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平成十八年九月二十九日提出
質問第二八号

安倍首相の靖国神社および国立追悼施設についての見解に関する質問主意書

提出者  辻元清美




安倍首相の靖国神社および国立追悼施設についての見解に関する質問主意書


 安倍新政権が成立したことを受けて、安倍内閣総理大臣の靖国神社および国立追悼施設についての見解や政治姿勢を明らかにすることは、多くの国民の要求するところである。
 従って、以下、質問する。

一 安倍首相が官房長官だった二〇〇六年六月三日当時、テレビ番組に出演し、九月の自民党総裁選で選出され、自身が首相に就任した場合の靖国神社参拝について「今の段階で行くか行かないか言うつもりはない。言うことで外交問題に発展する。政局に絡んで言うべきでない」との考えを示した件について
 1 ここでいう「今の段階」とはいつまでを指すのか。安倍首相の見解を示されたい。
 2 安倍首相は靖国神社参拝について今後も参拝するのか。
二 安倍首相の自著の「『A級戦犯』といういい方自体、正確ではないが、じつは、かれらの御霊が靖国神社に合祀されたのは、それより七年も前の一九七八年、福田内閣のときなのである。その後、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘と三代にわたって総理大臣が参拝しているのに、中国はクレームをつけることはなかった。一九七八年に結ばれた日中平和友好条約の一条と三条では、たがいに内政干渉はしない、とうたっている。」(『美しい国へ』六八頁)という記述について
 1 ここで安倍首相は「A級戦犯」といういい方が正確でないと述べているが、それでは安倍首相はどういういい方が正確であると考えるか。具体的に示されたい。
 2 安倍首相は、日本の首相の靖国神社参拝について中国政府がとった一連の行動の、どの部分が内政干渉にあたると考えているのか。その根拠を具体的に示されたい。
三 安倍首相の自著で「首相が『A級戦犯』の祭られた靖国神社へ参拝するのは、条約違反だ、という批判がある。ではなぜ、国連の場で、重光外相は糾弾されなかったのか(略)それは国内法で、かれらを犯罪者とは扱わない、と国民の総意で決めたからである。」(『美しい国へ』七〇頁)という記述について
 1 安倍首相は、A級戦犯の名誉は国内的には回復されているという認識か。そうであるなら根拠を明らかにされたい。
 2 安倍首相は、A級戦犯の名誉は国際的には回復されているという認識か。そうであるなら根拠を明らかにされたい。
四 安倍首相がA級戦犯を国内法で犯罪者とは扱わないとした根拠として、一九五一年の法務大臣答弁「国内法の適用において、これを犯罪者としてあつかうことは、いかなる意味でも適当ではない。」(第一二回国会参議院法務委員会、一九五一年一一月一三日)を示していることについて
 1 A級戦犯を日本の国会で「犯罪人ではない」としたことで、国際的な戦争犯罪者としての規定から外れると考えているのか。
 2 安倍首相は、極東国際軍事裁判の判決は日本国の法律や国会決議でくつがえせるものと考えるのか。
五 安倍首相の自著の「先の大戦(略)もっとも大きな責任は時の指導者にある」(『美しい国へ』二五頁)という記述について
 1 ここで安倍首相がいう「先の大戦」とは、何年何月に始まり、何年何月に終わった、どのような名称の戦争を指すと解しているのか(複数存する場合にはそのすべて)を明らかにされたい。
 2 「もっとも大きな責任」とは何に対するどのような責任か。安倍首相の見解を示されたい。
 3 ここで安倍首相がいう「時の指導者」とは具体的に誰を指すのか(複数存する場合にはそのすべて)を明らかにされたい。
六 靖国神社の遊就館の展示パネルにおける「早くから大戦の勃発を予期していたルーズベルトは、昭和十四年には、米英連合の対独参戦を決断していたが、米国民の反戦意志に行き詰まっていた。米国の戦争準備『勝利の計画』と英国・中国への軍事援助を粛々と推進していたルーズベルトに残された道は、資源に乏しい日本を、禁輸で追い詰めて開戦を強要することであった。そして、参戦によってアメリカ経済は完全に復興した」という記述について
 1 安倍首相は靖国神社を参拝した二〇〇六年四月一五日当時、遊就館にこうした記述があることを認識していたか。
 2 認識していなかったとすれば、安倍首相が認識したのはいつか。
 3 安倍首相は一九四〇年代初頭のABCD包囲網に反発しての「自存自衛戦争」というような主張を正しいと認識するのか。
