平成17年10月6日(木)(第2回)

◎会議に付した案件

日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件

1.参考人出頭要求に関する件について、協議決定した。

2.委員間で、憲法調査会における議論を踏まえての自由討議(特に、国民投票制度を中心として)を行った。


●中山委員長の発言の概要

  • 我が国の憲法論議は、「調査のための調査」から、いよいよ、「新たな段階」に入っていくこととなった。
  • 憲法調査会における重要な論議の一つに、憲法施行後約60年間にわたって制定されてこなかった憲法改正国民投票制度の整備に関する議論があり、その報告書においては、「憲法改正手続法について、早急に整備するべきであるとする意見が多く述べられた」とされている。
  • さらに、この報告書の取りまとめに至る議論の過程において、枝野会長代理から、政権を担う意思のある政党は、どちらが政権についても、国政運営の共通のルールを憲法で定める合意形成を進める必要があり、憲法改正国民投票法についても、幅広い国会の意思で、早期に制定することが望ましいとする旨の歴史的な重みのある発言があり、自民党の保岡・船田の両幹事、公明党の太田委員から、これに呼応する趣旨の発言があった。
  • このような経緯を経て、「日本国憲法の広範かつ総合的な調査」とともに「日本国憲法改正国民投票制度に係る議案の審査等」を行うための組織として、本特別委員会が設置された。
  • 憲法調査会においては、憲法改正国民投票制度に関して、(a)国民投票における投票権者の範囲、(b)国民に賛否を問う方法として、一括投票か個別投票か、(c)周知期間や広報方法、(d)国民投票運動の規制、(e)投票用紙への憲法改正案の記載、(f)国民投票における「過半数」の意味、(g)国政選挙との同時実施の是非、(h)国民投票無効訴訟との関係について議論があった。
  • 今年前半、私は、フランス、オランダ及びルクセンブルグの欧州憲法条約の批准をめぐる国民投票について、それぞれ実地に視察する機会を得た。その状況が、憲法条約の批准過程に及ぼした影響を考えるに、国の在り方を直接決する国民投票の大きな意味を感じざるを得なかった。これらの国々では、国民投票の年齢要件が18歳以上となっていたが、いずれにしても、これらは、我が国の国民投票制度の構築に当たって、参考になるものである。
  • 憲法改正国民投票制度の整備は、憲法の基本原理である「国民主権原理」を具体化するものであり、60年の長きにわたって凍結させられてきた憲法制定・改正に対する国民の主権を、国民を代表する国会が「回復する」作業といっても過言ではない。このことにより、国民自らが憲法論議への参加をより身近に自覚し、国民的な憲法論議へと広がっていくことが期待される。

●各会派一巡目の発言の概要

保岡 興治君(自民)

  • 96条が憲法改正手続を定め、その実施法を予定しているにもかかわらず、憲法施行後、60年間を経てもなお憲法改正国民投票法を整備してこなかったのは「立法の不作為」ともいえる。憲法改正国民投票法の整備は、国民主権の具体化であると自覚すべきであり、憲法調査会の報告書においても、早急に整備すべきであるとの意見が多かったことを確認しておきたい。
  • 96条が憲法の発議に各議院の総議員の3分の2以上の賛成を要件としていることは、政党の枠を超えて合意形成が図られることを憲法が予定しているといえる。憲法改正国民投票法は、形式的には法律だが、憲法附属法ともいえるものであり、委員長提案などの与野党を超えた形式でなされることが望ましい。憲法改正国民投票法案については、与党は骨子案をまとめているが、これは参考資料の一つにすぎず、ゼロベースから制度を作り上げていくのがよいと考えている。
  • 憲法改正国民投票法案の主な論点について具体的な私見としては、(a)国政選挙との同時実施の是非については、超党派でなす憲法改正国民投票と政権選択の場である国政選挙は同時に行うべきではないこと、(b)投票権者の範囲については、国政選挙と国民投票はどちらも同等に大切な国政参加の権利であり、差があるとは考えにくいこと、別に名簿を作ることは実務的に困難であることを考えると、投票権者は同じでよいと思われること、(c)一括投票か個別投票かについては、論理的に何が一体不可分かということに帰着するのであり、憲法は、改正案の内容に応じた国会による適切な発議に委ねていると思われること、また、その基準を考えるべきこと、(d)国民投票運動の規制については、人を選ぶ国政選挙と政策を選択する国民投票ではその趣旨が異なることから、虚偽報道の禁止や不正投票の禁止など公職選挙法を参考にしながらも許容される必要最小限度のものを念頭に、今後検討していくべきこと等を示しておきたい。

