金沢地方公聴会 意見陳述者意見概要

基本的人権の保障のあり方

蓮池 ハツイ

私は、北朝鮮に拉致された蓮池薫の母で、ハツイと申します。

私は、年老いた一年金生活者ですので、日本国憲法の細かい解釈などはよく分かりません。しかし、今回のテーマである「基本的人権の保障のあり方」という言葉を聞くと、ただ虚しさだけを覚えます。果たして、この国において基本的人権の保障など存在するのだろうか。誰がそれを保障してくれるのか。24年間息子の帰りを待ち続けて、ずっと考えてきたのがそのことです。

息子は、決して裕福とは言えませんが、普通の家庭に次男として生まれました。確かに、小学生時代交通事故に遭い、両足に重傷を負ったため切断の危機に瀕しました。しかし、それも見事に克服し、中学校時代は野球部のキャプテンとして活躍するまでになりました。そのようにして、立派に成長し幸福な日々を送っていたと思います。あの忌まわしい昭和53年7月31日の夕方までは。

息子の姿が見えなくなってからの気持ちは、一言では言い表せません。悲しみ、苦しみ、虚しさ、あきらめ、悔しさ、怒りなどなど、色々な気持ちが私の心の中で交錯していました。どのような因果か分かりませんが、昨年10月15日、息子は24年ぶりに故郷の土を踏みました。そして、積年の願いが叶いました。しかし、未だに息子たちの子供たちは北朝鮮の人質として囚われの身にあります。さらに、まだ生存が確認されていない拉致された日本人が大勢います。

これらのことを考えると、まだまだ諸手を上げて喜べないのが、本当の気持ちです。

基本的人権とは、何事にも侵されることのない、生命、自由、幸福を追求する権利であると伺っています。私の息子は、あの日そういった権利を一瞬の内にすべて奪い取られました。誰もが夏を満喫するごく普通の国内の海岸で、北朝鮮の工作員という海外からの侵入者の手によって、突然自由を奪われ拉致されました。そのとき、息子がどんなにか恐怖におののき、生命の危険さえ感じたかは、想像を絶するものがあります。その後、息子は恋人と結婚し二子をもうけ、朝鮮語も覚え24年間生活してきたといいます。しかし、それは決して幸福などといえるものなどではなく、彼の国で何とか生き延びるための術であったとしか言わざるを得ません。祖国のことを日々考え、救出の兆しさえ見えない中、どんなにか苦しい生活をしていたのかを考えるとき、息子たちが不憫に思えてしょうがありません。

北朝鮮による日本人拉致は、基本的人権の侵害の極みです。そして,何事にも侵されることのない権利が他国によって侵されているのですから、これは国家主権の侵害です。到底許すことのできない凶悪犯罪であり、国家テロです。どうしてこのような状態が24年以上も続いているのか、不思議でなりません。基本的人権を保障するのが国家の役割ではないのでしょうか。日本国憲法など、この国では遵守されていないと言っても過言ではないと、私は思っています。


非常事態(安全保障を含む)と憲法

島田 洋一

今年三月上旬に、拉致被害者家族会・救う会訪米団の一員として米国・ワシントンを訪れ、米政府高官や議員に早期解決に向けた協力を訴えた。米国の議員は「子供を人質とは卑劣きわまりない。海兵隊を送って救出すべきだ」とまで言った。アメリカで常識的な発想が、なぜ日本では出て来ないのか。そこに憲法の制約がある。

民間人拉致は戦争犯罪行為であり、戦時においても許されない。日本政府は、解決のため経済制裁を行うなど厳しい姿勢を示さねばならない。

北のNPT脱退や、核に関するさまざまな国際合意違反に対しても、「唯一の被爆国」日本は、単独でも経済制裁を課し、強い意思を示すべきだ。

北が秘密裏の核開発をやめないだろう。だからブッシュ政権は、イラクと同様、北朝鮮についても「政体変更(regime change)」実現を基本方針としている。

ソウルや日本、在韓米地上軍が「人質」に取られている現状では、軍事的な先制攻撃は最後のオプションとして、まずは経済的締め上げを通じた解決を目指すだろう。

北朝鮮問題はヤマ場に来ている。北が核再処理施設を稼働すれば、六カ月で原爆五、六発分のプルトニウムが出る。この場合、アメリカは、軍事的決着を考えてくるだろう。米国は、周辺諸国が北朝鮮攻撃に反対しても、米国独自の判断で、必要とあらば攻撃を実施する。

日本は、具体的にどう対応するのか、独自の判断を迫られることになる。

経済的締め付けは怖くてできない、一方、米軍による攻撃も困る、何とか米朝で「話し合い解決」してほしいといった安易な姿勢をブッシュ政権は許さないだろう。

日本としては、北朝鮮が日本向けミサイルに燃料注入するのを確認した段階で「敵基地先制攻撃」できる能力を早期に保有することや、同盟国の名に値する日米共同軍事行動が取れるよう、憲法を含む法体系を整備することが重要だ。


基本的人権の保障のあり方

松田智美

日本国憲法は,憲法13条以下で,国民の基本的人権を保障しています。そして,憲法14条以下で特に,詳細な規定を置いています。

これら14条以下の規定は,過去の歴史において,特に国民に対する権利侵害が強かった重要な権利・自由を規定したものであり,時代の変化に伴い自己の生存に不可欠な権利はいわゆる「新しい人権」として,主張されるようになりました。

ところで,最近では,時代の変化に伴い新たに認められるようになったいわゆる「新しい人権」を憲法改正により,創設しようとする意見があるようです。

しかし,憲法は13条で幸福追求権が認められており,14条以下で規定されていない新しい人権については,憲法13条で憲法上保障されています。

判例でも,すでに肖像権などが憲法上の権利として認められています。

従って,いわゆる新しい人権は,憲法13条で保障することが可能であり,同条で保障された人権を具体的に立法化して権利の保護が守られれば足りるのであり,憲法を改正して新しい人権を規定する必要はありません。

このように,広く憲法13条により認められ,このプライバシーの保護について,国会で個人情報保護法案として立法化が審議されています。

しかし,この立法自体,マスコミの表現の自由を制限しようとする意味合いが強く,一方で行政から個人の情報を保護する点については,極めて不十分な内容となっています。

なお,行政機関については,行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が施行されていますが,その内容は例外規定が多く,国民の個人情報を保護するには十分とはいえません。

国は,憲法改正について議論する前に,現在認められている人権を具体化する立法についてその内容を再検討すべきです。