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平成十八年十二月十三日提出
質問第二四九号

障害者施策ならびに障害者自立支援法に関する質問主意書

提出者  三日月大造




障害者施策ならびに障害者自立支援法に関する質問主意書


 障害者自立支援法は本年四月の部分施行を経て去る十月一日に本格施行されている。しかし、障害者福祉施策の大きな転換となるにもかかわらず、昨年十月末の同法成立からわずか一年足らずのスタートは、例えば同様に大きな政策転換となった介護保険法の成立から施行までの準備期間と比較するまでもなく、拙速であったことは否めない。また、利用料の定率一割負担導入やサービス提供事業者に対する報酬の日払い化に代表される軽減措置がなお不十分であるとの指摘が放置されたままの見切り発車にあたっては、法案成立を推進してきた者を含め、障害者自立支援法に基づく制度が真に「障害者の自立」に寄与するものであるかの疑念が絶えない。
 このような状況に鑑み、以下質問する。

一 法の施行以降、利用者負担の更なる軽減や事業者に対する激変緩和措置、また新たなサービスへの移行等のための緊急的な経過措置を始めとする早急な是正措置が求められてきている。これに対し去る十二月六日の衆議院厚生労働委員会において、柳澤厚生労働大臣が「今年度補正予算や来年度予算において必要な対応を検討してまいりたい」等、運用上の改善策を講じる趣旨の答弁をされたことは一定の評価に値する。しかし、本格施行から日を置かず見直しが必要となる事態は、そもそもの政府の現状認識ならびに制度設計に齟齬があったとの指摘を免れない。今日の状況について、政府としてはどのような見解を有するのか。また、運用改善のために検討される事項の具体的内容および検討に至る経緯についてその根拠を明らかにされたい。
二 障害者の所得保障については、障害者自立支援法の附則第三条第三項で「就労の支援を含めた障害者等の所得の確保に係る施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と規定されている。また、政府においては二〇〇七年度の予算要求における新規事業である工賃倍増計画支援事業に象徴されるように、まずは地域生活に必要な工賃水準が確保されることや、さらに一般就労への移行促進を図ることが重要課題と認識されていると理解する。一方で、障害者の所得保障を考える上では、今回の利用者負担導入如何にかかわらず、障害当事者の能力や適性に左右されることなく、本人の自立の観点から検討を行うことこそが必要ではないのか。然るに現在の政府の認識においては、働くことがなかなか難しい、また障害が重度であるが故に質量ともに多様なサービスを必要とする障害者に対する所得の確保についての検討が不十分であると考えるが、見解は如何に。検討されているのであれば、具体的内容について示されたい。
三 同法附則第三条第一項には施行後三年を目処とした検討項目が明記されている。しかし、法改正を待たずに運用上の改善が必要となる今日の施行状況を見れば、今後もきめ細かな是正措置が求められることが予測される。このような状況においては、施行状況や運用上の改善等について厚生労働大臣に対しての逐次提言、ならびに次期法改正につながる検証を行うべく、利用者である障害当事者が参画する然るべき審議の場を早急に設定する必要があると考える。現に自立支援医療については、「障害に係る公費負担医療制度の臨床実態に関し実証的研究に基づき検討し、その結果を改正後の自立支援医療制度の基準づくりに反映させるための検討会」として自立支援医療制度運用調査検討会が開催されているところである。政府の見解およびその根拠について伺う。
四 社会福祉基礎構造改革以降、障害者自立支援法制定まで、一貫して「施設・病院から地域へ」の理念が掲げられてきている。障害者の地域生活を支える観点から、まず地域における住まいの場としてグループホームやケアホームの充実、ならびに住まいの場と分離された日中活動サービス(自立訓練事業・就労移行支援事業等)の充実を図るため、市町村で策定する障害福祉計画を通じたこれらの事業の整備を進めることが肝要となる。政府は、これらの事業の充実・促進を図るためにどのような措置を講じようと考えているのか。
五 受け入れ条件が整えば退院可能な精神科病院の入院患者を対象とした「自立訓練(生活訓練)または就労移行支援を利用している間の夜間の居住の提供」について算定される「精神障害者退院支援施設加算」は、「地域生活への移行の第一歩」と説明されてはいるものの、日中活動と生活の場の分離という基本理念から逸脱していることは言うに及ばず、逆に地域生活への移行を遅らせる懸念しか見出せない。本年十月の実施は見送られているが、二〇〇七年四月以降における施行も見直し、その予算をグループホームやケアホームの整備、居住サポート事業等に当ててこそ、障害者の地域生活の促進が図られると考えるが、政府としての見解は如何に。
六 障害者自立支援法においては、法第八十七条第一項に規定される障害福祉サービスの基盤整備に関する基本指針に基づき、市町村および都道府県において第一期となる障害福祉計画が現在作成されているところである。同法においてはまた、障害福祉計画と障害者基本法に基づく計画等との関係が規定されている。一方、障害者基本法の規定による障害者基本計画に基づく障害者プラン「重点施策実施五か年計画」は、同計画の前期五年間(二〇〇三〜二〇〇七年度)における重点実施施策およびその達成目標ならびに推進方針を定めているものだと理解している。然らば、後期五年間(二〇〇八〜二〇一二年度)の障害者プランについては、二〇〇七年度中には策定されなくてはならない。障害者自立支援法の施行にともない、障害者プランの前期五年間の数値達成目標をどのように評価するのか、あわせて後期障害者プラン策定に向けての具体的日程、その検討方法および見直しの方向性について政府の見解を伺う。
七 国連においては、二〇〇二年から検討が重ねられてきた「障害者の権利条約」がいよいよ今週にも国連総会において採択される見通しとなっている。我が国においては、二〇〇四年の改正障害者基本法審査の折に、参議院内閣委員会における附帯決議として「国連における障害者権利条約の策定等の動向を踏まえ、制度整備の必要性について検討を行うこと」が明記されている。一方で、改正障害者基本法第三条第三項では「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」等の規定、また障害者自立支援法第二条第一項第三号等では「障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う」等が規定されてはいるものの、その実効性・拘束力の面では、障害者の差別および虐待の禁止、ならびに障害者の権利擁護を目的とする新たな法制度が必要であると考える。国連の障害者権利条約の批准ならびに、批准に伴う新たな法制度および既存の国内法の整備の必要性について、政府の意向を示されたい。

 右質問する。



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