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平成十九年七月三日提出
質問第四七四号

沖縄戦の強制集団死(「集団自決」)をめぐる文部科学省の検定意見に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




沖縄戦の強制集団死(「集団自決」)をめぐる文部科学省の検定意見に関する質問主意書


 文部科学省は本年三月三十日、二〇〇八年度から使用する高等学校用教科書の検定結果を公表し、沖縄戦における日本軍の強制による集団死(いわゆる「集団自決」)について検定意見を付したことが明らかになった。これまでと同様に「集団自決」への日本軍の関与を記述した五社七冊について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」などとして、日本軍の関与そのものを削除する修正を行なわせたのである。
 当時の沖縄の日本軍は、地上戦を前にした一九四四年十一月、「軍官民共生共死の一体化」の方針を出し、陣地の構築や食糧・弾薬の運搬、戦闘に住民を総動員した。軍の機密を知る住民が捕虜になることを許さず、「捕虜になれば、男性は八つ裂きにされ、戦車でひき殺される。女性は米兵の慰みものにされる」などと恐怖心を植えつけ、「敵に投降する者はスパイとみなして射殺する」と警告・実行した。攻撃用と「自決」用の手榴弾を配った事例もある。沖縄戦における「集団自決」が、日本軍の命令・強制・誘導なしに起こり得なかったことは歴史的事実である。これを削除させた今回の文部科学省による検定意見はきわめて不当であり、断じて許されない。
 今回の検定意見に対し、沖縄戦の実相を歪曲するものとして、戦争体験者をはじめ、沖縄県民と国民から強い批判と抗議の声があがっている。沖縄県内では、県議会と県下四十一市町村議会のすべてで検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書が採択され、県教育委員会も文部科学省に申し入れを行なっている。
 ところが政府・文部科学省は、「教科書の検定については、専門家による教科用図書検定調査審議会の答申に基づいて行なっている」として、検定基準に照らしても不当な今回の検定意見の撤回を拒否し、検定意見に至った経過と根拠についての具体的な説明を回避しつづけている。このような政府・文部科学省の姿勢は言語道断であり、到底許されるものではない。
 以下、質問する。

