平成16年11月25日(木)(第3回憲法調査会公聴会)

日本国憲法に関する件について、公聴会を開き、公述人から意見を聴取した後、質疑を行った。

◎午前

(公述人)

 足立区議会議員       白石 正輝君

 会社員           篠原 裕明君

 電気機器メーカー人事課長  平塚 章文君

(質疑者)

 柴山 昌彦君(自民)

 馬淵 澄夫君(民主)

 古屋 範子君(公明)

 山口 富男君(共産)

 照屋 寛徳君(社民)


◎午後

(公述人)

 団体職員    山田 淳平君

 大学生     青龍 美和子君

 無職      森 信幸君

(質疑者)

 葉梨 康弘君(自民)

 和田 隆志君(民主)

 福島 豊君(公明)

 山口 富男君(共産)

 土井 たか子君(社民)


◎公述人の意見の概要 (午前)

白石 正輝君

  • 象徴天皇制は、我が国の伝統には合致するものであるが、実際には外務省は外国において天皇を元首として位置付け、また、諸外国も天皇を元首として遇している。天皇が国を代表する元首であるということを憲法上明確にすべきである。
  • 文言上、9条が自衛権を認めているかどうかは明確ではない。また、拡大解釈により自衛権を認めることは国民の不信を招く。国を守るため、同条2項に「ただし、他国からの不当な侵害に対する自衛のための戦力は、保持することができる。」との文言を加えるべきである。
  • 我が国の平和主義は、自国の平和だけを求めるものではなく、また、資源のない我が国にとって貿易は必要不可欠であり、世界の平和の中にこそ日本の平和があると言える。9条に3項として、「前項の規定にかかわらず、国連の要請があった場合は、国際紛争を解決する手段として武力を行使することができる。」との文言を追加すべきである。
  • 私有財産、特に土地所有権の絶対性から、国民生活にとって必要な道路整備を行うことができない事態が生じている。29条1項の財産権を「国民生活に必要不可欠な財産権」に改めるべきである。また、同条2項について、法律だけではなく、(地方議会において3分の2の多数によって成立するとする)「基本条例」によっても財産権を制限できるようにすべきである。
  • 地方自治の確立のため、地方自治体の権限を明確にし、「地方政府」に近い存在とする。都道府県より大きい単位として道州制を導入し、財政基盤を確立させ、広域的行政を担えるようにすべきである。
  • 地方自治体の自主立法権を明確にし、国と道州の固有の権限を侵さない範囲内で、法律又は道州が定める条例に優先する「基本条例」を定めることができるようにすべきである。
  • 男女平等は国民にとって当然であり、天皇を男性に限る必要はない。
  • 新聞の調査によると、国会議員の過半数が憲法改正に賛成しており、改正は国会の責務である。また、各議院の3分の2以上の賛成という憲法改正の発議要件を2分の1とすべきである。

篠原 裕明君

  • 内閣提出法律案は、政府内で時間をかけて調整がなされ国会に提出されるため、修正の余地がほとんどなく、国会審議が空洞化している。国会での修正を前提とした、よりシンプルな内容の法案が望ましい。他方で、法律の運用については、政省令や通達を参照しないと理解できないようになっていることから、法律で運用の仕方が分かるように規定することも大事である。
  • 議院内閣制の下において、立法はすべて議員立法によるべきであると考えることは適当ではない。議員立法は、政府が提案しにくい事項について活用すべきである。内閣提出法律案の対案としての議員立法は、ほとんど審議されないなど現実的な観点から非効率である。議員立法は、大枠を定めるプログラム的な内容がふさわしい。
  • 国会による会計検査院への検査要請制度をもっと活用するなど、国会と会計検査院は連携して調査を行うべきである。憲法改正に当たっては、諸外国に見られるように、会計検査院を国会の付属機関にすることも視野に入れるべきである。
  • 我が国では、抽象的な法体系が重視されているが、具体的事件がなければ最高裁判所による憲法判断がなされず、結果として内閣法制局に憲法解釈が委ねられている。このような実態を踏まえ、憲法を改正して憲法裁判所を創設すべきである。
  • 国会議員を内閣法制局及び衆参の議院法制局の長にして政治的責任を明確にし、憲法解釈について互いに議論できるようにすべきである。
  • 国会での法案修正を前提とした議論には、多くの審議日数が必要であることから、会期制を見直して、通年国会とすべきである。
  • 野党は委員会への大臣の出席を頻繁に求めるが、大臣の第一の仕事は各省の政策の企画・立案である。副大臣や政務官による答弁が多くなされている英国の例などを踏まえ、この現状を見直すべきである。また、過去の大臣による答弁との一貫性を追求するよりも、鷹揚で活発な議論を重視すべきである。
  • 衆参両院の審議における独立性を前提に、両院の事務局及び法制局について、可能な部分を統合すべきである。
  • 国家統治の前提が憲法制定時から変わってきており、憲法と現実の乖離が見られるところは、憲法改正をすべきである。9条など議論に時間がかかる部分は後に回し、実務的な部分の改正を先行させるべきである。その際、国会と内閣の関係をどうすべきかを念頭において、新しい憲法の在り方を考えるべきである。

