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平成十九年六月十四日提出
質問第三八六号

河川整備基本方針及び河川整備計画の策定に関する質問主意書

提出者  保坂展人




河川整備基本方針及び河川整備計画の策定に関する質問主意書


 国土交通省は、河川整備基本方針(以下「基本方針」という。)及び河川整備計画(以下「整備計画」という。)の策定を進めている。
 しかし、反対意見を排除したり、意見を聞きおくだけにしたりする進め方には、批判も多い。また、そうした進め方は、住民参加と環境保全を目指した河川法の趣旨に反するものと思われる。
 よって、以上の観点から、次の事項について質問する。質問の趣旨を踏まえて、丁寧に答弁されたい。また、同様の文言が並ぶ場合でも、項目ごとに平易な文章で答弁されたい。

一 基本方針の達成可能性について
 1 一級水系では、すでに五九水系において基本方針が策定されてきた。だが、その多くは基本高水流量がきわめて過大な値に設定されているため、現実的には達成することが不可能な基本方針になっている。
  たとえば、多摩川水系基本方針では石原地点の基本高水流量が毎秒八七〇〇立方メートルとなっている。だが、多摩川水系整備計画ではこの値の達成を困難として、目標流量をその半分に近い四五〇〇立方メートルとしている。将来、本整備計画を順次改定していくとしても、今後二〇〜三〇年間に達成する目標が四五〇〇立方メートルであるから、八七〇〇立方メートルまで辿り着くためには、非常に長期的な期間を要するのは必至である。
  一方、基本方針は、実現可能性を考慮の上、その内容を定めることとなっていることから、目標の達成に要する期間と費用が見積もられていないことはあり得ない。
  政府は、多摩川の基本高水流量毎秒八七〇〇立方メートルを達成するのに必要な期間を何年と考えているのか。また、それを達成するための費用総額について、どの程度であると見積もっているのか。それぞれ具体的な期間と費用総額を示されたい。
 2 多摩川水系基本方針では、計画高水流量が六五〇〇立方メートル、ダム等による洪水調節量を二二〇〇立方メートルとしている。だが、多摩川の上流には、実際のところダム建設の適地がないため、整備計画では洪水調節量がゼロに設定されている。
  政府は、多摩川水系基本方針の洪水調節量を達成するために多摩川上流におけるダム建設をどのように進めようとしているのか。その見通しについて、具体的に示されたい。また、ダム以外による対応を考えているのであれば、その手法を明らかにされたい。
二 治水対策の選択範囲を実質的に限定した基本方針を策定したことについて
 1 本年五月十一日に策定された球磨川水系基本方針では、人吉地点の基本高水流量と計画高水流量について、従来の工事実施基本計画の値をそのまま踏襲し、それぞれ七〇〇〇立方メートルと四〇〇〇立方メートルとされた。
  これら基本高水流量及び計画高水流量の値は、川辺川ダムの調節量二六〇〇立方メートルを前提としたものであり、計画高水流量と現状の流下能力がほぼ等しいため、治水対策の選択は川辺川ダムに限定され、流下能力増強の改修もできない内容になっている。
  川辺川ダム建設の当否は、整備計画の策定段階における流域住民の意思に委ねるべきであり、基本方針の段階で治水対策を実際のところ川辺川ダムに限定することは、河川法の趣旨に反するのではないか。政府の見解を示されたい。
 2 球磨川水系基本方針の基本高水流量(人吉地点)と計画高水流量(同地点)を前提とした場合、川辺川ダムの建設以外にどのような治水対策の手段が考えられるのか。選択肢を具体的に示されたい。
 3 吉野川水系基本方針には「治水上支障となる既設固定堰については、必要な対策を行い、計画規模の洪水を安全に流下させる」との文言が挿入され、第十堰の撤去を示唆している。
  第十堰については、徳島県知事及び徳島市長も撤去すべきでないと表明しており、民意に反する決定を一方的に行うことは、住民意見の反映という河川法の理念に反するのではないか。政府の見解を示されたい。
 4 吉野川水系基本方針に「治水上支障となる既設固定堰については、必要な対策を行い、計画規模の洪水を安全に流下させる」という文言を挿入した根拠及び意図を詳しく説明されたい。
三 森林保水力の向上を評価し、科学的に妥当な基本高水流量を新たに設定することについて
