改正に反対するものであるが、現行憲法をそのままにして有事関連法制を制定するのは主客転倒しているのではないか。

<藤井委員に対して>

  • 自由党は4月に安全保障基本法案を衆議院に提出する一方、有事関連法案とそれに対する修正案にも賛成している。安全保障基本法案と修正有事関連法は、理念的に同質のものと理解してよいか。
  • 自由党提出の安全保障基本法案は、第1条の目的規定で「この法律は、日本国憲法の平和主義及び国際協調主義の理念…」と規定しているが、現行憲法との整合性を持ち得るものと考えてよいか。
  • 安全保障基本法案と修正有事関連法は、矛盾するものではなく、また、安全保障基本法案と憲法は整合性を持っているとすれば、修正有事関連法と憲法にも矛盾はないことになる。とすれば、自由党としては、今後、基本法案を提出するのではなく、有事関連法制を改正していくという立場であると考えてよいか。

>近藤基彦君(自民)

  • 有事関連法と現行憲法は整合性を持つものと考える。
  • 私は、現行憲法の改正手続法を早急に制定することを求めており、その上で、憲法改正をして国家緊急権を憲法に明記すべきと主張している。今回の有事関連法については、国民保護法制が未整備なことや、ミサイル攻撃への対処に際して自衛権をいつ発動できるか詰め切れていないこと等の面で不十分な部分もあるが、憲法改正の前に「万が一」の事態が生じた場合を想定して制定されたものであると認識している。

>藤井裕久君(自由)

  • 修正有事関連法に対する賛成は、「ないよりまし」という意味での賛成であり、全面賛成ではない。日本の平和を守るには、国連の平和活動、日米安保などを総合して考えなければならず、そのためにも、安全保障基本法の制定は不可欠であると考える。
  • 自由党提出の安全保障基本法案と現行憲法は整合性を持つものと考える。
  • 今の与党は国連の平和活動に理解を示しているのか疑問であり、有事関連法の改正というよりも、自由党の安全保障基本法案を示して国民の理解を得ていきたいと考えている。


井上 喜一君(保守新党)

<発言>

  • 憲法9条は、日本に再軍備をさせてはならないという、当時の占領軍の意向を強く反映している。現在の国際情勢からみると、憲法9条の規定と現実には齟齬が生じており、内閣法制局が解釈によりその齟齬を補ってきた。
  • 我が国の憲法には自衛権について何ら定める規定が存在しないこと、また、自然法の立場からしても自力救済は規定の有無に関わらず認められることを考えると、国家に自衛権が認められるのは当然であり、この自衛権には、個別的自衛権と集団的自衛権の両方が含まれると考える。
  • 私は、現実に合わせ、憲法9条を改正すべきと考える。具体的には、(a)集団的自衛権を含むものとして自衛権を明記し、その行使の限界を明確にすること、(b)憲法には国際的な平和活動の規定がなく、国際社会に日本が関わっていかなければならないことを考えると、国際的な平和維持活動についての一般法を制定する必要があり、このため憲法を改正して、国際的な平和活動の根拠を明記すること、(c)現行憲法に示されている侵略戦争の禁止を改めて明記すること、を提案する。

◎ 自由討議における委員の発言の概要(発言順)

仙谷 由人会長代理

<近藤委員、遠藤委員及び井上委員に対して>

  • 国連決議やその国の要請・同意等の国際法上の根拠なく他国の軍隊が領土内に存在することは、「侵略」としか言いようがない。米英軍がイラク領内に存在すること及びイラク復興支援法に基づき自衛隊を派遣することについて、国際法上、どのような根拠があるのか。

>近藤基彦君(自民)

  • 確かに、国際的な枠組みを確立した上でイラク復興を行うことが筋ではあるが、イラクの現状にかんがみれば、枠組みが確立される前であっても、「(人道上の)人間の安全保障」という観点から復興支援を行うべきであって、その中で、イラク国民の間でもこれに対するコンセンサスが形成されていくと考える。

>遠藤和良君(公明)

  • 既に、安保理において全会一致で決議1483が成立しており、これが、イラク復興支援の国際的枠組みであると考える。

>井上喜一君(保守新党)

  • 国際法とは、国内法と異なり、情勢の変化によってその内容も変化するものであり、したがって、米国等によるイラク復興支援に関する直接的な国際法上の根拠がないからといって、必ずしもそれが否定されているわけではないと考える。イラク攻撃に当たっての決議、イラク復興支援に関する決議等を総合的に判断すべきである。


首藤 信彦君(民主)

  • 国際平和協力が議論される際には、いつも自衛隊派遣の是非のみが争点となるが、コミュニティ警察、大量破壊兵器査察官など、自衛隊以外の人材の派遣を通じた国際平和協力をも考えるべきであり、そのための法整備を図る必要がある。
  • 国際平和協力に対する国民の義務を憲法に明記すべきである。


中野 寛成君(民主)

  • イラク攻撃については、大量破壊兵器による差し迫った危険が証明されていない状況において、武力行使を容認する安保理決議がないままに行われたものであって、国連憲章違反であると考える。
  • 米国は、9.11事件以降、危険を未然に防止する安保政策をとっているが、これによって国際社会の秩序が維持できるかは疑問である。国連に代わって国際社会の秩序を維持する組織は存在しない以上、たとえ米国が国連を軽視するとしても、日本は、これを重視すべきであると考える。また、イラク復興支援法案は、米国の安保政策の支援という集団的自衛権の行使を内容とするものである。
  • 政権が国益に基づき政策選択を行い事後的にその合憲性がチェックされるという米国流の政策遂行に、憲法の範囲内で政策選択を行うというヨーロッパ流のシステムをとる日本が合わせていこうとするところに、ジレンマが生じている。日本は、自国の政策選択の在り方を踏まえた上で、米国に対し、主張すべきを主張していく必要がある。


