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平成十四年十二月十三日提出
質問第五三号

旧正田邸保存運動に関する質問主意書

提出者  西村眞悟




旧正田邸保存運動に関する質問主意書


 東京都品川区東五反田五丁目所在の旧正田邸(以下、正田邸という)は、昭和初期のチューダー朝風の屋根をもつ和洋折衷住宅であり皇后陛下の御生家であるが、平成十三年六月二十八日に国に物納され国有財産となり、そのころから財務当局に対する付近住民の剪定要望もかえりみられることなく由緒ある邸内に雑草が生い茂るまま放置されていたところ、平成十四年十月十七日に、正田邸の保存を要望して賛同者の署名運動をしている「五丁目の環境と文化を守る会」の住 威久雄(東京都品川区東五反田五丁目十二番十号、以下、住という)宅を、財務省役人三名が訪れて、正田邸を同年十一月中に撤去し更地にして競売にかける、猶予はしない、これは役所の決定だと、メモを禁じて申し向けたうえ、財務省は同月二十一日解体業者に入札公示した。
 正田邸は、昭和五十五年日本建築学会編の我が国に現存する幕末から昭和前期までの建物の全国調査をまとめた「日本近代建築総覧」(小題、各地に遺る明治大正昭和の建物)に、「特に重要なもの、あるいは注目すべきものと考えられる作品」に与えられる〇マークを付されて掲載されており、同書に掲載されている東五反田五丁目所在の他の九戸の建物と共に旧池田藩邸跡の池田山(東五反田五丁目)の街並みに独特の風格を与えてきたうえ、皇后陛下の御生家として国民は親しみと愛着の情をもって保存を願い、現在まで四万人の保存要望署名が集められ、毎日二百名ほどの名残を惜しむ見学者が絶えないのである。
 然るに、財務省の役人は、不動産鑑定士は建物があれば売りにくいと言っている、建物に価値はないので更地にして売る、などと住氏はじめ保存運動を進める住民に説明し、住氏が皇室ゆかりの財産を叩き売ってまでも金に変える政府の姿勢は、皇室の財産を大切に保存するイギリスなどの諸外国とくらべてあまりにもあさましく、国際的に顰蹙をかうどころか日本政府はそこまで財政が逼迫しているのかと信用不安をもたらしかねないと反論しても、「そんなことは理財局には関係ない」と言い放つのみで、ひたすら高圧的かつ一方的に右のような地上屋のような論理を繰り返すのみであった。
 そのような折、平成十四年十月末ころ、国会内では、財務省幹部が正田邸保存には皇后陛下が反対されている旨申し向けて国会議員を説得し始めたので、当職は、国有財産の処理に関して役人が皇后陛下の御意向を根拠にして国会議員に処理方針を説明するなどは、皇后陛下の政治的利用でありこの状態を放置すれば、国会は皇后陛下を参考人として国会にお呼びしてその御意向を直接確認せざるを得なくなるではないかと、宮内庁羽毛田信吾次長に架電して右の事実を伝え、以後財務省役人の言動においてこのような皇后陛下を政治利用するというような軽率な所為を控えさすように依頼したのである。
 然るに、十二月十一日午後三時二十三分ころ、右宮内庁次長は、こともあろうに、住氏宅に架電し、来客中である旨告げる家人に、「かまわないから出せ」と要求し、電話口に出た住氏に対し、「正田邸取り潰しは、皇后陛下の意向である」、「正田邸保存運動には皇后陛下が迷惑されておる」、「正田家とも打ち合わせた上での結論である」などと高圧的にしゃべり、住氏の「国有財産に帰したのであるから、国民がこれについて議論してもいいではないか」、「国有財産に帰したものの処分に関し、前所有者が発言権をもつのか」との反論に関しては何も答えず、ただ皇后陛下の御意向であると延々繰り返して電話を切ったのである。
 以上の事実を総合すれば、財務省および宮内庁は国有財産の処理に関して、「皇后陛下の御意向」を語ってその処理を合理化しようとしているのであり、これは役人による皇后陛下の政治利用で、一刻も放置することが出来ない重大な違法事態であり、特に宮内庁次長は、当職の注意にもかかわらず、一般国民にまで高圧的に皇后陛下の御意向を楯に、正田邸の解体を納得させて保存運動を止めさせようとしたのであり、この所為は御皇室の立場に照らし、我が国の憲法(根本規範)に明らかな我が国の国体(国の基本的あり方)に照らし、断じて許されるものではない。
 よって、この事態を一刻も放置できないので次の通り、質問主意書を提出する。速やかに回答されたい。

