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平成十三年八月十日提出
質問第一六号

死刑制度に関する質問主意書

提出者  保坂展人




死刑制度に関する質問主意書


 先の国会で提出した「検事らの待遇と死刑執行などに関する質問主意書」に対する七月十七日付け政府答弁書(以下「七月答弁書」とする)の内容について質問するとともに、死刑制度全般についても問う。

一 検事らの高給

 (1) 七月答弁書の別表一記載の給与額には、各種手当は含まれているか。含まれていないとすれば、各種手当について説明し、各種手当が最も多く支給されているケースについて、各区分ごとに年収額を示されたい。
 (2) 七月答弁書によると、四十歳以上の民間企業従業員の平均年収は約五百七十万円で、企業規模百人以上かつ事業所規模五十人以上の「事務部長」でも平均年収は約千二百万円なのに、五十歳前後で年収二千万円を超える裁判官や検事の給与は高すぎないか。
 (3) 弁護士の平均年収は約千五百万円と聞いているが、任官者の待遇をよくすることで、人材を集めているのか。
 (4) 金融庁や内閣法制局などに出向中の検事は、出向先の職員と同等の給与か、それとも検事としての給与を支給されるのか。
 (5) 七月答弁書によると、事務次官と同額以上の給与を受けている検事は六十四人、裁判官は二百五十一人とあるが、政府は事務次官の職務に比し、相当な待遇と考えているか。
 (6) 報道関係者によると、財務省が先の「大蔵省汚職」を遺恨に思い、法務省予算を厳しく査定するため、法務省は検察捜査の捜査対象ともなりうる政治家に予算の陳情を繰り返し、東京地検特捜部などの検事が萎縮していると言われているが、事実か。
 (7) 政府を構成する政治家、与党も含めて捜査対象とする検察の厳正さを確保するため、検事らの適当な待遇と法務省・検察庁などの職責に見合った予算について、政府は意を尽くしているか。
 (8) 現在の公証人のあり方について、政府はどのように考えているか。見直しの必要性は認識しているか。

