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平成十四年七月三十日提出
質問第一七三号

「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」に関する質問主意書

提出者  植田至紀




「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」に関する質問主意書


 二〇〇一年六月八日に大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校で起きた児童大量殺傷事件を加害者が精神病院への入院歴があるため「触法精神障害者」の問題と捉え、その後の与党における検討、政府案へ提出の契機となったと承知する。しかし、その後、詐病の疑いも明らかとなった。本事件は悼むべきであり、類犯はあってはならないことはいうまでもない。
 しかし、本事件を「触法」問題のケースと考えることは適当ではなく、なにより、現状の精神医療の貧困を解決しないまま、あらたな「保安処分」制度を導入せんとする姿勢に疑問をもつ立場から、質問するものである。

一 「精神障害者は罪を犯しても無罪か減刑される」というような世論の印象がある。おおよそ三分の一が簡易鑑定なしに、不起訴にされているという指摘もある。過去五年間の「精神障害の疑いのある被疑者の事件」の不起訴事案の内容(犯行に至る経緯、犯行態様・犯行後の状況等)及び不起訴の割合を各地方検察庁支部ごとに明らかにされたい。
二 措置入院は、身元引き受けの問題等のため、症状が改善しても病院に留め置かれることが多いと聞く。また、措置入院自体も長期化し、無期懲役期間よりも長い「収容」も存在するという。現在における措置入院者数及び、入院者の入院期間、再入院者数を都道府県及び指定医療機関別に明らかにされたい。
三 措置入院中、また一般病棟に移された後に、病院で死亡する者もあると聞く、裁判なき実質的な終身刑との批判もある。過去十年、措置入院中に死亡したものの数、措置入院解除後一般病棟に移された者の数(退院扱いとして再入院した者、他医療機関への再入院も含む)、一般病棟に移された後に死亡した者の数を明らかにされたい。(入院中に病を得て精神科以外の診療科に移された者、そして死亡した者も含まれたい)
四 七月五日の法務・厚生労働委員会連合審査では、高原政府参考人は、水島広子委員の質問に対して、指定医療機関において「認知行動療法」を利用すると答弁の後、(高原政府参考人)「もちろん、非常に深い意識の昏迷がある、ないしは心神喪失もしくは耗弱の状態が持続しているということでこういった治療法が始められるものではないということは、委員御指摘じゃありませんがお感じのとおりでありまして、そこにつきましては一般の精神病としての対応というふうなものがなされる。その後、ある程度平衡といいますか、寛解を迎えたときに考えていただく。そういうふうなものは、治療目標を共有しながら、信頼を持って社会復帰に向けて歩む、そういうことだろうと考えております。」(引用終わり)と述べている。
 一方、七月九日の参考人招致で、伊藤参考人は「それらの技法は心神喪失と判定された重度の精神病患者さんには効果がないと言われています。一方、人格障害には使用条件によっては効果があると言われていますが、人格障害の多くは通常責任能力があるとされるので、この法案の対象にならないはずです。」(引用終わり)と陳述している。
 第一線の専門家、政府参考人において、心神喪失者に対しては、「認知行動療法」が、効果がないとしている。政府参考人は「寛解を迎えたときに考えていただく」と、症状の改善の後に「認知行動療法」を用いることを示唆している。
 「認知行動療法」は、「再び重大な他害行為を行うおそれのある精神障害者」に対する多様な治療行為の過程の一部に過ぎず、指定入院医療機関の治療行為の中心ではないと理解してよいか。
五 わが国は、先進諸外国に比べ、精神病院の入院者数(病床数)が、ずば抜けて多い。(一九九〇年比較、人口一万人あたり、米国六.四 英国 一三.二 日本 二九)現在の入院患者、三五万床のうち、退院可能者は半数の割合以上とも言われている。長期化する入院生活のため、社会性が失われ、身元の引き受け手がないため、やむなく病院にとどまるものも多いという。
 厚生労働省は、「指定入院医療機関における医療の基本的考え方」を明らかにしているが、その中で挙げる(他者との交流に重点を置く集団精神療法)(基本的な社会生活の技能を習得させる社会生活技能訓練)(適切な人間関係を築く技能を習得させる社会生活技能訓練)(「怒りのマネージメント」等の暴力の自制能力向上のための個人精神療法)など、指定医療機関の設立を待つまでもなく、現在、退院可能でありながら、精神病院にとどまる人々に適用してしかるべき医療ではないか。如何。
 これらの治療方法の導入を提唱するならば、すでに、措置入院者や、人格障害者に対して効果があったものと思われるが、何処の医療機関で、何人の患者にどの程度の期間試みられ、回復状況はどうだったのか。また、「効果あり」とする根拠を示す研究報告や実績を明らかにされたい。

 右質問する。



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