 球磨川水系に係る河川整備基本方針検討小委員会において、近藤徹小委員長は、森林保水力の向上を評価して科学的に妥当な基本高水流量を新たに設定することを求めた住民団体の意見書に対して、「まだ一つの学説であって、定説になっていないものを基本方針に取り入れることができない」と述べ、森林保水力の向上を評価しなかったと聞く。
 森林保水力の向上が評価されれば、治水対策費用の大幅な軽減を期待できる。よって、政府は、森林保水力の向上を評価する学説を科学的に検証するべきではないか。政府の見解を示されたい。また、学説を科学的に検証しないとするならば、その合理的な理由を示されたい。
四 社会資本整備審議会河川分科会(以下「河川分科会」という。)及び河川整備基本方針検討小委員会(以下「基本方針検討小委員会」という。)で住民団体からの意見書を真摯に議論することについて
 河川分科会及び球磨川水系に係る基本方針検討小委員会において、住民団体は毎回、具体的な根拠を示した詳細な意見書を提出していた。だが、近藤徹小委員長が、自説に都合の良い部分をつまみ食いすることはあっても、両会において意見書について真摯に議論することはなかったと聞く。
 国土交通大臣は、河川法の趣旨を踏まえて、河川分科会及び同小委員会に対し住民団体の意見を真摯に議論するよう申し入れるべきであったが、そうしなかったと聞く。なぜ、河川分科会及び同小委員会に対し、住民団体の意見書を真摯に受け止めるよう申し入れなかったのか、その理由を明らかにされたい。
五 河川分科会及び基本方針検討小委員会の議論を開かれた方式に改善することについて
 1 河川分科会及び基本方針検討小委員会では、委員と事務局の間でのみ議論がなされ、意見書を提出した住民団体及び傍聴者の発言は認めていない。
  一方、環境省に設置されている「生物多様性国家戦略の見直しに関する懇談会」では、意見書を提出した住民団体及び傍聴者の発言が認められている。
  河川法の趣旨を踏まえるならば、河川分科会及び基本方針検討小委員会においても、同懇談会と同様に、意見書を提出した住民団体及び傍聴者の発言を認めるべきではないか。政府の見解を示されたい。また、認めないとするならば、その理由を合理的に説明されたい。
 2 基本方針は、当該水系流域住民の生活や地域社会のあり方、自然環境に関わる事項を規定するため、住民の傍聴や意見書提出、陳述など、広く流域住民に開かれた形で開催されるのが望ましい。だが、東京から遠方の流域であれば、住民が傍聴することは困難である。
  したがって、河川分科会及び基本方針検討小委員会は、当該流域の存する県庁所在地あるいは流域近辺の交通至便な地において開催されるべきであると考えるが、どうか。また、どのような条件が整えば、当該流域で開催することができるのか、併せて答弁されたい。
六 閣議決定「審議会等の運営に関する指針」について
 「審議会等の運営に関する指針」(平成十一年四月二十七日閣議決定)では、「利害関係者の意見聴取等」として、次のように定めている。
 「@審議会等は、その調査審議に当たり、特に必要があると認めるときは、当該調査審議事項と密接に関連する利益を有する個人又は団体から意見を聴取する機会を設けるよう努めるものとする。この場合において、他の関係者の利益との公正な均衡の保持に留意するものとする。なお、公聴会の開催等、法令に別段の定めのあるときは、それによるものとする。
 A審議会等に対して、@の意見聴取に係る申出又は審議会等に関する苦情があったときは、各府省は、庶務担当当局としてこれらの整理等をした上で、その結果を適時に審議会等に報告するよう努めるものとする。」
 1 本閣議決定は、河川分科会及び基本方針検討小委員会に適用されるのか。適用されないとすれば、その根拠法令を示されたい。
 2 国土交通大臣は、同分科会及び同小委員会の開催時期発表について、流域住民が意見書を作成するための十分な時間的余裕を見込んでいるのか。
 3 同分科会及び同小委員会について、これまで「意見聴取に係る申出又は審議会等に関する苦情」は寄せられているのか。寄せられているとすれば、その件数を示されたい。また、寄せられた申出又は苦情について、どのように処理しているのか。
七 基本方針検討小委員会の委員の選定条件及び手続について
 国土交通省は、基本方針検討小委員会について「高度に専門的な観点から治水政策の基本的な方法を議論するところ」と説明している。だが、同小委員会の議事録を読む限り、「高度に専門的な観点」からの意見は極めて少数であり、むしろ素人としての意見や印象論的な意見が多数を占めるように思われる。
 同小委員会の委員は、どのような条件及び手続を経て選定されたのか。それぞれ具体的に示されたい。
