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平成十四年十一月二十八日提出
質問第一八号

ILO結社の自由委員会に対する政府の追加情報に関する質問主意書

提出者  川田悦子




ILO結社の自由委員会に対する政府の追加情報に関する質問主意書


 ILO結社の自由委員会一九九一号事件(日本)において、政府は二〇〇〇年二月に次のような追加情報を同委員会に提出した。
 「国労および全動労は、所属組合による採用差別が行われた結果、一部の地域において、これらの組合員の採用率が他の組合に比べて低くなっていると申し立てているが(中間報告パラ二三八、二四七)、これは、これらの組合員の中に、無断欠勤等勤務状況に問題があるとされた者が多数いたためと思われる。即ち、このような勤務状況を踏まえて客観的かつ公正に選抜を行うと、これらの組合員が採用される割合は、どうしてもある程度低くならざるを得なかったのであり、国鉄が意図的に国労および全動労組合員を差別したことはないと思われる。」(追加情報四頁)。
 しかし、この情報は、労働委員会が証拠に基づいて行った認定と異なっている。中央労働委員会の国労北海道不採用事件(平成五年一二月一五日)では、詳細な事実認定に基づき、結論として、次のように述べている(九州の不採用事件についてもほぼ同旨)。
 「上記のとおり、@国鉄改革に係る国鉄の諸施策をめぐり国鉄と国労との対立が激化していたと認められること、A国鉄は人活センター、企業人教育の運用やインフォーマルグループの結成への協力等により、国労に所属していると承継法人への採用について不利になるとの雰囲気を醸成していたものと認められること、B人活センターが設置された時期以降、国労組合員が大量に脱退していること、C国鉄本社の幹部や現場管理者等により国労に対する不当労働行為を示唆する発言等が行われ、国鉄が国労を嫌悪していたことが認められること、D本件選別に当たって主として使用された職員管理調書の評定項目は、運用いかんで国労組合員に低い評価が与えられる仕組みとなっていたこと、E現場の管理者は、職員管理調書の実際の評定において国労の組合役員及び組合員であることを理由に低い評価を行いながら、国労を脱退して他組合に加入した組合役員及び組合員を職員管理調書の再評定等により有利に取り扱っていた事例が多くみられること、F採用率において組合間に著しい外形的格差が存在し、特に国労と鉄道労連との格差は際立っているだけでなく、国労と鉄産労との格差も顕著であるにもかかわらず、その合理的な理由について両会社は具体的に疎明していないこと、G他方、国鉄改革の過程における国労組合員の行動には勤務の評定に影響を与えることとなったとしても無理からぬ側面があり、また、北海道地区にあっては、両会社の定員枠と両会社への就職申込数からみて希望者全員が採用される客観的な状況にはなかったこと等が認められる。
 したがって、これらを総合的に勘案すると、国鉄が本件国労組合員を採用候補者名簿に登載せず、その結果、これらの者を設立委員が両会社に採用すると決定しなかったことは、少なくとも一部の者については組合所属あるいは組合活動故に不利益取扱いを行ったものとして労働組合法第七条第一号の不当労働行為に当たり、かつ、そのことによって国労の弱体化を企図したものと認められるから同条第三号の不当労働行為に当たると判断するのが相当である。」
 要するに、国労は公共交通としての国鉄と国鉄労働者の雇用と職場を守るという立場から国鉄分割民営化に反対し、国労組合員はその組合方針にしたがって分割民営化を前提とする国鉄の施策に非協力的であったが、無断欠勤があったというような事実は認定されていない。むしろ全動労の一九八九年一〇月三一日の中央労働委員会の審問で、JR北海道常務取締役の清水英郎氏は、次のように証言している。
 「(組合代理人)全動労についてはそういう問題(注・無断欠勤等)はなかったんですね。
 (清水証人)そういう問題は私たちもなかったと理解しています。」
 また、最高裁判例でも、
 「同一企業内に複数の労働組合が併存している場合には、使用者としては、すべての場面で各組合員に対し、中立的な態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線等のいかんによって、一方の組合をより好ましいものとしてその組織の強化を助けたり、他方の組合の弱体化を図るような行為をしたりすることは許されない」(日産自動車事件、最高裁昭和六二年五月八日判決)とされている。
 従って、次の事項について質問する。
 政府が前述のように、「これらの組合員の中に、無断欠勤等勤務状況に問題があるとされた者が多数いたためと思われる。」「国鉄が意図的に国労および全動労組合員を差別したことはないと思われる。」としたのは、いかなる根拠によるものか。これは、国労や全動労組合員の名誉に関わり、また労働委員会による不当労働行為救済制度の手続きを否定するような重大な問題なので、この情報の根拠を示していただきたい。

 右質問する。



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