平成18年4月20日(木) (第9回)

◎会議に付した案件

日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件(日本国憲法改正国民投票制度とメディアとの関係)

上記の件について、参考人山了吉君から意見を聴取した後、参考人山了吉君、勝見亮助君及び鈴木哲君に質疑を行った。

(参考人)

 社団法人日本雑誌協会編集倫理委員会委員長         山 了吉君

 社団法人日本雑誌協会個人情報・人権問題特別委員会委員長 鈴木 哲君

 社団法人日本雑誌協会専務理事              勝見 亮助君

(参考人に対する質疑者)

 加藤 勝信君(自民)

 北神 圭朗君(民主)

 斉藤 鉄夫君(公明)

 笠井 亮君(共産)

 辻元 清美君(社民)

 滝 実君(国民)


◎山了吉参考人の意見陳述の概要

1.日本雑誌協会の性質

  • 日本雑誌協会は、理事会、委員会等の機構を有しているが、各出版社の上部団体ではない。

2.雑誌と憲法改正国民投票法制

  • 当委員会への出席に当たり、何故、現時点において法制度を整備する必要があるのかとの観点から、日本雑誌協会の内部より批判があった。
  • 当初の自民党案においては、投票結果の予想及び虚偽報道の禁止並びに報道の公正が求められていたが、最近の案においては、メディアに対して自主規制を求めるという形になっていると承知している。
  • 雑誌の報道は、放送及び新聞が行う一次報道ではなく、一次報道の裏面、側面及び断面の観点から論評を加えるものである。
  • 憲法改正に関する報道については、立場が違えばいかようにも言えるものであり、何をもって「虚偽」とするのか、どこが「事実を歪曲している」とみなすのか、また「公正を害する」とはどのような記事を指すのか、必ずしも明確ではない。
  • 出版社にとって憲法21条が定める表現の自由は、金科玉条であり、これにより民主主義が成り立っている。
  • 自主的取組の規定は、真摯に受け止めるべきではあるが、「公正を害する」事例を具体的に想定することは難しいため不要である。

3.日本雑誌協会としての自主的な取組

  • 第三者機関として弁護士、学識経験者により構成する「出版ゾーニング委員会」を設け、青少年に向けた性及び暴力表現に対し出版社の改善を促す活動を行い、十分機能を果たしている。
  • 名誉や人権、プライバシーに関する侵害については、各雑誌の編集方針への干渉はあってはならないと考えるが、実際に人権侵害とされた事例があることも承知している。
  • 雑誌による人権侵害については、「雑誌人権ボックス」という機関を設けている。異議の申立てがあった場合、責任をもって当該出版社に通知することになっており、当該出版社は、2週間以内に回答することになっている。「雑誌人権ボックス」を発展させ、第三者機関とすべきとの意見もあるが、現時点においてまとまっていない。

◎参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

加藤 勝信君(自民)

  • 雑誌にはどのようなジャンルがあり、発行部数はどの程度か。また、活字離れが進行している昨今において、雑誌のトレンドはどうなっているか。
  • インターネットが急速に発達しているが、雑誌はその活用についてどう考えるか。
  • 放送・新聞との対比で、雑誌の役割と機能をどう考えるか。
  • 憲法改正を始めとした政治問題を、雑誌はどのように取り上げているのか。
  • 雑誌編集倫理綱領には、「政治的公平」は明記されていないが、編集段階において、政治的公平をどのように捉えているのか。あるいは、特定の立場からの編集も、雑誌の使命であると考えているのか。
  • 一つのテーマに対してさまざまな切り口が考えられるが、編集者の方針はどの程度記事に反映されているのか。
  • 出版の前段階における真実性の担保について、各社の取組はどのようなものがあるのか。
  • 意見広告を掲載するか否かの基準はあるのか。また、編集方針とは合わないとの理由で、意見広告を掲載しないことはあるのか。
  • 各メディアの特性に応じた規制については、どう考えるか。
  • 多面的な観点から編集を行うとの雑誌の立場から、公務員等の地位利用による国民投票運動や、組織的で弊害のある外国人の投票運動を規制することについてどう考えるか。