枝野 幸男君(民主)

  • 本委員会は、実質的には憲法調査会を継続する基盤を持っているが、憲法調査会の基本的な枠組みを維持しつつ、これに憲法改正手続法の起草及び審査権限を付与することが望ましいとする憲法調査会報告書とは形式的に食い違った機関となってしまっており、これには遺憾の意を表明したい。
  • 憲法改正手続法の議論において合意することもできずに、憲法の改正内容の議論において合意できるはずがないのであるから、手続法については拙速に陥ることなく、しかし、できる限り急いで広範な合意が構成されるよう、真摯な議論をなさなければならない。
  • 憲法改正国民投票運動は、政治活動の自由等によって憲法上保障されているだけではなく、民主主義の基盤であるから、自由闊達になされなければならない。候補者に投票する選挙と異なり、政策を問う国民投票においては、投票運動と一定の政治的意思表明の区別はあいまいであり、規制を設ければ、その取締りは警察当局・司法当局の判断に委ねられることになって強い萎縮効果が生じる。
  • 憲法は一度改正されれば数十年その規定が残るものである以上、可能な限り若い世代に投票を認めることや在外投票権者や公民権停止者等にも投票を可能とするなどの考慮が必要である。
  • 一括投票か個別投票かについては、国民がより自由な選択を可能な限りなしうるように考えるべきである。複数の投票項目が一括して示された場合、一つでも反対であれば否決される可能性があり、国民の多数が望む憲法改正も否決されてしまう可能性があることを考慮すべきである。
  • 憲法改正案を審議するのであれば、通常の法律案のように一つの党の提案に他の党が修正を提案するといった方式ではなく、衆参両院の合同起草委員会による成案づくりというものを考えるべきである。
  • 憲法改正のためには国民投票が必要であること自体を知らない国民も多く、周知・広報活動が重要である。

赤松 正雄君(公明)

  • 5年間の憲法調査会の活動を踏まえた憲法改正のための手続法を審議する特別委員会の設置は、時宜にかなったものである。憲法論議の段階としては、「第二段階」に該当する特別委員会による手続法の審査終了後すぐに「第三段階」としての常任委員会による具体的な改正作業の議論に移行するのではなく、その準備として憲法改正のための調査会を設置して個別的・逐条的に議論するなど、じっくりと落ち着いた作業を各党合意の下でなすべきである。
  • 憲法改正国民投票法の未整備は立法の怠慢とみるべきではなく、戦後の日本が落ち着いた環境の中で憲法論議をするには60年の歳月が必要であったとみるべきである。また、憲法改正国民投票法の整備をしたからといって落ち着いた環境の中で憲法論議ができなくなるというわけでもない。
  • 憲法改正国民投票法における最大の課題は、一括投票か個別投票かという発問の単位ではないかと思われる。性質上、一括投票になじまない問題もあるが、個別投票にして膨大な問いを設定することも国民の負担が大きく、投票率が低下すると思われる。その点からしても、重大な点について数点に絞り込んで発問することが可能な「加憲」方式が優れていると思われる。
  • 国会による発議の際には、国民へのその周知の徹底が重要であり、憲法が改正されたらどうなるのか、改正されなければどうなるか、現行憲法には様々な解釈があることなどについて説明が必要であると思われる。
  • その他国民投票制度については、(a)国民投票は国政選挙とは別に単独で行われるべきこと、(b)「過半数」の意味については投票率の要件等を設けずに単純に有効投票総数の過半数とみるべきこと、の両者については特に問題がないと思われる。周知期間や投票権者の年齢については選択の余地がありうると思われる。国民投票運動については、買収、脅迫による投票強制や虚偽の主張など公序良俗に反するものについて規制する以外は、原則自由にすることを念頭に検討すべきである。