平塚 章文君

  • 憲法の存在価値を否定することはできない。憲法の中に改正条項が存在することから、国会で憲法改正について議論することは否定されるべきではない。
  • 憲法改正のための国民投票の実施について、有権者の範囲、投票方法などをあらかじめ国会で検討し、具体化する必要がある。その場合、低い投票率であっても過半数の賛成で要件を満たすのかを議論すべきである。
  • 憲法改正に当たっては、憲法の意味や内容を知る必要がある。しかし、将来国民投票を行う市民が憲法に接するのは、主として義務教育の間に限られ、その時間は少なく、教員の知識も十分ではない。
  • 憲法改正の発議から国民投票までの期間にもよるが、その期間での報道による部分的な情報や知識を基に、国民投票を行うのは難しい。国は日常から憲法について国民の理解を深める努力をすべきであり、それは国民の義務でもある。
  • 憲法や法律は専門性が高く、一部の人にしか理解できない。法律については、その改正について企業での周知、解説がなされることもあるが、憲法は生活との関わりが薄く、その内容を知る機会は少ない。国会における難解な議論ばかりでは、憲法は遠い存在となる。
  • 市民が憲法を身近に認識できる仕組みをつくり、特に若年層が憲法に関心を持ち、理解できるようにすべきである。いわゆる「ニート」に対する自立支援が始まるが、その前に、勤労、納税の義務などを認識させるべきである。
  • 義務教育で憲法を学ぶことは、国民の義務や公共の福祉など本来考えるべき問題の原点を理解することにつながる。その場合には、偏らない教育を行うことが重要である。
  • 裁判員制度が始まり、市民が憲法に接する機会が増えることも踏まえ、憲法を知らない人も国民投票で改正の可否を判断できるよう、憲法を身近に理解することが重要である。

◎公述人に対する質疑の概要 (午前)

柴山 昌彦君(自民)

<白石公述人に対して>

  • 女帝を認めるということは、憲法上、天皇についても男女平等として取り扱うべきということか。
  • 将来女帝が誕生し、その女帝が職務を執行できない場合、摂政に就くのは、女帝の配偶者か、それとも皇太子か。また、皇太子が女性であっても摂政への就任は認められるか。
  • 9条改正に関する公述人の意見は検討に値するが、憲法改正の高いハードルの中で、9条を改正するという意見が受け入れられると考えるか。
  • 公述人が提言する9条2項の「自衛」には、集団的自衛権が含まれるのか。
  • 国家緊急事態や非核三原則等について憲法に明記すべきとの考え方があるが、いかがか。
  • 財産権を制限する手続を考えた場合、具体的な手続について、どのような考えを持っているか。
  • 地方公共団体の首長の多選禁止について、どのように考えているか。
  • 法律に優先する「基本条例」の提案について、徳島市公安条例事件の最高裁判決によれば、上乗せ条例や横出し条例を妥当なかたちで認めることができるのではないかと考えるが、いかがか。