二 死刑

 (1) 六月二十五日に欧州評議会の議員会議が日本などの死刑制度に関して行った決議で、非難された「少年の犯罪者、精神病又は知的遅延を持つ者に対する死刑の執行」は戦後、何件あるか。
 (2) 同決議で非難された「死刑判決に対する強制上訴制度を欠いていること」について、なぜ強制上訴制度がないのか。
 (3) 同決議で懸念された「死刑囚房において精神的な苦痛がこう進する状況」は戦後、何件把握しているか。
 (4) 同決議は「死刑制度に対する公衆の高い支持のような死刑制度廃止に対する種々の障害は認識するが、これらの障害は欧州の経験が示すように克服することができ、また克服すべきものである」としているが、日本は克服できないと考えるか。あるいは克服する必要がないと考えているのか。
 (5) 同決議が要求する「遅滞なく死刑執行に関するモラトリアムを実施し、死刑制度廃止に向けた必要な手段を採ること」は無視するのか。
 (6) 同決議が要求する「死刑囚房現象の軽減(執行にかかわるすべての秘密性及び権利と自由のすべての不必要な制限の終了並びに判決後及び上訴後の司法的見直しへのアクセス拡大を含む)を目的として、死刑囚房における条件の改善を図ること」は無視するのか。
 (7) 同決議は「欧州評議会と日本及び米国との間の価値の基本的な相違を深く嘆き、両オブザーバー国にその相違をなくすために真剣な努力を行うように促す」としているが、無視するのか。
 (8) 七月答弁書によると、死刑制度の存続の問題は各国の「国民感情」「犯罪情勢」「刑事政策の在り方」などを踏まえて慎重に検討し、独自に決定すべきものとしているが、政府は現在の「国民感情」について、どのように認識しているか。各種世論調査の結果や動向、犯罪被害者の多様な意向などを踏まえて詳しく説明されたい。
 (9) 現在の「犯罪情勢」について、各種統計を踏まえて詳しく説明されたい。こうした犯罪情勢に至った原因、政府のこれまでの対応、一連の警察不祥事が与えた影響などにも言及されたい。
 (10) 現在の「刑事政策の在り方」について、政府の基本的な見解、これまでの具体的な政策を説明されたい。
 (11) 七月答弁書は「死刑確定者等に対しては、その心情の安定が得られるよう種々の配慮に努めている」としているが、「種々の配慮」を具体的に説明されたい。
 (12) 死刑にかかわる情報公開で、刑の執行を受けた人やその関係者に不利益や精神的苦痛を与えた具体的なケースを明らかにされたい。また他の死刑確定者の心情の安定を損なう結果を招いたケースを具体的に示されたい。それぞれプライバシーに配慮し、個別の事例が特定されない表現で答弁されたい。
 (13) 七月答弁書は刑事司法手続きでの人権への配慮として「捜査段階から被疑者に対して弁護人を選任する権利が保障されている」ことを挙げるが、政府の司法制度改革審議会が意見書で公的な被疑者弁護制度を提言したように、現行制度では不十分ではないのか。
 (14) 一九九八年六月十七日提出の「死刑制度などに関する質問主意書」に対する答弁書(以下「九八年答弁書」とする)によると、改正刑法草案は「死刑を存置するとしても、その適用をなるべく制限するのが望ましいとの考えに基づき」、現行刑法で死刑を定める罪の一部について、死刑を定めなかった。同草案策定時に「死刑を存置するとしても、その適用をなるべく制限するのが望ましい」と考えられたのはなぜか。現在と異同はあるか。
 (15) 一九六三年三月十五日の法務省矯正局長依命通達が出された理由について、九八年答弁書は「死刑確定者の接見及び信書の発受についての監獄法の解釈運用につき、一部に疑義を差し挟む向きもあった」としているが、具体的にどのような「疑義」が差し挟まれたのか。
 (16) 九八年答弁書によると、カナダが死刑を廃止した過程で「人間の尊厳を尊重する姿勢を示す必要があること」「死刑制度の存在により裁判官が正当に刑罰を科すことを回避しようとする心理的傾向を生みがちであること」などが指摘された。政府は「人間の尊厳を尊重する姿勢を示す必要」はないと考えるか。
 (17) 日本においては「死刑制度の存在により裁判官が正当に刑罰を科すことを回避しようとする心理的傾向を生みがちであること」はないのか。
 (18) 九八年答弁書によると、アメリカで死刑を廃止しているのは十二州とコロンビア特別区とされるが、各州区において死刑が廃止された経緯を説明されたい。また、死刑の廃止前と廃止後の死刑対象犯罪の増減についても具体的に明らかにされたい。
 (19) 九八年答弁書によると、憲法前文の「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」は、平和主義の立場を宣明したもので、死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度についての国の態度とは関係がないと考えているようだが、欧州評議会の決議などの「国際社会において」、死刑の存廃や死刑に関する情報公開の具体的程度が問題とされており、「名誉ある地位」を占めるには、関係あるのではないか。
 (20) 九八年答弁書の冤罪に関する部分で、政府は「新たに検察官に証拠開示を義務付ける法律を制定する必要はないと考えている」としているが、司法制度改革審議会の意見書は、証拠開示についてどのように提言したか。そうした提言となった議論の経緯も説明されたい。
 (21) 九八年答弁書で、政府は「我が国においては、令状主義及び厳格な証拠法則が採用され、三審制が保障されるなど、捜査公判を通じて慎重な手続により有罪が確定されている上、再審制度が保障されており、有罪を認定することについては、適正な判断がなされているものと考えている。加えて、死刑は、その言渡しを受けた者の生命を断つ極刑であり、一度執行されれば回復し難いこととなるものであるから、死刑の執行停止、再審又は非常上告の事由の有無等について慎重に検討するために、判決及び確定記録の内容を十分精査せしめているので、死刑を執行した者の中には誤判による無実の者が含まれていることはないものと確信している」としている。一連の制度を担う人的基盤も十分に整備されてきたと考えていいのか。司法制度改革審議会は裁判官、検事、裁判所職員、検察庁職員の大幅増員を提言したが、もしかすると、制度はあるが、人的基盤は不十分ということか。それで「確信」できるのか。

 右質問する。



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