平成17年10月20日(木) (第4回)

◎会議に付した案件

日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件

(午前)

上記の件について、参考人今井一君及び吉岡忍君から意見を聴取した後、質疑を行った。

(午後)

上記の件について、委員間で自由討議を行った。

(参考人)

ジャーナリスト
  真っ当な国民投票のルールを作る会事務局長    今井 一君

作家                      吉岡 忍君

(今井一参考人及び吉岡忍参考人に対する質疑者)

 三原 朝彦君(自民)

 鈴木 克昌君(民主)

 高木 陽介君(公明)

 笠井 亮君(共産)

 辻元 清美君(社民)

 滝 実君(国民)


◎今井一参考人の意見陳述の概要

1.国民投票・住民投票との出会い

  • 1989年以降の東欧民主化の過程で、ロシアなどにおいて実施されたさまざまな国民投票を現地取材し、95年以降は、日本の各地の住民投票に関する現地取材を進めてきた。その取材活動から学んだものは何かを述べたい。
  • 1991年にリトアニアがソ連邦から離脱するか否かの国民投票が行われた際に、いつソ連軍が侵入してくるかわからない状況の下で、国の一番大切なことを決めるということで、国民投票を国民が命がけで実施し、国の未来を創ってきたことから分かるように、国民投票とは、かくも真剣で命がけのものなのである。

2.スイス・フランスの国民投票の実施状況

(1)スイスの国民投票

  • スイスで2004年に実施された自動車道路建設、賃借り法修正及び性的・暴力的凶悪犯の終身刑に関する国民投票では、賛否を訴えるキャンペーン活動に関して、(a)賛否両派が行うチラシ配布、ポスター貼りは原則自由、(b)公務員の個人としての勤務時間外活動は認められる、(c)新聞への意見広告は、広告の内容に公平性が求められるが法的規制はない、(d)テレビやラジオでの政治的な宣伝放送の禁止、(e)新聞、インターネットに関する規制はないというものであった。
  • 基本的にメディアは政府や議会から完全に独立した存在で、新聞も国営・民間の放送媒体も政府と議会の干渉は一切受けないこととなっている。
  • 中立的な解説、テーマに対する政府・発議委員会の意見が併記された小冊子及びテーマごとに「賛成」「反対」を記入する投票用紙が入った封筒が全有権者宛に送られ、駅の待合室に投票箱が設置されるとともに、郵便投票が主流となっている。

(2)フランスの国民投票

  • フランスでは、欧州憲法条約を批准するための国民投票が2005年に実施され、(a)意見広告を選挙期間中に出してはいけない、(b)テレビの放送については、所定の時間の枠の中で政党等の大きさにより放送時間が割り当てられるなどさまざまな規制がある。
  • 欧州憲法条約の国民投票に際しては、日本在住のフランス人も熱心に議論して領事館に投票に行き、その結果「自分の考えとは違う結果になったが、国民投票で決着を付けたことに異議はない」と述べていた。政府や議会だけで決定した場合、異なる意見を持った人々が納得するのは困難であるが、国民投票に付すことにより納得することができたのである。

3.国民投票マニフェスト

  • 9条と実態が乖離した現状を、国民投票により9条を改正して実態に合わせた場合には、その乖離は無くなるが、認められなかった場合は、乖離はそのままになる。その場合にそれでよいのか。何らかの手を施すことを考えていただきたい。

4.憲法改正手続に関する国民の理解度

  • 世論調査によれば、国の重要な問題については国民投票制度を導入した方がよいとの意見が多かったにもかかわらず、憲法改正の手続を正確に理解している人は少ないという結果が出ている。今後、国民の理解度を上げていく努力が必要である。

吉岡忍参考人の意見陳述の概要

1.憲法改正国民投票法を議論する際の前提

  • 現行憲法は、アジア・太平洋戦争の深い反省の産物であり、経済的・社会的な豊かさの実現に寄与するばかりでなく、かつて日本が戦争の惨禍をもたらした諸国とその市民に安心感を与えるものでもある。
  • 憲法改正国民投票法の成否は、現行憲法の歴史と現状、その将来の可能性と限界について、誰もが自由に議論することが可能な限り保障された「公共空間」(合意形成を図るための社会空間)をどう設計できるかにかかっている。
  • 人々が暮らしの中で自由・活発な議論を行う気風を形成し、その気風を根付かせる出発点になるものとして、国民投票制度を捉えたい。

