平成15年7月24日(木)

◎ 会議に付した案件

日本国憲法に関する件

1.各小委員長から報告を聴取した。

2.今国会の締めくくりとしての自由討議を行った。

3.会長から挨拶があった。


◎ 各小委員会の経過の報告聴取

● 最高法規小委員長からの報告聴取(小委員長としての総括部分の要旨)

保岡 興治小委員長

  • 憲法前文と各条文とは一体不可分の関係にあり、憲法の解釈とは両者を総合してなされるべきものであることは、各会派に共通の認識であった。
  • 現行憲法の前文が有する理念について、国民主権や民主主義の概念を我が国に定着させた点については、ほぼ評価が一致するが、平和主義については、なお各会派の間に隔たりが存するようである。
  • 近代立憲主義という普遍性と歴史や文化に代表される我が国の独自性との調和をどのように図っていくべきかは、なお残された課題である。
  • 今後とも、憲法の調査に当たっては、前文と各条文との関連性に留意しつつ議論を深めていく必要があり、また、将来、憲法を改正することとなった場合、前文にどのようなメッセージを込めて国内外に発信すべきかがいかに重要であるかを改めて認識した。


● 安保国際小委員長からの報告聴取(小委員長としての総括部分の要旨)

中川 昭一小委員長

  • 各委員とも、侵略戦争放棄の理念を堅持することについては認識を共有しているものの、21世紀の日本の安全保障及び国際協力の方向性として、前文や9条に掲げる平和主義を維持していくのか、それとも、国内外の環境変化を踏まえ、防衛体制を整備するとともに新たな国際協力に係る理念を打ち出すのかといった点では見解を異にしており、争点は、ここに絞られてきたと考える。
  • 今後もこれまでの議論を踏まえた上で、更に議論を深めていくと同時に、急激な変化を遂げている国際情勢にかんがみ、この争点について、早急に合意形成を図る必要があると考える。


● 基本的人権小委員長からの報告聴取(小委員長としての総括部分の要旨)

大出 彰小委員長

  • 社会保障制度改革の展望として、北欧諸国の制度について議論が行われたが、その評価をめぐっては、意見が分かれるところであった。
  • 国家が「措置」として国民に与える社会保障ではなく、「社会連帯」の観点から、社会保障制度を再構築することの必要性を強調する意見があった。
  • 少子化問題に関しては、育児を社会全体で支援する仕組みの構築等によって解決すべきであるとの意見及び北欧型社会保障制度を参考にすべきであるとの意見等があった。
  • 25条が「健康で文化的な最低限度の生活を保障」している理念を踏まえ、人々が人間らしく生きがいと誇りをもって生きていくために、21世紀にふさわしいより高い次元の生存権の理念を議論していくべきであると考える。


● 統治機構小委員長からの報告聴取(小委員長としての総括部分の要旨)

杉浦 正健小委員長

  • 複雑な社会経済情勢に迅速かつ適切に対処する必要性から、さまざまな政策を適宜適切に実行していくことが求められる現代において、国民多数によって支持される政策を強力に推し進めていくため、「民意の反映」とともに「民意の集約」が重要であるということを改めて認識した。
  • このような観点から、両院制の是非、参議院の在り方、議院内閣制の在り方について、検討する必要性を強く感じた。また、社会に多様な民意が存在する現代において、民意の反映・集約という政党の役割が改めてその重要性を増しており、選挙公約(マニュフェスト)の在り方や党内の意思決定手続の在り方も含め、政党のあるべき姿を深く考えてみる必要性を感じた。

◎ 今国会の締めくくりとしての自由討議(発言順)

● 各会派一巡目の発言

葉梨 信行君(自民)

  • 9条問題については、北朝鮮の脅威や国民の生命・財産を守るという政治の責務を踏まえれば、「9条1項の侵略戦争放棄の理念を堅持しつつ、同条2項を削除した上で、個別的・集団的自衛の権利と自衛隊の存在を明記するとともに、非常事態条項を設けるべき」とする安保国際小委員会での近藤委員の意見に賛成である。
  • いわゆる「護憲派」の委員に対し、(a)日本が侵略を受ける危険性はないと主張する根拠は何か、(b)周辺国に対する信頼だけで日本の安全は確保できるか、(c)文民統制等の現行憲法の下に設けられた諸制度をなぜ信頼できないのか、(d)集団安全保障体制への参加等の外交の選択肢をせばめる規定はかえって日本に対する武力攻撃の危険性を拡大させることにならないか、以上の4点について伺いたい。
  • 象徴天皇制に関する問題については、イギリス・オランダの君主制等をも踏まえ、天皇が、日本の文化、歴史、伝統等をも象徴するとともに、国家の儀礼的な代表としての役割を果たしているという現実に即した立場を明らかにする趣旨から、「元首」である旨を憲法に明記すべきである。このことは、現在の象徴天皇制の在り方を変更するものではなく、また、「国民主権」の考え方と矛盾するものではない。