<篠原公述人に対して>

  • 国会議員に法案提出権を独占させるべきという議論について、どう考えるか。
  • 法律案を完成前の大綱段階で提出し、国会で議論していくのは実際上時間が足りないと考えるがいかがか。
  • 委員会審議の中で法案の論点ごとに修正を施していくなど、審議の進め方によって法案審議が充実するのではないかと考えるが、いかがか。
  • オンブズマン制度について、どのように考えているか。
  • 決算行政監視委員会の改革に当たって、何か具体策はあるか。
  • 憲法裁判所を設置すべきという議論や、国会に憲法委員会を設置して憲法に関して常に議論する場を設けるべきという議論等があるが、これらについてどのように考えるか。
  • 政令・通達や事前の承認により様々な行為を規制する事前調整型の行政は、現在、非現実的であると考えるか。
  • 通年国会とした場合、国会議員が、政策について十分に勉強する機会が失われる等の問題があると考えるが、いかがか。また、衆参両院の自律性の観点から、衆参の事務局等の統合は難しいという反論があり得るが、いかがか。

<平塚公述人に対して>

  • 義務教育課程に、憲法について教える時間を設けるとした場合、教師によって思想・信条等に偏りがあると考えられ、批判能力の低い子どもたちにその影響が出てくるおそれがあるのではないか。
  • 他人に迷惑をかけなければ何を行っても構わないという考えが広がり、個人の権利の尊重という概念が歪められていると考えるが、いかがか。
  • 憲法改正に当たって、全条章を一括して国民投票に付するのと、逐条で国民投票に付するのは、いずれが良いと考えるか。
  • 個人の権利に対する考え方に変化が見られる中で、人事課長の立場から、面接に来る学生の気質にも変化が現れていると感じるか。若者のコミュニケーション能力の欠如等の問題に対処するため、海外旅行やアルバイト体験等が重要であるという議論があるが、いかがか。

馬淵 澄夫君(民主)

<全公述人に対して>

  • 本公聴会の公述人募集について、どのような形で知ったのか。また、国民の憲法への関心を高めるアイディアがあれば伺いたい。

<白石公述人に対して>

  • 天皇が元首であることの明記については、元首の意味が問題であり、その明記に固執すべきではないと考えるが、いかがか。また、元首であることを明記していないことにより、何か支障があるのか。
  • 財産権の保障に関しては、公共の福祉による制約が認められており、法律のみならず条例による制約も判例上も既に認められている。むしろ権力による侵害からいかに財産権を保障するか、具体的には公共の福祉の内容が問題となっている。国立市のマンション建設に係る景観訴訟においても司法の判断が分かれているが、この景観訴訟についてはどのように考えるか。

<篠原公述人に対して>

  • 我々が目指す二大政党制の中で、野党が政府案を批判するだけでなく、対案を提出し、国民に争点を提示することや修正によりその一部が取り込まれていくことは有用であると考えるが、いかがか。
  • 公述人が主張する通年国会の導入は、現実の運用等から考えると難しいと思われるが、いかがか。

<平塚公述人に対して>

  • 学力低下が叫ばれている現状において、限られた時間の中で、憲法教育を取り入れていくことは難しいとも考えられるが、いかがか。

古屋 範子君(公明)

<白石公述人に対して>

  • 9条と国際貢献の在り方について、見解を伺いたい。

<全公述人に対して>

  • イラクへの自衛隊の派遣期限を12月以降も延長すべきと考えるか。

<平塚公述人に対して>

  • 若い世代に、どのような形で政治や憲法に関心を持ってもらうことができると考えるか。

<篠原公述人に対して>

  • 今後の行政監視機能の在り方について、会計検査院の機能強化が必要と考えるが、いかがか。

山口 富男君(共産)