2.国民投票への「青少年」の参加

  • 憲法の影響下で最も長く生きるのは青少年であるから、彼らに投票権を認めるべきである。これは、彼らにどういう社会で暮らしたいかを考えさせる機会を与えるという教育的な観点からも重要である。

3.国民投票運動への「外国人」の参加

  • 憲法論議を国内に限定することは、戦後日本が築いた国際社会との信頼関係を損ないかねず、また、憲法を巡る国際的な反響は、我々にとって欠かせない判断材料であるから、在日外国人や近隣諸外国との相互理解を深められるような制度設計が望ましい。

4.言論・批評・表現活動への制限の抑制

  • 今日、言論活動はさまざまなメディアを通じて行われており、正論・邪論・極論はその中で淘汰されていく。日本社会の淘汰能力を過小評価してはならない。
  • さまざまな心配をもとに、国民投票法に「虚偽の事実」の規制等の曖昧な文言が盛り込まれると、表現活動を容易に規制しかねず、それは、憲法論議を萎縮させ、憲法に対する国民の関心を低下させてしまう危険性がある。規制すべきは「物理的危害をほのめかす脅迫的言辞」のみである。

5.国民投票運動の期間の確保

  • マスコミの速報性、インターネットの即時性が高まった現在においても、我々の「考える力」に必要な時間までが短くなったわけではない。また、「公共空間」でのさまざまな憲法論議が、日本社会を豊かにすることにつながるためには、ある程度の時間が必要となる。6ヶ月以上の運動期間を確保すべきである。

6.投票方式

  • 改正条項が複数にわたる場合、これを「一括」で問うことは暴論であり、各条項ごとに「個別」に問う仕組みを考えるべきである。

7.国民投票の「過半数」の意味

  • 憲法は全国民に関係する基本法であるから、96条の規定ぶりは、全国民的な判断が必要な重大事であることの表明と捉えるべきであり、また、仮に投票率が低かった場合、国民全体の「多数」で承認したことにならない改正憲法が誕生してしまう可能性もあるので、「全有権者の過半数」とすべきである。

◎今井一参考人及び吉岡忍参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

三原 朝彦君(自民)

<両参考人に対して>

  • 国民投票運動におけるメディアの報道は基本的に自由にすべきであると考えるが、「虚偽」報道についてどのようにお考えか。

<今井参考人に対して>

  • 「虚偽」報道や「誇大」報道が横行した場合、国内の住民投票や諸外国においては、どのような対応をしているのか。
  • 国民の一定割合が重大な事柄であると認識し、国民投票の実施を希望する場合もあると考えるが、諸外国ではどのようになっているのか。
  • 頻繁に国民投票が行われるスイスでは、国民投票を実施することにより生ずる経済的コスト等に対して批判はないのか。

鈴木 克昌君(民主)

<両参考人に対して>

  • 投票権者の年齢設定について、18歳以上にすべきか、20歳以上にすべきか、所見を伺いたい。
  • 一括投票か個別投票かについてはどのように考えるか。また、相互に関連する条項についてはユニットごとに問うことも考えうるが、いかがか。
  • ユニットごとに問う場合、国民投票において問われる条項が「可分か不可分か」を判断する主体としては、96条は国会に憲法改正の発議権を与えていることから、国会と考えてよいか。
  • 政府による広報の中立性について、どのように考えるか。

高木 陽介君(公明)

<今井参考人に対して>

  • 参考人がレジュメで指摘しているように「よく学び、よく考え、よく話し合う」ためには、憲法改正国民投票の周知期間はどの程度がよいと考えているか。

<吉岡参考人に対して>

  • 国民投票運動の規制について、規制はなるべくすべきではないと考えるが、運動に際しての精神的危害についてどのように考えるか。

<今井参考人に対して>

  • メディア規制について、スイスは放送媒体による政治的宣伝を禁止しており、放送媒体と新聞で規制に差を設けている。これは、影響力の点から区別されているのか、それとも資金の点から考えられているのか。
  • また、日本においても、テレビ等の放送媒体については、その影響力から、規制について活字媒体と区別をなすべきと考えているか。

