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平成十三年四月二日提出
質問第五四号

九州新幹線建設に伴う文化財保護に関する質問主意書

 提出者
 小沢和秋    赤嶺政賢





九州新幹線建設に伴う文化財保護に関する質問主意書


 熊本県八代市に熊本県指定無形民俗文化財「八代神社祭礼神幸行列」がある。地元では「妙見祭」の名で知られており、江戸時代のはじめから伝わる祭りで、かつては長崎県諏訪神社・福岡県筥崎宮の祭りとともに、九州三大祭りといわれる盛況を呈していた。この神幸行列は、行列の道具立てと運行を含めたすべてが文化財として、一九六〇年に熊本県指定無形民俗文化財になった。
 行列の先頭から最後部までの長さは二キロメートル近くまで及び、この行列は八代市内の塩屋八幡宮から八代神社までと、八代神社から砥崎の河原までを合わせた約六キロメートルの道路をねり歩くが、行列の最終盤を分断する形で、建設予定の九州新幹線が二箇所にわたってほぼ南北に縦断していくことになる。
 そこで、次の事項について質問する。

(一) 熊本県文化財保護条例第二十九条には、重要民俗文化財に関する事前協議の義務が明記され、届け出を行わず工事に着手すれば同条例違反となる。
 新幹線の縦断はこの行列、すなわち無形民俗文化財の現状を変え大きな影響を与えると考えられるが、国と鉄道建設公団は新幹線の路線を決定するに際し、条例にもとづいて同県教育委員会に対し「八代神社祭礼神幸行列」の中を新幹線が通るという事前の届け出をいつ行い、いつ事前協議をしたのか。協議したのであれば、どういう結果になったのか具体的に答えられたい。
(二) 江戸時代初期から伝わる古式に則った祭りの最終場面を、新幹線高架橋が二箇所も縦断していくことになるが、文化財保護に支障をきたさないようにどのような対策を講じるのか。
(三) 文化財に指定されている行列の中に橋脚が立ち、それによって行列の運行に支障をきたすようになれば、文化財の「指定解除」となると文化庁から説明を受けた。指定文化財の保護のため最大限努力すべきなのに新幹線建設のために「指定解除」するという立場は全く本末転倒である。今後新たな区間の工事も予定されているので、事前協議を厳しく守らせることが必要ではないか。
(四) 日本考古学上の貴重な発見、優れた文化遺産の発見は、新幹線建設をはじめとする開発事業に伴う発掘調査の成果が大勢を占めているが、開発至上主義のもと、皮肉にもほとんどの遺跡が消え去っていく運命にある。一九九九年度の統計によれば、全国の埋蔵文化財緊急発掘調査の件数は六千七百七十二件あったが、建設工事等に伴う調査のため大多数が保存されることなく消滅している。開発優先の立場から、円滑化と称して発掘調査は開発の妨げとならないように迫られ、埋蔵文化財は保護ではなく「処理」されているのが実態である。
 一九七五年、山陽新幹線は博多まで伸びたが、その建設工事に伴って当時の国鉄から委託を受け発掘調査を行った福岡県教育委員会は、調査報告書第一集の序文の中で、国鉄側との事前協議がきわめて不十分なまま調査を始めさせられたことを縷々つづっている。今後進められていく予定の九州新幹線建設工事に伴って発見される貴重な埋蔵文化財も、今のままでは調査終了後は消え去っていくことが懸念される。
 新幹線建設工事をめぐる埋蔵文化財の取り扱いに関しては、一九六六年に鉄建公団と当時の文化財保護委員会との間で交換された「日本鉄道建設公団の事業施行に伴う埋蔵文化財包蔵地の取扱いに関する覚書」がある。九州新幹線鹿児島ルートと、同長崎ルートの路線決定に際し、国と鉄道建設公団がこの覚書にもとづいて、事前に文化庁や関係各県の文化財担当部署との間でいつどのような協議を行い、その結果はどうであったか。すべて具体的に答えられたい。
(五) 九州新幹線建設に伴う調査中及び調査予定の各々の埋蔵文化財について、調査終了後その取り扱いはどうなるのか。
 また、その根拠となる協議、覚書の類はどういうものか。すべて明らかにされたい。
(六) 国と鉄道建設公団は、新幹線路線を周知の埋蔵文化財包蔵地からできるだけ避けて考えたとのことだが、埋蔵文化財はこれまで何もないと思われている所から突然発見されることが少なくない。机上で作った路線の公開後に発掘調査の日程だけを協議して「協議済み」というのであれば、前記の覚書や「鉄道建設等に伴う史跡、名勝、天然記念物及び埋蔵文化財包蔵地等の保護について」の趣旨が守られているとは考えられない。文化財行政側とはほとんど協議もなく路線が決定され、公表されているのが実状ではないか。
