小委員会 昭和21年8月8日（第9回）

昭和二十一年八月八日（木曜日）
　　　　午前十一時三十四分開議
　出席委員
　　　委員長　芦田　　均君
　　　　　廿日出ひろし君　　　　江藤　夏雄君
　　　　　　犬養　　健君　　　　吉田　　安君
　　　　　　鈴木　義男君　　　　森戸　辰男君
　　　　　　林　　平馬君　　　　大島　多藏君
　　　　　　原　夫次郎君　　　　西尾　末廣君
　出席政府委員
　　　　　　　　　　法制局次長　佐藤　達夫君
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　本日ノ会議ニ付シタ議案
　　帝国憲法改正案（政府提出）
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○芦田委員長　是ヨリ会議ヲ開キマス、新シク四箇条ニ亙ツテ多少ノ修正ヲ加ヘル意見ガアリマスカラ、ソレヲ御諮リ致シマス、第三条、第四条、第五条及ビ第七条ノ字句ノ修正デアリマス、第三条ノ「天皇の國務」ト云フノヲ「天皇の國事」ニ改メ、第四条ノ「國務のみを行ひ」ト云フノヲ「國事に關する行爲のみを行ひ」ト改メ、「その他の國政」トアル所ヲ、単ニ「國政に關する權能を有しない。」ト云フ風ニ修正スルコト、第四条二項ニ於テハ、「その權能」ト云フノヲ「その國事に關する行爲」ト改メルコトト云フノデアリマス、第五条ニ於テモ「權能」ト云フ字ヲ「國事に關する行爲」ト改メ、第七条ノ「國務」モ同様ノ言葉ヲ以テ修正シヨウ、斯ウ云フ点デアリマス、之ニ付テ御意見ヲ御諮リ致シマス、修正ニ御異議ゴザイマセヌカ
　　　　〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○芦田委員長　ソレデハ一応只今申上ゲタ通リニ修正スルコトニ致シマス、第六条ノ二項ノ修正案ノ中ニ、「天皇は、内閣總理大臣の指名」ト云フ文字ガアリマスガ、之ヲ「天皇は、内閣の指名」ト更ニ修正シヨウト云フ案デアリマス、是モ御異議ハアリマセヌカ
　　　　〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○芦田委員長　次ハ第五十一条デアリマシテ、五十一条ノ「兩議院は、各々その議員の選擧又は資格に關する爭訟を裁判する。」ト云フ事項ノ中デ、資格ニ関スル争訟ハ従前通リトシテ、選挙ニ関スル争訟ダケハ議院ニ於テ扱ハナイコトニシヨウ、ソレハ理由トシテ技術的ノ困難モ考ヘラレマセウシ、又多数党横暴等ノ弊害ヲ予メ避ケヨウト云フ趣意モアルト思ヒマスガ、修正案ハ「選擧又は」ト云フ四字ヲ削ツテ、「その議員の資格に關する爭訟を裁判する。」ト云フコトニ止メテ置キタイ、斯ウ云フ趣意デアリマス、之ニ対スル御意見ヲ伺ヒマス
○鈴木（義）委員　多数デアレバ已ムヲ得マセヌガ、是ハ非常ニ大事ナコトデ、既ニ貴族院トノ協議会デモ、約一箇月ニ亙ツテ案ヲ研究シ、サウシテ貴族院ノ方デハ是非是ハ削ツテ欲シイト云フ御意見ガアツタケレドモ、私共ハ存置スルコトニ考ヘタノデアリマシテ、今一度一ツ委員諸君ノ御考慮ニ愬ヘテ置キタイ、「選擧」ダケヲ削ツテ「資格」ダケヲ残シテ置クト云フコトハ、第一片手落デ変ナモノデアリマス、サウ云フ裁判的ノコトハ衆議院ハヤラヌト言フナラバ、両方トモ司法裁判所ニ譲ルベキデ、ソレハ三権分立ノ建前ヲ破リマスケレドモ、已ムヲ得ナイ、ソレカラ選拳ニ関スル争訟ヲ衆議院デ扱フト云フコトガ、非常ニ面倒ナコトデアリ、不公平ガ行ハレルカノ如ク御考ヘニナツテ居ルノハ、サウ云フコトニ慣レナイ為ノ、素人流ノ杞憂デハナイカト思フノデアリマス、恐ラク将来ハ斯ウ云フ争訟ガ起リマスト、ソレゾレ、専門的ナ常置委員ト云フヤウナモノガ設ケラレテ、五人カソコ等ノ裁判官ニ匹敵スルヤウナ人、衆議院内デモ人格識見共ニ衆ノ推ス所トナル人ガ、其ノ任ニ就ク筈デアリマシテ、下調ベノ方ハ専門ノ弁護士、裁判官ノ経験アル弁護士ノヤウナ人ガ扱フコトニナル、必要ガアレバ府県知事デモ何デモ召喚シテ調ベルコトガ出来ルノデアリマス、サウシテ其ノ判決ハ総テ公開ノ席デヤルノデアリ、判決文ニハ理由ヲ明示シテ、恐ラク将来ハ「アメリカ」式ニ、誰ガドウ云フ意見ヲ述ベタト云フコトマデ、判決ノ中ニ現ハレルコトニナルト思ヒマス、余程良心ニ不忠実ナ人デナケレバ、此ノ選拳ノ有効、無効ヲ枉ゲテ裁判スルト云フヤウナコトハ考ヘラレナイト思ヒマス、第一多数党カラ出ルト云フヤウナコトハ考ヘラレナイノデ、五人ナラ五人ト云フモノガ衆議院全体カラ選バレルト思フノデアリマス、多数横暴ト云フコトハ、判決ノ上デ少クトモナサレナイコトデアリマス、極端ナ場合ヲ言ヘバ、一人デモ正論ヲ吐ク人ガ其ノ委員ノ中ニ居レバ、判決文ノ上ニソレガ現ハレ、自然衆議院全体ノ興論ニモ響キ、討議ノ席ニ於テ最後ノ投票デ決スル時ニ決マル訳デアリマス、ドウモサウ云フ風ナ心配ハ少シ心配ガ過ギハセヌカ、サウシテ此ノ大切ナ立法府ニ附属スベキ一種ノ権利ヲ拠棄スルコトノ代償トシテハ、余リニ残念デアルト云フ風ニ思ハレマスルノデ、是ハ一ツ社会党ハヤハリ之ヲ保存スルト云フコトニ意見ヲ申上ゲテ置キマス
○芦田委員長　林君、御意見ガアリマスカ
○林（平）委員　私ハ此ノ四字ヲ削ルト云フコトニ付テノ意見ハ、先般申上ゲタ通リデアリマシテ、繰返ス必要モナイト思ヒマスガ、ヤハリ削除スルコトニ賛成シマス
○芦田委員長　大島君、如何デスカ
○大島（多）委員　私モ先般申上ゲタ通リデアリマシテ、今鈴木委員カラノ御説モアリマシタケレドモ、ヤハリ必ズ多数党其ノ他ノ所謂弊害ガ起キテ来ルト考ヘマスシ、ソレカラ又先日此ノコトヲ代議士会ニ諮リマシタ所ガ、是ハ議議トシテノ事務ガ非常ニ煩雑ニモナルシ、又サウ云フ色々ノ醜イ闘争ガ起ルダラウカラ、是非是ハ削除シタイ、サウ云フ代議士会ノ意向デアリマシタ
○芦田委員長　ソレデハ最後ノ決定ハ、何レマダ小委員会モアルコトデアリマスカラ、今日ハ大体ノ御意向ヲ伺ツテ置クト云フ程度デ先ヘ進ミマス、第七十七条、修正案ハ「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は處分が憲法に適合するかしないかを決定する權限を有する終審裁判所である。」、斯ウ云フ文字デアリマス、金森国務大臣ノ意見ニ依レバ、意味ハ初メカラサウ云フ意味デ書イタモノデアツテ、修正ノ結果、少シモ其ノ内容実質ハ変ラナイ、斯ウ云フ意見デアリマシタ、之ニ対シテ御異議ハアリマセヌカ
○原（夫）委員　修正案ハ至極適当ナモノト思ヒマシテ、賛成致シマス
○芦田委員長　外ニ御異議ハアリマセヌカ
　　　　〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○芦田委員長　ソレデハ此ノ発表文ヲ御協議致シマス、一寸御諮リ致シマス、発表文ハ、「小委員會ハ八月八日午前十時半懇談會ヲ開キ、改正案第三、四、五、六、七條及ビ第七十七條ニ付キ字句ノ修正ヲ行ヒ、第五十一條ニ於テハ「選擧又は」ノ四字ヲ削除スル案ニ付キ意見ヲ交換シ、十一時四十五分散會」
　　　　〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕
○芦田委員長　本日ハ是ニテ散会致シマス
　　　　午前十一時四十五分散会