<吉岡参考人に対して>

  • 参考人は、国民投票の承認の要件について、棄権も一つの意思表示と捉えて「全有権者の過半数による賛成」とすべきであると述べているが、この点について伺いたい。

<今井参考人に対して>

  • 仮に、国民投票の承認の要件を全有権者の過半数とすると、スイスの国民投票の投票率は平均45パーセントであり、投票率だけでも否決されてしまうことになるが、どのように考えるか。

笠井 亮君(共産)

<両参考人に対して>

  • 最近、にわかに、憲法改定の国民投票法制定が主張されるようになったのは、改憲を具体的日程に乗せようとする動きと一体であると考えるが、改憲論と国民投票の手続制定論のつながりについて、どのように考えるか。

<吉岡参考人に対して>

  • 最近、まず違憲の行為を行って、それが合憲となるように憲法を変えようとする、という流れの政治が行われているように思うが、それが近隣諸国との関係に及ぼす影響をどのように考えるか。
  • ビラを配布しただけで逮捕されるなど精神的自由が害されるような社会を作り出してきた政府与党が、手続法を制定しなければ国民主権が保障されないと主張することには違和感を覚えるが、どのように考えるか。

<今井参考人に対して>

  • 例えば、統治機構に関する条項の改定については国民投票を不要とする等96条そのものを再検討すべきとの見解があるが、このような見解についてどのように考えるか。

辻元 清美君(社民)

<吉岡参考人に対して>

  • 外国人の投票運動への参加について、詳しく考えを聞きたい。

<今井参考人に対して>

  • フランスの国民投票において、移民などの外国人の投票運動等は、どのように取り扱われているか。
  • 世論調査の結果によれば、憲法改正手続に関する国民の理解度は必ずしも高くないとのことだが、国会では毎週熱心に議論されているにもかかわらず、このような結果となるその温度差について、どのように考えるか。また、この温度差に対する方策について、どのように考えるか。

<吉岡参考人に対して>

  • 言論活動の自由を保障することはもちろんだが、メディアに対する不信感が投票運動に係るメディア規制論の根底にあると考えるが、国民投票に際してのメディアの在り方についてどのように考えるか。
  • 参考人は本委員会での深い議論を望むと指摘されたが、本委員会における議論の在り方について、どのように考えるか。

滝 実君(国民)

<両参考人に対して>

  • 憲法改正の国会発議に当たって、国会が国民に提供する資料の在り方について、どのように考えるか。

<今井参考人に対して>

  • スイスやフランスにおいては、マスコミの中立性について、国民はどのように考えているか。

<両参考人に対して>

  • 投票方法に関し、郵送による投票についてどのように考えるか。外国では郵送による投票も採用されているとのことだが、その場合、ある団体が投票を取りまとめて郵送するようなことを防ぐ方策はなされているのか。

◎自由討議における委員の発言の概要(発言順)

●各会派一巡目の発言の概要

吉田六左エ門君(自民)

  • 北朝鮮の拉致についての対応は、日本を主権国家と認めないに等しいものである。国民一人ひとりの安全を確保できるよう、最終的には軍事行使も辞さないような憲法改正を目指すべきである。
  • 自衛隊による国際協力については、事案ごとの特別法ではなく恒久法による対処が必要であり、憲法、法律いずれに規定するかを決断すべきである。武器使用についても法整備が必要である。
  • 憲法改正に当たっては、我が国の国益に適うようにすべきである。国益には普遍的なものと時代によって変えるべきものがあり、憲法には前者を規定すべきである。

園田 康博君(民主)

  • 現憲法の正当性や旧憲法との連続性について疑義があったとしても、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という三大原理が国家運営の原理として最良であることに異論はないと思われる。
  • 国民投票の自由・公正の確保という点から、国民投票運動規制の在り方については、(a)国民が積極的・活発に議論ができるよう規制ゼロから考えるべきこと、(b)報道に対する規制を必要最小限とすべきこと、(c)罰則は、刑法その他既存の法律によって対応すればよく、新たに設ける必要はないことを原則とすべきである。