笠井  亮君(共産)

  • 本委員会が憲法改定の国民投票法案に係る議案の審査を目的として設置されたことは、自民・民主の改憲案における9条改定に向けた条件づくりが目的といえる。日本共産党としては、この特別委員会の設置に反対したが、設置された以上は日本国憲法の平和的諸原則を内外に広めるために本委員会に参加していくことを申し上げたい。
  • 本委員会における憲法改定の国民投票法案の審査の根拠を憲法調査会の最終報告書に求める意見があるが、憲法調査会の目的は日本国憲法についての広範かつ総合的な調査であり、改憲や憲法改定の国民投票法案の整備を結論づける機関ではなく、憲法調査会報告書の多数意見は根拠になりえないはずである。
  • 憲法改定の国民投票法案の未整備を「立法不作為」とする意見があるが、「立法不作為」とは国家賠償請求訴訟においてある法律ができていないために国民の権利が侵害されることにかかわって生じる問題であって、この問題が「立法不作為」に当たらないというのは憲法学者のほぼ一致した見解である。
  • 国民が主権者であるということは、憲法制定権力としてだけにあらわれるものではなく、憲法改定の国民投票法案の未整備を国民主権が制限されているものであるとする意見は、国民主権を矮小化するものである。過去においても憲法改定の国民投票法案が整備されなかったのは、国民がその制定を必要としなかったからである。現在の憲法改定の国民投票法案制定の動きは9条改憲と連動しており、具体的な改憲に関係のない単なる法整備であるならば、逆に無意味である。
  • 自民党の憲法草案の方向での9条改定は、現状の追認だけにとどまらず、海外における戦争を行えないとしている歯止めをなくすことである。日本の不戦の誓いであり、アジアや世界に向けての平和に対する国際公約である9条を破り捨てることは、日本の国際的信頼の計りしれない失墜になることを免れえない。9条を生かした平和への貢献は、日本の恒久平和の確保の上だけではなく、国連憲章と結びついた国際的意義を持っている。

辻元 清美君(社民)

  • 憲法とは、国家権力の限界を定め、国家権力発動の手続を定めるものであり、この原則を踏まえて本委員会を運営すべきである。
  • 憲法を改正し、環境権や知る権利などの新しい概念を取り込む前に法律や施策の点検をすべきであって、早急に憲法を改正する必要は現段階では感じず、また、手続法の制定を急ぐ必要性も感じない。
  • 現在、世界各地で起きている紛争に対して、日本がどのようにかかわり、その際、9条を使っていくことができるのか否かを、我々は、今一度検証すべきであり、日本は、日本国憲法の平和主義の観点から、積極的に平和構築にかかわっていくという厳しい選択をすべきである。
  • 憲法改正のための手続法の議論をするに当たっては、常に、憲法改正が必要なのか否かの議論に立ち返る必要があり、改正の議論と切り離して手続法の議論をすべきではない。
  • 本来、憲法改正は、国民から国会や政府に対して強い要望の声があってはじめて行われるものであるが、現在は、国会や政府が国民に対して憲法改正を迫っている状況である。このような状況にかんがみると、憲法改正国民投票法が制定されていない状況は「立法不作為」ということはできない。
  • 憲法改正国民投票法を早急に制定すべきとは考えないが、同法を議論するに当たっては、(a)一括投票か個別投票かについては個別投票にすべきである、(b)投票権者の範囲については義務教育を修了した年齢でもよいという意見は傾聴に値する、(c)国民投票運動の規制については自由な議論を保障する必要がある、(d)投票方法や可決の要件について慎重な検討が必要である等の意見を述べておきたい。

滝  実君(国民)