仙谷 由人君(民主)

  • 現在、日本は、危機的な状況に置かれており、大幅な変革を迫られている。財政危機は、社会全体の危機の結果であり、広義の社会システムを構成する政治・経済・社会の各システムのすべてについて改革しなければ解決しない。
  • 安全保障に関して、専守防衛のための自衛力とは何か、個別的自衛権・集団的自衛権の行使についてどのように考えるかといった問題について、決着がついていない。憲法上どのように規定するかを含め、議論すべきである。
  • ヨーロッパ諸国のように憲法上の機関として人権擁護機関を創設することについて、議論すべきである。
  • 憲法を考えるに当たっては、地方分権や与党と内閣の一体化などさまざまな検討課題があるが、憲法は各基本法のエキスを規定する「基本法」であり、憲法についての議論を通じて、21世紀の国の在り方が浮かび上がってくると考える。


赤松 正雄君(公明)

  • 公明党は、9条を堅持しつつ、環境権、プライバシー権等を明記して憲法を補強するという「加憲」の立場に立つ。
  • 9条については、公明党は、現行のままでも自衛力の行使が認められ、自衛隊の存在は合憲であること、また、国際貢献についても、国連の安保理決議を前提とする自衛隊による紛争後の地域における非軍事部門での後方支援は合憲であることから、9条改正の必要性は認められないとの立場に立つ。
  • 個人的には、海外での自衛隊による人道支援活動は、専守防衛の枠を超えるものであるとの批判があることにかんがみ、これを憲法に明記すべきであり、また、9条を下支えするものとして、安全保障基本法を制定すべきであると考える。


武山 百合子君(自由)

  • 自由党の「新しい憲法を創る基本方針」(平成12年12月)では、(a)国及び国民の在り方の基本理念を前文に明記すること、(b)天皇について、現行憲法の原則を維持すること、(c)国民の権利と義務について、日本の良き伝統を踏まえること、(d)安全保障について、自衛隊の権限と首相の指揮権を明記し、シビリアンコントロールを徹底するとともに、国連を中心とした活動に参加すること、(e)国会が「国権の最高機関」として機能するよう抜本的整備を行うこと、(f)立法権優位の原則に基づき行政権を位置付けること、(g)憲法裁判所を設置すること、(h)地方自治の意義と中央と地方の役割を明確にすること、(i)単年度予算制度等を見直すとともに、会計検査院を国会の附属機関とすること、(j)教育の基本理念と文化行政の在り方を明記すること、(k)改正手続の発議要件を緩和すること等としている。


春名 直章君(共産)

  • 今、イラク戦争の根拠とされた大量破壊兵器の存在を示す証拠が虚偽であったということが次々と明らかになり、イラク戦争をブッシュ大統領の言いなりに支持した小泉首相の責任が厳しく問われている。
  • イラク特措法は、明確に9条に違反する。また、イラク国民が求めているのは、医療・雇用・教育などの非軍事の人道支援である。
  • 21世紀の日本の進むべき道は、憲法を改正して、アメリカとともに武力行使を行うという国ではなく、憲法9条及び国連憲章の精神を今こそ守り、活かす国づくりに邁進するところにあると考える。
  • 北朝鮮問題は、あくまで平和的解決を目指さなければならない。
  • 「新しい人権」は、13条を根拠として既に認められていると考える。今、求められているのは、立法によるその具体化である。

<葉梨委員の発言に関連して>

  • 葉梨委員は、周辺国に対する信頼だけで我が国の平和と安全を確保することはできないと指摘するが、憲法前文の定める平和主義は、他力本願を意味するものではなく、平和の外交を積極的に展開することを謳うものである。また、「諸国民の公正と信義」が信頼に足るものであることは、イラク戦争反対に立ち上がった世界の人々を見ても明らかである。
  • 葉梨委員は、日本が侵略を受けないとする根拠は何か、近年、むしろ侵略を受ける危険が増大しているのではないかという問題提起をしたが、それは、従来の武力によらない平和と安全の在り方の希求という方針を変えて軍事力を持つという立場に立証責任があるはずである。


金子 哲夫君(社民)

