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平成十六年二月十日提出
質問第一六号

新生銀行上場申請に関する質問主意書

提出者  小林憲司




新生銀行上場申請に関する質問主意書


 金融庁及び預金保険機構は破綻し国有化された旧日本長期信用銀行に対し、巨額な税金を投入した後、一〇億円という破格値でリップルウッド社を中心とする外国投資組合に譲渡しただけでなく、瑕疵担保条項で公的資金(税金)を国庫から拠出するなど、国の債務負担行為について約定し、国際金融取引においてもその例をみない買い手本位の条件にて契約しました。
 新生銀行の株式上場売出しを介して巨額な違法、不当の負担が国民に課されていたという事実を隠蔽したまま、かつ容易にこの株式上場売出し審査が既定事実として進行し、その結果、わが国の被った巨額の損害に対する全くの補填のないまま、一部外資のみが巨利を得ようとしていることの不条理に対し、国政に関与する一員として今日までその調査に当たって参りました。しかし、証券市場においては、株式売出しのための財務局への届出書の効力発生が平成一六年二月一〇日にすでになされ、全株式を所有する外資系金融機関が構成する投資組合の持株三五%、四億七六三〇万株の大量売出し準備も完了し、平成一六年二月一九日(木)には新生銀行の東京証券取引所再上場承認と、既定事実化されています。東証は株式公開について常に厳しい審査を行ない、上場する時点で会社経営に重大な影響を及ぼす訴訟が継続している場合、その訴訟が解決するまでは公開は認めないという原則があることを承知しています。
 内閣総理大臣及び東証は、新生銀行(旧長銀)の再上場、株式公開にあたって権限と役割をもつため、再上場承認日までに、証券市場関係者、投資家保護の観点から新生銀行がかかえている様々な係争、紛争、訴訟等の内容について真相を解明するための厳正な調査を行なう義務と責任があります。
 内閣総理大臣は、@虚偽記載疑惑A会社内部情報に通じた単一株主によるインサイダーインフォメーション利用疑惑のある持株売出しのための有価証券届出書の効力発生を認めた以上、今後起こりうる市場での混乱を防止するための措置((ア)東証が審査を終了し、監督官庁に報告するに際して、監督官庁が上場延長と再審査を命じるべきこと。(イ)今後、当該株式の売出しの届出があれば、証券取引法第一一条に基づき届出書への虚偽記載として届出の効力停止及び発効時期延長命令を出すべきこと。(ウ)証券取引等監視委員会による前記疑惑の調査を求めること。)を講ずべきであります。
 これらの問題点を具体的に指摘すると次のとおりです。
 (新生銀行(旧長銀)の再上場について)
 ※国有化された長銀の払い下げに名乗り出たJPモルガン、オリックス連合、中央三井信託銀行、パリバ銀行等の中から政府、金融再生委員会がリップルウッド社を選択した経緯の中でロックフェラー系金融資本と三菱商事がこれをサポート、外資系投資組合ニュー・LTCB・パートナーズに三菱商事が出資するなど重要な役割を果たしていることの他、様々な疑念、問題を内蔵しています。この質問主意書は投資家保護の観点から再上場承認が是か非か、虚偽報告疑惑とインサイダーインフォメーション利用疑惑部分等にしぼって問題を提起したいと考えます。
 ※新生銀行は旧日本長期信用銀行を社名変更した同一法人格のため、旧長銀時代に発生した国内、国外での訴訟要因についても訴訟対象は新生銀行となり、旧長銀にかかわることの全ては新生銀行の問題となります。
 (1) 新生銀行が異例の早さで東証に再上場のための審査、承認、関東財務局への株式売出しのための届出とその効力発生(※平成一六年二月一〇日効力発生)を経るため、申請書を提出し、多くの投資家がこれに注目しています。しかし、その根底となっている好業績、好決算は不良債権が少ないという評価を含め預金保険機構の瑕疵担保条項による補償行為があったためです。(※契約履行にともなう買取り額八五三〇億円。尚、申請済みの案件を含めるとまだ増える見通し)さらに、新生銀行は後記訴訟で敗訴した場合、以下のように預金保険機構に補償を求めると言っています。
 (2) 新生銀行は上場審査の最中に、訴訟損害補償に関するマスコミ等の指摘をうけて預金保険機構と新生銀行との約定の部分に関連し「株式売出届出目論見書」を訂正、再提出しました。上場を目指す企業として異例のことですが、しかし「目論見書の訂正事項分は意図的(虚偽的)な報告」と指摘されています。目論見書訂正事項分の中で意図的(虚偽的)と指摘される箇所は、以下の記述です。
