平成18年12月7日(木) (第8回)

◎会議に付した案件

日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外5名提出、第164回国会衆法第30号)
日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外3名提出、第164回国会衆法第31号)

上記両案について、提出者船田元君(自民)、園田康博君(民主)、赤松正雄君(公明)、保岡興治君(自民)、加藤勝信君(自民)、枝野幸男君(民主)、鈴木克昌君(民主)、葉梨康弘君(自民)、小川淳也君(民主)及び斉藤鉄夫君(公明)に質疑を行った。

(提出者に対する質疑者)

 新井 悦二君(自民)

 近藤 基彦君(自民)

 平岡 秀夫君(民主)

 逢坂 誠二君(民主)

 石井 啓一君(公明)

 福島 豊君(公明)

 笠井 亮君(共産)

 辻元 清美君(社民)

 糸川 正晃君(国民)


◎提出者に対する質疑者及び主な質疑事項等

新井 悦二君(自民)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 両案は、投票者が憲法改正に対する賛成又は反対の意思表示を容易にできる仕組みとなっているのか。また、「過半数」の意義をどのように考えているか。
  • 国民が憲法改正案についての賛否を判断する際には情報提供が重要であるが、判断材料は十分に提供されるのか。
  • 発議から投票期日までの周知期間はどの程度必要か。

<与党案提出者に対して>

  • 特定公務員の国民投票運動の禁止について、その範囲が裁判官・検察官等にまで及ぶのは広すぎるのではないか。
  • 公務員等の地位利用による国民投票運動の禁止について、「地位利用」の概念が曖昧であり、過度の規制となるおそれはないか。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 投票日直前に広告放送の制限を行う期間としては、どの程度が適切か。
  • 投票率向上のための施策として、どのようなことを念頭に置いているのか。

近藤 基彦君(自民)

<与党案提出者に対して>

  • 公務員等の地位利用による国民投票運動については、与党案では罰則をもって禁止しているが、萎縮効果を考えるとやや厳しすぎるのではないか。これについては修正の用意があるとの発言もあったが、現時点での考え方を伺いたい。

<民主党案提出者に対して>

  • 民主党案においては、公務員等の地位利用による国民投票運動について規制を設けていないが、悪質な場合についても、規制を行わなくてよいか。

<与党案提出者に対して>

  • 与党案では、買収罪について厳しい要件を定めているが、その趣旨はどのようなものか。また、与党案提出者の船田議員から、買収罪の要件についてさらに限定を加えていく旨の発言があったが、その趣旨はどのようなものか。このような限定を設けた場合に、十分な取締りができるのか。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 国民投票運動及び罰則の規定の適用について、「適用上の注意」規定を設けている趣旨は何か。
  • 憲法改正原案の提出権は、内閣にも認められるのか。
  • 憲法審査会は、現行の憲法調査会を改組して設置されるものと認識しているが、憲法調査会規程で規定されている国会閉会中の開会や会議の原則的公開等は、憲法審査会にも基本的に引き継がれるのか。
  • 憲法審査会は、少なくとも当初の2、3年は、改正の要否や方向性の検討のための調査に専念するものと理解しているが、その調査の具体的イメージはどのようなものか。

平岡 秀夫君(民主)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 憲法96条は、「特別の国民投票」又は「国会の定める選挙の際行われる投票」の実施を規定しているが、今回の法案が後者の実施を排除しているとすると、憲法違反ではないか。
  • 国民投票は地方選挙等と同時に実施される可能性があるが、国政選挙と同時に実施される場合と同様の弊害はないのか。
  • 憲法95条の地方自治特別法の住民投票は、特別の定めを除いて公職選挙法が準用されており、国民投票と異なっている。国民投票にならって地方自治特別法の住民投票制度を整備すべきではないか。

<与党案提出者に対して>

  • 投票権者の年齢要件を18歳以上とするに当たって関連法令の整備のために3年間の経過期間を置くとの船田議員の発言は、(a)改正関連法令が3年後に施行されること、(b)改正関連法令が3年後に制定されることのいずれを指すのか。

<民主党案提出者に対して>

  • 改正関連法令が3年後に制定されるものの施行されないことに民主党案提出者は同意できるか。
  • 複数の案件が国民投票に付された際に、案件ごとに投票用紙を分けるとともに投票用紙の記載欄に「棄権欄」を設けることについて、どのように考えるか。

<与党案提出者に対して>

  • 憲法96条の規定振りや憲法制定当時の英訳から、「過半数」は、投票総数の過半数と解される。「過半数」の分母は投票総数と解すべきではないか。
  • 国民投票無効訴訟が提起され、憲法改正の効果が停止されるとの判断が下された場合に、憲法改正の公布、施行等にどのような影響を与えるのか。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 国民投票無効訴訟において投票が一部無効との判断が下された場合の再投票の対象は、どうなるのか。また、他の開票区の投票結果が判明している中で、再投票が行われるのか。