<白石公述人に対して>

  • 元首とは、行政権の長として統治権を有し、対外的に国家を代表するものである。日本国憲法では内閣総理大臣が元首であるというのが普通の理解だと考えるが、公述人のいう「元首」とはどのようなものか。
  • 公述人は、国連主導の国際紛争解決に参加できるように、9条に第3項を加えるべきとするが、ここでいう「国連の要請」とは何か。また、国際紛争解決の手段としての武力行使を否定している国連憲章との整合性をどのように考えているのか。
  • 地方自治に関し、公述人の提言する「地方自治体の権限を明確にし、自主立法権を強化する」ことと、「道州は、国の固有の権限を侵さない範囲内において、法律に優先する基本条例を定めることができる」こととはいかなる関係にあるのか。

<篠原公述人に対して>

  • 我が国において、裁判所の違憲審査権が十分に行使されていないのは、最高裁判所の裁判官の任命が政治的な影響を受けることや、裁判官自身の自由・独立性が担保されていないことに主要な原因があると考えるが、いかがか。
  • 行政監視機能に関連して、既に導入されている地方行政分野のオンブズマンについて、どのように考えるか。

<平塚公述人に対して>

  • 96条は厳格な憲法改正要件を規定するが、公述人は、この厳格な規定を評価しているか。

照屋 寛徳君(社民)

<白石公述人に対して>

  • 公述人は、天皇を行政権の長として統治権を有し、国家の対外代表権を持つ元首として明文化すべきと考えているのか。

<平塚公述人及び白石公述人に対して>

  • 先日発表された自民党憲法改正大綱原案によると、憲法改正要件を緩和しているが、これについてどのように考えるか。

<篠原公述人に対して>

  • 憲法改正について、三つの基本原則や改正要件は変更することができないとする限界説と、改正には限界がないとする説とがあるが、公述人は改正の限界についてどのように考えるか。
  • 国民投票を経ずに、国会議員だけで憲法改正ができるようにするとの考えについて、どのように考えるか。
  • 仮に憲法改正案を国民投票に付する場合に、条文ごとに国民投票にかけるべきと考えるか、あるいは全体として改正すべきかを問えば足りると考えるか。

<平塚公述人及び篠原公述人に対して>

  • 9条を改正し、集団的自衛権を行使できるようにすべきとの意見について、どのように考えるか。

◎公述人の意見の概要 (午後)

山田 淳平君

  • 憲法制定時には想定されていなかったプライバシー権などの権利を認める必要が生じてきたが、13条の解釈によって認めるだけでは不十分であり、守られるべき権利は明確に憲法で保護すべきである。
  • 二院制から一院制にすべきであるとの意見もあるが、むしろ参議院の権限を強化し、「良識の府」としての特殊性を活かせるような役割を担わせるべきである。
  • 首相公選制については、いまだ具体的な選出方法が十分議論されておらず、現在のままでは十分に主権者としての自覚を持たない国民による人気投票になるおそれがあることから、その導入は時期尚早である。
  • 司法府に憲法判断を積極的に行わせるためには、憲法裁判所を設置するより、むしろ司法権自体の権限を強化することによって、現在の司法制度の枠組みを維持しつつ改善することが可能である。
  • 道州制の導入により行政は効率化するかもしれないが、歴史ある地方自治体の統合は、現在の市町村合併に見られるように郷土を愛する心を失わせるおそれがあり、住民自治・団体自治の観点からはマイナスである。
  • 憲法は国民にとって最も重要な基本法であり、その改正の際に国民投票が必要であることは当然である。ただ、投票の機会だけでなく情報の提供や討論の場が与えられなければならず、その役割が憲法調査会に期待されている。

青龍 美和子君

  • 私は憲法の中で9条が一番好きであり、9条は世界から戦争をなくしたいという気持ちにストレートに応じてくれる。
  • テロや戦争を通じて罪もない一般市民が命を落とす様を見て、戦争は無差別殺人であると痛感した。どのような理由があっても戦争は許されるべきではない。
  • 9条2項の「戦力の不保持」をすべての国が実現すれば、戦争のない世界を実現でき、そのことから、9条は戦争に対する根本の解決策を示していると言える。
  • 9条には、戦争によるアジアや国内の多くの犠牲者の知恵と願いが込められている。その犠牲者の思いは「二度と同じ思いはしたくない、させたくない」であり、9条の示す方向は間違っていない。
  • イラクでの自衛隊の行動は、9条に反しており、戦争をする状況に近づいている。今、9条を持つ日本には、武力による解決ではなく、話し合いによる平和的解決を世界において目指す役割が求められている。
  • 国連の軍縮会議の議論にみられるように、国際社会の平和を希求する流れの中から考えれば、9条2項の輝きは大きく、唯一の被爆国として日本は9条の示す方向に世界を導くべきである。
  • 9条を変えるべきではなく、世界から戦争をなくすべきである。これは理想論だが、理想を現実にする努力をなすべきであり、それをせずに9条を変えるべきではない。

