広島地方公聴会 公述人意見概要

「基本的人権の保障のあり方」   人権なくして成長なし…憲法第25条を活かそう

佐藤 周一

失業率は5%前後,417万人の若者がフリーター。その7割がやむを得ずそうしています。広島県では大学を出ても就職できない学生が半分以上。自殺者は年間3万人以上。「健康で文化的な最低限度の生活」を送れない人が多く出ています。

かつて、生活保護を巡る裁判で「憲法は努力目標」という判断を裁判所が出した事もありました。当時の経済状態なら、そうした弁明の余地もあり得たかも知れません。

しかし、不況とは言え、今や日本は世界最大の債権国でもあります。経常収支の黒字は過去最大規模。大手企業の多くも過去最高の利益を上げています。

表面的には、株価や景気指標などが持ちなおしている様にも見えます。しかし、それは、中国の異常な金融緩和によるバブル景気と日本政府による巨額のドル買い為替介入で外需が支えられているからであり、庶民の暮らし向きは苦しいままです。政府が掲げる「構造改革」は破綻し、憲法第25条に反する状況を生み出しています。

こうした矛盾は、今の日本が憲法を活かし切っていない事が原因ではないでしょうか。政府は財政難を理由に地方交付税交付金をカットしたり、医療費の自己負担を引き上げたり、高齢者を中心に庶民への増税を決めたりしています。

一方で、20兆円もの為替市場へのドル買い介入を行い、6000億ドル以上の外貨準備を積上げ、大半がアメリカ国債で運用されています。アメリカの財政赤字を支えるためなら御金を惜しまない日本政府は、日本国民のためには御金を惜しむ。

もし、こうした歪みを正し、例えば、失業保険の給付期間を現行法の枠内でも緊急に延長する、医療費の負担増はやめる、増税は当面見送る、などすれば、個人消費は回復するでしょう。引いては外需に頼らずに、景気全体も回復します。「改革なくして成長なし」ではなく、「人権なくして成長なし」ではないでしょうか。憲法第25条に基づく経済政策を強く求めます。

以上

「非常事態(安全保障を含む)と憲法」

秀 道広

およそ人と社会が生きて活動を営む限り、天災、人災を問わず、予期し得ない大小の出来事が起こることを何人も防ぐことはできない。

我が国は戦後59年間にわたり、幸いにも現憲法の下に国家的平和と個人の権利、自由の拡大を謳歌してきた。しかし現在、国民はその好むと好まざるとに関わらず、我が国が世界の至る所で直接紛争ないし戦争の危機に直面し得ることを実感するようになった。

我が国の安全保障を巡る議論は、これまで長い間戦争の是非や他国侵略の危惧に終始してきたが、我が国に独自の軍隊が必要であることは今や多くの国民の同意する事項になりつつある。もはや自衛隊の違憲、合憲といった神学論争はやめにして、これからは自衛隊の明確な位置づけ、あるいは新たな国軍の創設を行うとともに、それらが非常事態に対処し得るための憲法の改正と各種関連法の整備を急ぐべきである。その際、軍隊の行動を監視、制御するシビリアンコントロールの体制作りが必要なことは言うまでもない。しかしそれにも増して大切なことは、そもそも守るべき国家アイデンティティを確認することである。国家の基本的役割が、国民の生命と財産を守ることにあることはしばしば指摘されるところであるが、それはむしろその時々の行政府の役割であって、独立した国家の成り立ちはその国の歴史を踏まえた誇りある理念に立脚したものでなくてはならない。また日本国民の持つ強い平和希求の精神は、世界平和実現のための積極的国際貢献の形で発揮されるべきものであって、現在のような自国ないし個人の自由と権利ばかりを強調する姿勢の中からは、困難に打ち勝って平和を維持するための精神と機能を生み出すことはできない。

以上より、我が国は早急に憲法第九条二項を削除し、自衛隊を軍隊として整備するとともに、憲法前文の内容を全面的に改正して我が国の歴史、伝統、文化を踏まえた国家像と国際協力主義を明らかにする必要がある。


「非常事態(安全保障を含む)と憲法」

高橋 昭博

私は、中学二年生、十四歳のとき、爆心地から一・四キロbの校庭で被爆した。後頭部、背中、両手、両足に大火傷を負い、一年半の闘病生活ののち、文字どおり九死に一生を得た。級友約六十名のうち、現在、私を含めて十四名が生き残っている。私は、被爆の後障害と思われる慢性肝炎をはじめ沢山の病気をかかえている。病弱な体にムチ打ちながら被爆体験を語り続けて三十二年、ざっと三千回、三十万人の人たちが耳を傾けてくれた。私は、被爆の苦しみや悲しみ、そして、恨みつらみを克服して、平和の喜びをかみしめながら、立ち直ることができた。それは、世界に冠たる「戦争放棄」をうたった「平和憲法」があったからにほかならない。私は、憲法改正、とりわけ、第九条の改正には断固反対である。第九条の条文からして自衛隊そのものが日本にはあってはならない存在である。一歩ゆずって自衛力として認めるとしても、自衛隊が海外へ派遣されることは憲法蹂躙もはなはだしいと言わなければならない。第九条の改正によって見えてくるのは、徴兵制の施行であり、核兵器の保有である。私は、被爆者として断じて許すことはできない。
 わが国は、かっての侵略戦争を反省し、再び戦争の惨禍を繰り返してはならないとの誓いから、第九条が生まれたのである。わが国は平和外交を基調とする全方位外交を果敢に展開しなければならない。世界に一つ位、軍隊を持たない国があってもいいのではないか。
「国家であれ、民族であれ、外からの攻撃によって崩壊するのではなく、内に創造力が失われた瞬間から滅亡が始まる」――二十世紀の最もすぐれた文明史家である、英国のアーノルド・トインビーの言葉を、私たちはかみしめたいものだ。わが国には憲法改正よりもっと緊急な課題が山積している。政治不信を解消し、経済を再生させ、教育の改革・充実を図り、治安の回復を真剣に考え、世界で一番安全な日本の復活をめざす時ではないか。