太田 昭宏君(公明)

  • 本委員会の論議に当たっては、具体的な条文の論議に入らず、国民投票の方式など国民投票制度に対するイメージを共有することが重要である。
  • 公明党が主張する加憲は、現行憲法を優れたものとして、憲法の三原則及び9条1項・2項を堅持しつつ、時代の進展に合わせて環境権・プライバシー権等を補強するものである。96条2項は「この憲法と一体を成すものとして」と規定していることから、憲法は米国のアメンドメント方式を参考とした加憲を念頭に置いている。
  • 憲法は継続性が求められ、また国民が決定するものであるから、その改正作業は丁寧でなければならず、各党の改正草案と具体的な改正作業とは区別しなければならない。
  • 憲法改正の項目は限られることから個別的に提起されると考えるが、個別方式の具体的な方法についても議論する必要がある。
  • 国民投票の周知期間や広報の在り方、国民投票運動に対する規制の検討に当たっては、海外の例を参考に幅広い議論が必要である。

笠井 亮君(共産)

  • 国民投票制度の整備は国民側から出てきた声ではなく、9条を中心とする改憲のための条件整備である。
  • 憲法改定規定への国民の理解が不足していることは、歴代政権が憲法を国民生活に生かす努力をしてこなかったことの現れである。
  • 戦争反対のビラまきを行った者に対する逮捕・起訴等により国民主権の行使を侵害する一方、国民投票制度の整備により国民主権を具体化するとの政権与党の主張は説得力を欠く。
  • 9月30日大阪高裁での違憲判決等を受け、99条に基づく憲法尊重・擁護義務を最も果たすべき総理は、靖国参拝を中止すべきであった。20条3項を改定して総理の靖国参拝にお墨付きを与えることは許されない。
  • 安全保障の主役は外交であり、今日の紛争の解決は平和的、外交的な解決が原則であり、軍事優先の安全保障政策はこれに逆行するものである。
  • 吉岡参考人が指摘した主権在民の一層の徹底、不戦主義の徹底、基本的人権の尊重の徹底は、憲法を捉える上で重要な観点である。

辻元 清美君(社民)

  • 今井参考人から示されたアンケート結果で、憲法改正手続について正しい知識を持つ国民が少ないことに驚いた。主権者国民と国会との乖離が進まないよう、本委員会でも、まず憲法改正手続に対する国民の認識を深めるための議論をすべきである。
  • 憲法が権力を縛るためのルールであることから、国民投票運動の規制対象は、国民や報道機関ではなく、政府であるべきである。政府が何をなしうるかを確認しておくべきである。
  • 国民投票における政府の立場は受動的なものであるべきである。賛否両論の平等な取扱いは、主権在民という根本的な理由に基づく。中立公正の担保手段については、時間をかけて議論する必要がある。
  • 憲法改正の発議が各議院の総議員の3分の2以上の多数によるとされていることは憲法改正が慎重になされなければならない趣旨であり、発議後は賛否両論が平等に取り扱われなければならない。

滝 実君(国民)

  • 憲法改正規定についての国民の理解は、今後改正規定についての議論が進めば深まっていくと考えられる。
  • 国民投票法におけるマスコミの取扱いについては、例えば、討論会以外の報道を自粛することが考えられるが、それを法に規定することは困難である。そこで、本委員会として、マスコミの自主的な動きを促すべきである。
  • 投票方式については、諸外国で認められている郵便を認めるか等の技術的問題との関連を踏まえ、具体的に議論すべきである。
  • 外国人による憲法改正国民投票運動の規制については困難な問題がある。
  • 憲法改正国民投票制度については、憲法のあるべき姿とは別に具体的な状況を勘案しながら検討を進めるべきである。

●各会派一巡後の発言の概要

船田 元君(自民)

