平成18年4月27日(木) (第10回)

◎会議に付した案件

日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件(日本国憲法改正国民投票制度とメディアとの関係)

上記の件について、参考人楢崎憲二君、石井勤君及び藤原健君から意見を聴取した後、質疑を行った。

(参考人)

 社団法人日本新聞協会編集小委員会委員長
 (読売新聞東京本社編集局次長)          楢崎 憲二君 

 社団法人日本新聞協会編集小委員会副委員長
 (朝日新聞東京本社編集局長補佐)          石井 勤君

 社団法人日本新聞協会編集小委員会委員
 (毎日新聞東京本社編集局総務)          藤原 健君

(参考人に対する質疑者)

 林 潤君(自民)

 逢坂 誠二君(民主)

 桝屋 敬悟君(公明)

 笠井 亮君(共産)

 辻元 清美君(社民)

 滝 実君(国民)


◎参考人の意見陳述の概要

楢崎憲二参考人

1.はじめに

  • 憲法を改正すべきか否か、国民投票制度を設けるべきか否かについては新聞協会加盟各社に意見があり、協会として統一した見解はない。

2.総論的事項

  • 憲法改正国民投票制度は、報道の自由を前提として設計すべきであり、報道、論評に関わる規制の必要はない。
  • 国の今後の在り方を選択する国民投票と、特定の候補者や政党を選ぶ公職選挙は目的が異なる。選挙では公平な取扱いに力点があるが、国民投票では、議論を尽くすことに力点がある。

3.虚偽報道の禁止

  • 虚偽報道の禁止の規定を設けることについては、虚偽が何を指すのかが不明であり、恣意的な運用を招く危険があるため、反対である。
  • 憲法論議の真偽は主権者たる国民が判断すべきことであり、公権力が判断すべきことではない。虚偽報道は活発な報道活動により排除される。
  • 訓示規定として自主的取組を規定することは、それ自体矛盾している上、取材・報道を萎縮させ、有権者に多角的に情報を提供することができないため、容認できない。
  • 新聞倫理綱領が定められている上、多くの新聞社は、外部の者を含む第三者機関を設けるなど、報道活動をチェックする自主的な仕組みを持っている。

4.不法利用の禁止及び広告規制

  • 不法利用の禁止については、公職選挙法では個人の当落を左右する論評の禁止を指すと考えるが、憲法論議では何が不法利用であるか判然としないので、訓示規定としても反対である。
  • 広告規制については、自由な意見表明、情報流通を阻害するものであれば、反対である。

5.まとめ

  • 新聞各社は自主的な判断、規律の下に多様な情報を国民に幅広く提供することを使命としており、今後も正確、公正、責任のある論評をしていきたい。

石井勤参考人(補足意見)

  • 訓示規定にある自主的取組という文言は、一見緩やかに見えるが、法律に規定されると、メディアに影響力を与えようとする側の都合のよい道具となるおそれがあり、容認できない。同様に、第三者機関の設置についても容認できない。

藤原健参考人(補足意見)

  • 自主的取組を第三者が求めることには矛盾があり、訓示規定については反対である。戦前の反省を踏まえた新聞倫理綱領においては、新聞の使命は重大であり、高い倫理観を持ち、その使命を果たすこととされている。新聞の自律的な判断を信頼すべきである。

◎参考人に対する質疑者及び主な質疑事項等

林 潤君(自民)

  • 虚偽報道禁止の訓示規定について、前回の委員会において日本雑誌協会の山参考人から反対の意見が述べられたが、どう考えるか。
  • 訓示規定が検討されている伏線として、権力のメディアに対する不信感があると考えるが、いかがか。
  • 虚偽報道等により選挙の公正を害してはならないと定める公職選挙法148条1項ただし書により、現実に報道が制約された事例について伺いたい。
  • 新聞側としては、訓示規定の狙いはいかなるものであると考えるか。
  • 虚偽報道防止のために新聞各社が行っている内部的・自主的取組について伺いたい。
  • 意見広告を全く自由にすると資金力の格差による不公平が懸念されるが、何らかの規制の枠組が考えられるか。
  • 憲法改正国民投票運動の一環として、政党等が無料で新聞広告をなしうることについて、どのように考えるか。
  • 新聞は、両論を併記しつつも自社の意見をより明確に述べるべきであると考えるが、いかがか。

逢坂 誠二君(民主)

  • 新聞は特定の意見を明確にすべきか、それとも中立であるべきか。一紙のみを継続して読んでいる国民が多い中で、各社が明確に自説を主張することに危うさはないのか。
  • 虚偽報道は反論をもって淘汰すべきとの主張だが、国民投票の周知期間を60日〜180日間とした場合に、この期間での反論は可能か。
  • 新聞社としての見解はどのように形成されるのか。また、新聞社の収益構造を考えると、紙面作成が広告主等の意向によって影響を受けることがあるのではないか。
  • 新聞紙面をテレビ番組で紹介する手法は、安直であり、記事が曲解されるおそれがあるのではないか。

桝屋 敬悟君(公明)

  • 新聞協会は、公職選挙法148条1項ただし書を所与のものとして受け入れているのか。
  • 選挙報道に関し、実際には写真等記事の取扱いについて、候補者ごとにばらつきがあるように思えるが、いかがか。選挙報道における公平な取扱いを定める内規はあるか。
  • 公職選挙法148条1項ただし書により、報道の自由に対する影響はないと主張するのであれば、憲法改正国民投票法案における訓示規定も同様ではないか。
  • 公益法人改革について、新聞協会として統一した見解はあるか。

笠井 亮君(共産)

  • 新聞倫理綱領の冒頭において、「あらゆる権力から独立したメディア」と述べているが、新聞協会としてその今日的意義をどのように考えているのか。
  • 個人情報保護法が制定され、報道の現場でどのような不都合が生じているか。また、最近のメディア規制をめぐる動きについて、どのように考えるか。
  • 憲法改正案の広報について、メディアも協力してこれに当たるべきとの議論があるが、これについてどう考えるか。

辻元 清美君(社民)

  • メディアに対する規制が強まる中で、報道の自由に対する個人情報保護法の影響、同法に対する新聞協会の見解や議論について伺いたい。
  • メディアに対する規制が強まっている具体的事例があれば、石井参考人に伺いたい。
  • 憲法改正国民投票の議論においても自由で活発な議論が不可欠だが、教育者や外国人の識者等が紙上で意見表明することの規制について、どう考えるか。
  • これまでの憲法問題の取り上げ方や、多様な意見を反映するための工夫について伺いたい。

滝 実君(国民)

  • 新聞には言論機関と報道機関の二つの面があるとの発言があったが、憲法論議においては、これらの立場を峻別し、明示することが必要である。このような峻別を国民に対して意識的に訴えていくためには、どのようなことが必要か。
  • 憲法改正に当たっては、読者の意見を紙面に十分に反映させることが必要であるが、そのために窓口等を設置することについて、どのように考えるか。
  • 国民投票についての投票予測に、どのように取り組むつもりか。