森 信幸君

  • 私は、全日本年金者組合の中央執行委員長を務めている。私たち高齢者の間では、社会保障制度に関連して9条や25条がよく話題に上っており、憲法は身近なものとなっている。
  • 私たちは、身近な友人をはじめアジア諸国の多くの人々が犠牲となった第二次世界大戦の体験から、平和憲法である日本国憲法を喜んで迎え入れた。憲法は、戦争の犠牲の上に、平和と民主主義への思いと努力に支えられて誕生し、現在ますますその輝きを増している。
  • 最近、改憲への動きが活発になっているが、憲法、特に9条の理念は、国民に深く根付き、国際的にも輝きを増している。私たちは、日本と世界の人々を再び戦争の惨禍に巻き込むことのないように、9条を守っていく必要がある。
  • もし改憲を唱えるのであれば、憲法の「理想と目的」がどこまで実現されたのかをまず検証すべきであり、それは99条(憲法尊重擁護義務)に定められている義務である。
  • 年金問題については、今年の年金改革法案の審議における与党による強行採決や閣僚・議員の保険料未払問題などにより、国民の年金に対する不信・不安は募るばかりである。
  • 年金危機の要因とされる「少子・高齢化問題」は自然現象ではなく、社会の力で克服できる。女性の社会参加と少子化の克服を表裏一体のものとして議論する地方自治体やスウェーデンの取組が参考になろう。
  • 21世紀は、憲法の「理想と目的」を実現する世紀であり、再び過ちを侵さぬよう歴史の教訓を踏まえて進んでいくべきである。


◎公述人に対する質疑の概要 (午後)

葉梨 康弘君(自民)

<全公述人に対して>

  • 今回の公聴会については、どのような経緯で、一般からの公述人を募集していることを知ったのか。
  • マスコミは、憲法調査会の活動をもっと取り上げる等、国民に対して憲法についての情報提供を充実させるべきと考えるが、いかがか。
  • 政党は、憲法問題に関して具体的な道筋を示すべきであり、憲法に対する姿勢を明らかにしないまま政権選択の判断を国民に求めるべきではないと考えるが、いかがか。

<山田公述人に対して>

  • 公述人は、新しい人権としてプライバシー権を例示したが、それ以外には、どのようなものが考えられるか。
  • 新しい人権として挙げられているものの中には、権利侵害の主体が必ずしも国家とは限らないものも含まれているが、それを憲法に明記する意義は何か。
  • 昨今は他人に対する配慮が欠けているのではないかと考える立場からは、憲法には、他人の権利を尊重することを明記すべきと考えるが、いかがか。
  • 公述人は、憲法裁判所の設置は時期尚早と述べたが、現在の憲法裁判には、(a)統治行為論による憲法判断の回避及び(b)判決等の理由中における傍論部分で違憲判断を述べる場合があることといった問題点がある。このような問題点を踏まえた上で、改めて、憲法裁判所の設置の是非について伺いたい。

<青龍公述人に対して>

  • 自衛隊は、違憲であると考えるか。また、ほとんどの政党が自衛隊を合憲としていることを承知しているか。
  • 自衛隊が憲法に反しているとすると、違憲である自衛隊が存在することは、諸外国に対して我が国に不信感を与えているのではないか。平和主義を明らかにするためにも、自衛隊の存在を認めた上でその活動に歯止めをかけることを明示した方がよいと考えるが、いかがか。