八 閣議決定「審議会等の透明化、見直し等について」について
 1 「審議会等の透明化、見直し等について」(平成七年九月二十九日閣議決定)は、河川分科会及び基本方針検討小委員会に適用されるのか。適用されないとすれば、その根拠法令を示されたい。
 2 基本方針検討小委員会の委員構成を見ると、小委員長をはじめとして、「省庁出身者等」が約三分の一を占めている。一方、本閣議決定は、「審議会等」から「省庁出身者等」を極力排除することが目的であったと聞く。よって、同小委員会において、「省庁出身者等」が約三分の一も占めている状態は、閣議決定の趣旨に反するのではないか。内閣官房長官及び内閣法制局長官の見解を示されたい。もし閣議決定の趣旨に反しないとするならば、その理由を合理的に説明されたい。
 3 本閣議決定の第二項「審議会等の会長等の人選」によると、当該「省庁出身者等」を原則として委員に任命しないとある。また、やむを得ず「省庁出身者等」を一般の審議会の委員に任命する場合は、特別の事由のない限り「会長等に任命又は選任しない」と定めている。なお、「会長等」とあることから、小委員長も「等」に含まれると考えられる。
  よって、建設省河川局長、建設省技監を経て退官した近藤徹氏を基本方針検討小委員会の小委員長としていることは、明白な閣議決定違反であると考えられるが、どうか。内閣官房長官及び内閣法制局長官の見解を示されたい。もし閣議決定に反しないとするならば、その理由を合理的に説明されたい。
 4 「省庁出身者等」を「審議会等」の「会長等」や「委員」に任命することは、お手盛り行政を推進することにつながる恐れがあることから、極力避けるべきであると考えるが、どうか。行政改革担当大臣の見解を示されたい。
 5 「審議会等」の「会長等」や「委員」に任命されている「省庁出身者等」の数について、行政改革担当大臣は把握しているか。把握しているならば、「会長等」や「委員」に任命されている「省庁出身者等」の延べ人数を示されたい。なお、「審議会等」並びに「会長等」「委員」「省庁出身者等」とは、本閣議決定の定義と同じである。
九 整備計画の策定における国土交通省本省の権限について
 1 国土交通省本省は、一級水系の河川整備計画の策定について、どのような権限を有しているのか。法令・内部規定等の具体的根拠とともに示されたい。
 2 国土交通省本省は、河川整備計画の策定に際して、どのような関与をしているのか。具体的に示されたい。また、地方整備局に対してどのような指示をしているのか。その内容も併せて示されたい。
 3 吉野川水系、利根川水系、木曽川水系、天塩川水系を始め、最近の河川整備計画の策定作業においては住民をその議論から排除する方向、河川法改正前の状態に戻るような方向が顕著になっている。
  国土交通大臣は、河川法の趣旨に則って、住民の意見を十分に反映するために最大限の努力をするよう、地方整備局長に対し指示すべきではないか。指示をしないとすれば、合理的な理由を示されたい。
十 整備計画における住民意見の反映について
 1 河川法第十六条の二第三項及び第四項に関して、「河川の状況に詳しいもの」として流域住民を公募し、その公募委員を加えた流域委員会等(学識者会議、有識者会議等を含む)を設置するべきではないか。
 2 流域委員会等は、完全公開とし、傍聴者に発言の機会を与えるべきではないか。
 3 流域委員会等は、住民との意見交換会を持つべきではないか。
 4 河川法第十六条の二第三項及び第四項について、単に意見を聴きおくだけの公聴会ではなく、住民と河川管理者が議論を行うことができる双方向性の公聴会とするべきではないか。
 5 住民が意見書を作成する際、必要な資料を河川管理者が提供するべきではないか。
十一 吉野川水系について
 1 「住民意見の反映」という河川法の趣旨を尊重し、第十堰の可動堰化計画を完全に放棄し、第十堰保全を整備計画策定の出発点にするべきではないか。
 2 吉野川で行われている「流域委員会を設置せずに意見聴取をする」という整備計画の策定方法は、現在までの進行を見る限り、住民意見の反映が困難であると言わざるをえない。全面的に見直し、淀川方式を採用するべきではないか。
 3 整備計画の策定過程について、国土交通省が示した素案、修正案ともに、環境保全目標がなく、総合治水策や超過洪水対策も基本方針に記された一般論にとどまっている。NPOや徳島市が研究提言した森林整備による洪水防御策についても、まともに検討していない。これでは、気象変動や社会環境の激変が予測され、新たな安全の尺度を求める住民のニーズに応えられないと考えられる。