  • 一般的国民投票、住民投票と憲法改正国民投票とを明確に区別すべきである。一般的国民投票については、間接民主制と直接民主制の整理を踏まえた幅広い議論が必要であることから、まず憲法改正国民投票制度の整備を進めるべきである。
  • 誰もが自由に議論し判断する場を保障する必要性を述べた吉岡参考人の意見に賛同する。青少年や外国人にも投票運動を認めるべきであるが、外国人の組織的投票運動等には、主権の問題から一定の規制が必要である。
  • 虚偽報道の定義は曖昧であるが、現在の公職選挙法の規定を適用すべきである。
  • 過半数の算定基準は、投票率の低さ、怠慢による棄権が多いこと等を考慮すると、全有権者とすべきではない。
  • 投票権者の範囲は、18歳以上という年齢ではなく、高校卒業の学年を基準とすべきである。

柴山 昌彦君(自民)

  • 憲法改正手続に関する啓発活動は重要である。また、情報提供等を通じた在外邦人の投票権の保障も重要である。
  • 国民投票運動の自由、思想の自由市場の確保という面から「公共空間」という概念は重要であるが、国民の投票行動に決定的な影響を与え得るメディアや政府の問題について、今後更なる議論が必要である。
  • 国民投票に関する無効訴訟の規定を設けることは良いとしても、その判決の確定をもって憲法改正の効力が生じるという考えには反対である。仮処分も活用できず、民意の尊重という点から執行停止の導入にも反対である。この点、米国の司法判断の回避が一番参考となるのではないか。
  • 投票方式について、国民に憲法改正案についての修正権がないため、原則個別投票とすべきである。前文の改正を行う場合にはパラグラフごとではなく、一括で行うべきである。

枝野 幸男君(民主)

<柴山委員の発言に関連して>

  • 現行の仮処分を活用するのではなく、仮処分的な新しい概念を作る余地があるのではないかということを提案している。

<船田委員の発言に関連して>

  • 国民投票における虚偽報道は、国政選挙とは異なり、具体的な事例が想定できず、虚偽の判断が困難である。虚偽報道については、規制ではなく、言論を戦わせることにより対処すべきである。

高市 早苗君(自民)

  • 国民投票の日程を独立したものとしても、それに近接する国政選挙や地方選挙に混乱を生じさせるおそれがあることから、国政選挙等に比べて、投票権者や投票運動への参加者を外国人や青少年に拡大するといった議論には懸念がある。
  • 国民投票運動への規制は公職選挙法の規制より緩やかなものとすべきとの議論があるが、憲法改正においては国政選挙よりも大きな政治的対立により、中傷合戦や破壊的行動が生じる不安は払拭できない。
  • 主権者たる国民の全員を国民投票に参加させることはできないのであるから、全国民が当事者であるから国民投票への参加者を拡大すべきであるとする意見には反対である。

葉梨 康弘君(自民)

  • 現行憲法は法的に正統性がないわけではない。しかし世論調査において6割の国民が改憲を望むといった状況の中で、国民が積極的に憲法を愛することができるようにすることが必要である。将来本格的に移民を受け入れる状況となった場合、憲法に忠誠を誓ってもらうほかなく、国民の拠り所になるような憲法が必要である。
  • 憲法改正案を国民投票に付す形式は、個別方式が原則となる。
  • 初めて実施される憲法改正国民投票の周知期間は、国民的論議を深め、国づくりに参加している意識を持ってもらうためにも、相当長期間とすべきであるが、その期間中に、国政選挙の日程が重ならないよう、制度的な工夫や申合せが必要である。

早川 忠孝君(自民)

  • 憲法改正国民投票は国政参加の一形態であり、国民投票法が存在していないため国民が意思表示をすることができない状態は、立法不作為と言われても仕方がない。
  • 国民投票の経験がないことから、諸外国の例を参考にすることが重要である。
  • 憲法改正作業が個別条項を検討し、それを踏まえて前文を検討するという順序である以上、前文を含む場合には一括して発議すべきである。

赤松 正雄君(公明)

  • 改憲派は9条を拡大解釈的方向に進めて集団的自衛権を認めるという立場であり、護憲派は9条を縮小解釈的方向に進めて自衛隊を改組しようという立場であると理解するが、仮に9条改正が国民投票により否決されても自衛隊が改組することにはならず、現行解釈のままとなろう。
  • 個人的には加憲の立場から、9条に3項を加えて同条2項の適正解釈を確定すべきであると考える。
  • 国民投票を実施する段階では、憲法改正案の内容は、国会論議等を通じて明確となり、曖昧な問いにはならないであろう。

