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平成十五年二月七日提出
質問第一七号

北海道矢臼別演習場の砂防施設建設によってもたらされるラムサール登録湿地・別寒辺牛(べかんべうし)湿原に生息する絶滅危惧種イトウ(サケ科)の危機及び厚岸湾水産資源への悪影響について、また別海町町道に設置される監視カメラによる住民プライバシー侵害問題等に関する質問主意書

提出者  児玉健次




北海道矢臼別演習場の砂防施設建設によってもたらされるラムサール登録湿地・別寒辺牛(べかんべうし)湿原に生息する絶滅危惧種イトウ(サケ科)の危機及び厚岸湾水産資源への悪影響について、また別海町町道に設置される監視カメラによる住民プライバシー侵害問題等に関する質問主意書


 一九九七年(平成九年)以降、米軍実弾訓練が北海道矢臼別演習場など五演習場内で分散実施されているが、防衛施設庁は矢臼別演習場内を流れる別寒辺牛川水系の各河川に「土砂流出を未然に防止する」ためとして、三基の砂防施設建設を計画し、すでに一基はほぼ完成している。
 別寒辺牛川下流はラムサール条約に登録されている貴重な湿地である。五千ヘクタール以上もの湿原、そこを網の目のように流れる別寒辺牛川に生息している魚種は多様である。現存する日本最大の淡水魚であり絶滅危惧種に指定されているイトウだけでなくシベリアヤツメ、トミヨ、エゾトミヨ、キタトミヨなどの準絶滅危惧種である貴重な魚が確認されている。国の特別記念物のタンチョウをはじめ幻の動物ニホンイイズナや昆虫、カラフトダイオウ、カラフトブシといった貴重植物なども確認されている。また別寒辺牛川が流入する厚岸湖、そして厚岸湾は道内有数の牡蠣やアサリの産地となっている。湿原を流れる別寒辺牛川は原始の状態を保っている道内唯一の平地流といわれ、これらの河川への改変にあたっては、とりわけ慎重かつ厳密に環境への影響評価を行なわなければならない。しかし、いま砂防施設の建設強行によって、イトウの絶滅、また下流の水質悪化による水産養殖事業への影響が非常に危惧されている。
 幅二百メートルにも及ぶ巨大な砂防施設について厚岸町の漁業協同組合(川崎一好組合長)が本年一月二十一日、工事凍結を町長に要請し、北海道内の自然保護団体も工事中止を求めている。
 また、矢臼別演習場内を通過する別海町の町道、西春別茶内線の上風連橋に自衛隊による情報施設とともに監視カメラの設置が予定されている。これによって町道を利用する住民など、国民のプライバシー、肖像権が侵害されるとして現地において設置工事の中止が強く求められている。
 そこで、以下の事項を質問する。

一 砂防施設設置に関して
 1 別寒辺牛川下流域はラムサール条約の登録湿地であり、また、九七年には河川法改正により河川環境保全の重要性が指摘されている。この水系の上流域での砂防施設建設は下流域にあるラムサール条約の登録湿地である別寒辺牛湿原に有機物、ミネラルの供給障害等による大きな環境変化をもたらすと思われる。ラムサール条約登録地隣接地における一連の砂防施設建設について政府として環境影響評価をどのように行なったのか。
 また、計画策定にあたって、当該施設設置河川地の流量観測調査や、過去において下流域に土砂流出の事例の有無を、政府としてどのように把握され、どのように事業を計画したのか明らかにされたい。
 2 絶滅危惧種「イトウ」(サケ科)は繁殖力の非常に弱い魚種である。成魚に達する年令が高く、また、成熟した雌雄がつがいを組む確率が低いため、増殖率は非常に低い。別寒辺牛川がその貴重なイトウの数少ない繁殖河川である。事業計画策定にあたって、政府としてこの絶滅危惧種の問題についてどのような検討を行なったのか。
 3 「イトウ」は砂防施設の建設で死滅する可能性が大であると、研究者や自然保護団体が危惧と抗議の声をあげている。この点についてどう、対処されるか。
 4 砂防ダムは、陸域から海への有機ミネラルの供給を阻害し、沿岸の魚介類に大きな影響を与えることが研究者から指摘されている。そのためこの砂防施設建設は、下流域の厚岸湾の「牡蠣養殖」に多大な影響を与えると予想される。現地では、厚岸漁協組合員への説明会の実施、第三者機関による調査、砂防施設の建設が流域の生物に与える影響、それ以外の土砂の流入防止対策などが求められている。政府としてこれらの求めにどう対処する考えか。
 5 政府は、別寒辺牛川水系砂防施設について、厚岸町からの要望事項だとして調査、設計及び工事を厚岸町に委託している。しかし、設置された施設は高さ、幅とも巨大な施設である。直轄砂防工事事業と比しても大きすぎるとの疑問が生じている。防衛庁として、この点どのように考えているのか。
 6 矢臼別演習場内を流れる風連川水系に既に十基もの砂防施設が設置されている。これらの事業に関して、環境影響評価、工事概要(調査項目、目的、細目、調査内容、調査結果、考察、摘要など)、所要予算額、事業開始年月日、事業主体、工事件数、設置場所、今後の計画を明らかにされたい。
 7 北富士、東富士、王城寺原、日出生台、北海道など主要演習場(大、中演習場)など演習場における砂防施設設置について既設、計画中の事業を明らかにされたい。
 環境影響評価、工事概要(調査項目、目的、細目、調査内容、調査結果、考察、摘要など)、所要予算額、事業開始年月日、事業主体、工事件数、設置場所、今後の計画を明らかにされたい。
二 射撃場情報提供施設について
 1 矢臼別演習場内を通過する別海町の町道、西春別茶内線の西風連橋に自衛隊が設置を予定する監視カメラによって町道を利用する住民、国民のプライバシー、肖像権が侵害されることについて防衛庁はどのように考えているのか。
 2 監視カメラの設置の目的はなにか。また、この問題で地元から要望があったのか、あったとすれば要望の内容を具体的に示されたい。
 3 監視カメラは防衛庁のどの部署がどのように管理し、責任を持つのか。また、何時どのような場合に使用するのか。映像の記録はどのように扱われるのか。
 4 設置場所等は何時、どのように決定されたのか。
 5 他の四演習場についてはどうか。

 右質問する。



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