衆議院

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平成十四年七月二日提出
質問第一一九号

成育医療センターの看護師配置状況等の改善に関する質問主意書

提出者  川田悦子




成育医療センターの看護師配置状況等の改善に関する質問主意書


 全国の国立病院・療養所を独立行政法人化していく動きの中で厚生労働省は、「がん・循環器病などの特定の疾病に関し、全国の中心的機関として高度先駆的医療、調査研究、技術者の研修を実施」する国立医療機関を「国立高度専門医療センター(ナショナルセンター)」として位置付け、全国の六施設での整備・機能強化を図っている。国立成育医療センター(以下センター)は、こうしたナショナルセンターの一つとして、平成十四年三月一日開設された。
 しかしセンターの開設時の配置人員は、入院病床五百床、一日平均外来患者数九百人という運営規模に対して僅か七百十四名(定員職員六百七十八名、賃金職員三十六名)、平成十四年度の増員分を含めても七百二十九名にしかすぎない。現場では「施設は素晴らしいものになったが、人員不足のままでスタートし、このままでは事故が起きるのではないかと不安だ」との声も寄せられている。現に平成十四年三月、国立循環器センターに勤務する二十五歳の看護師が遅出勤終了後、自宅で頭痛に襲われ、緊急入院・手術を受けたが、破裂脳動脈瘤を原因とするくも膜下出血により死亡している。原因は人員不足による膨大なサービス残業による過労死ではないかと問題になっている。病院に入院したらいっそうひどい病気になったり、看護する人や治療を施す人が病気になったりするようではセンターが掲げる医療機能を発揮するのはほど遠い状況である。早急に調査改善が必要である。
 私は六月十六日センターの視察を行ったが、視察の結果、センターの人員配置や設備からして、患者の立場にたった病院が動き出したとは到底思えなかった。コンピュータで患者の情報を一元管理し、治療のための研究がすすむことが期待されるが、研究のための医療がなされるのはあってはならない。効率化を追及しているが人員不足のままのコンピュータ機器操作やデータにたよるのは、あらたなミスを誘発するのではないかと危惧した。
 そこでセンターにおける看護師配置状況等の改善に関する具体的な対策について、以下質問する。

(一) センターの百床あたりの看護師配置は、乳幼児病棟(三十床)でさえ三人夜勤を基準としているため、都道府県レベルの自治体によって運営される小児病院と比べ大幅に劣っている。また統合前の旧国立小児病院と比べても百十一・八人から八十七・六人と後退している。なぜこのような人員配置となったのか、その経緯を述べられたい。また厚生労働省が小児(成育)医療分野のナショナルセンターと位置付けるセンターが、このような運営状況にあることをどう考えるか。なお厚生労働省は平成十四年において、全国のナショナルセンター六施設に七十五人の増員を行ってはいるものの、準夜・深夜とも三人以上夜勤の病棟は約二十五%というような現状ではその人員では不足しているのではないか。十分な機能を発揮するためにも今後、看護師配置の改善が必要と考えるが、見解を問う。また看護師を除く医療スタッフの増員計画についても明らかにされたい。そうした対応が不要だと考える場合、その理由も述べられたい。
(二) 今年三月二十六日に木島日出夫、小沢和秋両衆議院議員が提出した質問主意書の答弁書の中で、全病棟三人夜勤体制・月八日以内夜勤を実現するには七千二百人の増員が必要との見解を示し、今後必要人員確保に努力していくとあるがどのようにして増員を図っていくのか具体的な計画を述べられたい。また平成四年、「看護婦確保法」が成立し「基本指針」が制定、看護婦の夜勤は「複数・月八日以内の夜勤」となっているが十年経った今尚、状況は改善されていない。この結果をどう思うか見解を述べられたい。また十年間の対策の経緯、並びに成果を明らかにされたい。
(三) 「いつでも(三百六十五日、二十四時間)誰にでも開かれ」「成育医療に関する緊急医療を行う」ことを基本理念として掲げるセンターだが、手術室勤務の看護師が不足するため夜間は呼び出し体制で応じているのが現状とのこと。呼び出しに応じて夜間の緊急手術に従事した医師・看護師が、引き続き昼の勤務に従事するような勤務実態があるが、そうした状況についてどう考えるか。また医療事故を未然に防ぐためにも交代制勤務ができるよう早急に看護師配置を改善すべきではないか、今後の対応について具体的な見解を述べられたい。
(四) センターには「賃金職員」と称される非常勤職員が存在し、看護師をはじめ約六十数名が、常勤職員と同等の責任を持ち、夜勤を含む同様の業務に携わっている。しかし、日々雇用という任用形態を理由に給与、休暇、育児休業、退職手当などで著しく差別的な処遇となっている。このような状況をどう考えるか、また改善が必要と考えるか見解を述べられたい。また早急に必要な職員定員数を配置、先任順採用を導入するなどを実施することにより実態を改善すべきだと考えるが見解を述べられたい。
(五) センターには多くの乳幼児患者が入院しており、乳幼児の全面的な発達を保障していくためにも、医療と共に保育体制の充実が求められる。現在、センターには六名の保育士がいるが、各病棟一名しか配置されておらず、その専門性が活かされていないのが現状である。保育士が看護師との連携の中でその専門性を発揮するためには増員による複数配置が必要と考えるが見解を述べられたい。また具体的な改善計画を明らかにされたい。
(六) センターはカルテがすべてコンピュータ入力となっており、IT化で情報が一元管理されているが、外部からのハッカーやウィルス等、セキュリティー面での対策は万全なのか見解を述べられたい。また病歴等、患者のデータは非常に重要な個人情報であるが、公務員削減政策のもとで、国立病院などでは医事課の職員は民間に委託されているという。重要な個人情報であるレセプト請求を民間に委託することは問題ではないか、見解を述べられたい。委託企業に対しどのような秘密保持の対策がとられているのか明らかにされたい。医事課の職員は公務員とすべきではないか。
(七) ILOは昭和五十二年「看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する条約並びに勧告」を採択しているが、我が国は今だ批准をしていない。各団体からは早期批准を求める声も挙がっており、医療現場の現状を考えると同条約を早期に批准し、早急に関係国内法を整備する必要があると思うが今尚未批准の理由を明らかにされ、今後の具体的対応を述べられたい。

 右質問する。



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