高松地方公聴会 意見陳述者意見概要

開陳する意見の要旨

根本 博愛

(1) 1990年代以降、多くの改憲案が発表されて今日に至っている。その人権条項の内容をみると特徴的なこととして、@プライバシー、知る権利、環境権など、いわゆる<新しい人権>の保障、A公共の福祉による人権制限、B国民の義務の強化、そして直接には人権条項ではないが第9条の改正等にあるように思われる。

(2) 近代市民社会の登場以降、人権保障の発展過程を巨視的にみると、古典的自由権の登場、社会権の保障、人権の国際的保障、そして今日、特に発展途上国に必要とされる民族自決権の尊重、発展の権利、平和への権利、健康な環境を求める権利、食糧への権利などが世界的な協力という平和的手段によって実現されることが求められているように思われる。

(3) 人権の国内的保障と国際的保障は相互補完関係にあり、その歴史的な発展過程を一方において巨視的に、他方において微視的に複眼的にみるとき、(1)に述べた近年の改憲案の特徴が<新しい人権>の保障という時代の要請にこたえようとしながら、他方で、権利の制限、義務の強化、とりわけ第9条の改正ということには疑問を覚える。

(4) <新しい人権>の実現に今必要なことは、憲法上に規定することもさることながら、立法化による具体化であり、人権の制限というよりは、最大限の尊重を通して生れてくる公共の秩序が大切であり、国内における人権保障の充実が積極的な国際貢献につながるのではないだろうか。

以上。


「統治機構(地方自治を含む)のあり方」 〜地方自治制度について〜

鹿子嶋 仁

現行憲法における地方自治の規定部分(第8章)は、地方自治を保障し、地方自治の理念を明らかにする上では、簡略に過ぎると考えます。

この点は、国と自治体の役割分担を記し、より具体的に地方自治の理念・原則を明らかにすべきと考えますが、中でも、私が強調したいのは、基礎自治体に係る規定の充実が必要であるという点です。
 平成の市町村合併で、多くの基礎自治体が規模を拡大しています。

今次の合併が目指した自治体の基礎体力の向上は、これが必要な場面があることは否定できません。

しかし、問題は、効率性という観点だけでは規模の拡大における上限がないということです。

個人的には、住民自治を行うには、自ずと規模の限界があると考えます。住民の声を行政に反映させるといっても、人口100万都市における場合と人口1万人における場合では、自ずとその実質は異なるものとなります。
 現行憲法における「地方自治の本旨」は、従来から「団体自治」と「住民自治」の2つの原則から構成されると解されてきたところですが、現行法制度において「住民自治」の仕組みは、議員・首長の公選制あるいは直接請求権等わずかなものを除いて、ほとんどなかったといって過言でないと思います。

住民自治の実質的欠落こそ、戦後わが国における地方自治制度の最大の欠陥であると考えます。
 このような状況に対応すべく、自治基本条例あるいは住民参加に係る独自条例を設けるという動向が全国の自治体に拡大しつつあります。

現在、地方自治を巡っては、一方で市町村合併に見られる規模の拡大と、他方で地域分権という動きが同時に進行している状況にあるといえます。

憲法改正議論においては、道州制の導入が一つの焦点となっていますが、住民自治が実現される場である基礎自治体に係る議論が薄弱である点を危惧します。