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平成十七年十月三十一日提出
質問第七二号

原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書

提出者  吉井英勝




原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書


 政府は、「原子力政策大綱」を決定して、プルトニウムを循環して使用する方式の原発推進政策を改めて決定した。このプルサーマル自体に多くの危険性があることとともに、これを燃焼させる軽水炉の老朽化と近づく巨大地震の発生やその時の巨大津波の発生が重なった時の危険性が問題になってくる。さらに、原発を積載する艦船が原子炉規制法にもとづく設置工事許可申請も承認もないまま東京湾に「設置」される問題など、国民の安全にとって看過しがたい問題が続出してきている。そこで、原発の安全性に関する問題について、次のとおり質問する。

(一) 政府は、去る十月十四日に「原子力政策大綱」を閣議決定した。本来、国の原子力政策・エネルギー政策の根幹に関わることは、国会に報告し、質疑を行い、承認を求めるべきものではないのか。国権の最高機関である国会を無視して、政府が国会外の懇談会等を使って形式を整えて、政府判断だけで決定すれば十分と考えるほど軽い課題とみなしているのか。
(二) 日本には今日、長崎型プルトニウム原爆四千発分を超える核兵器製造可能な量のプルトニウムが貯蔵されている。三十二トン以上というこれだけのプルトニウムを日本が貯蔵していることを、国際的にも納得と理解の得られる正常なことと考えているのか。
 また、六ヶ所の再処理工場の操業を行うことは、更にプルトニウムの貯蔵を増やすばかりであり、この操業計画はキッパリやめるべきではないか。
(三) 現在、政府と電力会社は、軽水炉でプルトニウムを燃焼させるプルサーマル計画を推進している。九州、中国、四国の各電力はもとより、関西、中部、北陸、東京、東北、北海道の各電力についても、燃料の同位体のそれぞれの重量等について、
 @ 軽水炉の場合の、使用前と使用済み核燃料のウランとプルトニウムなどの同位体の重量と、それぞれの放出するα、β、γ線量及び毒性ガス量と放出放射線量を発電所ごとに示されたい。
 A プルサーマル利用の場合のウラン燃料とMOX燃料の初期挿荷時と最高燃焼度に達するまで燃やしたあとの使用済核燃料について、@と同様の値を示されたい。
 その上で、原子力安全保安院と原子力安全委員会のプルサーマル利用の時の炉内安全性及び過酷事故時の放射能被害についての評価を示されたい。
(四) 原発の老朽化が進行する下で、巨大地震災害と重なった時、どのような事態が発生するかについて、予め検討することが原発の危険から国民の生命と安全を守る上で最も大事な課題である。
 @ 四国電力伊方原発のタービン架台には、アルカリ骨材反応によって、最高三二ミリの膨脹・亀裂が発生したことが四国電力の報告書でも明らかにされている。このタービン架台ないしは、同じ建設年度で同様の亀裂の入った架台を、多度津の起振台に乗せて、安全性を確認する実証試験は行ったか。
 また、M七クラスの地震動によっても、亀裂の進行がないか、タービンの軸と発電機の軸とのズレがどれくらいになるかなど、確認が必要と思うが、その計画はあるのか。実施したとすれば何時、どういう条件の下で行ったか。その結果、どういう実証データが得られたのか。
 A 長期の使用によって配管の各所で減肉がすすんだり、SG(蒸気発生器)細管、一次や二次冷却水系配管、制御棒駆動水圧系配管の所で、温度や圧力の繰返荷重などによる金属疲労が起こったり、化学反応による腐食などが進行しているものなど、原発の機器類の老朽化による問題が多数確認されている。こうした施設が、M=7、直下型の巨大地震に直面した時、一体どのような施設の被害が生じるか、予め調べる必要がある。
 多度津の起振台を使って、上記の重要機器について、どれだけの規模の、どういう腐食等の条件をもっている試験体について、どういう実証試験を行ったか。
 B 運用開始後三十年経っている老朽原発の、巨大地震発生時の安全性の検証は、多度津の起振台を使って実証試験を行うことにより、これから解明されていかなければならない問題である。
 ところが、この多度津の施設は、「年間約十億円の維持費がもったいない」として、すでに今年になってから、運転を中止している。来年度には運転してきた原子力発電機構を廃止して、世界的にも最高水準をいく起振台も解体・撤去してしまう動きが強まっている。十月十九日の内閣委員会において、鈴木原子力安全委員会委員長代理は「実際の機器に近いものを試験してみるということは大事なことだと思う」と答弁した上で、国の方が財政上の理由で廃止しようとしていることについて、「与えられた資源の中で」努力することと、試験できないならコンピュータなどによる「解析等を駆使して、安全をいろいろな角度から確認する」ようにしたいと答えた。
 老朽化のすすむ原発の機器類を起振台に乗せて、実物で実証試験を行うことは、巨大地震に備える原発の安全対策にとって欠かせないことではないのか。原発の持っている危険から国民の安全を守ることは、政府の第一義的責務ではないのか。
 来年度以降も引き続き多度津の起振台を運用して、老朽原発の巨大地震対策に必要な実証試験を行う考えに立つべきと思うが、政府の見解を問う。
(五) 巨大地震時に津波が発生すると、発電所内へ進入する遡行してくる高波とともに、逆に潮が引いて海面が下がることによって冷却水が異常を来す場合がある。そこで、総ての原発のそれぞれの冷却水の取水口の位置(標準水面から幾らか)と波が引いた時の海水面の高さが標準水面から幾ら下にきているかの関係を明らかにして、巨大津波の発生時にも機器の冷却がうまくいくのか、国内の総ての原発について示されたい。
(六) アメリカ海軍は二〇〇八年に、原子力航空母艦を横須賀に配備してここを母港とすると発表した。すでに八八年五月の参議院科学技術特別委員会以来、五回質問してきた。これは、東京湾に電気出力約十万キロワットの原発を二基設置することに相当する問題であり、本来、原子炉規制法によって、人口密集地の東京湾に原発を立地することについては厳密な審査がなされなければならないものである。
 こうした原発の事故については、政府の委託調査に応えた日本原子力産業会議が一九五九年にまとめた「大型原子炉の事故の理論的可能性及び大衆損害に関する試算」(国会には一九六一年四月二十日に参考資料として提出された)など、首都圏における被害について真剣に検討しなければならない問題が提起されている。この報告書では茨城県東海村にある熱出力五十万キロワットの事故を想定したものであるが、数百人の致死と、数千人の障害、数百万人の要観察者を生じる(10の7乗キュリーの放出の場合)とした。この調査研究の参考資料となったものは、一九五七年アメリカ原子力委員会のもと、ブルックヘブン国立研究所で行った報告書で、「電気出力二〇万キロワットの原発で、炉心溶融事故が起り、炉内に溜まった放射性核物質の約半分が大気中に放出された時の被害は」「即死三千四百人、急性放射性疾患にかかる人約四万三千人」としていた。
 また、一九八八年にアメリカのカリフォルニア大学ジャクソン・デイビス教授が市民団体の依頼を受けて行った調査検討の報告書「日本の港に停泊した軍艦における核事故」によると、首都圏で七万七千人の死者がうまれるとしている。
 政府として、原子力空母が横須賀を母港化する計画については、横須賀で原発が過酷事故を起こした時の首都圏における被害予測をきちんと行って、この地域での原子炉の設置工事許可の扱いとして厳密な審査を行うべきである。原子力潜水艦の横須賀入港以来、原子炉被害予測は当然行われてきたものと考えられることから、その政府の予測値を詳細に示されたい。

 右質問する。



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