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平成十七年十月二十八日提出
質問第四一号

アスベスト(石綿)対策に関する再質問主意書

提出者  吉井英勝




アスベスト(石綿)対策に関する再質問主意書


 アスベストによる肺ガンや中皮腫などの健康被害は拡大し続け、日ごとに深刻さを増している。先日発表された人口動態調査では、昨年一年間の中皮腫による死亡者は統計を取り始めた一九九五年以来、約二倍の九百五十三人にまで達している。政府は九月二十九日に開かれたアスベスト問題の関係閣僚会議において、労災補償の対象者以外の一般住民を含む被害者も「隙間なく」救済するためのアスベスト新法の概要――「石綿による健康被害の救済に関する基本的枠組み」(以下、基本的枠組み)――を発表したが、すべての被害者が救済されるとは考えにくいものである。
 よって、次のとおり質問する。

(一) 基本的枠組みでは、一般住民被害者への給付金として、「自己負担分の医療費の支給・療養手当・遺族一時金・葬祭料の給付」が検討されている。いっぽう、労災補償を受けずに死亡したアスベスト関連の労働者には、「労災補償に準じた措置を講ずる」ことになっており、同じアスベストが原因でありながら給付には大きな格差がある。基本的枠組みの目的が「石綿による健康被害者を隙間なく救済する仕組みを構築する」である以上、一般住民のアスベスト健康被害者にも労災補償に準じた補償をすべきではないか。
(二) 基本的枠組みでは、被害者への給付金の財源について、アスベストに関連する事業者から負担を求めることになっている。事業者の中にはアスベスト製品のメーカーだけでなく、鉄鋼・造船・自動車・石油化学・建設業界などの大口ユーザーも含むべきではないか。
(三) 給付金の財源に基金を創設し、公費負担のあり方を検討することになっているが、アスベストによる深刻な健康被害の発生の責任は地方自治体にはなく、地方自治体に負担を押しつけるのは適当でないと思うがどうか。
(四) 報道によれば、環境省の推計ではアスベストが原因による中皮腫の発症者数は約五万人、肺ガンの発症者数は約三万五千人と伝えられている。同じ環境省の推計で、過去の死亡者数とは別に二〇一〇年までに中皮腫だけで六千人、肺ガンと合わせれば最大で一万五千人が死亡するという報道もある。アスベストによる健康被害者数は、過去の分も含めてどれだけにのぼると推計しているのか。また、その算出の根拠を示されたい。
(五) アスベストによる疾患は三十年〜四十年を経て発病するという特徴があり、今後のアスベストによる被害者数を把握するためにも、健康診断を実施し将来発病する可能性がある人を継続的に追跡調査できる態勢が不可欠と考えられるが、基本的枠組みには健康診断の項目がない。新法には健康診断の実施と、その結果発病の可能性がある人には健康管理手帳を交付し、登録制度を設けるなど診断から治療まで総合的に取り組むことを含ませるべきではないか。
(六) アスベストばく露の履歴があったことを確かめるには高い精度の健康診断が求められるが、CTスキャンなどを含む健康診断に要する約二万円の負担を個人に求めることは国の責任を放棄するものである。兵庫県尼崎市や佐賀県鳥栖市では、市単独予算でアスベスト関連の事業所周辺の住民を対象に健康診断を行なっているが、尼崎市、鳥栖市、奈良県王寺町などのアスベストに関連する事業所とその周辺など、危険性の高い地域の住民には国の特別の手だてが必要である。国が検診費用を負担し、さらに検診の範囲を拡大すべきではないか。
(七) アスベスト疾患専門医の指摘によれば、アスベストによる肺ガンの死亡者は中皮腫による死亡者の十倍にもなるという。しかし、昨年までの累計で労災認定されたアスベスト肺ガンの患者数は三百五十三人で、中皮腫の認定数が四百九十五人であるのに対して少ないのが実態である。この要因の一つには、医師の診断の際、アスベストばく露の履歴などが調べられず、喫煙歴だけが重視されていることが考えられる。同様にアスベストに関連する業務に従事していなかった一般住民の肺ガン患者の中にも、アスベストばく露が原因であるにもかかわらずアスベストとの関連が見落とされている場合も考えられる。肺ガン患者のうちアスベストばく露による被害者が見落とされ、救済されないことがあってはならない。健康診断の結果、アスベストばく露の有力な証拠である胸膜プラークが認められた肺ガン患者については、すべてアスベストによる被害者とみなし、急いで救済の対象にすべきではないか。
(八) アスベスト関連疾患に対し、適切な診断と治療ができる医師や医療機関は全国的に少ない。国は本年九月、二十二の労災病院にアスベスト疾患センターを設置し、そのうち七機関をブロックセンターと位置づけて他の医療機関への支援を行なうこととした。具体的にアスベスト疾患センターへの医師などの職員配置はどうなっており、医療機関への対応はどうなっているか。
(九) 労災認定の迅速化と適正化を図るため、本年七月に厚生労働省は「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」という通達を各都道府県労働局に出している。この通達により、労災認定の事務処理はどの程度迅速化されたか。通達に実効性を持たせるためには、人員の増加など体制の強化が不可欠ではないか。
(十) 日本のアスベスト産業の隆盛は、戦前の陸海軍の需要と結びついていることが史料などに見られる。艦船などにどれだけの量のアスベストが利用され、そのアスベストの処理はどのように行なわれたか。

 右質問する。



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