  • 日本国憲法の改正要件の厳格さを考えると、憲法改正国民投票法の制定が憲法改正に直結するとは思われないが、同法の制定により、主権者たる国民が抽象的にではなく、具体的に主権を行使できるようになるという観点から、同法の制定を求める立場に立つ。
  • 憲法改正国民投票については、(a)国政選挙と同時に実施すべきではない、(b)一括投票か個別投票かについては、原則、個別投票であるが、全部改正に近いような場合には、一括投票を選択すべきであり、その決定は国会が行うべきである、(c)国民投票運動の規制については、原則、規制をすべきではなく、行き過ぎた運動に対しては、監視委員会の警告などによって対処することを検討すべきである。
  • 実際の憲法改正国民投票法案の起草に当たっては、起草委員会のようなものを設置し、作業を行うべきである。
  • 国民への広報をどのように行うかについては、具体的な海外の例を参考にすべきである。

●各会派一巡後の発言の概要

吉田 六左エ門君(自民)

  • 憲法改正国民投票の国政選挙との同時実施の是非については、別の期日に行うべきである。
  • 憲法改正論議がここまで進んできたのは、中山委員長の命を賭しての取組の結果であり、中山委員長の取組に心より敬意を表する。

岩國 哲人君(民主)

  • 憲法改正国民投票については、(a)投票権者の範囲については、18歳以上とすることは我が国ではまだ時期尚早であり、20歳以上とすべきである、(b)投票率が50%以上であることを要件とすべきである、(c)一括投票か個別投票かについては個別投票とすべきである、(d)国民投票運動の規制については、極力、自由とすべきである。
  • 先日の衆院選において、総選挙が国民投票的に用いられたが、その結果は国民の49%の賛成しか得ることができないものであり、本来、衆院を解散できない場面において解散を行い、解散をすべき状況になったにもかかわらず解散も総辞職もしないという奇妙な結果となった。
  • 近隣諸国の理解を得るために、憲法改正を行い、憲法に自衛隊を位置付け、憲法の枠の中に置くべきである。

伊藤 公介君(自民)

  • 日本国憲法改正のための手続法を早期に成立させるべきである。
  • 投票権者の範囲については、国政選挙の選挙人名簿と国民投票の投票人名簿は、原則として同じものとするのが望ましい。
  • 投票権者の年齢要件については、世界の国々では18歳以上としているところが多く、20歳以上としている国はまれであり、若い世代の人々にも参加の道を開くべきである。
  • 一括投票か個別投票かについては、憲法改正のための発議が国会の各議院の総議員の3分の2以上の賛成という高いハードルをクリアしてなされるものであるから、一括方式で国民に賛否を問うのがよい。また、全面改正という我が党の立場からしても一括方式がよいと考える。ただし、将来的に、一般的なレファレンダムとしての国民投票や住民投票的なものは、個別投票で問うことも考えられる。

平岡 秀夫君(民主)

  • 9条の改正の問題について、現実と理想が乖離したとき、理想を現実に近づけるという立場はとらない。現在、9条の下でどこまでが日本の国をまもるためにできることなのか、世界の平和に貢献できるのか必ずしも明確でないが、それを明確にするためには、早急な憲法改正ではなく、安全保障基本法といったものを制定して、国民的合意の中で我が国の防衛の在り方を考えていくことが立法府としての役割であり、憲法と現実の乖離についても、本委員会において議論していくべきである。
  • 憲法が改正規定を設けている以上は、それに対応した具体的手続法が必要であることは否定しない。国民投票の方法や投票用紙への憲法改正案の記載事項については、「しっぽ」が「本体」の考え方を左右するようなことにならないように、改正の内容をしっかり議論して、改正の内容に応じた国民投票の方法を考えるべきである。普遍的な部分については先行して議論してもよいが、それ以外は改正の内容が決定してから議論すべきである。

早川 忠孝君(自民)

