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平成十九年六月二十九日提出
質問第四四一号

薬物乱用及び再犯防止対策と治療回復支援に関する質問主意書

提出者  前原誠司




薬物乱用及び再犯防止対策と治療回復支援に関する質問主意書


 内閣衆質一六五第二三七号の答弁を踏まえ、以下のとおり再度質問する。
 我が国の行政史上、次々と明らかになる厚生労働省の外局である社会保険庁の年金管理に伴う問題が発生したなか、正確に誠意をもってご答弁願いたい。また、薬物乱用が大きな社会問題化されているなか併せて誠意をもってご答弁願いたい。

一 答弁一、二について、「社会保険方式の根幹をなすもの」で「規定の改正を行うことは考えていない」とするならば、「精神障害者である薬物依存症者」が障害年金や健康保険及び国民健康保険から排除されている現実をどう打開するつもりなのか。
二 答弁一、二について、「当てはまるか否か」という問題は「薬物依存症者」の病気の特殊性をまったく考慮されていないことに起因する。当初、自己の故意の犯罪行為によって使用したとしても、その後、「DSM−W」の基準のように「薬物使用のため身体的・心理的問題が起こっているにもかかわらず使い続ける」、つまり、薬物依存症とは自己のコントロールが出来ない精神障害状態をいう。したがって、当初の自己の故意の犯罪行為の部分をもって、障害年金や健康保険及び国民健康保険等から排除することは、妥当ではないと考えるがどうか。
三 答弁三について、「その旨の周知を図っているところ」といわれるが、福島県、鳥取県、秋田県など移送費が支給されていない県があり、県によって「社会復帰に効果が期待できる」の判断が分かれている。薬物乱用防止新五か年戦略の中で、「薬物依存・中毒者に対する治療の充実、社会復帰の支援」を謳っていることから考えると、厚生労働省は不支給の件に関して、指導を徹底する必要があると考えるがどうか。
四 答弁四について、各自治体における「障害福祉計画」の策定にあたっての薬物依存症者の申請状況、対応、要求の実態はどうなっているか。また、薬物依存症者対策について、地方自治体に丸投げをせず、厚生労働省が積極的に、治療支援、指導していくことが必要だと考えるがどうか。
五 答弁六について、「刑事施設の医師が、被収容者の釈放後も引き続き医療機関での診療が必要であると判断した場合には、円滑に治療を継続できるよう、紹介状の交付を希望する被収容者又はその保護者等に対し、病名、治療の経過、現在の処方の内容等を明らかにした紹介状を釈放時に交付する取扱い」としている。実際、ダルクが身元引受人として百名近く受けているが、身元引受人が交付願いを許可されない現実がある。また保護者でも許可されないことがある。その現実をどう受け止めるか。
六 刑事施設内で行われている医療関係研修の中で、特に薬物依存症者への処方のあり方について等の研修はなされているか。
七 答弁十一について、ダルクが被保護者の生活を援助する場合には、その施設の不十分さをもって、更生保護施設等と同等の費用は支払われていない。施設設備こそ違いはあるが、共同生活とプログラムについては現段階にて保護施設よりダルクの方がより充実した形で実施しているので、同等の費用を出すべきだと思うが如何か。
八 答弁十二について、相談件数九千二百八十八件をどう捉えているのか。「乖離」とみるのか。「相談体制の充実を図っている」というが具体的に示されたい。
 また、広く一般市民に対して保健所、精神保健福祉センターで薬物相談を受けているということは周知されているのか。また保健所、精神保健福祉センター等で行われる家族教室の実施方法や内容については、それぞれの保健所、精神保健福祉センターが独自に行っているのが実態であるが、それらの実態を国はどのように把握し、指導しているのか。
九 ここ十数年にわたり、国立精神・神経センターによりダルクの効果と回復の実態は研究され、ダルクに対する積極的評価もなされている。その研究結果を国はどのように評価しているか。また、それらの研究結果を踏まえた上で、国はダルクに対し具体的にどのような支援を行っているか。
十 答弁十四について、再乱用防止対策事業費の七百二十一万円(十八年度予算額)は対策費用としては皆無に等しいと考える(ハンドブックや副読本のみで)。ましてや十九年度予算にしても、広報・啓発資材作成・配布経費しかない模様である。再乱用防止のための普及啓発活動講習会経費では再乱用の防止はできない。再乱用防止のためには、本人や家族に対する本格的な支援がなされるべきだと考えるがどうか。
