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平成十四年四月二十四日提出
質問第六一号

原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査に関する質問主意書

提出者  北川れん子




原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査に関する質問主意書


 原子力発電所(以下原発)は労働者の被曝なくしては運転を続けることができない。一九九九年九月におきたJCO臨界事故では、二人の方が尊い命をなくされた。原子力関連施設の事故による犠牲者であった。たとえ事故がなくとも、定期検査や補修などで毎年多くの労働者が被曝をしている。しかも、電力会社や大手メーカーの社員の被曝の量は少なく抑えられる一方で、下請け労働者の被曝量は年々増加の傾向にあり、両者の被曝量の差はますます大きくなっている。
 放射線被曝によって、労働者の健康にどれだけの影響があるのか、実際のところ明確になっているとはいえないのが現実である。諸外国でも放射線被曝の疫学調査は種々行われているが、統一された結論は導き出されてはいない。
 日本では広島、長崎の原爆による被曝の影響の研究が進められてきた。原発等の労働者の被曝の影響については、一九八九年に「原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査」(平成二(一九九〇)年度から平成六(一九九四)年度)を科学技術庁が「財団法人放射線影響協会」に約十七億円(予算額から推定)で調査を委託した。報告は一九九五年にまとめられ、その後も継続して調査が進められることになった。(以下この一九九五年の調査報告を「第T期報告」という)
 第T期報告では、結論は「低線量放射線が健康影響、特にがんに影響を及ぼしたとする証拠はみられなかった」となっている。この結論や、調査や統計のやり方などについて、専門家などから批判や疑問の声が出された。
 一昨年(二〇〇〇年)十二月に『原子力発電施設等放射能業務従事者に係る疫学的調査(第U期)』(平成七(一九九五)年度から平成十一(一九九九)年度)という報告書がまとめられた。(以下この報告を「第U期報告」という)
 この第U期報告書についても第T期報告書同様、多くの問題点や疑問があるので、以下質問する。

一 放射線影響協会内にある放射線業務従事者の登録情報について
 登録の項目は何々なのか。項目の数と各項目名を明らかにせよ。また、個人の住所や本籍の記載項目はあるか。現場で作業に入る前に労働者が書く書類には住所欄がないというのは本当か。一九九六年放射線影響協会に確認した回答によれば、過去には民宿の住所ですませたこともあったと聞いているが、事実なのか答えられよ。また住所確認の調査はなされているか。もし、事業所が倒産、廃業の場合は調査時点で労働者の住所確認はできなくなるのか。外国人労働者の住所記入はどうなっているか。本国へ帰った後、追跡調査は可能か明らかにされよ。
二 第T期調査で調査対象集団の設定の際に、解析対象から除外された約四万二千人(中央登録センターに登録されたが、放射線業務に従事しなかった者)について除外の理由として「登録のみの場合は、住民票等の写し取得に必要な住所情報がない」が挙げられている。登録のみの場合とは具体的にどういうケースなのか。事業所の情報が記入されていないということなのか、答えられよ。
三 第T期調査で「原子力発電施設または日本原子力研究所もしくは動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル開発機構)の施設で放射線業務に従事しなかった者(約二千八百人)は「本調査は原子炉を保有する事業者の施設で放射線業務に従事したものを対象としたため」という理由で除外されている。原子炉を所有しないJCOなどの核燃料加工施設や医療関係機関、研究機関、核廃棄物処理施設で被曝した者は除外されているのか、第T期、第U期それぞれ対象に入っている者、除外されている者を明らかにせよ。
四 第U期調査で解析対象から除外された(一)放射線業務に従事しなかった者、(二)日本国籍を有しない者、(三)住所情報が得られなかった者、(四)一九九九年三月三十一日までに住民票または除票の交付がなかった者、(五)保存期間五年を超えた除票の交付があった者、(六)個人の観察期間にわたって、年齢が二十才未満の者、および八十五才以上の者、(七)女性、以上七つのグループについて、各々の人数の内訳を明らかにせよ。(一)のグループについて、具体的にどういう人をさすのか。なぜ業務に従事しないのに、登録されているのか明らかにされよ。(二)のグループについて、東京電力のシュラウド交換の作業では、外国人労働者が一番被曝量の多い作業を行っている。(三)のグループについても、被曝量の多い作業に従事している確率が高いことから(二)と(三)のグループの被曝量の平均値、最大値、最小値を明らかにせよ。 
五 放射線業務従事者の「健康調査」という名目で、電源開発促進税から毎年五億円が予算計上されてこの調査が行われている。調査の表題は「疫学的調査」とあるが、実際は死亡率調査であって、疫学調査とはいえない。健康調査というのなら、労働者の追跡健康アンケート調査が必要になる。第U期報告でも「近年のがん医療技術の進歩に伴い、がんの治癒成績が向上し、がん罹患者の半数はがん死亡に至らない時代となっている。特に甲状腺がん等致死率の低いがんについては、死亡調査のみではがんとの関連を正確に把握することは困難である」と書かれている。なぜ死亡調査を継続するのか。
六 労災認定で闘った嶋橋伸之さんの放射線管理手帳は、請求してから数ヵ月後に多くの数字が訂正されて遺族に返された。放射線管理手帳は就業時に労働者本人に手渡されているか答えられよ。放射線管理手帳は、本人が常に所持し、管理しているか。記入は鉛筆ではなく、ボールペン等で後に修正できないようなされているか。放射線管理手帳の数字と中央登録センターの数字は同じであることを確認しているか。この数字は本人が確認しているか。放射線管理手帳は離職時に本人に手渡すことを義務づけるべきではないか答えられよ。
七 放射線業務を有害業務に指定し、健康手帳を交付すべきと思うがどうか。現在健康手帳の交付は行われているか。
八 第T期報告での解析対象集団は十一万四千九百人、死亡者は千七百五十八人だった。生存者は十一万三千百四十二人ということになるが、第U期報告では十一万九千八百四十九人が追跡調査対象となっている。六千七百七人増えているが、この理由は何か。
九 科学的で適正な健康診断を企業指定病院だけでなく、公立病院でも受けられるようにすべきだと思うがどうか。
一〇 被曝による発病が考えられる場合は「電離放射線労働災害補償制度」ならびに「原子力損害賠償請求」の適用が受けられるように、企業に正確なデータを提出するよう義務づけているか。
一一 第T期報告も第U期報告も、小さな項目のコメントでは「リスク評価をするのに充分ではない」「統計学的検出力が小さい」「有為な傾向性を示した」などの記述があるのにもかかわらず、結論は「影響がない」になっている。これは「始めに結論ありき」ではないか。このような不十分な調査を、多額の税金を使って行うことは今後やめるべきではないか。
 死亡者の死因に占めるがん白血病の割合は、全解析対象集団では三八・七%、前向き解析対象集団では四〇・六%と一九八六年から一九九七年の日本人男性(三十五才から四十九才)の全死因に占めるがん白血病による死亡率二五・七%よりそれぞれ一三%、一四・三%も高い。この数字も、住所情報がわからない人、日本国籍のない人、五年の住民票除票保存期間を超えた死亡者を除いている数字であることを忘れてはならない。
一二 この調査は実際に放射線影響協会の職員が行っているのか。どこかに委託しているなら、委託先を明らかにせよ。調査の費用は累積総額でいくらか。第T期、第U期の内訳、各々の委託費、人件費等項目別に費用額を明らかにせよ。
一三 この調査報告の保存期間はどれだけか。公開はどのようになされているか。こういう多額の税金を使った調査報告は、地方都市の公的な図書館などでも読めるようにするべきではないか。

 右質問する。



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