小川 淳也君(民主)

  • 憲法改正の内容を離れて憲法改正手続の整備のみが進むことについては、懸念を持っている。並行して憲法改正の内容も示していく必要がある。
  • <船田委員の発言に関連して>
  • 諸外国の例を見ても、一般的国民投票制度に対する国民のニーズが高まっている。

吉田六左エ門君(自民)

  • 参考人はスイスの例を挙げていたが、我が国とスイスとは、国の規模や民族的特徴、環境等が異なることを踏まえる必要がある。我が国の国情に合った国民投票制度を模索すべきである。

岩國 哲人君(民主)

  • 在外邦人の投票権が奪われてきたのは問題である。
  • 日本国憲法は、国民投票を経ておらず、国民が自ら作ったという誇りや愛情がないことが問題である。特に戦争を体験した人ができるだけ多く国民投票に参加できるよう、国民投票手続を早急に整備すべきである。

柴山 昌彦君(自民)

  • 国民投票制度の在り方についてはスイスの事例を参考にしていくべきと考えられるが、日本と同一視することには、国の規模の違いもあり、多々問題があるのではないか。
  • 人口が1億人を超え検討事項が多々ある中で、周知期間を長く設定したとしても、専門的事項について逐一国民投票を行うのは極めて困難であり、実施しても必ずしも妥当な結論に達しないのではないか。少なくとも拘束力のある国民投票は基本的事項に限るべきである。もっとも住民投票についてはケース・バイ・ケースである。

船田 元君(自民)

<小川委員の発言に関連して>

  • 一般的国民投票と憲法改正国民投票を論ずる順序については、間接民主制と直接民主制の優先度をどう捉えるか、一般的国民投票の結果が政府をどの程度拘束するのか等複雑な問題があるため、まず基礎的問題である憲法改正国民投票から検討すべきである。
  • 憲法改正国民投票は究極の政策選択であるのに対して、国政選挙は人を選ぶものであるから、制限は異なって当然である。しかし、国民投票においても客観的に明らかな虚偽報道には制限が必要である。

<発言>

  • 簗瀬進参議院議員が憲法調査会の在り方で論点提起型の衆議院、論点深化型の参議院という性格の違いを指摘しているが、議論が尽くされた段階で、社会保障制度改革両院合同会議のように両院合同で議論すべきである。

枝野 幸男君(民主)

  • 事実と全く異なる報道がありうることは否定しないが、主要なメディアは、客観的に明らかな虚偽報道を行った場合にかなり大きな社会的制裁を受けると見られることや報道の定義が難しいことから、訓示的な規定は議論になるとしても罰則は不要である。

<高市委員の発言に関連して>

  • 外国人の国民投票運動の規制は、組織的な運動と言論行動の仕分けが難しく、現実的にはほぼ不可能ではないか。

保岡 興治君(自民)

<枝野委員の発言に関連して>

  • 憲法改正論議における虚偽とは何かを定義付けるのは難しい。

<発言>

  • フランスにおける欧州憲法条約批准国民投票では、運動主体を一定の要件を満たすものに限定し、その主体には公営放送における放送を割り当てるほか、運動に必要な費用について国庫から補助がある。我が国においては、発議する両院の議長が改正案と共に要旨も公に発表し、それに対し一定の要件を満たした運動主体が意見を述べるなどの方法が考えられる。いずれにせよ、憲法改正国民投票運動についての公正・公平なルールの確立が必要である。

小川 淳也君(民主)

<吉田委員の発言に関連して>

  • スイスと同程度の国民投票制度は困難であるが、世界の潮流の中で我が国もその必要性を考えていくべきである。

<船田委員の発言に関連して>

  • 憲法改正国民投票について慎重な議論が必要であるが、憲法改正の内容と改正手続を切り離した議論に疑問を持つ。
  • 一般的国民投票制度についても議論を行うべきである。

葉梨 康弘君(自民)

  • 憲法改正が発議されていない現在、国民投票運動は概念上存在せず、政治活動の一環として行われることになる。国民投票運動が政治活動であればその主体に政治資金規正法が適用されるので、両者を調整する作業が必要である。