逢坂 誠二君(民主)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 当委員会の海外調査において、国民投票は檻から出た猛獣にたとえられており、投票により民意を汲み取ることには限界があると考えるが、自治体首長選挙などにおいても、有権者にとって想定外の候補者が当選することがある。このように、選挙は民意と異なった結果を導くこともあるが、この点についてどのように考えるか。
  • 憲法ではなく一般政策についての国民投票を行った場合、その結果に対し国民はどのような認識を持つと考えるか。
  • 憲法改正国民投票において、手続的に違法性はないがその結果が民意とずれていると感じられる場合に、その是正措置についてどのように考えるか。また、民意とのずれを生じさせない方策についてどのように考えるか。
  • 憲法改正国民投票法制の整備は、憲法改正議論が静かな時期に改正内容にかかわらず粛々と進めるべきとの考え方があるが、いかがか。また、今は、憲法改正国民投票法制を整備する時期として適当か。
  • 憲法改正国民投票法制の議論をすることは、否応なく憲法改正が前提となってしまうとの指摘もある。そうであるならば、どんな時期に議論しても憲法改正論議が静かな時期に議論することにはならないとも感じるが、いかがか。

石井 啓一君(公明)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 投票用紙への記載方法等について両案の提出者から歩み寄りの発言がなされている。元々両案の相違点は少ないと考えているが、修正合意を早期にまとめる決意を伺いたい。

<民主党案提出者に対して>

  • 投票用紙への記載方法について与党案提出者の発言のように無効票を少なくする工夫をした場合、「過半数」の定義は、有効投票総数の過半数としてよいか。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 最低投票率制度の導入については、憲法違反の疑いがあるとの主張には説得力があるが、極めて低い投票率であった場合の国民投票の有効性について、どのように考えるか。
  • 予備的な国民投票のイメージを伺いたい。また、それを憲法審査会の議論の対象とすることを法案に明記するのか。
  • 現行憲法について、改正を前提とした議論を憲法審査会とは異なる機関で行うべきとの意見について、どのように考えるか。

福島 豊君(公明)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 与野党が速やかに合意を形成することが重要と考えるが、合意形成に向けての決意を伺いたい。
  • 国民の憲法に対する認識が十分でないことから、学校教育において憲法を十分に取り上げる必要があると考えるが、いかがか。
  • 憲法改正においては、メディアの役割・責任が大きいと考えるが、メディアに立法府がどのように関わっていくべきかも含めて、メディアの位置付けについての認識を伺いたい。
  • 国民に対して憲法改正案を発議するに当たっては、国民の意識喚起のために、政党がいかなる役割を果たしていくべきか。
  • 歴史認識など国民の意識に隔たりがある問題について、その意識を統合し、共通の認識を形成するために、立法府が公開の場における議論を積極的に国民に見せていく必要があると考えるが、いかがか。

笠井 亮君(共産)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 国会に寄せられている請願等では、改憲手続法の制定に反対するものが圧倒的に多い。それにもかかわらず、改憲手続法の制定を求める機運が国民の間で高まっていると考えているのか。

<与党案提出者に対して>

  • 解釈改憲を推し進めようとする動きが安倍政権に見受けられ、これは、「憲法と現実との乖離」を政治力によって意図的に作ろうとするものである。このような状況下で改憲手続法を制定することは、改憲を促進することにほかならないのではないか。
  • 憲法96条に定める「承認」は、賛成の意思表示のみを求めるものであり、反対の意思表示を求めるものではないとの参考人の意見があったが、同条についてどのように解釈しているか。
  • 「過半数」の意味を有効投票の過半数とする与党案では、少数の賛成によって改憲が行われてしまう可能性があるが、それで国民の意思が反映されたといえるのか。

<民主党案提出者に対して>

  • 「過半数」の意味を投票総数の過半数とする民主党案においても、少数の賛成によって改憲が行われてしまう余地が残ってしまう。投票所へ赴かない「棄権」の自由に対する配慮が必要だとしても、それは、投票率が低くてよい理由にならないと考えるが、いかがか。

<与党案提出者に対して>

  • 技術的な問題に関する改憲など、テーマによっては国民の関心が低い場合もあり得るとの説明は、少数の賛成によって改憲が行われてよい合理的な理由とはならないと考えるが、いかがか。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 広報の主体として国会に広報協議会を設置するとしているが、改憲案を発議する国会が自ら主体となって国民に広報を行うことは、適切ではないのではないか。
  • 政党等による無料の意見広告について、政党による広報が重要であることは認めるが、政党のみを優遇する合理的理由があるのか。

<民主党案提出者に対して>

  • 政党等に与えられる無料の意見広告枠を、政党が自主的に市民団体等に配分できることとしても、それは本質的には政党に対する優遇ではないか。

<与党案提出者に対して>

  • 投票日前7日間の有料の放送広告の禁止をさらに期日前投票開始日まで延長することを考えているとの発言もあったが、この間、政党等に割り当てられた無料広告のみが許され、一般の有料放送広告はできないことになるのか。
  • 公務員等の地位利用による国民投票運動の禁止について、現在、罰則をなくす等の修正を検討しているとのことだが、この規定の存在自体が自由な意思表明に対する萎縮効果を生むこととなる。なぜ、この規定を設けるのか。