北神 圭朗君(民主)

  • オピニオン誌でもなく、高度の専門性を有するとは限らない総合週刊誌は、政策等を記事にする際、公正や中立の観点をどのように捉えているか。
  • 総合週刊誌は、「言論の責任」に対する緊張感が新聞ほどには高くないとの印象を受けるが、いかがか。
  • 憲法改正案の取り上げ方についての議論を、編集部内で行っているかどうか伺いたい。
  • 短絡的な結論に基づく記事は、読者の意見形成を歪めるおそれがあるが、雑誌業界は、センセーショナリズムをどのように捉えているか。
  • 中立の名の下で世論操作が行われるより、明確なスタンスの下で記事を作成した方が公正中立や「言論の責任」に資するところが大きいと考えるが、いかがか。

斉藤 鉄夫君(公明)

  • 国民のメディア・リテラシーの現状について、どのように考えるか。
  • 雑誌と映像メディアとの違い、また、雑誌と新聞との違いについて、どのように考えるか。
  • 現在行われている再販売価格維持制度や特殊指定の見直しの議論について、どのように考えるか。
  • 山参考人は、意見陳述において、本委員会に参考人として出席することに対し批判があったと述べたが、どのような批判があったのか。
  • 国民投票法において、メディアの自主規制を訓示的規定として設けることについて、どのように考えるか。
  • 仮に虚偽報道がなされた場合、反論の場を同じメディアに確保することが有効であると考える。各雑誌において反論の場を設けることについて、どのように考えるか。

笠井 亮君(共産)

  • 戦前の報道への国家介入に対する反省として、憲法21条が生まれたわけだが、この意義についてどう考えるか。また、戦前の経験を踏まえて雑誌の編集や出版についてどのような方針を持っているか。
  • 個人情報保護法や人権擁護法案等、近時のメディア規制を強化する動きについて、どのように考えるか。
  • 個人情報保護法施行後に、かねてから雑誌協会が危惧していたことが現実化されたのか否か。また、その実態についてご教示願いたい。
  • 様々な雑誌が各々の編集方針等に基づいて発行されることにより、全体として多様な見方が提供されるのであり、その真偽等については国民が判断するのではないか。そうであれば、個々の雑誌の記事について、虚偽か否かを判断し、規制をかけることは、雑誌の価値を全体として下げてしまうと考えるが、いかがか。

辻元 清美君(社民)

  • 国民投票制度の議論について、雑誌業界での認知度はどの程度のものか。
  • メディア規制など時代の空気について、雑誌報道に携わる者として、どのように感じているか。
  • 近時、メディアの中にナショナリズムを煽るような風潮を感じるが、いかがか。
  • 憲法改正国民投票法制において、メディアの自主規制に係る規定は設けないほうがよいと考えるが、仮に設けられた場合の影響について、どのように考えるか。
  • 選挙報道に際し、偏った報道がなされたと政党から批判を受けたとのことだが、詳しく伺いたい。
  • メディアスクラムと言われるように、雑誌の記事が、様々なメディアに取り上げられ多大な影響力を持つことがある。雑誌編集に現場で携わってきた鈴木参考人と山参考人に、雑誌の影響力について伺いたい。

滝 実君(国民)

  • 主に人物を扱う週刊誌は、抽象的な制度を取り上げにくいのではないかと考えるが、国民投票制度を取り上げる可能性はあるのか。
  • 公務員・教育者の国民投票運動が規制された場合、週刊誌において、大学教授である憲法学者の意見の取扱いが難しくなるとも考えられるが、いかがか。
  • 週刊誌は、新聞広告により話題のテーマを設定するといった機能を持つが、そのような役割を持つ週刊誌において憲法改正が話題となった際、どのような取り上げ方が可能か。