          記
一、正田邸は、行政財産(国有財産法三条)以外の普通財産としての国有財産であるか。
二、国は、普通財産としての国有財産に関し、前所有者がある場合には、その意向に従って当該財産の管理および処分をしているのか。
三、正田邸の管理および処分に関し、国は皇后陛下の御意向に従ってそれを為しているのか。
四、平成十四年十月十七日に財務省役人が住氏に伝えた正田邸の建物解体は、皇后陛下の御意向に従って決定されたのか。
五、仮に右解体が皇后陛下の御意向に従った決定であるとするならば、その国有財産管理上の法的根拠を説明されたい。
六、仮に右解体が皇后陛下の御意向に従った決定ではなく、財務省役人が住氏に説明したとおり更地にして土地を売却するためのものとするならば、財務省幹部および宮内庁次長は、国会議員および住氏に皇后陛下の名をかたり、虚偽を申し向けたことになるが、そのとおりか。
七、以上いずれにしろ、財務省幹部および宮内庁次長は、皇后陛下の名をだして、その御意向であるとして正田邸解体・更地売却という国有財産処分の正当性を国会議員および住氏に説明しており、これは皇后陛下を政治利用した所為であることは明らかであると思われるが、政府はいかに認識しているか。
八、いうまでもなく、国有財産の管理および処分は、前所有者の意向に従うのではなく公用・公共優先の原則のもとに国において行われなければならないのであって、政府の右役人において皇后陛下がその決定に容喙されているかのごとき言辞を弄することは、皇室の権威を毀損し、ひいては政治的無答責であるべき御皇室を政治の世界に引き込む結果を招来せしめており、極めて悪質で立場を弁えない所為であると思料されるが、政府はこの結果をいかに認識しているか。
九、宮内庁の所掌事務に、「皇室用財産の管理」が含まれていることは明らかであるが、普通の国有財産を皇室用財産とするには、国会の議決が必要なのである(国有財産法十三条)。然るに、正田邸は何らこのような手続きが為されておらず正田邸管理は宮内庁の所掌事務になっていないにもかかわらず、宮内庁次長が一般国民に架電して、皇后陛下の御意向を語って正田邸解体を納得させようとした言動は、越権も甚だしいといわざるを得ないと思料されるが政府はいかに認識しているか。
十、そもそも宮内庁は、日本国と日本国民の象徴としての地位にある天皇の国事に関する行為の事務をつかさどるとともに皇室関係の事務をつかさどるために設置された官庁であって、その職務を遂行するにあたり、天皇および皇室の政治的利用およびその疑惑が生じることを極力排除し、もって天皇の政治的無答責性を保持しなければならないことは皇室制度の存廃にかかわる最重要の責務であるところ、宮内庁羽毛田次長は、この責務を自覚することなく、その地位を顧みることなく、皇后陛下の御意向によって皇室財産ではない国有財産を処分するとの説明を一般国民に行い、著しく皇室の名誉を毀損したばかりではなく、皇后陛下に対する政治的批判をも招くべき事態を自ら作り出したのである。
 古来我が国では、一般国民が知るすべもない皇室の御意向を語って自らの政治的目的を遂げようとするものを「君側の奸」と呼ぶのであるが、宮内庁羽毛田次長の所為は、まさにこの呼称にふさわしいものである。
 政府は、羽毛田次長の行為をいかに認識しているか。
 右行為が、皇后陛下の政治利用であると認識していないのか。
 認識していないとすれば、国会が国有財産の処分の適正化を審査するために、皇后陛下を参考人として国会にお呼びすることも妥当と認識しているのか。
 以上、速やかに回答されたい。

 右質問する。



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