  • 国政選挙と憲法改正のための国民投票制度は、その目的や趣旨が本来異なるものとの共通認識に立って、議論を進めて欲しい。
  • 憲法改正案は、国会が国権の最高機関であるという位置付けの下、各議院の総議員の3分の2以上の賛成により国民に対して示され、国民の投票に付されるものであり、信任投票的な最高裁判所の裁判官の国民審査と同様の性質を有しており、いわば国民に国会の審議結果に対する拒否権を付与したものであると考えられる。その意味で、「過半数」の意味については、無効投票を除外して有効投票のみで決するのが相当である。投票の成立要件として、一定の投票率を課することも検討の必要がある。
  • 国民投票運動の規制については、必要最小限で、かつ制限につき合理的な理由がある場合にのみ行うことができるという原則を確認すべきである。その際、国民投票運動監視委員会のような機関を設置して、罰則による是正ではなく、差止め、勧告等の方法を導入することが有効である。
  • 一括投票か個別投票かについては、全体的な整合性の確保を考えれば、一体的なものとして行うことが原則である。ただし、条件付であらかじめ選択の順序を明示したうえ複数案を提示して行うことも弊害が少ないので、国会の発議の状況の中で決めていけばよい。

葉梨 康弘君(自民)

  • 憲法改正のための国民投票についての議論は、技術的な問題として、憲法改正とは別に議論することが可能と考える。
  • 制度の不備は「立法不作為」には当たらないとする意見は、法律論としてはあり得る議論だが、我々は法律家ではなく国民の代表者であり、立法者であるから、国民主権を実現するためにはどうしたらよいのかという視点で議論するべきである。
  • 憲法改正の国民投票における投票権者の年齢要件を定めることで、憲法に関する議論に参加できる人間を確定することができる。これは国民的な議論を深めることにつながるものである。
  • 国民投票運動の規制については、運動は自由、買収は禁止というのが原則となろうが、買収の捉え方には千差万別の議論があり、場合によっては有料の新聞広告すら買収に該当してしまう可能性もあるので、発議ごとに定めるのでなく、あらかじめ議論しておく必要がある。
  • 一括投票か個別投票かについては、憲法改正の内容が全面的であるか部分的であるかによって、その結論も変わってくるだろう。条項を切り離して個別に国民投票に付すことが可能なのであれば、個別に投票にかけるべきである。

高市 早苗君(自民)

  • 憲法改正の国民投票の投票権者の範囲については、国政選挙の有権者と同じにすべきである。最高法規の改正なのだから、責任を十分に負うことのできる主体(成人)による投票とすべきであるが、「成人」を18歳以上の者とするかどうかは一考の価値のある議論ではある。
  • 国政選挙との同時実施の是非については、国民投票が政党のイメージや他の争点に左右されるおそれもあり、国政選挙とは別個に実施するべきである。将来的には96条1項を改正し、「特別の国民投票」のみの実施とするべきである。
  • 一括投票か個別投票かについては、発議ごとに国会が決めるべきである。一括投票は非現実的であり、個別投票も場合によっては非現実的である。章ごと又は関連する条項ごとの投票とすべきである。
  • 「過半数」の意味については、有効投票の過半数とすべきである。棄権という形で反対の意思を示したものをカウントするという理屈は通用しない。真剣に改正案を読んで判断に参加する国民の意思を大切にすべきである。
  • 国民投票運動に対する罰則を伴った規制については、一定程度行うべきである。長期間の騒音被害、悪質で組織的な運動による被害などがあり得るからである。
  • 発議後の周知期間は、条文数に応じて期間の長短を決めるのが現実的である。
  • 発議後、憲法改正の意義、改正の内容等を掲載した広報物を、全世帯に配布して、周知徹底させる必要がある。

柴山 昌彦君(自民)

  • 国民投票に参加する権利は国民主権の究極的な発現形態であり、公正な代表を選ぶために様々な制約を伴う国政選挙の選挙権とは区別して議論すべきである。このことからすると、公民権を停止されている者にも投票権を認めるべきである。このような重要な権利行使の場面で、実務上の困難性を理由に投票権を制約するのは説得力を欠く。
  • 一括投票か個別投票かについては、個別に国民の信を問うのが望ましく、現実的である。ただ、論理的・政策的に関連する部分があれば、そういった部分は一括して投票に付すべきである。
  • 国民投票運動の規制については、原則として自由であるべきである。ただ、組織的な大規模買収・供応を自由にしてはならないので、保岡理事が指摘した最低限の報道規制、買収規制等には賛成する。しかし、その場合でも、監視機関による警告制度を前置して、罰則の適用については慎重であるべきである。
  • 「過半数」の意味については、投票総数の過半数とし、白票を投じた者も主体的に国民主権の行使に参加した者として判断するべきである。