<森公述人に対して>

  • 生存権を謳う25条には、「互助」の概念が含まれていないと考えるが、いかがか。

和田 隆志君(民主)

<全公述人に対して>

  • 最初の公述部分で述べた以外の分野において憲法が実現しようとしている理念をどのように評価するか。
  • 国会が憲法改正を発議して国民投票にかけるとき、すべての改正条項を一括して国民に問うべきか、改正条項ごとに国民に問うべきか等、どのような形で国民に問えば国民の意思が反映されやすいと考えるか。

<山田公述人に対して>

  • 日本と異なる統治機構である米国の大統領制についてどのように考えるか。また、米国の大統領制はうまく機能していると考えるか。
  • 日本の議院内閣制に満足しているか。

<青龍公述人に対して>

  • 世の中には武器を持った人間や国があることを前提として、なお日本は武器を持たない選択肢をとるべきであるという考えについてどう思うか。

<森公述人に対して>

  • 9条の文言は、ベストのものと考えるか。

福島 豊君(公明)

<全公述人に対して>

  • 北朝鮮からミサイルを撃ち込まれた場合や中国の原子力潜水艦による領海侵犯のような事態に対して、日本はどのように対応すべきと考えるか。

<山田公述人及び青龍公述人に対して>

  • 若い世代にとって、憲法はどのような位置付けなのか。

<山田公述人に対して>

  • 学校で9条を丸暗記させられたとの話であったが、憲法についての教育は、丸暗記や一方通行の教育であってはならないと考えるが、いかがか。

<青龍公述人に対して>

  • 日本が60年近く平和を保つことができたのは、冷戦構造の下における日米同盟関係などがその理由であるとするのが国際政治学における一般的な理解であると考えるが、このような考え方をどのように評価するか。

<森公述人に対して>

  • 戦前、日中戦争、日米開戦などにおいて他に選択肢があったと思われるにもかかわらず、なぜ日本はあのような途をたどってしまったと考えるか。

山口 富男君(共産)

<山田公述人に対して>

  • 憲法について議論すべき項目として公述人が述べたものの中には、平和主義が含まれていなかったが、前文や9条の平和主義についてどのような見解を持っているか。
  • 憲法は我々にとって身近なものであるとの発言の趣旨は何か。

<青龍公述人に対して>

  • 公述人にとってイラク戦争が憲法を考えるきっかけだったとのことだが、若い世代は、イラク戦争をめぐり世界で起こっていることで憲法に対する関心が高まっているという体験をしていると考えてよいか。
  • 大学で憲法を勉強する中で、感銘を受けたり発見したこととしてどのようなことがあるか。
  • 憲法には、平和主義や国民主権等の憲法の理念を将来に向かって引き継いでいくべきであることが書かれてある。公述人の発言は、現在の若い世代は憲法の理念を引き継ぐという意思を持っているとの意味か。
  • 9条を大切にするという立場から、環境や難民問題など、政治がなすべき仕事として何があると考えるか。

<森公述人に対して>

  • 憲法制定当時、公述人は憲法を「喜びをもって迎えた」とのことだが、これについて詳しく伺いたい。
  • 今日の議論を聞いて、高齢者にとっての憲法の議論と若者の間における憲法の議論の差について感じたことはあるか。

<山田公述人及び青龍公述人に対して>

  • 森公述人の陳述を聞いてどのような感想を抱いたか。

土井 たか子君(社民)

<全公述人に対して>

  • 外部から見た衆議院憲法調査会の印象と実際の印象とでは、どのような違いを感じたか。

<山田公述人に対して>

  • 新しい人権を明文化したからといってその権利が実現されるものではなく、権利を実現する具体的な努力こそ必要なのである。新しい人権は、現行憲法の下でも法律により実現することが可能であると考えるが、いかがか。

<青龍公述人及び森公述人に対して>

  • 憲法を改正する状況というのは、本来もっと国民的な運動が起こっているときであるはずだと考えるが、現在はむしろ国民の間では憲法を大事にしようという機運の方が強い。いま憲法を変えるのではなく尊重することこそ大切なのではないかと考えるが、いかがか。