一 五社七冊の申請図書は、それぞれ沖縄戦の「集団自決」についてどのように記述し、それについていかなる理由でどういう意見が付され、結果、どのような記述に変更されたのか、改めて申請図書ごとに明示されたい。
二 文部科学省は、本年四月十一日の衆議院文部科学委員会での私の質問に対し、「今回の教科用図書検定調査審議会の意見は、現時点では軍の命令の有無についてはいずれとも断定できないという趣旨で付されたものと受けとめておりまして、日本軍の関与等を否定するものではないというふうに考えております」(銭谷初等中等教育局長)と答弁している。
 ところが、今回の検定では、例えば、「島の南部では両軍の死闘に巻き込まれて住民多数が死んだが、日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という申請図書の記述に対し、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」という検定意見が付され、検定決定では「島の南部では両軍の死闘に巻き込まれて住民多数が死んだが、そのなかには日本軍に壕を追い出されたり、自決した住民もいた」という記述に変更されている。「集団自決」への日本軍の関与が一切削除されている。
 当時の日本軍が「軍官民共生共死の一体化」の方針をとり、日本軍による「集団自決」の命令・強制・誘導があったことが住民の証言などで具体的に確認されている下で、「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という申請図書の記述が、なぜ「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」なのか。
 申請図書の記述は、軍の命令の有無について記述したものなのか。そのように判断した根拠は何か。申請者側は軍の命令について記述したものと説明したのか。日本軍によって「集団自決」に追い込まれた事例もあることを記述しているにすぎない申請図書の記述が、なぜ軍の命令の有無について断定したことになるのか。
三 「今回の教科用図書検定調査審議会の意見は、現時点では軍の命令の有無についてはいずれとも断定できないという趣旨で付された」と言うが、昨年十二月の検定意見書の交付の場で、文部科学省の教科書調査官が、「『集団自決』では日本軍から公式な命令が出たのではないという見方が定着しつつある」(「沖縄タイムス」二〇〇七年六月十七日付)、「最近では軍命はないという見方が大部分だ」(「琉球新報」二〇〇七年六月二十九日付)と述べたと伝えられている。このような説明を行なったのか。
四 文部科学省は、「当時の関係者が訴訟を提起している」(銭谷初等中等教育局長/二〇〇七年四月十一日、衆議院文部科学委員会)と答弁し、当時の座間味島の守備隊長だった梅澤少佐らが岩波書店と大江健三郎氏を相手どって二〇〇五年に大阪地裁に提訴した訴訟を検定意見の根拠の一つに挙げている。
 しかし、この訴訟は「現在なお係属中」(銭谷初等中等教育局長)である。事実認定も証人尋問さえ行なわれていない訴訟を根拠に検定意見を付したのか。これは、「高等学校教科用図書検定基準」にある「未確定な時事的事象について断定的に記述しているところはないこと」に照らして問題ないという認識なのか。
五 「集団自決」は「隊長命令はなかった」との主張が行なわれている座間味島や渡嘉敷島だけでなく、県内各地で発生している。この点は、検定の過程でどのように扱われたのか。
六 文部科学省は、検定意見の根拠として、「最近の著書等におきまして、軍の命令の有無が明確ではない」(銭谷初等中等教育局長/二〇〇七年四月十一日、衆議院文部科学委員会)ことを挙げている。「最近の著書等」とは何か。具体的に明示されたい。
七 文部科学省は、「今回の集団自決に関する検定意見に関しましては、教科用図書検定調査審議会に調査意見書が出されまして、それを受けまして、審議会におきまして検定意見書を付すための審議が行われ、沖縄戦の集団自決に関する意見につきましては特段の異論がなかったというふうに伺っております。その結果として、調査意見書と同じ趣旨の検定意見書という形で審議会の決定が行われたものでございます」(布村審議官/二〇〇七年六月十八日、衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会)と説明している。
 文部科学省職員である教科書調査官は、どのような調査を行なって「調査意見書」をまとめたのか。その過程で、具体的にどの審議会委員、臨時委員、専門委員から、どのような意見が出されたのか。「調査意見書」をまとめるにあたって、住民の証言は聴取したのか。
八 「調査意見書」は、どのような経過を経て検定意見となったのか。教科用図書検定調査審議会及びその下に設置された部会や小委員会では、どのような意見が出されたのか。
九 審議会委員、臨時委員、教科書調査官、専門委員は、どのような基準に基づいて採用されるのか。文部科学省は審議会委員、臨時委員についてはホームページで公表しているが、教科書調査官、専門委員については公表していない。この際、教科書調査官、専門委員の氏名、その内日本史担当者の氏名を明らかにされたい。
十 今回の検定決定では、「日本軍に壕を追い出されたり、自決した住民もいた」などのように、日本軍の「集団自決」への関与そのものが削除されている。伊吹文部科学大臣は、「今回の教科書は、沖縄の集団自決について、軍の関与がなかったとは言っていません。軍の関与があったことは認めているわけです。」(二〇〇七年六月十五日、記者会見)などと発言しているが、軍の関与を認める記述がどこにあるのか、明示されたい。
十一 今回の検定意見に関し、沖縄県議会をはじめ、県下四十一市町村のすべてで意見書が採択され、「沖縄戦における『集団自決』が日本軍による命令・強制・誘導等なしに起こりえなかったことは紛れもない事実」(那覇市議会意見書)との声が上がっている。伊吹文部科学大臣自身、「集団自決」について「日本軍の強制があった部分はあるかもわからない、それは当然あったかもわからないと思いますよ」(二〇〇七年四月十一日、衆議院文部科学委員会)と答弁している。今回の検定決定の記述は、日本軍の「集団自決」への関与そのものがなかったかのような誤解を与える表現になっているのではないか。これは、「高等学校教科用図書検定基準」にある「図書の内容に,誤りや不正確なところ,相互に矛盾しているところはないこと」「図書の内容に,生徒がその意味を理解し難い表現や,誤解するおそれのある表現はないこと」に抵触しないのか。
十二 「教科用図書検定規則」は、第三章で「検定済図書の訂正」について規定している。これまで「検定を経た図書について、誤記、誤植、脱字若しくは誤った事実の記載又は客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載があることを発見した」(十三条一項)事例としては、どのようなものがあるのか。「学習を進める上に支障となる記載、更新を行うことが適切な事実の記載若しくは統計資料の記載又は変更を行うことが適切な体裁があることを発見した」(同条二項)事例としては、どのようなものがあるのか。「文部科学大臣は、検定を経た図書について、第一項及び第二項に規定する記載があると認めるときは、発行者に対し、その訂正の申請を勧告することができる」(同条四項)と規定しているが、勧告した事例としては、どのようなものがあるのか。
十三 伊吹文部科学大臣は、「政権政党の価値観あるいは歴史観、あるいはまた文部科学大臣の政治理念で、検定権者であるから教科書の内容が左右されるということはあってはならない」(二〇〇七年四月十一日、衆議院文部科学委員会)などと答弁しているが、これは、「教科用図書検定規則」に基づく文部科学大臣の権限と責任を否定したものか。

 右質問する。



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