古川 元久君(民主)

  • 間接民主制を補完する一般的な国民投票制度の導入について検討をしていく中で、憲法改正の国民投票の在り方を議論する方法もある。
  • 今回の総選挙は「郵政民営化」についての国民投票的な側面があったが、国民の多くは民営化の内容を十分に認知せずに投票したのではないか。憲法改正の国民投票を行うに当たっては、改正の内容を国民がどのくらい十分に認識した上で投票するかが大きな問題となるので、内容についてしっかりと国民が理解でき、健全な議論を行うことが可能となるような広報の在り方を十分議論する必要がある。

船田  元君(自民)

  • 憲法調査会の報告書は、今後の議論の方向を示すものであるので、是非活用してもらいたい。
  • 国民投票法の制定は過半数の賛成で可能ではあるが、憲法改正で必要となる「3分の2以上の賛成」を意識して、各党が十分に調整して制定するべきである。
  • 与野党の相当部分が合意した憲法草案の国民投票と、政権を争う国政選挙とを同時に行うのはあまりにも不合理なので、別個に行うべきである。
  • 投票権者の範囲については、公職選挙法上の選挙人名簿、在外選挙人名簿を使用するのが常識的ではあるが、国の重要な方向を問う投票なのであるから、その対象者は多い方がよい。可能ならば18歳以上とすべきであろう。
  • 一括投票か個別投票かについては、一長一短がある。一括投票は賛否の判断が難しく、国民の意思表示を縛ってしまう。個別投票は相互に関連する条項に齟齬が出てしまう可能性があるので、発議内容に応じた投票方法を議論する必要がある。
  • 「過半数」の意味については、有効投票の過半数とするのが妥当である。国の在り方を問う重大な投票において、棄権・無効を積極的に評価する理由はないと考えるからである。
  • 国民投票運動は、基本的に自由であるべきと考える。運動の公平性・公正性を担保するために必要最小限の規制はやむを得ないため、投票事務関係者の運動の禁止、公務員の地位利用による運動の禁止、外国人の運動の禁止、人気投票(予想投票)の禁止、虚偽報道、マスコミの不法利用については公職選挙法の規定を準用するべきであるが、緩やかに対応するべきである。
  • 枝野理事から提案のあった発議の際の衆参両院の合同起草委員会構想には賛成である。
  • 両院にはそれぞれの判断があるが、参議院においても衆議院と同様の特別委員会が設置されて議論が行われることを期待している。

大村 秀章君(自民)

  • 憲法改正国民投票法の未制定が「立法不作為」であるかはともかく、制度の不備であることは間違いない。憲法調査会での調査の結果、改正を是とする意見が多数であったのであるから、法整備は国会に課せられた使命である。
  • 国民投票の投票人名簿は、国政選挙の選挙人名簿と実務的には同じものでよい。
  • 一括投票か個別投票かについては、個別論点が多岐にわたるのであるから、個別の投票方式でよい。
  • 発議後の周知期間は、ある程度必要である。
  • 国民投票運動の規制については、運動ができるだけ自由に行われるようにするべきである。
  • 「過半数」の意味については、有効投票の過半数でよい。

渡辺 博道君(自民)

  • 国民投票制度の不備を国民は不満に思っていると考えるので、本委員会で十分議論を行い国民投票制度の整備を具体的に進める必要がある。
  • 憲法の改正には衆参で3分の2以上の賛成が必要なのであるから、与野党が合意することが重要である。
  • 国のかたちを決める憲法に対する国民の重要な意思表示なのであるから、憲法改正の国民投票は国政選挙とは異なる。
  • 投票権者の範囲は、できるだけ多くの意見を聞く必要があることから、18歳以上とすべきである。
  • 一括投票か個別投票かについては、憲法改正の成案を得た段階で決めるべきである。
  • 国民投票運動の規制については、運動は原則として自由とし、規制は必要最小限度ものとすべきだが、何が必要最小限であるかは今後議論が必要である。