<発言>

  • 本日の委員会での議論を通じても、法案の抱える諸問題は解決されていないと言わざるを得ない。かえって、より悪い方向へと修正がなされようとしており、このような法案は廃案とするしかない。

辻元 清美君(社民)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 修正を考えているとの発言もあったが、法案において、政党等に対する無料広告枠の割当基準を議席数按分としたのは、どのような考えに基づいたものか。

<与党案提出者に対して>

  • 船田議員から、無料広告枠の割当基準が議席数按分とされている理由として、議事堂における控室の配分等も議席数に応じて配分されているとの発言があったが、憲法改正国民投票と議事堂の控室の配分は次元が異なると考えるが、いかがか。

<民主党案提出者に対して>

  • 公報に掲載される「要旨」、「解説」は、誰が作成するのか。

<与党案提出者に対して>

  • 公報に掲載される「解説」について、与党案・民主党案の条文が同一であるにもかかわらず、先日、与党案提出者は「改憲案をわかりやすく説明する」ものと説明し、改正案、要旨、新旧対照表など裁量の余地のないものを掲載するとする民主党案提出者と説明が異なるが、再度、説明を伺いたい。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 「説明会」は、いつ、どこで、どのような形で行うことを想定しているか。そもそも、説明会は必要なのか。

<与党案提出者に対して>

  • テレビCMは、資金力によって極度に格差が生ずる宣伝形態だが、この点にかんがみ、使うことのできる資金に制限を設けるとの見解について、船田議員はどのように考えるか。

<民主党案提出者に対して>

  • 憲法改正国民投票に関するCMは、あまり例を見ない内容のものになる等の理由から、検討しなければならない問題点が多々あるとの民放連の山田参考人の発言等があったが、当該CMについて、どのように捉えているか。

<各党の提出者に対して>

  • 与党案・民主党案ともに、発議は「内容において関連する事項ごと」に行うとされているが、法案を提出している各党は、一度に国民投票にかけられる事項はどの程度の数と想定しているか。特に、「加憲」を提唱している公明党は、この点をどのように考えているか。

<自民党の提出者に対して>

  • 自民党の「新憲法草案」を国民投票にかけるとすると、いくつの事項に区分して発議することとなるか。

<各党の提出者に対して>

  • 「新憲法草案」の9条2項では、自衛隊を自衛軍と位置付け、海外における活動を許容する等が規定されているが、これらは「内容において関連する事項」と考えるか。この例において、国民の意見を正確に反映するためには、これらの事項は個別に発議すべきか、一括して発議すべきか。

<発言>

  • 「内容において関連する事項」とは何かについて、これまで漠然とした議論しかされてこなかったが、国民の意見を正確に反映するためには、具体的に詰めた議論をすることが必要である。この点について参考人の意見を聴く等、今後、審議をさらに深める必要がある。

糸川 正晃君(国民)

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 憲法に国民の意思を反映させるためには、できるだけ多くの会派が一致した形で法案成立を目指すべきと考えるが、いかがか。
  • 国民投票法が必要との国民の声が高まっていないとの批判について、どのように考えるか。
  • 憲法改正国民投票と国政選挙を同時に実施することを想定しているか。
  • 昨年の解散・総選挙は国民投票的な運用がなされたとの評価もあるが、その当否も含め、予備的国民投票制度の在り方についての認識を承りたい。

<与党案提出者に対して>

  • 与党案において、投票権年齢を20歳以上としてきた理由は何か。また、与党案提出者から、本則において投票権年齢を18歳以上とし、ある年限までに他の法制における年齢規定の整理を行い、それまでは20歳以上を投票権年齢とする修正を検討するとの発言があったが、このような発言に至った理由・経緯を伺いたい。

<与党案提出者・民主党案提出者に対して>

  • 投票権年齢に関するこの修正案について、与野党で合意に達することができると考えるか。
  • 投票方式について、与党案提出者・民主党案提出者双方から、国民の意思をより正確に反映する方法があれば修正したいとの発言があったが、その検討状況を伺いたい。
  • 改正の要否や方向性の検討についての調査のためには、憲法改正原案の審査権限を有しない機関において、期限を設けずに、じっくりと調査をすることも考えられるが、いかがか。
  • 与党案・民主党案ともに、国民投票の無効事由が(a)管理執行機関の手続規定違反、(b)多数の投票人が一般にその自由な判断による投票を妨げられたといえる重大な規制違反、(c)投票確定の誤りの三つに限定されているが、無効事由をこの三つに限定した理由について伺いたい。
  • 万が一、憲法改正の限界を超える改正が行われた場合、裁判所はどのように判断すべきか。
  • 今後、法案の内容を国民に周知する方法として、どのようなことを考えているか。
  • 憲法改正原案の提出に当たっては、衆議院においては議員100人以上、参議院においては議員50人以上とされているが、通常の法案に比して員数要件を加重した理由は何か。