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平成十九年八月八日提出
質問第二四号

「棄てられた年金記録」旧台帳に関する質問主意書

提出者  保坂展人




「棄てられた年金記録」旧台帳に関する質問主意書


 先の参議院選挙は「年金選挙」とも呼ばれた。しかも、年金制度全般についてというよりも、社会保険庁・社会保険業務センターが長年保管してきた「年金記録」について、国民の不信が頂点まで高まったことで、政府・与党には厳しい結果が現れた。私は、昭和十七年から三十二年までの「厚生保険被保険者台帳」いわゆる「旧台帳」の保管状況について、社会保険庁と社会保険業務センターに対して情報提供と事実の提示を求めてきた。
 しかし、この選挙が終わっても社会保険庁・社会保険業務センター幹部からは、国会議員の調査に背を向けた冗長な言い訳が繰り返されるだけで、何ら事実解明に向けた「作業」が行われている気配がない。安倍内閣は、「最後のひとりまで救済します」と真摯にこの問題に取り組む決意を述べているが、「旧台帳」の未解明部分についての問題意識がやや不足しているのではないかと感じる。この主意書に対しても誠意をもって、国民に「旧台帳」にかかる基本的な疑問に答えるように内閣をあげての取り組みを求めるものである。

一 厚生年金保険の被保険者台帳は、戦火を逃れるために各地方庁で保管されていたが、本格的な老齢年金の支給が始まることや記録事務の機械化が行われるようになったことから、各地方庁から中央に一元化したと言われる。この時、中央で集約した被保険者台帳(いわゆる旧台帳)はいくつあったのか。『社会保険二五年史』には三二,二九八,一五一件(三一七ページ)と書かれている。この数字に間違いはないか。「現存台帳」「喪失台帳」以外に内訳を説明されたい。
二 ところが、社会保険庁が従来、国会に対して説明してきた旧台帳移管分の総数は、三,一一九万件であった。この集計差の一一〇万件について、社会保険業務センターに保存されていた「被保険者台帳保管業務委託要領」は、「裁定台帳二〇万件」「農林共済移管分二七万件」「廃棄五一万件」「その他一二万件」と記録している。この集計は、いつ誰が行ったものなのか。「裁定台帳二〇万件」は廃棄されているのか、保存されているのか。「その他一二万件」に分類されている記録は、「私学共済ではないか」という青柳親房社会保険庁運営部長の答弁の裏付けはあるのか。あればその内容を提示してもらいたい。
三 問題は「廃棄五一万件」である。厚生年金保険法二十八条で「台帳」は被保険者記録として保存が義務づけられている。従って、本来は「台帳の廃棄」などあってはならないことであるが、社会保険業務センターに「廃棄五一万件」を裏付ける業務文書は残っているのか。また、これ以外に台帳を廃棄した記録は存在するか。また、「廃棄五一万件」と書かれている旧台帳記録は、まとめて棄てられたものなのか、調査・集計期間中にそれぞれ散逸した台帳の総数なのか。
四 社会保険庁は「鋭意調査中」というばかりで、なんら具体的な調査結果を示さないままに現在に至っている。「旧台帳年金記録廃棄問題」について社会保険庁ならびに社会保険業務センターはどのような調査をしたのか。あるいは、他の「記録」問題の処理に追われて手つかずなのか。明らかにしてもらいたい。OBから聞き取りをしたというが、どの年代に在職したOBから、いつ、どのような話を聞いたのか。このヒアリングは継続中なのか、終了したのか明らかにしてもらいたい。
五 総務省に設置された年金記録検証委員会の第三回会合(七月四日)に配布された資料「年金記録の事務処理について」の七ページに従来の政府の説明と明らかに異なる記載がある。「台帳の保管状況」という部分に、「被保険者台帳(旧台帳)」について「マイクロフィルム化して業務センターに保管(セキリュティ倉庫)・マイクロフィルム化した元の紙媒体についても一部保管している」と書かれている。この資料は誰が作成したのか。また、ここに書かれているのは、社会保険庁の資料によるとマイクロフィルム化した「一,七五四万件」についてのみであり、磁気テープ化された「一,三六五万件」については触れられていない。これはなぜか。
六 従来、社会保険庁・社会保険業務センターは、「一,三六五万件については、全部磁気テープからオンラインに入力されている。また、紙台帳もすべてセキリュティ倉庫に保管している」と説明した。事実か。
七 年金記録検証委員会での報告資料に前記の記載をしなかった理由は何か。
八 従来、一,七五四万件のマイクロフィルム化した元の紙媒体は全部廃棄したと厚生労働大臣は答弁している。ところが、この資料には「マイクロフィルム化した元の紙媒体についても一部保存している」と書かれている。どちらが真実なのか。
九 セキリュティ倉庫には、三,一一九万件の旧台帳記録は存在すると社会保険庁・社会保険業務センターから説明を受けてきた。六月、参議院厚生労働委員会の野党理事とともに視察に入ろうとした時、「第二倉庫に一,七五四万件のマイクロフィルム化した旧台帳」が保管されていて、第三倉庫に一,三六五万件の磁気テープ化された紙の旧台帳を保管している」と聞いていた。事実か。
十 セキリュティ倉庫の第二倉庫は、「年金記録」を個票で発注しピックアップできる方式で、また第三倉庫は委託者から指定されたダンボール箱ごと送り出し、使用後に戻す方式で、社会保険業務センターと契約していると聞いた。事実か。
十一 社会保険業務センターとセキリュティ倉庫との平成十八年の契約書によれば、文書等のケースについて四一〇×三三〇×三一〇oの保管ケースを一八,〇〇〇箱預けている。また、被保険者台帳の保管に関して四五〇×三九〇×一五〇oの台帳収容箱を四,三七三ケース保管している。この契約中、前者に「一,三六五万件」が含まれており、後者が「一,七五四万件」を保管していると理解してよいか。
十二 台帳収納箱一箱には、何件分の台帳が入っているのか。そもそも、契約後の保管委託時にセキリュティ倉庫との間で確認した「マイクロフィルム」と「紙」の旧台帳の総数は何件なのか。
十三 村瀬社会保険庁長官は、参議院厚生労働委員会野党筆頭理事に対して、「与党が同意し、同席しない視察では倉庫を見せることは出来ない」と門前払いを行ったが、当時の与野党間で「野党の倉庫視察」は事前に与党も了承・合意していたという事実がある。村瀬長官は、「与党が合意しても与党が同席しなければ倉庫は見せない」と判断した根拠は何か。
十四 年金記録に対して不信が高まり、参議院厚生労働委員会の審議中に東京から相当離れたセキリュティ倉庫に議員団が到着した際に、社会保険庁・社会保険業務センターはただひとりの職員すらも配置せず、非礼にも議員団を追い返した。突然に出発した視察団ではなく、当日応対する予定だった社会保険庁会計課の職員の携帯電話や、日程表までが作成されており、いったんは受け入れた倉庫視察を突然にキャンセルしたのは誰なのか。村瀬社会保険庁長官か、柳澤厚生労働大臣の最終判断と考えていいのか。
十五 そもそも、東京から遠く離れたセキリュティ倉庫に議員団が出かけたのは、旧台帳の保管状況を視察するためであった。ところが、視察に行ってセキリュティ倉庫のシステムの説明を受けると、三鷹にある社会保険業務センターで旧台帳の保管されている箱を取り寄せて、無作為抽出して一〇〇件のオンライン入力の有無を検査することが出来ることが判明した。旧台帳の保管状況は東京で確認出来るのであるが、そのテスト(検査)を社会保険業務センターならびに村瀬社会保険庁長官は頑なに拒否し続けた。一,三六五万件はすべてオンライン記録に入力されているのなら、その実証を行うことに何のためらいがあるのか。しかも「プライバシーの保護」を理由にあげたが、私たちは住所・氏名を隠してもらい、ディスプレイの表示もカバーして読み取れないようにして、実証してくれと求めたが村瀬長官はこれも拒否した。国会議員の調査をこれほどあからさまに拒み、参議院選挙結果がどうあれその硬直した態度は変わらない。年金記録検証委員会・年金業務・社会保険庁監視委員会からも指摘がある通り、国会議員に対して調査に協力し、事実を明かす用意はないのか。
十六 政府は「宙に浮いた五,〇〇〇万件」への対策とは別に、そもそもオンラインに入力されていない一,四三〇万件(船員保険三六万件は別)について、新たにコンピュータ入力することを明らかにしている。この一,四三〇万件はマイクロフィルムに複写された旧台帳で、比較的使用頻度が低いと判断されて磁気データには入力されてこなかったものだが、先月の調査で社民党はマイクロフィルムの保管状況を視察し、「別人台帳」「事故台帳」というボックスがあることを確認していた。社会保険業務センターによると、「別人台帳は二六万件、事故台帳は七万件あります」ということであり、三二万件を入力することは出来ても、統合したり本人通知したりすることは出来ない台帳ではないか。これは、マイクロフィルム化された旧台帳のみの数字であり、磁気テープに入力しているはずの一,三六五万件にも、また別に「別人台帳」「事故台帳」は存在する。しかし、その数が何件であるのかは確定出来ないということで間違いないか。
十七 社会保険業務センターに対して再三説明を求めているのは、マイクロフィルム化したものが一,七五四万件との公的記録が存在するにもかかわらず、現在も政府・社会保険庁の入力対象は一,四三〇万件となっている。三二四万件については、「磁気テープにも取り、マイクロにもしたものが三二四万件あった」と聞いてきたが、これまで年金記録に関する資料を精読してもどこにもその記載がない。何か裏付けとなる資料はあるのか。また、裁定などで逐次磁気テープに入力していったということであれば、三,一一九万件の総数が変わらないことから、磁気テープ化済一,三六五万件+三二四万件=一,六八九万件・マイクロフィルム一,四三〇万件という記載になるということなのか。
十八 社会保険業務センターの内部マニュアル『旧台帳(昭和三十二年十月前の記録)関係事故分の取扱について(指示書)昭和五十四年八月七日企画管理』によると、旧台帳三,二〇〇万件のうち、一,三〇〇万件の磁気テープ化を昭和四十一年から四十七年にかけて行っている。
 「上記の処理によって発生した事故は七四万件
 課内補正処理済分 四二万件 課内補正処理不能分 三二万件」
とある。(資料三)また、「生年月日相違分」が二一万件であり、「取得記録漏れ六万件」「喪失記録漏れ五万件」(計一一万件)とある。こうした旧台帳事故分が、その後どのように処理されたのか、統合出来たのか、不明のままに放置されているのか。処理されたのであればその記録の概要を明らかにされたい。
十九 以上、「年金記録」についての疑問の一部を文書で提示した。政府が国民に、「最後のひとりまできちんとやります」と約束したからには、年金記録問題の歴史をひもとき社会保険業務センター内の「秘密」指定の文書も開示して、混乱を招いた記録管理の全容を明らかにすることは与野党を超えて政治の場にいる者の使命だと考える。これまで何度ヒアリングしても、社会保険庁・社会保険業務センターから、事態を積極的に解明するために作成された一枚の説明文書も受領したことはない。総務省のホームページに掲載されている資料さえ、私たちが気づかなければその提示の事実を語らない。おそろしい隠蔽体質を打破するために、私たちの旧台帳年金記録の調査に内閣としてどのような姿勢をとるのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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