十一 答弁十五について、「関係機関の連携については、全国六ブロックにおいて薬物中毒対策連絡会議を年一回開催し、薬物依存症者及び薬物中毒者の治療及び社会復帰支援に関する業務を行う関係機関の専門家による情報交換等を行い、その強化を図っているところである」としているが、全国六ブロックの連絡会議にダルク、家族会等民間の参加を求め、意見を聞くことも必要と考えるが如何か。
十二 答弁十七について、薬物依存の治療、回復にはマンパワーが必要であり、研究員の配置は重要であると考えるが、国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室が定員を伴わない室として設置されたということであるが、早急に研究人員をつける意向はあるのか。
十三 薬物依存症者が医師の処方した睡眠薬、抗不安薬等による、新たな依存症に陥るケースが多い。国立精神・神経センターの研究結果を見ても、睡眠薬または抗不安薬を主たる使用薬物としている例は一〇〜一五%程度で推移しており、一九八七年の調査以来大きな変動は見られない。また主たる薬物でないにせよ睡眠薬・抗不安薬は三〇〜四五%の症例で使用歴があり、最近の調査ではやや増加傾向にあるとしている。したがって、薬物依存症者に対する治療については、新たな処方薬依存をつくらないためにも、専門的な医療が必要であると考える。また、依存している薬物を切るための専門センターとしての役割を公立の精神科病院や精神保健福祉センター等が行うことが望ましいと考えるがどうか。
十四 答弁の十九について、「総合的就労支援策を実施」とは何か、具体的な状況をお聞かせ願いたい。
 また、法務省が民間の更生保護施設では処遇が困難な者の社会復帰等「再チャレンジ」策として、「自立更生促進センター」を設置することが決定し、薬物事犯者処遇プログラム等も行われることになった。しかし、「薬物依存症」という病気の特性を考えると、帰住地における保護観察に切り替えた後にも継続した薬物依存のための回復プログラムを受けられることが望ましいと考えるが、それらの期待に応えるための社会資源は準備されているのか。またその社会資源は量的に十分であるか。
十五 答弁の十九について、「裁判所が刑罰の代替として治療を命ずる制度を設けるなど、刑罰の在り方に関わる検討を行う」ことは緊急に必要であると考える。早急に専門家による委員会を設け、結果を答申させることが望ましいと考えるがどうか。また、現行法、制度の下でも十分に改善が可能ではないかと考えるが、政府の見解は如何か。
十六 答弁二十について、生活保護については、「市町村や都道府県を超えて利用できる仕組み」となってはいるが、法人格を有しないダルクへ移動する場合は、「市町村を超えて利用する」ことができないケースがある。法人格を有しないダルクでも引き続き生活保護を受給できるよう、国の指導徹底を求めたいがどうか。
十七 答弁の二十一について、薬物の乱用を根絶することにより、注射針の回し打ち等による感染症の罹患等の問題の解決がはかれるとしているが、既に罹患している者の数を把握しているか。既に罹患している者に対する対応はどのように行っているのか。また、薬物を乱用している者に対する感染予防策として、「注射器や注射針を共用することの危険性について注意喚起を行」うことで十分であると考えているか。
十八 答弁の二十二について、「実態を把握していない」といわれるが、障害福祉サービスの提供が拒否されている現実がある。現状を正確に把握することを求めたい。同時に、薬物依存症に対応できる専門的なスタッフがいない場合は、施設も薬物依存症者を受け入れることが出来ない。薬物依存症者に対応できる専門性のある訓練されたスタッフの養成や施設の配置が必要であると考えるがどうか。
十九 薬物依存症者の治療を行う上で、薬物を使っていた地元での回復は非常に困難である。薬物依存症者リハビリテーション施設のダルクでは、遠隔地での回復を基本としている。しかし、自立支援法下で施設運営をしようとした時に、自治体の福祉計画の中に遠隔地からの薬物依存症者の回復支援を見込んでいないことが考えられる。実際にダルクがグループホーム等を運営した場合に、遠隔地からの利用者をそれぞれの自治体へ申請することになるが、その対応が自治体の方針によって異なるため困難を生じている。国はこれらの実態をどのように把握しているのか。また、このような薬物依存症者への回復支援の特異性を国はどのように理解しているのか。
二十 現職の医師、看護師等の医療従事者に対して、薬物依存症者への実際の対応等についての研修はどれだけなされているのか。また、研修医、医学生、看護学生等に対して、薬物依存に関する講義は何単位行われているのか。それは必修になっているのか。

 右質問する。



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