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平成十四年五月二十四日提出
質問第七四号

「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」等有事関連三法案に関する質問主意書

提出者  岡田克也




「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」等有事関連三法案に関する質問主意書


 「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」に関し、以下について質問する。

一 政府は、五月十六日に本法案の「武力攻撃事態」について、「おそれのある場合」「予測されるに至った事態」の定義に関する統一見解を示した。即ち、
  〇「予測されるに至った事態」とは「我が国に対する武力攻撃の意図が推測され、武力攻撃を行う可能性が高いと客観的に判断される事態」、
  〇「おそれのある場合」とは「我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態」、
とされている。
  この定義について、
 1 「武力攻撃の意図を推測」したり、「客観的に判断」あるいは「認める」のは、誰が、どのように行うのか。
 2 政府は、ある事態が「武力攻撃事態」に該当するか否かは、個別具体的に「客観的に判断される」、「客観的に認められる」場合としている。この場合、「客観的」な判断基準は何か。また本法の恣意的な適用を避けるためにも、適用に際して「対処基本方針」に、その客観的な理由を具体的に示すようにするべきと考えるがどうか。また、出来ない場合、それはいかなる理由によるのか。
 3 「国に準ずる者」について、「予測されるに至った事態」や「おそれのある場合」については、具体的例示ないし客観的な基準が十分示されていない。具体的に、どのような者による、どのような行為が想定されるか。
 4 自衛隊法第七十八条に定める「治安出動」の対象とされている「間接侵略」は、本法案における「武力攻撃事態」にあたる場合はありえないのか。本法案の「対処基本方針」に、「治安出動」が含まれる場合があるか。本法と「治安出動命令」との関係はどのようになっているのか。
 5 以上、定義については未だ曖昧な点が多いが、少なくともこの定義を法文上明記することが必要と考えるが、政府の方針はどうか。必要でないと考える場合には、その理由は何か。
二 本法案第九条第十三項並びに第十四項によれば、「対処措置」の終了について、内閣総理大臣の判断により「対処基本方針の廃止」を閣議決定の後、国会に報告し公示することとなっている。しかし、対処措置を実施する必要がなくなったと国会が判断した場合の規定がない。民主的統制をより確実に担保するため、武力攻撃事態への「対処措置」を国会の決議などにより終わらせる規定を置くべきと考えるが、この規定を置くことについて、法制上の何らかの支障はあるか。法制上の支障がないとすれば、この規定を入れることに関しての見解はどうか。
三 本法案第九条に規定される「対処基本方針」の国会による承認手続きによれば、「予測されるに至った事態」における「対処基本方針」の国会承認は、「対処措置」が開始された後になってもよい形式になっている。しかし、「予測されるに至った事態」では、原則として事前の国会による承認とされている「防衛出動」時と比べて、緊急度が高いとは言えない。これについて、
 1 民主的統制の観点から、「対処基本方針」は、「防衛出動」と同じく、原則として事前の国会承認とすべきと考えるが、そうすることによる法制上の不都合はあるのか。
 2 法制上不都合がない場合、本法案ではどのような理由で事後の承認としているのか。
四 「武力攻撃事態」においては、迅速かつ的確な対応が求められる一方で、「対処基本方針」の一部について国会の同意が得られない場合において、問題の部分を除外した部分について国会の承認がなされ、「対処措置」の実施に移れるような規定を設けるべきと考えるがいかがか。
五 本法案第三条第四項において、「日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制限が加えられる場合は、その制限は武力攻撃事態に対処するため必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。」と規定されているが、本規定によって基本的人権は、具体的にはどのように保障されるのか。「必要最小限のものであり、かつ、公正かつ適正な手続」と判断する具体的な基準は何か。今後の法整備にあたって、各個別法が本規定に反しないということを政府はどのように担保するのか。
六 本法案第二十二条に示された「事態対処法制の整備」について、第二十三条で「二年以内を目標」としているが、極めて曖昧な規定の仕方であって、何ら政府を拘束するものとなっていない。「その緊要性にかんがみ」としつつも、なぜ「二年」であり、なぜ「目標」であるのか。
七 本法案第二十四条において、武力攻撃事態以外の緊急事態への対処への施策を講ずるとしている。
 1 具体的に、テロや不審船への対応について、政府は現行法制で十分対処は可能であるという認識か。
 2 十分とする場合、現在の法制をどのように適用するのか、具体的な法令、適用条文を挙げての説明を求める。
 3 不十分とする場合、具体的にどのような点が不十分と認識しているか。