 「当行は、平成一二年三月より前の当行の行為に関連する訴訟の当事者となっております。(中略)当行は、平成一二年三月一日以前の事実に関する訴訟により負担した費用に対する補償を含め、預金保険機構より訴訟に関連して一定の補償を受けることが可能となっております」(※傍線は質問者記入。以下同じ)
 「サイパンの裁判所において再開の準備が進められている訴訟の内容は従前からの紛争案件の一環であり、したがって、上記第一段落の記述に何ら実質的な変更を来すものではないと考えております
 「個々に又は総額で当行の営業成績に重大な悪影響を及ぼすと予想される平成一二年三月より前の当行の行為に関連する継続中又は提起されるおそれのある訴訟又はその他の裁判手続きは存在しないと考えております。
 但し、同段落但書にあるとおり、本件につき、預金保険機構による補償の範囲又は補償金額の支払手続に関して、今後紛争が発生しない保証はありません
 (3) 新生銀行と預金保険機構の間においては、新たに提訴された巨額賠償請求に対し、仮に新生銀行が敗訴した場合、どちらに支払い義務が生じるのでしょうか。約定の解釈をめぐって、両者間の見解は真っ向から対立していると聞いていますが、両者より報告を受けているのでしょうか。
 (預金保険機構と新生銀行の間における約定の検証)
 ※新生銀行は訴訟の存在に対し、「株式売出届出目論見書」及び「有価証券届出書」の中で完全に黙殺していますが、届出書の記載要領としては、証券取引法関係・事務ガイドライン(通達)で、「・・・(との理由)で、××億円の損害賠償請求が、〇〇裁判所へ提起されている」との記載が求められています。売出届出目論見書の記載は訴訟の影響の重大さと、結審は来期中にも起こりうることから一般投資家保護の観点からは不適切です。
 (4) 預金保険機構は、東京地裁が認容したEIEインターナショナル破産管財人から提訴された巨額賠償訴訟については、平成一六年一月二三日に認容されたため、約定の三年(平成一五年二月)はすでに過ぎている。「仮に新生銀行が敗訴した場合でも補償はしない。できない」更に、約定の中で三年以内に予想される訴訟を事前に通告しておけば、免責されるとの条項がもりこまれていて、新生銀行からの正式な申し出もなかったとのことで、当てはまらないという見解であります。
 (5) 預金保険機構は新生銀行との約定の中で補償行為について「平成一二年三月以降より三年以内に提訴された訴訟案件、あるいは訴訟が継続中の件に付いては補償するが、平成一五年三月以降に提訴された案件については補償しない」となっています。一方、新生銀行は東京地裁で認容されたEIE破産管財人の訴訟と、EIEが新生銀行にサイパンで提訴した訴訟とは継続性があり、同一のものと認定しているので、仮に裁判に敗訴した場合でも預金保険機構が補償することになっているとの見解に立っています。
 (6) 新生銀行の代理人である米国大手法律事務所のシャーマン・アンド・スターリング法律事務所が、EIEインターナショナルとの(※組織的不正利得と腐敗に関する法違反、詐欺行為、詐欺の共謀、受認義務違反、受認者義務違反への関与、弁護士の業務過誤)訴訟において和解し、読売新聞、朝日新聞等々に大きく謝罪広告≠掲載したということは、異例かつ、衝撃的事件でありました。このことは訴訟において新生銀行が実質的に敗訴したということではないでしょうか。謝罪広告中で、シャーマン・アンド・スターリング法律事務所は、新生銀行(旧長銀)の指示に従った旨述べています。であれば、新生銀行に故意不法行為・重過失の責任があることになり懲罰的損害賠償が課せられ、損害賠償は巨額になる可能性大です。
 (7) 平成一六年一月二三日、東京地裁はEIE破産管財人による新生銀行に対する訴訟『(訴因名称)新生銀行に対する詐欺・横領による損害賠償請求』について、サイパン最高裁判所への提訴を認容しました。この訴訟について破産管財人から米連邦における裁判権を引き継いだカルボ・アンド・クラーク法律事務所からの報告によると、損害額がすでに明らかになっていて、賠償請求額は懲罰的損害賠償額を含めると、一兆円以上になるとされています。また、裁判はすみやかに進行し年内にも結論が出る可能性があると報告されています。
 従って、新生銀行としては、株式公開にあたり、この訴訟案件について投資家に対し、情報公開をする義務があり、内閣〔金融庁・財務局〕、東証としてはこれを指導、監督責任があるのではないでしょうか。
 (8) 新生銀行が仮に損害賠償訴訟において敗訴した場合の弁済は、預金保険機構が補償するのか、新生銀行が支払うのか。という問題は売出届出書効力発生並びに東証における上場審査判定の上で、極めて重要な問題であります。

