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平成十四年三月十八日提出
質問第四六号

「NTT構造改革に向けた業務運営形態の見なおし」に関する質問主意書

提出者  保坂展人




「NTT構造改革に向けた業務運営形態の見なおし」に関する質問主意書


 平成十四年一月十八日付答弁書の内容に関連し、次の事項について質問する。

一 NTT東西が実施しようとしている「構造改革施策」は、従前の業務を新たに設立することが予定されている地域子会社に全面的に業務委託の形式で引き継がせるものであり、その実態は営業の譲渡に他ならないというべきである。営業譲渡と称しなければ営業譲渡ではなく、業務委託の形式をとった実質的営業譲渡の場合にも労働契約承継法の適用はないのか。営業の包括的承継ではない、との説明から会社分割法も、従って労働契約承継法も適用がないとすることは、立法の趣旨を没却することを容認することにならないのか。政府自ら脱法行為を奨励するつもりなのか。
二 答弁書は、本施策の目的のひとつが、賃金水準を低減(七十%から八十五%)させることにある点を認めているが、企業組織の変更のみを理由にして大幅な賃金切り下げを伴う労働条件の不利益変更ができるのか。会社分割法制および労働契約承継法案に関する国会審議の場では、このような施策は禁止されるとの理解で一致していたはずではないか。
三 NTT東西は、本件施策の実施にあたって「退職・再雇用」などと表現しているが、重大な疑義がある。
 1 退職に応じなければ「満了型」を選択したものとみなして「勤務地無限定」として一方的な配転を示唆したり、仕事がなくなると説明するのは退職強要の不法行為となるのではないか。事実調査の結果を踏まえて答弁されたい。
 2 五十一歳以上の社員に対して、退職を不利益の威嚇のもとに勧奨することは、六十歳を下回る定年の定めを禁ずる、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」第四条違反となるのではないか。
 3 「再雇用」とは、将来設立される予定(本年五月一日)の地域子会社への就職に他ならないが、会社分割法制に従うのならばともかく、そうでないのに法的に存在しない会社への就職を理由にして退職をすすめることは、実質的には解雇に等しいのではないか。再就職を勧誘するのであれば、罰則をもって強制されている労働条件の明示義務を果たす使用者とは何を指すのか。
四 答弁書では、本施策によって、地域子会社の賃金水準を従前の水準より低減させることによりNTT東西の委託業務費用を削減でき、地域子会社においても受託業務の費用削減をはかり、NTT東西以外の企業等からの受注拡大が可能になると説明されている。しかし、これは言い換えれば地域子会社は、NTT東西の経営判断によって、他企業との競争関係の中で業務委託を打ち切られる可能性があることに他ならない。地域子会社によって雇用が確保される保証はあるのか。NTT東西と地域子会社が、「極めて密接な関係」にある、との意味は、地域子会社の事業体としての存続ないし同会社へ再就職した社員の雇用保証を含む趣旨なのか。
五 地域子会社が、今回の施策に基づく「退職・再雇用」に伴って継続雇用定着促進助成金を受け取ることがあるのか。その具体的内容を明らかにされたい。NTTグループの組織再編を理由として、同制度の助成金や奨励金を受け取ることは高齢者雇用助成制度の目的や趣旨に適合するのか。
六 昨年の電気通信事業法等の一部を改正する法律によって定められたユニバーサルサービス基金の具体的内容および実施時期を明らかにされたい。法改正までは、ユニバーサルサービスの提供コストはNTT東西だけが負担してきたが、基金の制度化によってコスト削減がどの程度見込まれるのか、についても併せて明らかにされたい。
七 会社分割制度の創設に伴いこれと一体として労働契約承継法が制定されたのは、平成十二年二月十日の「企業組織変更に係る労働関係法制等研究会報告」を受けて労働省が立案したことによるものである。同報告は、企業組織変更の主要な形態である会社分割、合併および営業譲渡の三種についてそれぞれ立法の必要性を吟味し、会社分割法制について労働契約承継法の立法の必要性を提言した。他の類型では、労働条件の保護が確保されうるが、新たな会社分割法制の創設については、組織変更に伴う混乱をさけ、労働者の権利を保護し、労使間のトラブルを防止する必要があるとして労働契約承継法が制定された。同法の基本的観点は、労働者が従事していた業務(営業)との結びつきを切断せずに労働条件を保護することであった。ところが、今回のNTT東西のとった施策は、大規模な組織変更にもかかわらず、積み重ねられた検討の結果のルールに則らず、労働条件の不利益変更によるコスト削減をめざすために、「退職・再雇用」の事実上の強制的選択を迫るのみで、業務(営業)の移行と労働関係の承継をあえて切断する方策をとったために問題を大きくした。何のための立法であったかと疑るのも当然であり、脱法的意図が見え透いていると言わざるをえない。
 現行の法制をかいくぐるような今回のNTT東西の手法について、企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会ではどのような検討がなされているか明らかにされたい。
八 前記の六に関連するが、ユニバーサルサービス基金が必要になった原因として、電気通信の急速なIT化があげられる。携帯電話やPHS等の移動電話の契約数はすでに固定電話の契約数を凌駕している現状で、電話加入権の財産的価値の保全に対する大きな不安が全国的に起きている。NTT東西は、電話加入権の財産権としての意義を強調してきたものであり、相続税や差し押さえの対象にもなってきた。
 電話加入権の財産権としての価値の消滅に対してNTT東西はいかなる対処をするのか明らかにされたい。

 右質問する。



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