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平成十八年四月三日提出
質問第一九九号

カネミ油症被害者の救済に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




カネミ油症被害者の救済に関する質問主意書


 カネミ油症事件は、一九六八年に、福岡県や長崎県を中心に西日本一帯で発生したPCB(ポリ塩化ビフェニール)等の有毒物質に汚染された米ぬか油を摂取した約一万四千人が健康被害を訴えた、世界最大級ともいわれる食品公害事件である。
 本事件について、当初は、米ぬか油の製造過程で混入したPCBが原因物質であるとされていたが、その後、毒性の強いダイオキシン類のPCDF(ポリ塩化ジベンゾフラン)が主原因であることが判明した。
 その健康被害の深刻さは、ダイオキシン類の影響と見られる黒い赤ちゃんが生まれるなど、被害は親から子へと引き継がれ、事件発生から三七年を経過した今なお、多くの被害者が全身疾患にさいなまれている。
 国は、原因物質がダイオキシン類であると究明されたことを機として、二〇〇四年九月に油症診断基準の見直しを行ったものの、これによって新たに認定された患者はわずか二十五名にとどまり、未認定被害者の救済にはほど遠い現状である。
 そのうえ、国を相手取った損害賠償請求の控訴審で一旦は勝訴し、被害者が手にした仮払金についても、その後、裁判そのものを取り下げた結果、国から返還請求がなされるなど、被害者は、経済的にも、精神的にも極めて追い詰められている状況にあり、必死で救済を求めている。
 本事件は、原因企業に第一次的な責任があるとはいうものの、その規模と被害の深刻さからみれば、到底一企業のみで担えるようなものではないことは誰がみても明らかである。
 国は、未認定被害者を含めた健康被害者の救済策を講じ、事件の早期解決を図るべきである。
 従って、以下の事項について質問する。

一 油症診断基準の抜本的見直しによる未認定被害者の早期認定について
 1 カネミ油症事件が発生した当時、被害を届け出た方は一万四千三百二十人である。
 この方々のうち油症診断基準によってカネミ油症による食中毒被害者として認定された方は、千八百九十二名に過ぎず、残りの一万二千人余りの方々は、診断基準によって認定されなかったのである。しかし、この方々は、いずれも汚染された米ぬか油を食べ、何らかの症状を訴え続けており、食品中毒による健康被害を受けたことが否定できない方々である。
 政府は、カネミ油症の原因物質が、PCDFというダイオキシン類であるということを確認しており、未認定被害者の被害救済のために、今日の時点で、二〇〇四年九月の油症診断基準を抜本的に見直して未認定被害者の早期認定を図るべきである。政府の見解を問う。
 2 カネミ油症の原因が、一九七二年頃からPCB及びPCDFによる複合汚染であると指摘されていながら、二〇〇一年十二月に、国として初めてPCDF、すなわち有害化学物質であるダイオキシン類が原因物質だと認めたとされているが、ダイオキシン類と確認するまで何故、このように長い期間を経るに至ったのか、その理由を詳細に伺いたい。
 3 二〇〇四年九月には、これまでの診断基準を見直して、油症診断基準を改訂したが、この基準の内容及び従来の診断基準をどのように見直したのか説明されたい。
 4 この油症診断基準の改訂以後、新たに認定された患者はわずか二十五人と承知しているが、本年四月現在で、新たに認定された方及び要経過観察の方は何人か。また、これまで何名の方々が認定申請し、そのうち、何名の方が審査を終了されたのか。
 5 今日、多くの未認定被害者が、七〇歳八〇歳と高齢化しており、重病のなかで苦しんでいる。油症診断基準が見直されたにもかかわらず、新たに認定された患者はわずか二十五人というのは本当に驚くべきことである。いかなる理由によるのか詳細に説明されたい。
 6 未認定被害者の方々は、「全く無視したものであり、あまりにもひどい」との怒りと悲痛な声を上げている。
 現行の油症診断基準については、未認定被害者をきちんと救済するという立場から、ダイオキシン類に着目した医学的、疫学的、科学的知見に基づいて、直ちに抜本的に見直していくべきである。重ねて政府の考えを問う。
二 カネミ油症事件を、有害化学物質であるダイオキシン類が主原因の公害病等として取り扱うことについて
 カネミ油症事件においては、被害者が広範囲に存在しており、ダイオキシン類が原因物質であることを十分に考慮し、認定患者に対しては公害病等として扱い、新たな対策を含めて医療、保健対策の拡充、充実を図るべきである。政府の考えを問う。
三 カネミ油症被害者からの仮払金の返還免除等の措置について
 1 被害者が、国から、仮払金の返還を請求され、その被害者の中には自殺者や離婚者まで出ている。今も健康被害に苦しむ油症患者を二重苦、三重苦に追い詰めるような惨いことはもう止めて、被害者が受けた深刻な精神的苦痛と生活実態を考慮して、返還しなくてもよい方向で早急かつ真剣に検討すべきである。また、すでに仮払金を返還した被害者に対しては、公平性の確保という観点から、仮払金相当額を補償金あるいは見舞金等として支給する方策も検討すべきである。政府の方針を問う。
 2 「国の債権の管理等に関する法律」は、「無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることとなる見込がないと認められる場合」には、債権を免除できるとの明文規定がある。
 ここでいう「無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、弁済することができることとなる見込がないと認められる場合」とは、具体的にどのような場合を指すのか明確に示されたい。
 3 二〇〇八年以降には、十年履行延期を満了される患者の方々が出てくるが、これらの方々は、高齢で、重い症状・疾患に苦しみ、収入もなく、手術、入通院による治療等を余儀なくされている。そのため、到底、国から受け取った仮払金を返還できる状態にはないことは、誰が見ても明らかである。
 政府は、国から仮払金の返還を請求されている各被害者の資力等、生活の実態調査を過去に行ったことがあるのか、また、今後行う考えはあるのか。
 4 患者の肉体的、経済的、精神的な苦しみを少しでも和らげるためにも、国は債権を放棄するということを明言すべきである。政府の方針を問う。
四 被害者の実態把握と治療法の早期確立について
 1 これまで、国は、カネミ油症被害者の実態把握のためにどのような調査を進めてきたのか、時系列的に、かつ、詳細に説明願いたい。
 2 汚染された米ぬか油を食べ、健康被害を受けた未認定被害者やその子供(二世、三世を含む)の実態把握、掘り起こしと追跡調査を、今後、国は地方自治体等の協力を得つつ主体的に実施すべきである。政府の考えを問う。
 3 カネミ油症は、ダイオキシン類を原因物質とする健康被害であることが確認されていながら、その根本的な治療法は、今なお確立するに至っていない。国は、被害者のための治療法の研究・開発を強力に推進して、治療法の早期確立を図るべきである。
 政府は、カネミ油症の被害者の治療法を確立するために、これまでどのような体制の下で研究等の取組を行ってきたのか時系列、かつ、詳細に示されたい。また、治療法の確立に向けてどのような進展が現在までにあったのか、これまでの成果と今後の取組方針を具体的に示されたい。

 右質問する。



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