加藤 勝信君(自民)

  • 手続法の議論は、憲法改正の議論と切り離して考えるべきであり、憲法改正国民投票法の制定を早期に行うべきである。
  • 社会的な責任を認識させるためにも、成人年齢を18歳に引き下げ、これに国民投票の投票権者の範囲も合わせるべきである。
  • 一括投票か個別投票かについては、発議の段階で適切に判断すべきであり、現段階で決定する必要はない。
  • 国民投票運動は、基本的には自由に行われるべきであるが、これに対して発議者としての国会は中身を周知していく責任があり、周知方法についても議論を深める必要がある。また、議論はあるが政府が発案した場合にも、周知方法について議論を深める必要がある。

中谷  元君(自民)

  • 海外在留邦人についても、投票を可能にすべきである。
  • 日本国籍を持ちながら日本語が読めない人に対しても、例えば英語や中国語で憲法改正の内容を説明するなどして、投票できるようにすべきである。
  • 視覚や聴覚に障害を持つ人等に対して、誰が説明し、どのような方法で投票させるかといった点にも配慮すべきである。
  • 発議をする国会は、憲法に対する考え方、論点整理、統一見解などを通じて、国民に憲法改正の内容をいかに適切に伝えるかが重要になってくる。そのために、スタッフの増員など国会の機能を向上させる必要がある。
  • テレビ、新聞、インターネットに対する規制をどのようにすべきか、議論を深めるべきである。
  • 発議者は国会であるが、例えば、国民の考えた憲法など国民の声をどのように国会で集約していくのかも、今後、検討していくべきである。

仙谷 由人君(民主)

  • 立憲主義者であるトーマス・ジェファーソンも、「死者は、生者を囚えるべき理由はない。各世代はそれぞれ自らの憲法を選ぶべきである。」と述べ、民主主義との調整を図っている。我が国も国民の意思を問うための法制度が必要である。
  • シングル・イシューの政策課題についても、国民投票をどのようにすれば実現できるのか検討すべきである。
  • 国民投票は、できる限り若い人にも参加できる権利を与えるべきである。

小川 淳也君(民主)

  • 現行憲法は、健全保守の最後の砦であり、積極的に変えるべきではないが、やむにやまれぬ社会情勢を受けて、必要最小限の改正を加えていくことは、国民生活の価値観の安定にとって重要である。
  • どこに向かうのかを示さずに、梯子をかけてしまうことで、国民の不安を煽るようなことをしてはならない。具体的な手続規定の議論に、先行して、あるいは少なくとも並行して、院として、憲法改正の実質的な中身を取りまとめるべきである。
  • 憲法改正の実質的な中身の議論なしに、一括で承認すべきか、個別で承認すべきかという結論を出すことはできない。

三原 朝彦君(自民)

  • 憲法改正を「する」か「しない」かは、国民が決めることであり、国会は憲法改正が「できる」ように国民投票法を早急に作り、国民に「する」か「しない」かの選択の権利を与えるべきである。
  • 国民投票に際しては、国民が理解できるような形で周知徹底することが極めて重要であり、PRについて具体的に議論を深める必要がある。

牧原 秀樹君(自民)

  • 国民投票に際しては、国民全体で活発な議論を行っていくことが必要であり、実務的な問題もあるが、20歳以上の人に限らず、それ以下の若い人も国民投票に参加できるよう検討すべきである。
  • 国民投票制度は、公職選挙法と趣旨も意義も異なるため、不必要な制限を受けることなく、活発な議論が国民レベルで行えるようにしなければならない。

辻元 清美君(社民)

  • 今回の議論で、憲法改正の中身と手続は切り離せるのかということが、大きな論点になったので、これからしっかり議論していく必要がある。一括投票か個別投票かを後回しにして決めるという意見もあったが、手続法の制定に当たっては、一括投票か個別投票かが肝になるのであり、しっかりと議論するべきである。
  • 「憲法の議論は、国民の意思である」という発言を自民党から頂いたが、自由で活発な議論を行うためにも、委員会の間は常に各会派の議員は積極的に参加すべきである。