 4 認識するのであれば、安倍首相は経済制裁を理由に先制攻撃が正当化されると認識するのか。
 5 容認しないのであれば安倍首相は日本が米国に対して先制攻撃を行った理由を何と考えるか。
 6 容認しないのであれば、安倍首相はなぜこうした歴史認識を明らかにしている靖国神社に参拝したのか。
七 安倍首相の「『靖国参拝を中止させる』という政治目的のために、まず訪中した経済人にプレッシャーをかけた。『靖国問題を解決しなければ中国での商売が上手くいかない』と思わせる手法です。」(『諸君!』二〇〇五年八月号三七頁)という発言について
 「プレッシャーをかけた」とあるが、安倍首相はいつ、誰が、誰に、どのような言動をとったのか、具体的にこの発言の根拠を明らかにされたい。
八 安倍首相の自著の、首相の靖国神社参拝をめぐる「参拝自体は合憲と解釈されているといってよい。首相の靖国参拝をめぐって過去にいくつかの国賠訴訟が提訴されているが、いずれも原告敗訴で終わっている」(『美しい国へ』六七頁)という記述について
 1 安倍首相は、首相の靖国神社参拝をめぐる裁判において、合憲という司法判断が下された判決が存在すると考えているのか。存在すると考えるのであれば、その判決を示されよ。
 2 岩手靖国訴訟・仙台高裁判決(一九九一・一・一〇)、九州靖国訴訟・福岡高裁判決(一九九二・二・二八)、関西靖国訴訟・大阪高裁判決(一九九二・七・三〇)など、いずれも合憲判断を下したものはなく、また小泉前首相の靖国参拝については、福岡地裁判決(二〇〇四・四・七)、大阪高裁判決(二〇〇五・九・三〇)がいずれも参拝が憲法の禁じる宗教的活動にあたると認める憲法判断を示したが、安倍首相はこれらの判決を知った上で同じ認識であるか。
九 安倍首相の自著の「国家のためにすすんで身を投じた人たちにたいし、尊崇の念をあらわしてきただろうか。たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか。わたしたちは、いま自由で平和な国に暮らしている。しかしこの自由や民主主義をわたしたちの手で守らなければならない。」(『美しい国へ』一〇八頁)「一国の指導者が、その国のために殉じた人びとにたいして、尊崇の念を評するのは、どこの国でもおこなう行為である。また、その国の伝統や文化にのっとった祈り方があるのも、ごく自然なことである。」(『美しい国へ』六八頁)という記述について
 1 安倍首相は、「国民の命を危険にさらしても守るべき価値」とは何と認識しているか。
 2 「国家のためにすすんで身を投じた人たち」とは具体的に誰を指すと安倍首相は考えるのか。具体的に示されたい。
 3 A級戦犯は「国家のためにすすんで身を投じた人たち」に含まれるのか。
 4 空襲で死亡した人たちは「国家のためにすすんで身を投じた人たち」に含まれるのか。
 5 「その国のために殉じた人びと」とは具体的に誰を指すのか。具体的に示されたい。
 6 A級戦犯は「その国のために殉じた人びと」に含まれるのか。
 7 空襲で死亡した人たちは「その国のために殉じた人びと」に含まれるのか。
 8 「その国の伝統や文化にのっとった祈り方」とは、日本においては具体的にどのような祈り方であると安倍首相は考えるか。具体的に示されたい。
一〇 小泉政権では、「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」を設立し、何人もわだかまりなく戦没者などに追悼の誠を捧げ平和を祈念することのできる記念碑など国の施設の在り方について、国の施設の必要性、種類、名称、設置場所などにつき幅広く議論を重ねてきた。懇談会はその報告書で「従来戦争や宗教に係わりのあった場所でないことが望ましい」などの意見を出しており、小泉前首相は「懇談会の意見を踏まえ政府としての今後の対応を検討する」という答弁を国会で繰り返している。
 懇談会設置当時、官房副長官として小泉政権の内閣運営の任に当たっていた安倍首相は、国立追悼施設の設立を引き続き検討するのか。
一一 二〇〇六年二月八日衆議院予算委員会における「アジアの人たちも含めて、戦闘員、非戦闘員を問わず死を悼むという追悼施設をつくるべきではないか」という辻元清美の質問に対する小泉前首相の「今後、それは検討していい課題だ」という答弁について
 1 安倍首相はこうした小泉前首相の方針を引き継ぎ、検討するのか。見解を示されたい。
 2 検討するのであれば、安倍首相はどのような機関で行うと考えるか。具体的に示されたい。

 右質問する。



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