  • イラク特措法に関連して、(a)イラクに対する米英軍を主体とした武力攻撃は、国連憲章42条に反しており、正当化できないこと、(b)攻撃の大義名分に用いられた大量破壊兵器の存在自体が疑われていることなどにかんがみれば、米国を軽々に支持した小泉首相の責任が問われるべきである。
  • 占領地への参加は、9条2項にいう「交戦権の行使」に当たり、憲法違反である。
  • 我が国のイラク復興支援活動は、憲法の精神にのっとり、ヒロシマやナガサキの被爆体験を踏まえた医療業務等の文民・民生による人道復興支援に限定されるべきである。
  • 今国会の労働関係三法の改正は、27条等で保障された労働の権利を押し下げるものである。そのうち、労働基準法改正の政府案は、使用者の解雇権を明記しようとするものであり、同法の本質を根底から覆すものであったと考える。
  • 近年、経済的事情による自殺者の増加が顕著である。雇用の確保は25条の生存権の見地からも非常に重要であり、政治が解決できる問題であると考える。
  • 27条に定められた勤労者の団結権等の保障は、すべての労働者が享受すべきである。現在の公務員の団結権等の制限は憲法に照らして問題であり、原則として、それらは保障されるべきである。
  • 憲法の現実の状況を調査しその実現を図ることこそが、憲法調査会に求められている課題である。


井上 喜一君(保守新党)

  • 憲法は、対内的規定(基本的人権、統治機構等)及び対外的規定(平和主義、安全保障等)の二つを定めた実体的規範であると考える。
  • 本来、憲法は規範的なものであり、それ自身が実効規定でなければならないと考える。日本国憲法は、明治憲法と比べて理念が根本的に異なるため、規範的性格を有しない前文をあえて置くことにより、その理念を明確にする必要があったのだと思うが、現在、その理念も既に定着したのであるから、次の憲法においては、前文を置く必要はないと考える。
  • 元首的機能が内閣に付与されていることから、内閣の首長たる首相が元首的地位にあると考えられるので、天皇を象徴とする現在の天皇制に関する規定に問題はないと考える。
  • 安全保障に関しては、集団的自衛権を含めた自衛権を有することを明確にした上で、自衛権の範囲及び国際貢献の方向性に関する規定を設けるべきである。
  • 基本的人権に関しては、「新しい人権」について明記するとともに、基本的人権と公共の福祉との関係を明確にすることが必要である。
  • 統治機構に関しては、時代の変化に合わせた制度づくりが求められているが、これは現行制度の運用により対応できる問題であろう。


● 各会派一巡後の発言

奧野 誠亮君(自民)

  • 日本国憲法は、主権や言論の自由等がない中で、GHQによって作られたものである。その制定経緯にかんがみれば、憲法を全文改正し、日本人自身の憲法を持つべきである。
  • いまだに敵国条項が存在することや拒否権の問題があること等、国連にはさまざまな問題がある。日本として国連の改革を求めるべきである。


中川 昭一君(自民)

  • 大量破壊兵器の存在に関するいくつかの証拠が虚偽であるとの指摘があるが、そのような些細なミスがあるからといって、イラク攻撃全体を否定するのはおかしい。
  • 北朝鮮問題の存在等を踏まえれば、憲法前文にある「諸国民の公正と信義」を信頼するだけでは我が国の安全は守れない。国民の安全を守ることは政治家の責務であることを十分認識すべきである。
  • お金を出すことや安全な所だけに行くことのみによっては、真の国際貢献はできないと考える。


金子 哲夫君(社民)

<葉梨委員の発言に関連して>

  • 日本が侵略を受けないと主張する根拠は、「我が国を侵略する国はない」とする政府見解である。
  • 周辺国に対する信頼だけで、我が国の安全が守られると考えているわけではない。信頼を得るためには、積極的な外交努力が必要であり、この点から、「創氏改名」発言、首相の靖国神社参拝、戦中の強制連行に対する個人への賠償問題等が外交姿勢の在り方として問われると考える。
  • 北朝鮮の核兵器開発については、核兵器の非人道性等にかんがみ、その保持を絶対に認めるべきでない。核問題も含む北朝鮮問題については、国際的な枠組みの中で政治的な解決が求められる。
  • ヨーロッパでは、EU統合に向けた努力により戦争の危機が回避されてきたことにかんがみると、北東アジアにおけるこのような取組により、我が国の平和と安全を守ることができると考える。


中川 昭一君(自民)

<金子委員の発言に関連して>

  • 金子委員が「創氏改名」発言や靖国神社参拝問題について指摘をしたが、こうした問題の背景には歴史認識の違いがあり、相手国の主張をそのまま認めることが信頼醸成であるとすることは、まことに無責任な発言かと問いたい。
  • 東アジアの地域的安全保障が構築されるのは望ましいが、ヨーロッパにおいては各国が共通の価値観を有するなど、アジアとは異なる面を持つ。日本が信頼醸成のリーダーシップをとるためには、外交と、それを担保するものとして日本や地域の安全を守る軍事力が必要であり、「対話」と「圧力」をセットで考えてこそ、真の平和が構築できると考える。


