衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十六年十一月十二日提出
質問第三八号

著作権法第三十八条第一項及び第四項の解釈等に関する質問主意書

提出者  川内博史




著作権法第三十八条第一項及び第四項の解釈等に関する質問主意書


 本年九月二十八日に最高裁判所・第三小法廷の上告棄却決定により確定した名古屋高等裁判所第四民事部・平成十五年(ネ)第二三三号著作権侵害差止等請求控訴事件判決の原審たる名古屋地方裁判所第九民事部・平成十四年(ワ)第二一四八号著作権侵害差止等請求事件(以下、確定した名古屋高等裁判所判決を含め「本件判決」という。)判決においては、著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号。以下「法」という。)第三十八条における「料金」は「施設の維持・運営」に充てられる費用などいかなる名目であっても外形的に金銭の授受を行った事実が存在しさえすれば当然に第三十八条は適用されないと解される、という司法判断が示されたものと認められる。一方、本年五月二十五日の政府答弁書(内閣衆質一五九第九六号。以下「先の答弁」という。)においては第三十八条第四項につき『図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する私立図書館又は図書館法第二十九条第一項に規定する図書館と同種の施設が、これらの施設の利用者から、図書館法第二十八条に規定する入館料その他図書館資料の利用に対する対価を徴収している場合において、当該対価が、書籍又は雑誌の貸与に対する対価という性格を有するものではなく、これらの施設の一般的な運営費や維持費に充てるための利用料であると認められる場合には、法第三十八条第四項に規定する「料金」に該当しないものと解される。』、或いは『私立の学校法人が、その設置する学校に在籍する生徒等から徴収する授業料は、当該学校の管理運営等の支出全般に充てられるものとして徴収されることが通例であり、その一部が当該学校の附属図書館の運営費に充てられるとしても、そのことをもって直ちに当該授業料が書籍等の貸与に対する対価という性格を有するものではなく、法第三十八条第四項に規定する「料金」に該当しないものと解される。法第三十八条第四項に規定する「営利」とは、業としてその貸与行為自体から直接的に利益を得る場合又はその貸与行為が間接的に何らかの形で貸与を行う者の利益に具体的に寄与するものと認められる場合をいうものと解される。』、ないしは『法第三十八条第四項に規定する「営利」とは、業としてその貸与行為自体から直接的に利益を得る場合又はその貸与行為が間接的に何らかの形で貸与を行う者の利益に具体的に寄与するものと認められる場合をいうものと解され、お尋ねの鉄道会社が、駅に文庫を設置して、乗客に書籍又は雑誌の貸与を行う行為は、一般的には、自己の利益を図るものではないと考えられ、法第三十八条第四項に規定する「営利」を目的とするものに該当しないものと解される。』と、明らかに本件判決と異なる解釈が示されている。この点を中心に、政府の見解を問う。

一 本件判決は法第三十八条第一項の解釈について争われたものであるが、第一項における「料金」は「施設の維持・運営」に充てられる費用などいかなる名目であっても外形的に金銭の授受が存在すればそれは全て条文の「料金」に該当するものであるから適用除外の要件を満たさず、従って第四項における「料金」には「施設の維持・運営」に充てられる費用、例えば図書館法第二十八条に基づき私立図書館が利用者から徴収する「対価」や学校教育法(昭和二十二年三月三十一日法律第二十六号)第六条に基づき徴収される「授業料」、もしくは私立学校法(昭和二十四年十二月十五日法律第二百七十号)第二十六条に基づき実施する収益事業に係る収益も第四項における「料金」に該当すると解されるのではないか。この点につき、図書館法第二十八条の「対価」は法第三十八条第四項の「料金」には該当しない、とする先の答弁の根拠はいかなるものであるか明らかにされたい。また、第一項と第四項における「料金」の定義は「第一項に(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)とある但し書き如何に関わらず、それぞれ異なる」という解釈は本件判決に関わらず成立し得ると政府は認識しているのか。また、その理由は何か。
二 第一項と第四項における「料金」の定義は異ならないと解される場合、私立の学校法人が本件判決における「受講勧誘文言を記載した入会案内書」は入学願書他の「付属図書館の蔵書数の充実ぶり」を記載する文言が認められる文書に相当し、或いは「社交ダンスの教授に際して音楽著作物を演奏することは必要不可欠であり、音楽著作物の演奏を伴わないダンス指導しか行わない社交ダンス教授所が受講生を獲得することはおよそ困難であって、そのような社交ダンス教授所が施設を維持運営できないことは明らかであるから、結局、本件各施設における音楽著作物の利用が営利を目的としないものであるとか、上記受講料がその対価としての料金には当たらないとの被告らの主張は採用できない。」の「社交ダンスの教授」を「学校教育の授業」に、「社交ダンス教授所」を「学校施設」に、「受講生」を「学生」に、「音楽著作物の利用」を「書籍又は雑誌の利用」に置き換えると、第一項と第四項の「料金」について異なる解釈を行うことを許容する法文上の根拠が存在しない現状では平成十七年一月一日施行の著作権法の一部を改正する法律(平成十六年六月九日法律第九十二号。以下「一部改正法」という。)により附則第四条の二が廃止されて以降、私立の学校法人が学生に付属図書館の図書を貸し出す行為は「教育行為として必要不可欠であっても、法第二十六条の三に規定される貸与権を侵害する」と解されるのではないか。
三 一部改正法起草の段階において、二において指摘したような状況は想定されていなかったにも関わらず、本件判決が最高裁判所において原審のまま確定したことによりこうした状況の招来が懸念され得る事態となったことに対し、政府の見解を明らかにされたい。また、平成十七年一月一日の一部改正法施行よりも前に第三十八条第四項に図書館法第二十八条における「対価」及び私立学校法に基づく学校法人もしくは構造改革特別区域法(平成十四年十二月十八日法律第百八十九号)第十二条に定める学校設置会社が設置する学校が、学校教育法第六条に基づき学生より徴収する授業料を原資として購入する図書の貸し出しに関しては明らかに一部改正法の立法趣旨の想定範囲外であり、政府が本件判決に関わらず先の答弁を維持するのであれば一部改正法の施行前に当該行為が貸与権の侵害に当たると解さないよう、緊急に措置すべきではないか。
四 貸与権についての一部改正法の前提であった出版業界と利用者側代表の協議が本年十月九日に決裂したとのことであるが、協議が決裂に至るまでの経緯と決裂した理由を明確に把握したうえで、この事態に対して文化庁はどのように考えているのかを明らかにされたい。また、この事態を受けて平成十七年一月一日の一部改正法施行に際して予想される混乱を回避するため、一部改正法の施行を前に文化庁において何らかの措置を行う予定があるならば、その具体的内容を明らかにされたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.