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平成十九年六月十三日提出
質問第三八〇号

いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書

提出者  郡 和子




いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書


 今年五月二十三日、池田康夫慶応大学医学部長らの研究グループが厚生労働省の公募要項に違反し、同省科学研究費補助金と文部科学省所管の財団法人「日本ワックスマン財団」から二年間合計四億三、二二五万円の助成金を重複して受けていたことから、厚生労働省は同補助金の今年度支給を取りやめたと、朝日新聞で報じられた。
 しかし本件は、研究費補助金の二重受給だけではなく、既承認薬剤の未承認の効能についての臨床試験を保険診療と併用している点において「いわゆる混合診療」に該当すると推定される点がより重大な問題であると考える。
 したがって、厚生労働省は、これらの事実関係を早急に調査し、その結果を明らかにすることによって臨床研究に係る現行制度の改善を図り、臨床研究の一層の推進を期すべきである。
 以上の観点から、次の事項について質問する。

一 臨床研究に係る「いわゆる混合診療」について
 1 公表されている計画概略文書によれば、本臨床試験は、「高血圧症、高脂血症または糖尿病を有する高齢者において、アスピリン一次予防投与によるリスク/ベネフィットの評価を行う」ことを目的としている。アスピリンの一次予防投与についての効能は厚生労働大臣の承認を取得しておらず、そもそも予防投与は保険診療では行えないと考えるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
 2 計画概略文書では、「アスピリン腸溶錠(バイアスピリン錠一〇〇mg)はバイエル薬品株式会社より無償提供するので患者負担にはせず、保険請求も行わない。」とある。一方、「高血圧症、高脂血症、糖尿病は、原則として各学会の治療ガイドラインに従った管理を行う。」とある。さらに、「調査項目」として「イベント(脳血管障害、心事故等)」と記載され、これが医学的には主要な評価項目とみなされる。
  アスピリン一次予防投与も、治療ガイドラインに従った高血圧症等の投与も、このイベントの発生抑制を目的とした「一連の治療行為」であり、アスピリンの保険請求を行わないだけではなく、診察料及び他の「一連の治療行為」において使用される薬剤費についても保険請求は行えないはずであるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
 3 仮に、前述のような「一連の治療行為」において、アスピリン一次予防投与における薬剤費を製薬会社負担として、診察料及び高血圧症等の治療のための薬剤費を保険請求していたと仮定すれば、保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条への違反行為といえるかどうか、法令解釈につき厚生労働省の見解を明らかにされたい。
二 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条違反と疑われる行為の調査について
 1 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条の違反と疑われる行為が公然と行われていることを厚生労働省が知った場合には、実際に違反しているか否かを、診療録、診療報酬請求書、診療報酬明細書等の資料に基づいて調査すべきと考えるが、どうか。
 2 そのような調査を開始するにあたって必要な外部からの調査請求手続きその他の厚生労働省内の手続きが定められているか。定められているとすれば、明示されたい。
  また、定められていないとすれば、いかなる手続き、ないし状況で調査を開始しうるのか、考え方を明らかにされたい。
三 未承認の療法に係る治療費請求事案の調査について
 「いわゆる混合診療」に係る調査については、神奈川県立がんセンターで未承認の活性化自己リンパ球移入療法を受けていた患者の遺族が不当な治療費支払いを求められたことを訴えていたが、半年間、野放しにされていた事例がある。この件について、昨年五月十日の厚生労働委員会において、水田政府参考人は「現在、事実関係を調査している」と述べたが、その後調査結果は公表されていない。
 現時点で得られている事実関係の調査結果を説明されたい。
四 「いわゆる混合診療」についての問い合わせに関する情報の漏洩について
 前記の池田教授らによる臨床試験が「いわゆる混合診療」に該当する可能性について、五月二十四日、私の事務所を通じて保険局医療課久米氏に問い合わせた。その直後から、元衆議院議員や国立大学医学部教授その他複数の人物から、この件を国会での質問によって追及しないよう求める趣旨の要望が伝えられた。
 池田教授らの臨床試験が「いわゆる混合診療」に該当する可能性について私が懸念を抱いていることは、保険局医療課久米氏以外には一切伝えていない。したがって、保険局医療課を発信源とする以外にこの件に係る情報の厚生労働省外部への伝達は考えられない。
 保険局医療課から厚生労働省の内部あるいは外部の者に情報を伝達したか。伝達したとすれば、その経緯につき、明らかにされたい。
五 既承認薬の未承認の効能等への使用と薬事法第五十五条の適用について
 1 池田教授らによる臨床試験は、計画概略文書において明らかな通り、未承認の効能に使用することを目的とし、バイエル薬品株式会社より「バイアスピリン錠」が医療機関に無償提供されて実施されている。
  このような行為は薬事法第五十五条に抵触しないか。また、同規定は、既承認薬剤の、未承認の効能等への使用を前提とした販売・授与についても適用されるのか、法令解釈を明らかにされたい。
 2 前項1において薬事法第五十五条が適用されるとすれば、製品の包装や添付文書等に未承認の効能を記載した場合に限らず、製薬会社が、医療機関において未承認の効能に利用することを明記した研究計画書があることを承知の上で、既承認薬を提供した場合にも、適用されるか。
  また、製薬会社と医療機関との間において未承認の効能に使用されることを前提として製品を授与することを定めた契約が存在する場合には、いかがか。
六 薬事法第五十五条違反と疑われる行為の調査について
 池田教授らによる臨床試験が薬事法第五十五条に抵触すると疑われる場合に、厚生労働省は実際にこれに抵触するか否かを調査する責務があると考える。
 質問項目の「二」と同様に、調査を開始するにあたって必要な手続き上の定め又は考え方を明らかにされたい。
七 「治験のあり方に関する検討会」委員としての適性について
 昨年五月十日の厚生労働委員会において、当時の川崎厚生労働大臣は、「不正という事実があって、その不正にかかわった人が厚生労働省の何らかの委員をしているということになれば、当然やめてもらいます。」と述べている。
 池田教授は、研究費の二重受給という不正行為を行ったことが明らかとなっている。さらに、池田教授らによる臨床試験が、保健医療機関及び保険医療養担当規則第十九条もしくは薬事法第五十五条のいずれか、又はこの双方に抵触するとした場合に、本来は新たな効能効果取得を目的とする「治験」として実施すべき研究を、治験ではない臨床試験として、いわば脱法的に行っていることになる。にもかかわらず、池田教授は、「治験のあり方に関する検討会」の座長をつとめ、治験に関する制度改善の議論をまとめる責任を担っている。
 少なくとも研究費の二重受給を理由に、「治験のあり方に関する検討会」委員を解任すべきではないか。

 右質問する。



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