論文優秀者(清原 芳治)

衆議院憲法調査会に望むもの

大分合同新聞文化センター出版編集委員
清原 芳治

 本年一月二十日に衆参両院に超党派の憲法調査会が設けられ、五年後を目途に憲法改正についての報告書をまとめることになった。憲法改正の是非は別問題として、憲法について自由かつ広範囲にわたって議論することは民主主義社会の下では不可欠であり、これまでそれがなされなかったことはむしろ異常であったというべきである。そこで、憲法調査会の今後の活動についてささやかな提言を行いたい。

 まず第一に要望したいことは憲法論議を単に国会内部にとどまらせず、さまざまな分野と広範な地域での議論を呼び覚ます努力をしていただきたい、ということである。例えば、私の住む大分県に則して言えば、各政党やマスコミ、地方六団体、経済団体、農業団体、社会教育団体などを網羅した「憲法を考える大分県会議」(仮称)を設置し、討論会や意識調査などを年に四回ぐらい実施するのである。それによって人々が憲法をより身近に感じ、日常生活との関わりで捉える意識が芽生えてくると思われる。なお、こうした地方での「考える会」の討論には憲法調査会代表者の出席を求めたい。

 次に海外在留邦人からも意見を求めて欲しい。わが国での憲法改正論議はともすればアジア諸国を中心に再び軍国主義の道をたどるのではないか、と警戒を以て受け取られる。そこで海外の事情に詳しい在留邦人の目から見た憲法論議の在り方を是非とも取り入れ、議論そのものにも加わってもらうことも一つの方法だと考える。

 さらに言えば、海外諸国がわが国の憲法論議に対してどのような考えを持っているのかもさまざまな機会を通じて把握すべきであろう。憲法は国の基本法であり、その論議は主体性を持って行うべきことは当然だが、わが国の過去の歴史と国際関係の緊密化から、あえて諸外国の意見を聞くことも一つの方法だと考える。

 憲法論議にインターネットなど最新の情報手段を活用することも必要だろう。すでに取り入れているかも知れないが、調査会でホームページを開設し、憲法論議の焦点がどこにあるのか、憲法と現実とのズレをどう解消すべきか、新たに憲法に明記すべき事柄はどのようなものが考えられるか、など憲法を考える上で参考とすべき資料を客観的な立場で作成し提供することをお願いしたい。

 憲法が公布されてすでに五十三年が経過し、わが国をとりまく国際情勢も国内の社会状況も大きく変化している。現行憲法が現実にそぐわなくなっている面や新たな社会事象の生起で不備な面もある。半面、国の方向を明確に規定しているため、暴走を食い止める作用を果たしてきた面もある。こうした面をどのように評価するか、によって憲法論議の意見が分かれてくる。「最初に改憲ありき」ではなく、国民の憲法意識を高め、考える資料と場をつくることからスタートすべきだろう。