八 「武力攻撃事態」への対処にあたって、本法案で規定される「対処基本方針」の国民への「公示」はどのように行うのか。刻々と変化する情勢、政府の対応状況など、国民への適正な情報公開・提供について、政府の責務として法文上に明記すべきと考えるが、どうか。さらに、公権力の行使に伴って生じた人権の制約に係る事実関係について、必ず公表するように明記する必要があると考えるが、どうか。
九 「武力攻撃事態」における司法手続について、政府は法整備の方針を本法案に明記すべきと考えるが見解はどうか。「武力攻撃事態」において、国民の権利が侵害されたときの不服申立て・補償・賠償などに関する規定、具体的手続などを可能にするために事後の司法審査についての具体的な法律の整備や手続きについて方針を明示すべきと考えるが、どうか。
十 本法案第二十一条第二項で、事態対処法制の整備への基本方針で、国際人道法の的確な実施の確保が謳われているが、文民保護、非人道的行為の処罰、捕虜の待遇等を定めるジュネーブ条約関連の国内法整備は、他の個別法適用の前提となるものであり、具体的にいつまでにどのような方針で整備するのか。
十一 政府は、本法案を「武力攻撃事態」における大枠を定める基本的法律としながら、これまで地方公共団体との十分な協議もなく、地方公共団体への「指示」、「代執行」を定めた。これは、地方自治の本旨をないがしろにするものである。地方公共団体は、具体的にどのような責務を負うことになるのか、そのためにどのような態勢整備と予算措置が必要となるのか。
十二 政府答弁では、「報道の自由を制約するものではない」としているが、法律上ではそのようなことは担保されていない。本法案で「報道の自由を保証する」旨、明記すべきと考えるがどうか。また、NHK以外の報道機関は、「報道の自由」の観点から、指定公共機関から除外すべきであると考えるが、政府の見解はどうか。
十三 本法案第二条第四項で、指定公共機関を政令で定めるとしているが、指定公共機関については法文上で明記すべきと考える。本法案並びに事態対処法制の個別法に明記するとの趣旨を本法案に書き込むべきと考えるがどうか。
十四 指定公共機関への「指示」が実施されない場合等の対処措置は、具体的にはどのように実施するのか、その方針・内容、手続きについて明示されたい。また、指示により損害が生じた場合の措置について、どう考えているのか。
十五 「周辺事態」との関係が未だに曖昧である。「周辺事態」のいわゆる六類型との関係について、政府は六類型すべての「周辺事態」と「予測事態」との同時認定を否定していないが、六類型ごとに可能性について説明されたい。
十六 「周辺事態」と「我が国への武力攻撃が発生した」事態が並存した場合、わが国周辺において活動する米軍に対して武器・弾薬は提供されるのか。その可否において、憲法や集団的自衛権との関係はどうか。
十七 「周辺事態」と「武力攻撃が予測される事態」とが並存した場合、地方公共団体と国との関係について、「協力」と「指示」とをどのように区別するのか。「協力」しなかった場合と「指示」に従わなかった場合、どのような違いがあるか。
十八 政府答弁では、米軍に対しては、日本法令を尊重する義務を負うという任意規定だけで、原則として日米地位協定以外には、なんら行動を縛られることはないとしている。米軍の行動について、現在の日米地位協定を見直す考えはないか。
十九 「武力攻撃事態」における行動に際して、米軍が万一、日本国民の生命・身体に危害を与えたり、人権や財産を侵害した場合の措置について、政府の対応方針を明示願いたい。特に、この場合、補償や救済措置は直接米軍に請求することになるのか、あるいは日本政府に請求することとなるのか。
二十 万一、内閣総理大臣が何らかの事情で任務遂行が不可能になった場合、本法案で規定されている権限の承継順位について、法案には規定がないが、政府はどのように対処する考えか。承継順位や手続等を法文上明記すべきではないか。
二十一 万一、国会が開会できない状況であった場合には、「対処基本方針」の承認手続きをどうするのか。
 「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」について、以下質問する。
二十二 政府答弁では、戦闘行為が始まった場合、「戦闘地域」では自衛隊法第八十八条に基づく行動であれば、あらゆる武力の行使に係る行動について違法性が阻却されるとのことであるが、この解釈と、「武力攻撃事態」への「対処措置」との関係を整理する必要があると考える。「戦闘地域」の範囲はどのように定義され、法律上どのように規定されるのか。特に、「武力攻撃事態対処法案」及び同法案で整備される予定の個別法において、どのように規定されるのか。その場合、「戦闘地域」に残された市民の基本的人権の保障については、政府としてどのように考えているのか。
 「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」について、以下質問する。
二十三 安全保障会議の下に、平時から存在する機関として「事態対処専門委員会」の設置が規定されており、「対処基本方針」などの策定作業で、実質的に相当な影響力を持つと考えられるが、想定される活動の概要、運営や組織のあり方、予算はどのようなものか。
二十四 「事態対処専門委員会」の「委員は内閣官房及び関係行政機関の職員のうちから」(第八条第五項)としているが、委員は関係行政機関の職員だけで十分であるか。広く民間などからも危機管理の専門家を常任委員とする方針はないか。

 右質問する。



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