植田 至紀君(社民)

  • イラク問題をめぐり、大国の独走を阻止できなかったという意味で、国連の限界が露呈されたが、日本は、国連憲章に沿う形で、拒否権の見直し、集団安全保障の確立をはじめとする国連改革に向けて先導的役割を果たすべきであり、このことは、憲法の国際協調主義を具体化することにつながると考える。


下地 幹郎君(自民)

  • 国連がイラク問題を12年間も放置していたことにかんがみれば、国連による強制的な介入制度の創設をはじめとして、国連改革を実行すべきである。
  • 今後、日本は、アジア地域における安全保障を構想するとともに、軍事だけではなく経済的な安全保障も図ることを通じて、自国を守るシステムを考える必要がある。その際、集団的自衛権の行使の是非についても、結論を出すべきであると考える。


春名 直章君(共産)

  • PKO協力法、周辺事態法、テロ特措法、武力攻撃事態法、そして、イラク復興支援法案という自衛隊の海外派兵に関する法律が整備される中で、これらが憲法の枠を超えるものであるという点については、共通認識があるように思われる。しかし、これに対して、海外での武力行使が認められるよう憲法を改正するのではなく、むしろ、国際社会の潮流、9条の理念等にかんがみ、非軍事による国際協力を図り、これにより国民を守り、道義ある国家として確立する道をこそ探るべきである。


中山 正暉君(自民)

  • 米国が、日本の独立後、中国に対する配慮から憲法改正を阻止したこと等をも踏まえれば、PKO協力法等の一連の法律については、憲法が改正されないという制約の中で、日本の安全保障のために知恵を絞って制定されたものであり、一定の評価をし得る。思想対立が解消された今日、憲法改正を視野に入れた上で、日本の安全を真剣に考える時期が来ている。


葉梨 信行君(自民)

  • 日本は、平和主義を掲げる経済大国として、世界平和の維持に係る一定の役割を果たすべきという国際社会からの要請に応えるとともに、北朝鮮からの脅威等から守るべきという国民からの要請に応える必要がある。そのためには憲法改正が不可避であるというのが、近藤委員の発言の趣旨であると認識している。


桑原 豊君(民主)

  • イラク攻撃については、武力行使容認決議を得たものではないため、違法であると考える。しかし、このような違法行為を実効的に裁く制度は存在せず、この点は、国連改革における大きな問題の一つであると考える。
  • イラク攻撃の大義とされた大量破壊兵器が発見されなかった場合に、誰が、どのように責任をとるのかということを考えなければならない。また、戦争目的やその手段が適正なものであったか否かについては、国連とは別の形での検証が必要である。
  • イラク復興支援法案については、イラク攻撃に正当性がなかったこと、占領行政が憲法で禁止されているにもかかわらずこれを行っている米英軍に支援を行うものであること等の問題があり、憲法との間で矛盾が生じている。安全保障及び国際協力の在り方については、基本法をもって定めるべきである。


中山 正暉君(自民)

  • 米国は、中東の安定が世界の安定につながるとの立場に立った世界戦略を進めている。このような米国の世界戦略や国際情勢を念頭に置いた上で憲法を考えていくことは、国会議員としての使命であると考える。


藤島 正之君(自由)

<近藤委員に対して>

  • 防衛や国際協力は重要であるが、それは、あくまでも、憲法の枠内で行われる必要がある。イラク復興支援法案は、米英軍等による占領地行政に加担することを内容とするものであって、9条違反をなし崩し的に行っているのではないか。

>近藤基彦君(自民)

  • イラク復興支援法案に基づく自衛隊の派遣は、非戦闘地域において現地のニーズに応える復興支援を行うことを目的とするものであって、米英軍等による占領地行政に加担するものではないと考える。

>藤島正之君(自由)

  • イラク復興支援法案については、私は、憲法に抵触する部分もあり、その部分はなし崩し的に違反していると考える。


春名 直章(共産)

<葉梨委員に対して>

  • 我が国の平和と安全を確保するとともに、国際貢献に尽力すべきという点では、葉梨委員と認識を共有するものであるが、これを非軍事の手段により実現するという選択をすべきと考えるが、いかがか。

<発言>

  • 現行憲法は、米国だけではなく、国際社会や日本国民の声を踏まえて制定されたものであり、だからこそ、今日に至るまで定着してきたのである。

>葉梨信行君(自民)

  • 海外派遣された自衛隊は、直接的な軍事活動を行っているわけではなく、復興支援等を中心とした活動を行っている。このような活動は、NGO等も行っているところであるが、訓練を積み、機動力を有する自衛隊の方がより効果的に機能し得る。


中山 正暉君(自民)

  • 日本は、米国が属国とするために押し付けた憲法をいつまでも持っているべきではない。米国による北朝鮮攻撃は中国との戦争につながるため、北朝鮮が日本を攻撃した場合、米国が日本を守ってくれるとは限らないといった現実問題をも踏まえ、新しい憲法を構想すべきである。


中山 太郎会長

  • 湾岸戦争以降、国際情勢は大きく変化してきている。現在、北朝鮮による拉致問題、核開発問題等が表面化し、多くの国民がこれらを現実の脅威として感じている。国民の安全を追求するのが国会の責務であることにかんがみれば、本日、初めて、党派を超えて、9条問題に関する冷静な議論ができたことは大変意義深いものである。会長として、改めて感謝の意を表する。