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平成十八年十月五日提出
質問第五二号

島根原子力発電所に係る「耐震設計審査指針」に基づく活断層の評価に関する質問主意書

提出者  日森文尋




島根原子力発電所に係る「耐震設計審査指針」に基づく活断層の評価に関する質問主意書


 原子力安全委員会は、原子力発電所に係る耐震設計審査指針の改定案を最終決定した。この改定に対しては、多くの国民、そして活断層研究者からも様々な意見が寄せられ、改定に対する国民の期待が大きかったことが伺える。
 しかし、このような期待に反し、活断層の評価について、今日の活断層研究の成果を十分に反映せず、不十分なものとなっている。
 島根原子力発電所の活断層評価については、その時々の最新の知見を反映した「耐震審査」に合致しなければならないのに実際には最新の知見を反映することなく活断層評価を行ったことが問題である。
 従って、次の事項について質問する。

一 中国電力は、島根原発二号機増設に当たり活断層調査(文献調査・空中写真判読・現地調査)を実施したとして、『敷地周辺には、リニアメント付近には明瞭な連続性のある断層変異地形は認められず、リニアメントはいずれも、岩質変化、熱水変質部等を反映した差別浸食により形成されたものであると認められたこと、これらはいずれもその規模が小さいことから、仮に活動しても、敷地に及ぼす影響は小さく、仮定された地震のそれを下回ることが明らかであることから、これらは、いずれも設計上考慮する必要がないとすることは、支障ないものと判断する』とした。そして、通商産業省(当時)は、一九八二年十一月この中国電力の評価を科学的に検証することなく追認した。
 次いで、中国電力は、島根原発三号機増設にかかわり、一九九八年に改めて活断層調査(文献調査・空中写真判読・地表地質踏査・リニアメント周辺での物理探査・ボーリング調査・佐陀本郷および南講武でのトレンチ調査)を行い、『南講武から福原区間の断層は、考慮すべき活断層であるとし、長さは余裕を見て、西端は尾坂まで、東端は福原町までの八キロメートルと判断した』とした。
 そして、通商産業省(当時)は、一九九八年八月に『文献調査、昨日のヘリコプターによる上空からの調査、空中写真判読及び現地調査の結果によれば、七田断層は耐震設計上考慮すべき活断層であるが、耐震設計上考慮すべき活断層の長さは、東端及び西端とも余裕を見て判断し、最大八キロメートルと判断される』と公表し、この中国電力の調査結果より踏み込んで、八キロメートルと主張している。
 1 この「七田断層」については、衣笠東京工業大学教授が、地質研究所研究員時代に発表された「今市地域の地質」(一九九一年)において、『ただし北東隣接境港地域の南講武付近を通るリニアメントには、長さ約二キロメートルにわたり支谷の系統的な右屈曲が認められ、明らかに活断層と断定できる。鹿野・吉田(一九八五)の中でその調査を実施した衣笠はこれを七田断層と命名している』と記載されており、前記宍道断層の一部(二キロメートル)を活断層と認定し、「七田断層」と名づけた衣笠東京工業大学教授が、この通商産業省(当時)の決定に原子力発電技術顧問として参加し、この決定に主導的役割を果たしている。このような経過は、ダブルチェックの趣旨から逸脱していると思うが如何か。
 2 さらに、中国電力は、二〇〇三年に実施された「三号機の安全審査に係わる追加調査」においても福原以東は、『@リニアメントの成因は断層沿いの浸食や岩石の硬軟の差 Aリニアメントに対応する断層は存在するが固結している Bリニアメントに対応する断層は認められない』として、福原以東の宍道断層は耐震設計上考慮すべき活断層ではないとの結論を発表している。国もこの追加調査を踏まえて、二〇〇五年四月に三度中国電力の追加調査を承認したのである。
 これらの点を踏まえた山本喜代宏衆議院議員(当時)による二〇〇五年七月十九日付け質問主意書に対して、小泉純一郎内閣総理大臣(当時)は、「経済産業省は、島根原発三号原子炉増設に係る耐震設計審査に当たっては、最新の知見の一つとしてご指摘の調査研究も踏まえて検討を行ったところであるが、当該調査研究においては、過去数十万年間におおむね千年から数万年の間隔で繰り返し活動し、その痕跡が地形に現れ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層を活断層として扱っていると思われ、空中写真に基づく判読の結果から、宍道断層を十八キロメートルの長さの活断層と評価しているのに対し、本件耐震設計審査においては、耐震設計審査指針に基づき、五万年前以降活動した活断層を考慮することとし、空中写真に基づく判読のみならず、地表地質調査、トレンチ調査、ボーリング調査等による詳細な地質調査の結果も踏まえ、耐震設計上考慮すべき宍道断層の長さを約十キロメートルと評価したものである」旨答弁を行っている。
 この答弁は、事実関係においても誤っている。中田氏らは、二〇〇二年六月「鹿島断層の変位地形−一括活動型活断層のモデルとして(活断層研究二一巻)」において、二万五千年前以降の活動の可能性があると指摘し、長さ十八キロメートルの一括型活断層であるとしている。答弁は、同年に発表された「都市圏活断層図」の解説を引用していると思われるが、これは中田氏らの研究を正当に評価したものではない。如何か。
 3 そして今回の本年六月に公表された中田高広島工業大学教授を中心とするグループの研究によってこの答弁は完全に否定されたと言える。中田高広島工業大学教授らは、福原以東の松江市上本庄町川部地区でのトレンチ調査を実施し、奈良時代の考古遺物を含む地層を切る活断層を確認したものであり、中国電力及び国が存在を否定してきた福原以東の活断層を確認し、中田高広島工業大学教授の一連の研究の正しさが実証されたのである。
 中田高広島工業大学教授らが、福原以東の松江市上本庄町川部地区でのトレンチ調査を実施し、中国電力及び国が存在を否定してきた福原以東の原発の耐震性評価に該当する活断層を確認し、国及び中国電力が宍道断層の長さを十キロメートルとしたことは間違っていたと思うが如何か。
 4 中国電力は、いずれの段階においても、最新の知見で活断層調査を行ったと主張し、国の安全審査を担当する機関もその結果を追認してきたが、三号機建設時、追加調査実施時のそれぞれの最新知見について具体的に明らかにされるとともに、どこの検討機関で検討されたか、また、検討された資料及び検討に参加した学者・研究者の氏名を明らかにされたい。
 5 二〇〇二年六月に中田高広島大学教授(当時)らは、前述の様に「宍道断層他を鹿島断層と呼び、河谷・尾根の系統的右横ずれ屈曲や閉塞丘などの断層変異地形が多数あること、両端に分岐形態が認められること、二万五千年前以降の活動の可能性があることを指摘し、長さ十八キロメートルの一括活動型活断層である」(活断層研究二一巻)と発表して、今日の福原以東の活断層研究の端緒を明らかにしたが、先の質問主意書の答弁では、「最新の知見の一つとしてご指摘の調査研究も踏まえて検討を行ったところである」とされているが、この中田氏らの研究を最新の知見として科学的に検討されていたならば、その時点で松江市上本庄町川部地区の活断層は発見されていたと思われる。先の質問主意書の答弁では、具体的にどのような研究及び文献をどのように検討したか明確になっていないので改めて明らかにされたい。

 右質問する。



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