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平成十六年二月十日提出
質問第一五号

商工ローン問題に関する質問主意書

提出者  阿部知子




商工ローン問題に関する質問主意書


 日栄の「腎臓売れ」事件をきっかけに平成一一年に社会問題化した商工ローンをめぐって、近年再び債務者、保証人との係争が増加の一途をたどっている。特に一部業者は、特定調停や裁判の場での利息制限法にもとづく債務整理に従わず、被害を深刻化させている。平成一一年の国会で政府が約束した商工ローン対策、中小商工業者保護の施策を実効性あるものにするためにも、商工ローン被害の実態把握と行政官庁の適切な対応がきわめて重要であることにかんがみ、以下について質問する。

一 商工ローン業界全体および上位三社の回収実績のうち、最終的な完済もしくは回収終了の際、主債務者のみから回収できた件数と金額、保証人に請求した件数と金額、保証人に請求したものの中で保証人から回収できた件数と金額を最近五年間について示せ。
二 関東財務局および近畿財務局に寄せられた、貸金業者に対する苦情、相談、行政処分申し立ての総数およびそれらのうち商工ローン業者に関する件数、およびその会社別の内訳の上位三社を、最近五年間について示せ。また、苦情、相談、行政処分申し立ての内容もそれぞれ示せ。
三 報道等によれば、関東財務局はSFCG(旧商工ファンド)に対する債務者、保証人およびその代理人弁護士から行政処分申し立てを再三にわたって受けているが、申し立てを受けた時期と内容、またそれに対する関東財務局の調査および処分、もしくは検討結果の内容を示せ。もし返答できない場合は、その理由を可能な限り具体的に示せ。
四 貸金業規制法は第一七条で適正な契約書面の交付を、第一八条で受取証書の交付を貸金業者に義務づけている。そこで以下二点について質問する。
 (一) 関東財務局、近畿財務局が第一七条違反、第一八条違反で貸金業者を処分したことがあるか。あるとすれば、業種は何か(消費者金融、商工ローン、ヤミ金、その他)。それらを最近五年間について示せ。
 (二) 商工ローン業者の契約書面や受取証書が第一七条、第一八条に違反するという判例は多数あるが、第一七条違反、第一八条違反を理由として商工ローン業者に対して行った処分を最近五年間について時期と業者名、処分理由を示せ。もしなければ、処分していない理由を可能な限り具体的に示せ。
五 高利で過剰融資を行う貸金業者が無理な回収を行い債務者、保証人を追い詰めることが、自殺の大きな要因になっているとの指摘があるが、保険会社が支払った生命保険金のうち自殺を原因とするものの件数および総額を最近五年間について示せ。
六 一部商工ローン業者は債務者、保証人が弁護士に委任した直後に、弁護士への委任自体を「期限の利益の喪失」とみなし、差押、仮差押などをかけ債務整理を妨げている。これは法的債務整理やそのための弁護士業務を不可能にする暴挙であり貸金業規制法第二一条に抵触すると考えられるが、見解を示せ。また債務者、保証人が弁護士に委任した後の回収や債務整理に関する貸金業者の業務に関連する施行規則、通達、通知を示せ。
七 商工ローンのなかには、利息制限法で計算した債務残高がゼロないしはマイナス(過払い)であるにもかかわらず、私製手形や公正証書等を用いた強制執行によって「回収」を図っている業者がある。最高裁事務総局が作成した『貸金業関係事件執務資料』(財団法人法曹会、一九八五年)が「利息制限法超過分の利息……を強いて取り立てるのは、義務のない行為を強制することになるから許されない」と明記しているように、利息制限法の上限を超える金利は本来違法無効であり、それを強いて取り立てることは利息制限法および貸金に関する判例法理に反する。利息制限法で計算した債務残高がゼロもしくはマイナスになった後、貸金業者が存在を主張する「残債務」は超過金利分に当たるので強制的回収は許されないと考えられるが、見解を示せ。
八 一部商工ローン業者が貸金の回収に公正証書を活用しているが、それにともなって「知らないうちに公正証書を作られ、不意打ちで給与や生命保険、売掛金の差し押さえを受けた」といった苦情、相談が弁護士会等に多々寄せられている。そこで以下二点について質問する。
 (一) 公正証書の全体の作成件数とそのうち貸金業者の依頼で作成されたもの、または貸金にかかわって作成されたものの件数を最近五年間について示せ。
 (二) 貸金業者の依頼で作成されたもの、または貸金にかかわって作成されたもののうち、債務者本人が公証人役場に出頭せず、代理人が出頭した件数を最近五年間について示せ。
九 公正証書を作成する公証人のなかには検事出身で、民事係争にほとんど携わってこなかった人も多数いると聞くが、公証人になる際の研修期間、研修内容、研修主体について示せ。
一〇 財務省、金融庁、旧大蔵省、旧金融監督庁の職員でこれらの官庁を退職した後、商工ローン業者およびその関連団体に再就職(いわゆる天下り)した者の官庁退職時の所属・役職、再就職先、その時期を最近五年間について示せ。また商工ローン業者の顧問、社外取締役、代理人弁護士、コンプライアンス委員(企業の法令遵守のための外部委員)に就任したケースについて、同様に官庁退職時の所属・役職、再就職先、その時期を最近五年間について示せ。
一一 金融監督庁長官と金融庁長官をつとめた日野正晴氏(現・弁護士)は、現在、SFCG(旧商工ファンド)の利息制限法脱法(みなし弁済の主張)の当否が争点になっている最高裁訴訟で同社の弁護団の筆頭に名を連ねている。そこで以下二点について質問する。
 (一) 弁護士法は「職務を行い得ない事件」として、「公務員として職務上取り扱った事件」をあげている(同法第二五条第四号)。金融監督行政のトップとして商工ファンド(現SFCG)をはじめとする商工ローン業者の指導、監督、処分全般の指揮にあたった日野氏が、SFCGが被告となった貸金をめぐる係争を弁護士として受任することが許されるか、見解を示せ。
 (二) 官庁退職後、弁護士登録した者が、在職中に指導、監督、処分にあたった業界の顧問や代理人に就くことに関する基準はあるのか。あればその内容を示せ。
一二 日野正晴・元金融庁長官は平成一六年一月二三日、最高裁でSFCG弁護団を代表して弁論に立ち、「商工ローン被害なるものの実体は存在しない。規制違反の処罰もなかったことは商工ローン被害がないからである」旨発言した。
 しかし金融庁・関東財務局は平成一二年八月、商工ファンド(現SFCG)に対し、最長九〇日間の業務停止を命令した。同社社員が、保証人が根保証契約を承諾する書面を偽造した事件で「会社の体制、業務運営に問題があった」と判断されたためである。この社員は刑事事件でも有罪判決を受けている(貸金業規制法違反、有印私文書偽造)。平成一一年の国会でも、商工ローンの高利貸付による深刻な被害と対策の必要性が国会と政府の共通認識となり、出資法上限金利を引き下げる出資法改正が行われた。
 したがって「商工ローンが処罰されていない」とか、まして「被害が存在しない」といった弁論は著しく事実に反すると考えられるが、見解を示せ。

 右質問する。



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