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平成十八年十一月二十一日提出
質問第一七〇号

水俣病のすべての被害者の早期救済等に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




水俣病のすべての被害者の早期救済等に関する質問主意書


 水俣病の公式確認からすでに五〇年が経過しているにもかかわらず、今なお水俣病被害の実態の全貌さえも明らかになっていない。このような事態は極めて異常なことである。これは偏に、この五〇年以上もの間、患者とその家族らが深い苦しみにもがきながら血の出るような闘いを続ける中にあって、有効な対策をとらずにきた行政の怠慢の結果といわざるを得ない。
 二〇〇四年十月の水俣病関西訴訟の最高裁判決は、今日まで第三者的立場をとり続けてきた国が加害者であることを明確にしたものであり、至極、妥当な内容というべきである。司法における最終判断がはっきりと示された以上、政府は、これを厳粛に受け止め、従来の硬直的な姿勢を即座に転換すべきであったにもかかわらず、今なお頑なにそれを変えようとしない姿勢は、被害者の立場からすれば、我慢の限度をはるかに超えた極めて冷酷なものといわざるを得ない。
 なお、最高裁判決以降、現在に到るまで、熊本、鹿児島両県における新たな水俣病認定申請者は四五〇〇人以上にも上っており、認定審査の一刻も早い再開が望まれている状況にある。
 二〇〇五年四月、環境大臣の私的懇談会として設けられた「水俣病問題に係る懇談会」(以下「懇談会」という。)は、一三回にわたり議論を重ね、去る九月十九日付で提言書をまとめ上げた。この懇談会を設置した目的は、「水俣病問題の社会的・歴史的意味を包括的に検証し、その教訓をもとに、今後取り組むべき行政や関係方面の課題を提言する」ということであった。
 そこで、水俣病のすべての被害者の救済を迅速に行う上で、懇談会で提言された事項を誠実に、かつ、着実に実施することが政府に課された責務であるとの観点から、以下質問する。

一 懇談会の検討事項について
 懇談会の設置目的は、前段でも指摘したとおり、「水俣病問題の社会的・歴史的意味を包括的に検証し、その教訓をもとに、今後取り組むべき行政や関係方面の課題を提言する」ことであったにもかかわらず、政府側は懇談会に対し、認定基準の見直しやそのための検討会の設置については懇談会の議論としては求めないとの見解を示したという事実が、提言書に明記されている。懇談会の議論に政府があらかじめそのような制約を設けたことは由々しき問題であり、言語道断である。
 懇談会において認定基準の見直しのための議論を行うことは、この懇談会の設置目的に正に合致したものであり、多くの委員からその見直しに関する意見が出ていたにもかかわらず、この点を議論の場から排除させようとした政府側の態度は到底理解できない極めて不当なものであると考える。
 そこで、現在においても、その時の政府の対応は適切だったと考えているのか。もしそのように考えているのであれば、認定基準の見直しについては議論は求めないとしたことについて、水俣病被害者はもとより、国民誰もが納得できる合理的な理由を明確に示されたい。
二 懇談会の提言等について
 1 懇談会は、「すべての水俣病被害者に対して公正・公平な対応を目指し、いまだ救済・補償の対象になっていなかった新たな認定申請者や潜在する被害者に対する新たな救済・補償の恒久的な枠組みを早急に打ち出すこと」との提言をしている。
 政府は、この提言を踏まえて、新たにどのような救済・補償の恒久的な枠組みを創設する方針なのか、具体的な時期も含めて明らかにされたい。
 2 また、懇談会は、「熊本・鹿児島両県の認定審査会が長期にわたって機能を停止しているのは異常事態であり、国は両県と連携し待たされている被害者の身になって、責任をもって早急に認定審査再開の方策を立てるべきである」との提言をしている。
 政府は、認定審査再開に向けて努力するという趣旨の答弁を繰り返しているが、今に到るもそのメドすら全くたっていない。そこでまず、このような現状に対する国としての責任をどのように認識しているのか、明らかにされたい。その上で、政府はこれまでどのような方策を講じてきたのか、そして、なぜ認定審査が再開できないままなのか、また、今後どのような方策を考えているのか、その方策の実施時期も含めて明らかにされたい。
 3 提言書には、「水俣病の被害の全貌を明らかにするための総合的な調査研究を推進すること」とあるが、政府は、総合的な調査研究を実施する意向はあるのか、あるとすれば、具体的にどのような内容の調査をいつから実施するつもりか、その推進体制も含めて明らかにされたい。
 4 提言書には、「水俣地域の人々の「もやい直し」の活動を積極的に支援すること」とあるが、政府はどのような支援策を考えているのか、同地域についての現状認識とともに明らかにされたい。
 5 さらに、同提言書は、「国は関係地方自治体等と連携して、水俣地域を「福祉先進モデル地域」(仮称)に指定し、水俣病被害者が高齢化しても安心して暮らすことのできるような総合的な福祉対策を積極的に推進すること。その中で胎児性水俣病患者の福祉対策には格別の配慮が必要である」とし、「新潟水俣病の被害者に対しても、同質の福祉対策を取ること」としているが、政府は、そもそも水俣地域を福祉先進モデル地域に指定し、高齢被害者が真に安心して生活できるような総合的な福祉対策を行っていくことを考えているのか。もし考えているのであれば、その具体的開始時期及び対策内容を明らかにされたい。
 また、胎児性水俣病患者の福祉対策についての格別の配慮を考えているのかも明らかにされたい。さらには、新潟水俣病の被害者に対しても同質の福祉対策を実施する考えはあるのか明らかにされたい。
 なお、これらいずれかの点について、今後、特段の対策を講ずる必要はないと考えているものがあれば、そう考える理由を明確にされたい。
 6 提言書には、「これら「福祉先進モデル地域」(仮称)と「環境モデル都市」(仮称)の取り組みを総合的で持続性のあるものとするには、二つを一本化して「環境・福祉先進モデル地域」とし、立法化の措置も視野に入れた制度化が必要であろう」とあるが、政府の現在の考え方及び立法措置等の制度化の実現に向けた今後の方針を明らかにされたい。
 7 懇談会の議論の中で、各委員からは、水俣病の一九七七年の判断基準の見直しについて、多くの意見が出されていたと思うが、それらの意見の主なものの内容を明らかにするとともに、それぞれの意見に対する政府としての考え方を明らかにされたい。

 右質問する。



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