  NPOや徳島市の研究提言に対する考えを明らかにされたい。
 4 別途設置するとされる第十堰についての検討の場は、どのような方式を考えているか。運営方法、設置予定時期、検討のための調査項目、全体の調査スケジュール、調査の進捗状況について、それぞれ具体的に示されたい。
十二 国土交通省九州地方整備局による球磨川水系基本方針の現地説明会「くまがわ・明日の川づくり報告会」(以下「現地説明会」という。)について
 1 河川分科会及び球磨川水系に係る基本方針検討小委員会において、委員である潮谷義子熊本県知事は、球磨川水系基本方針案の取りまとめに対し、「県民に対して説明することができない」ため「了承しがたい」と述べ、「国が県民に対して説明責任を果たすこと」を求めた。よって、現地説明会は、同知事の意見に基づいて実施されていると思われるが、どうか。同知事の意見と現地説明会の関係を説明されたい。
 2 同整備局は、現地説明会の開催及び運営方法について、熊本県と相談していないと聞く。なぜか。その理由を合理的に説明されたい。また、開催及び運営方法について相談しているならば、いつ、どこで相談したのか。日時及び場所を具体的に示されたい。
 3 同整備局が現地説明会で配布している資料には、同知事が同小委員会において示した意見等を一切示していないと聞く。同知事が同小委員会において、多数派意見とは異なる意見を示したことは、報道によって多くの県民が知るところであり、現地説明会に参加した住民には、国土交通省への不信が広がっているとも聞く。なぜ、同整備局は、現地説明会において同知事による少数意見等についても紹介、説明しないのか。
 4 同整備局が現地説明会で配布している資料には、住民が同小委員会に提出した意見等を一切示していないと聞く。現地説明会に参加した住民には、住民の意見が無視されていることから、国土交通省への不信が広がっているとも聞く。なぜ、同整備局は、現地説明会において住民意見等についても紹介、説明しないのか。
 5 現地説明会において、住民の理解と関心を高めるためには、同分科会若しくは同小委員会に意見書を提出した住民の参加を求め、意見表明の機会を設けることが適当ではないかと考えるが、どうか。
 6 現地説明会において、同整備局は「球磨川に関するアンケート調査」を実施している。だが、このアンケート調査の項目を見ると、基本方針の説明とは全く関係がないと思われる。本アンケート調査の目的は何か。球磨川水系整備計画の策定に活用する意図があるのではないか。
 7 基本方針の説明を目的とする現地説明会の実施主体は、九州地方整備局である。だが、国土交通省の説明によると、基本方針に関した権限を有しているのは本省河川局であり、地方整備局は権限を有していない。同整備局が、現地説明会を開催・運営し、基本方針について説明・回答を行うのは、どのような権限によるものなのか。法令・内部規定等の具体的根拠を示されたい。
 8 国土交通省の説明によると、国土交通省本省と地方整備局の間では、明確な権限分担がなされている。だが、基本方針の説明を目的とする現地説明会に、国土交通省本省の職員は出席していないと聞く。基本方針について権限を有しない地方整備局の職員が、基本方針について説明し、住民の質問にその場で口頭回答することは、権限逸脱行為ではないのか。
 9 なぜ、現地説明会に国土交通省本省の職員は出席しないのか。
 10 基本方針を実質的に審議、決定したのは、同分科会及び同小委員会である。だが、分科会長若しくは小委員長、あるいはその代理に指定された委員は、現地説明会に出席していないと聞く。なぜ、分科会長若しくは小委員長、あるいはその代理に指定された委員は、現地説明会に出席しないのか。
十三 元建設省技監の近藤徹氏について
 省庁出身者等が、出身省庁や局の職員人事及び政策決定に非公式な影響力を及ぼすことは、厳に戒めるべきことである。
 基本方針検討小委員長を務める近藤徹氏は、既に退官して久しいにも拘らず、現在においても国土交通省河川局の職員人事及び政策決定に非公式な影響力を及ぼしていると聞くが、事実か。事実であるとすれば、国土交通大臣は、それを黙認しているのか。事実でないとすれば、他に河川局の職員人事及び政策決定に非公式な影響力を及ぼしている省庁出身者等はいないのか。

 右質問する。



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