@ 預金保険機構ははっきりと「平成一五年三月以降に提訴された訴訟事件については補償はしない。できない」と明言しています。
A 新生銀行が仮に訴訟に敗訴し、賠償金を支払うということになると、新生銀行の年間の営業利益が六五〇億円であることからして支払い能力があるのか、否か。投資家に対しての説明が必要となります。
B また、現在、新生銀行が申請している「株式売出届出目論見書」は訂正届出目論見書を加味しても重要な投資家にとって不利な事項の記載欠けつがあります。株式を上場する新生銀行にとって、情報開示のための説明責任を果すことは不可欠の要件です。
 (9) 新生銀行にかかわる破産管財人並びにその他からの訴訟
 東京地裁が認容したEIE管財人からの巨額賠償請求訴訟以外にも、株式売出届出目論見書の原本の二八頁一八項にも、訂正届出書の中にも記述されていませんが、新生銀行とEIEインターナショナルとの間で一四五億円、新生銀行とカミノコーポレーションとの間で一〇〇億円の訴訟が行なわれています。また、海外での巨額訴訟や、貸し剥がしで倒産に追い込まれた企業や、企業倒産で職場を追われた雇用者からの訴訟等が準備されているなど、新生銀行に対する訴訟問題は大、小の差はあれ、予断を許さない状況にあります。新生銀行が多くの問題をかかえていることの認識をもつことが内閣〔金融庁・財務局〕及び新生銀行の株式売出し、再上場の審査承認に責任をもつ東証において必要ではないでしょうか。
 (10) 新生銀行の再上場承認と公開後、金融庁、財務局、東証、引受幹事証券等、情報開示に関して投資家から責任追及される危険性に留意すべきです。特に売出届出書は内閣総理大臣に届出がなされ、内閣総理大臣が効力の発生を認めるものでありますから、最終的な責任者は内閣総理大臣であることを明記すべきであります。
 以上の指摘を踏まえ、政府に対し次の事項について質問します。
一 新生銀行の株式売出届出書が平成一六年二月一〇日効力を発生、平成一六年二月一九日、東京証券取引所第一部再上場もすでに既定事実化されています。金融庁、財務局としては、すでに新生銀行や幹事証券に対し、再上場は何ら問題なしと、ゴーサインを出しているのですか。
二 株式上場の審査、承認は、上場予定日直前であっても、上場に関する具体的な障害、問題があると判定された場合、上場の延期、再審査等の措置がとられることは過去にもその例はあったと思いますが、今回もその措置はとられると思ってよろしいのですか。
三 新生銀行の再上場に関する承認審査は、投資家保護の観点からも厳正に進められるべきであります。現在、新生銀行(旧長銀)を対象とした係争、紛争等、訴訟はどのくらい件数があるのか、最終監督責任のある金融庁、財務局としては、東証から報告を受けていますか。
四 金融庁、財務局は新生銀行から、損害賠償訴訟の内容について、どの程度の報告を受けていますか。また、金融庁、財務局が関係者から直接、事情聴取するなど、独自の調査を行なっていますか。
五 金融庁、財務局は株式公開については元来、厳しい審査を行ない、大きな訴訟を抱えている企業が上場する場合は、解決するまで公開を認めないことを原則としていると承知しています。新生銀行の場合、大きな賠償訴訟が提訴されていますが、この訴訟は再上場、承認の許容範囲と判定しているのですか。投資家が不利益を被らないためにも、上場延期、再審査等、金融庁、財務局は東証に対し、指導監督する必要はないのですか。
六 金融庁は平成一二年二月九日、ニュー・LTCB・パートナーズと株式譲渡契約を結んだ時に、新生銀行に関する訴訟はどの程度知っていたのですか。
七 ちなみにグアム訴訟は平成七年八月二日に提訴されており、カミノ訴訟は平成一二年二月一一日に提訴されています。金融庁が、旧長銀の信認義務違反、詐欺的行為の疑惑について知ったのはいつですか。