今野 東君(民主)

  • 今日、公共秩序の維持と個人の人権保障との関係は、地球規模での開かれた民主的な「コミュニティ」概念の観点からその調整が図られなければならず、現行憲法はこのことを否定するものではないと考える。
  • 「大量破壊兵器に関する情報のミスは全体から見れば些細なことである」旨の中川昭一委員の発言は、今後の情報操作を容認するものであり、問題があると考える。
  • 私は、平和外交に基づく国際協力を実践すべきであると考えるが、湾岸戦争以降、政府は、9条を歪曲して自衛隊の海外派遣を実施してきた。このやり方には限界が来ているのであり、9条改正の是非を国民に問うべきである。


中山 正暉君(自民)

  • (a)人間は脳生理学的に「殺し」の本性を有していること、(b)米国は建国以来その世界戦略を展開してきていること、(c)日本ではスパイ防止法等が制定されていないこと等を踏まえれば、現在の国際情勢の下において国民をどのように守るのかという問題について、党派を超えて考えていく必要がある。


春名 直章君(共産)

<中川昭一委員の発言に関連して>

  • イラクに対する武力行使の根拠とされた大量破壊兵器の存在について、その情報が虚偽であったことが明らかになっており、米英両国やイラク戦争を支持した小泉首相の責任が問われている。こうした国際ルールを壊す根拠となった重大な問題について、「些細なこと」と述べた中川昭一委員の発言の撤回を求めるとともに、その真意を伺いたい。
  • 韓国や中国による北朝鮮問題の平和的解決の流れについて、どのように考えているのか。また、北朝鮮に対し、軍事的圧力を強めることは、問題の解決を遠ざけるのではないか。
  • そもそも、軍事的貢献によってしか国際貢献はできないと考えているのか。


中川 昭一君(自民)

<春名委員の発言に関連して>

  • 大量破壊兵器が存在することは、独・仏を含め各国の共通した認識であった。確かに大量破壊兵器の証拠について情報ミスがあったが、だからといってすべてが否定されるわけではない。
  • 北朝鮮問題について、軍事的圧力によってのみ解決すべきとは言っていない。5カ国協議等を踏まえつつ、「対話」と「圧力」をセットにして、問題解決を図るべきであると考える。
  • 国際貢献には、非軍事的貢献も軍事的貢献もともに必要である。イラク復興についても、生活インフラの再建等について、米国とともにイラクに協力することが重要であると考える。


葉梨 信行君(自民)

<金子委員の発言に関連して>

  • 我々は、平和を希求しないものでは決してない。国連分担金やODAの額をみても、日本は、平和的努力を世界に示しているということができる。しかし、今日、日本の平和を守るために、金銭的なものだけでよいのか、憲法はいかにあるべきかということを、政治の責任として問いかけたものである。


中山 正暉君(自民)

  • 首相の靖国神社参拝について、靖国神社には朝鮮半島や台湾出身者も奉られており、首相は当時の日本の指導者達が戦争を引き起こしたことを詫びに行っているとの私の説明に、中国の学界の権威も理解を示してくれたことを紹介したい。
  • 歴史から学ぶことができるのは、平和の実現は難しいということであり、日本が過度に理想主義的な憲法を制定したことには問題がある。


伊藤 公介君(自民)

  • イラクに対する人道支援に関しては、武力攻撃に反対していたフランスやドイツも前向きであって、日本においても、どの政党も賛成するはずである。しかし、一部の意見は、イラクに対する人道支援は自衛隊ではなく政府の文民や民間人、ボランティア等により行われるべきであるとするが、主要な戦闘が終わったとはいえ、依然、イラクは危険な地域であることにかんがみれば、そのような意見には違和感を覚える。
  • イラク特措法の審議における自衛隊の派遣と9条との関係の論議に見られるように、日本が国際的な貢献を行うために駆使されてきた憲法解釈は、もはや限界に近付いている。自衛隊の海外派遣は憲法違反であるとの呪縛から解き放たれるべきであり、憲法を速やかに見直すことが最良の選択と考えるが、その際には、国連決議に基づいて一定の武力行使をすることができるように規定すべきか否かが、最大の争点となると考える。


谷川 和穗君(自民)