以上

「非常事態(安全保障を含む)と憲法」

平田 香奈子

非常事態や安全保障を言う時、戦争を前提にしてはいけないと思います。日本は50数年前、アジア諸国を侵略し、太平洋戦争という大きな戦争を引き起こしました。その戦争でたくさんの人々の命、生活を奪いました。その反省ともう戦争は2度としないという誓いのもとに日本国憲法は生まれたのだと思います。

日本は平和憲法をもち、経済的にも先進国です。飢えや病気や紛争で死んでゆく子どもたち、その親たちに彼らの未来を切り開いていくための援助ができるはずです。そして世界中の一人一人がよりよい人生を送るため、幅広い意味での平和を日本はイニシアチブを取って発信していかなければならないと思います。

暴力に対して暴力では何も解決できません。テロは貧困から起こります。世界は僕らを見てくれていないという絶望から起こります。非常事態といわれるものを起こさないようにするのが本来の外交です。北朝鮮問題に対しては、まず北朝鮮だけでなくアジア諸国に先の戦争の謝罪と賠償、補償をちゃんとすることです。戦争の謝罪と補償や然るべき対応がないために苦しんでいる人々が未だにいます。今回の自衛隊のイラクへの派遣がアジア諸国・アジア諸国民に対してどれくらい脅威となっているでしょうか。

日本国憲法は世界に誇れる憲法です。そして世界の大きな流れは平和へと向かっています。その中で日本は戦争する国へと逆行しているのです。戦争も基地も私たちにもこれからの子どもたちにもいらないのです。憲法が現実とギャップがあるといわれるのはただ政府が憲法を守っていないからであり、憲法を調査する前に憲法を守る義務を果たしてほしいと思います。

以上

「統治機構(地方自治を含む)のあり方」について

岡田 孝裕

わが国の地方自治は長い間3割自治といわれてきた。このことは民主主義国家を形 成する上で最も重要な役割を持ち、その基盤となるべき地方自治が不十分であること を如実に示している。

明治以来、欧米先進国に追いつくため、強力な中央集権国家の形成をめざした国家 目標が戦後も一貫して受け継がれ、国による地方統制、国と地方の主従関係が定着し てきていた。

近年この問題に関する世論の高まりから、地方分権一括法の制定等により、理念・ 法制両面の改革は一定の成果を得ているが、3割自治と揶揄されたその実態は、特に 自治の根幹である財政面において国に大きく依存し、地方の自立を弱めている現状に ある。

私は長い間地方政治にかかわった経験から、21世紀を展望するとき、内政として は地方自治の確立こそ最も重要な課題であるとの思いが強い。

国の統治機構を考える上で、このことを中心的課題として考慮する必要がある。

次に具体的に意見を述べたい。

  1. 先ず基本的観点として、国と地方の役割を明確に規定し、これを明記すべきであ る。その上で地方自治の重要性にふさわしい位置づけと表現が必要である。
  2. 現憲法では第8章4カ条の位置づけであるが、人間生活の主要な場(地域社会) における住民としての権利と義務は、最も近い存在である地方自治体との関係におい て実現すべきである。地方分権を更に強化し、国の関与は最小限にすべきである。
  3. 現状における国と地方の業務の割合は、4 対 6 であるにもかかわらず、その 収入は、6 対 4 となっている。このことが財政を通した国から地方への関与を強 め、地方の自立を妨げている。地方自治は財政的裏付けがあってこそ実現する。地方 財政の保障に関する規定を必須としたい。
  4. 21世紀の地方自治は住民に最も近い市町村自治とこれを支援する地方政府が中 心となるべきである。ソフトな国家像を目標に持ち、地方文化の創造、広範な人材の 育成を視野におき、地方主権とも言うべき真の地方自治の実現を期したい。
  5. 現在進行中の市町村合併の成果をもとに、地方政府の将来像として、日本国を9 つのの州(政府)に再編する。現在、国の地方機関と都道府県は二重の組織となって おり、州政府として統合すべきである。これによって地方を強化するとともに東京一 極集中の弊害に対処することができる。

    予想される9州

    北海道、東北、北関東(新潟を含む)、東京、南関東、中部、近畿、中四国、九州 沖縄

    以上

「統治機構(地方自治を含む)のあり方」

小田 春人

憲法改正賛成の立場で陳述します。

まず総論的に、

  • 私たち団塊の世代の憲法意識とその問題点や影響
  • 現在の小学校・中学校・高等学校における憲法教育のあり方

について述べます。

次に本論として、

  • 国会の衆議院・参議院の二院制の問題点
  • 最高裁判所裁判官の国民審査の問題点

そして特に地方自治のあり方について、現行憲法の不備を申し上げたいと考えています。

以上