(七) 発掘調査の過程で予想もされなかった遺物・遺構の発見がされた場合、特に史跡指定級のものが発見された場合、路線の変更も検討しなければならないことが起こりうる。どのように調整するのか。路線を決定する段階から文化財行政側の意見を十分に聞くことが必要ではないか。
(八) 新幹線建設工事に伴う発掘調査の委託契約書に、「発掘調査を行う教育委員会は、鉄建公団が行う九州新幹線建設工事と工事工程に支障のないよう努めるものとする」という条文がある。発掘調査は埋蔵文化財という性質上、調査途中で状況も変わりうるが、この委託契約書のように終了期限を定められた調査では、文化財行政側はとにかく調査を早く終わらせることが課題となり、保存が必要と考えられる重要な発見があっても、文化財行政側から保存の声を出せないのではないか。
(九) 調査終了を急がされ十分な時間のない中での発掘調査では、現場での十分な検討もできないまま調査作業が進み、重要な所見を見落とすことにもつながりかねない。現場で十分な検討が加えられないまま作業が進められてしまえば、後で疑問点を解決しようとしても記録した写真や図だけでは不可能となる。
 十分な調査期間を保障するためにも、また、場合によっては遺跡の保存も考慮して、前記の発掘調査委託契約書の中から、「工事と工事工程に支障のないように」という条文は削除すべきであり、むしろ保存についての協議項目を追加すべきではないのか。
(十) 事業認定が行われてしまえば早期完成が優先され、このままでは文化財行政側の実態は発掘調査の早期終了が優先課題となる。文化庁の通知「埋蔵文化財の保護と発掘調査の円滑化について」の基本的事項を踏まえ、十分な試掘、場合によっては本調査の結果を待って路線の決定をすることも考えるべきではないか。
(十一) 新規着工予定の博多〜船小屋間は、路線決定に際し文化財保護の観点からの協議が不十分であり、路線の位置の見直しが必要である。財源上の問題も大きい。拙速な着工は止めるべきではないか。
 また今後予定されている長崎ルートについても、今のままでは文化財保護の観点が抜け落ちたまま事業が始められることが懸念される。事前に文化財行政側の十分な調査結果を待って、路線の位置を再度検討し直すべきではないか。
(十二) 新幹線建設工事に伴う発掘調査事業費は「原因者負担の原則」により、事業者である鉄道建設公団が全額負担しているが、これは文化財保護法のどこにも明記されておらず、国の予算措置の考え方にすぎない。文化財保護の立場から強い指導力を発揮させるため、少なくとも国や国の機関が行う事業に伴う発掘調査は、文化財保護を主管する文化庁が、自ら予算を計上し事業主体となるべきではないか。
(十三) 発掘調査は本来文化財保護の目的で行うものであり、遺跡破壊の免罪符ではないはずである。調査を建設工事等の工程の一部ではなく文化財保護のために行う以上、国は保護したものについて正確に把握しているはずだ。発掘調査の終わった全国の埋蔵文化財が、どのような形態で保存されているか正確に把握するため、国は具体的にどのような手を打っているのか。
 また、直近から過去十年間、国や国の機関が行った公共事業に伴う発掘調査の結果、保存された埋蔵文化財の状況はどのようなものか、具体的に答えられたい。
(十四) 文化財行政側と鉄道建設公団や道路公団等の開発事業者側との間での埋蔵文化財をめぐる協議結果には、しばしば「その取り扱いは記録保存とする」と書かれている覚書が存在する。しかし、遺跡を写真や実測図などの色々な手段を使っても、記録して保存するなどということは理論的にもありえない概念で、現実には遺跡はどこにも保存されない。文化財保護法のどこにも「記録保存」という言葉はなく、開発等事業を円滑に進めるためにつくりだされた行政上の造語にすぎない。それによって文化財行政側は結果的に遺跡破壊を容認しており、「記録保存」の考え方は撤回すべきではないのか。遺跡はそれ自身が立地している場所に保存されてこそ真の保存である。形のある埋蔵文化財がなぜ記録によって保存できるのか。

 右質問する。



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