八 新生銀行の代理人である米国大手法律事務所のシャーマン・アンド・スターリング法律事務所が、謝罪広告を出して和解し、読売新聞、朝日新聞等々に謝罪広告が大きく掲載されていましたが、どのような経緯でこのような謝罪広告が出されたと認識されていますか。この謝罪広告が、前項の賠償訴訟に及ぼす影響についてどう位置づけていますか。
九 上場審査に必要な情報資料が、外国裁判所・弁護士の非協力により入手できず、それら資料を見ることなく審査を終了するということはないとは思いますが、審査、承認にともなう必要書類の入手は可能だったのですか。
一〇 日本の投資家は、国外にて係争中の裁判の結果如何によっては、巨額の損失を被る恐れはないのですか。
一一 外国投資組合が所有している株式は、日本、ヨーロッパ、米国(米国は私募)の投資家に訴訟リスクの正確な説明がなされないままに、販売されリスクが転嫁されます。世界中の投資家から訴訟が提起される恐れはありませんか。
一二 新生銀行の損害賠償請求訴訟で敗訴もありうるという側面をなぜ隠蔽しようとしているのですか。株式上場後、適切な情報開示がなされていなかったと金融庁、財務局に対して投資家から上場後、損害賠償訴訟が提訴されるような懸念はないのですか。
一三 新生銀行は二月五日(木)、目論見書の訂正事項分を申し立てましたが、預金保険機構と新生銀行とは「瑕疵担保条項」、「偶発的債務条項」、「訴訟条項」の解釈をめぐり、双方の見解は真っ向から対立しています。
 預金保険機構と新生銀行の考えが統一されないままに上場が承認されるようなことがあってはならないと思いますが、どう判断されていますか。
一四 上場承認、審査、調査の結果、問題があった場合は、新生銀行に対して「株式売出届出目論見書」の再々訂正、再々提出、「有価証券届出書」の記載及び数値の訂正、差し替え等を指導し、再々提出させるのですか。
一五 新生銀行の好決算、好業績は巨額の税金投入という国民の犠牲の上に成り立っています。情報を的確に開示せず、玉虫色の決着で再上場を強行すれば、それは投資家に対する重大な背信行為となります。明確な情報開示がなされるまでは、新生銀行の再上場を延期するか、再審査すべきではないですか。
一六 上場・売出しには幹事証券も大きな責任がありますが、今回の新生銀行の売出しについて、幹事証券会社は、十分な引受審査(デュー・ディリジェンス)を行なっているのですか。金融庁、財務局は的確な指導につとめているのですか。
一七 新生銀行の普通株式の単一株主であるリップルウッド社は、旧長銀買収にあたっては、当然デュー・ディリジェンスを行なったはずですが、その際EIEインターナショナルとの訴訟の係属をどう評価したのでしょうか。また新生銀行(旧長銀)の信認義務違反、詐欺的不法行為の存在を知ったのはいつだと政府は認識していますか。
一八 リップルウッド社は現在訴訟リスクをどう位置づけているのでしょうか。敗訴した場合のリスクの大きさを考えると、単一株主として新生銀行を実質支配しており、内部情報に通じたリップルウッド社が一般投資家に、持株の売出しという形でリスクを転嫁することは、会社内部情報に通じた単一株主によるインサイダーインフォメーション利用取引に該当するのではないですか。証券取引等監視委員会はこの問題につき、調査を行なう用意がありますか。
一九 新生銀行の再上場は訴訟問題等が解決してからでも遅くないのではないですか。もしこのままの状態で株式を公開すれば後々、大きな金融事件に発展する懸念はないのですか。
二〇 新生銀行の巨額賠償訴訟等の中で再度、破綻するようなことがあった場合、預金保険機構は、新たな公的資金(税金)によってこれを救済することになるのですか。適切に行政指導は行なわれているのですか。

 右質問する。



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