  • 多様な民意の反映を図り、かつ、国政の安定に資する制度を構築するため、衆議院と参議院の選挙システムに違いを持たせる工夫をするとともに、両院の役割分担を明確にすべきである。
  • 議院内閣制の下で国政の安定を図る観点から、59条2項の再議決制度や両院協議会制度の在り方等について、検討する必要がある。
  • イギリス流の議院内閣制には、与党と内閣の一体化など学ぶべき点が多々あるが、日本の特質や現状を踏まえ、日本に適した議院内閣制の運用をすべきである。
  • 首相が強力なリーダーシップの下、中長期的な展望に立って政策を遂行することを可能にするため、衆議院議員の任期と首相(与党党首)の任期を一致させるべきである。


葉梨 信行君(自民)

  • 現行憲法の人権保障の精神は、大いに評価すべきであるが、あらゆる局面において、個人の視点からのみでなく、家族・地域社会・国といった、公の視点からものを考える必要が高まってきていると考える。
  • 「国を守る義務」を憲法上明記することで「社会連帯」の考えを国のレベルで進める(これは、徴兵制の導入等を意図するものでは決してない。)と同時に、「家族・家庭」を通じて、社会連帯の意識を培ってきた我が国の伝統にかんがみ、前文等に「家族や家庭の大切さ」を明記すべきである。
  • 特に「新しい人権」の分野では、伝統的な諸権利に加え、プライバシー権、肖像権、知る権利、環境権等を憲法上採用することについて、積極的に検討を進めていくべきと考える。


仙谷 由人君(民主)

<谷川議員の発言に関連して>

  • 基本的に谷川議員の意見に同意するが、そもそも、議院内閣制の下では、首相候補者・政党の示したマニフェスト・公約を支持した国民が、その政党に政治権力を付与するのであり、本来、与党と内閣の政策の不一致はあり得ないはずである。しかし、自民党を支持しながら、小泉内閣の政策を支持しないという自民党支持者もいるが、小泉首相が総裁選で再選されれば、総選挙で掲げた小泉首相の方針が党の公約になることは当然であって、このような理解は、議院内閣制の在り方として間違っている。このような議院内閣制に対する理解は、早急に是正されなければならないと考える。


春名 直章君(共産)

<葉梨委員の発言に関連して>

  • 主権在民にかんがみ、天皇を元首とすることには反対である。民主主義や平等主義の観点から、将来的には天皇制は解決されていくべきものと考えるが、これは憲法問題であるため、そのためには国民の総意が必要である。
  • ヨーロッパの君主制を参考にして天皇を元首と位置づけるべきであるとの発言があったが、ヨーロッパの君主はイギリスのように統治権の一部が与えられていることが前提であることからも、天皇を元首とすることは日本国憲法の国民主権とは相容れないものである。
  • 葉梨委員は、国民主権の「国民」には天皇が含まれると解釈しているようだが、10条に規定する国民の要件及びこれを受けて制定されている法律等からみて、天皇が、憲法で定める「国民」に含まれないことは自明である。


奥野 誠亮君(自民)

<金子委員の発言に関連して>

  • 近隣諸国からさまざまな批判がある総理大臣による靖国神社の参拝等も、宗教観等によって全く見方が変わることを指摘したい。


水島 広子君(民主)

  • 参考人の意見陳述を踏まえて、自由討議において議論を深めていくべきであるのに、それがなされていない。例えば、「家庭・家族の大切さ」などを憲法上明記すべきとの発言がなされたが、道徳を憲法に規定することによる弊害を指摘した参考人もいるのであるから、その弊害を踏まえた上での主張がなされなければ、参考人の意見陳述は無意味であったことになってしまうのではないか。
  • 道徳的な規定を憲法に置くという議論の前に、道徳が日常生活の中で培われ、子どもが大人とのコミュニケーションや子ども同士の試行錯誤により成長することを認識すべきであると考える。
  • 最近、国会議員によって、子どもを産まない女性は年金をもらうべきではないという生存権の理念に真っ向から反する発言や集団レイプ事件における被害者や女性への配慮に欠ける発言がなされているようだが、許されるものではない。


平井 卓也君(自民)

  • 地方自治制度を保障する憲法8章は、もともとアメリカの連邦制度のようなものを想定していたと考えられるが、地方自治法と政府の通達により中央集権的な制度として運用されてきた。
  • 地方分権が進められる中、地方自治体の努力の有無に関わらず、国から地方への補助は一律であり、改革に対するインセンティブをなくす原因になっている。地方交付税等による暗黙の政府保証の根拠は、憲法ではなく、昭和30年に自治省から出された通達にすぎず、もう一度、憲法8章の「地方自治の本旨」の意義を明確にすべきであると考える。