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平成十九年十一月七日提出
質問第二〇〇号

東海環状自動車道西回りルート・岐阜市御望山周辺計画に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




東海環状自動車道西回りルート・岐阜市御望山周辺計画に関する質問主意書


 東海環状自動車道御望山(ごもやま)ルートの建設計画をめぐり、国土交通省・中部地方整備局・岐阜国道事務所は、一九九六(平成八)年十月に都市計画決定が行われたルートに加え、新たにA案、B案、C案の三つの比較ルート帯を提示している。この提示を受け、関係地域で「地元住民説明会」が開かれてきたところである。しかし、説明会の内容、あり方はもとより、@六年間にわたる御望山調査検討会で「御望山の安全性は確認されない」との明確な結論を得ている当初の都市計画ルートがなぜ排除されないのか、A同ルートに最も近く、専門家の中からも危険性が指摘されるBルート案がなぜ含まれているのか、B三つの比較ルートのそれぞれの根拠など、広範な住民から不安と疑問の声が絶えない。
 地域住民の命と安全を守ることこそ国や行政にたずさわるものの重大な使命である。
 以下、質問する。

一 御望山調査検討会の役割と御望山ルートの安全性について
 @ 二〇〇四(平成十六)年三月一日の予算委員会で、私は、「高速道路あるいは高規格道路のような大型の公共事業を進める場合に、地域住民の命と安全を守り環境保全に努める」ことの重要性について政府の基本的な見解をただした。当時の石原伸晃国土交通大臣は、「今後とも、国民生活の安全性を確保する観点、そして…生活に…負担のかからないような形で道路整備を進めていくということは重要な視点であると認識しております」(同委員会第八分科会)と答弁をしている。政府においては、今日、このような認識に変わりはないか。基本的見解を聞く。
 A 二〇〇〇(平成十二)年六月に設置された御望山調査検討会(委員長・志岐常正京都大学名誉教授、以下「検討会」)は、国土交通省など行政と専門家、地元住民代表の三者で構成する、日本で初めて経験する画期的なものであると考える。政府は、この「検討会」がどのような意義を持つと考えているか、その果たしてきた役割等について示されたい。
 B 「検討会」は、六年近い歳月をかけて昨年三月、最終報告書をまとめた。それは、「異例とも言えるほどの多角的で長期の調査をしての結論である」(同・報告書)。そのなかで、「この調査検討会における結論は、『御望山の安全性は確認されない』ということにつきる」と明言している。
  先述の予算委員会で政府は、「御望山検討会がどのような結論を出すのか見守る。もちろん、見守る中で重要な要素としては安全性。地質学上、そこに坑口を開くことに危険があるという結論になれば、その意見は十分に参考にさせていただく」と答弁を行っている(石原国土交通大臣=当時)。
  以後、三年余を経た今日、「重要な要素としては安全性」という政府の基本的立場に変わりはないか。認識に変更があれば具体的に示されたい。
二 御望山周辺ルートの提示について
 政府・国土交通省が提示した三つのルートに対して、地元住民から、それぞれの立場をふまえた反応が寄せられている。そのなかで何よりも大きいのが、「なぜ現行の都市計画ルートが排除されないで、新たに三つの比較ルートが示されたか」という不安の声である。
 以下、質問する。
 @ 「検討会」の最終報告書で、現行の都市計画ルートの安全性に対する警鐘がうち鳴らされていることは周知の事実である。御望山は、歴史的にも崩落を繰り返す危険な山である。地元説明会に参加したある住民は次のように危険な実態を訴えている。
  「ここに昭和六十二年八月一日発行の黒野史誌があります。その中の一節に『御望山山麓の崖錘は、急斜面から岩屑が落下して形成された地形であるため、再び崩落する危険性があり、傾斜した不透水上を流れる地下水により、山崩れや地滑りが発生しやすい』と書いてあり、『その崖錘上に、岐阜バス車庫、岐北中学校、第二千成団地がある』と述べられています。私たちの住んでいる第二千成団地の裏山は、山崩れ、地滑りが発生しやすいと書かれているのです。…私たちはそういう所とは知らずに、県が認可した土地だからということで、ここに移り住んできました。昭和五十一年九月の台風で、団地も土砂崩れにより、家屋が傾いたり、御望山東の二田子地区では子どもさんが亡くなりました。…私たちは、高速道路を造ることに反対している訳ではありません。これ以上、生命の危険にさらさないで下さい、と言っているだけなのです。」
  現に、古くは一五八六年の天正地震による崩壊、団地造成後の昭和四十九年の大石転落をはじめ台風のたびに亀裂が生じるなど、住民は命を脅かす危険と隣り合わせの生活を送っているのである。「検討会」報告書では、御望山の地質構造について、「特異な舟底形構造」や各所に著しく発達している「各種の断層・亀裂」を指摘、「山体には、いわば(地質的に崩壊しやすい)…ガサガサな状態の地山が広く発達している」ことを明らかにしている。
  政府は、国土交通大臣の答弁でも明言したように住民の安全性を「重要な要素」として受け入れる姿勢を持っているなら、なぜ、このような危険性を指摘されている現行の御望山トンネルルートを排除しないのか。明確な答弁を求める。
 A 「調査検討会」の志岐委員長は、同「検討会」の役割は終えていないとの認識を示している。今回、「三つの比較ルート案」を提示するに当たって、国は、「検討会」委員の意見を聞いたか。聞いているのなら、どのような意見が出されたか、具体的に明らかにされたい。また、聞いていないのならなぜ聞いていないのか、その理由を明確にされたい。
  併せて、昨年六月に国が「再検討」に入ってから、「検討会」委員以外の他の専門家の意見を聞いたと言われているが、どのような分野の誰に聞いたか、明らかにされたい。
 B 「検討会」での最終結論は、「御望山の安全性は確認されない」とされているにもかかわらず、なぜ現行都市計画ルートの近くにトンネル掘削をともなうBルート案が入っているのか。最終報告書は、「現在の工学技術をもってすれば、御望山地域に限らず、日本のどの様な山においても、トンネルを掘ろうと思えば掘れないわけではない。しかし、検討会の課題は、それとは関係なくトンネル掘削にともなって発生しうる問題の検討、言いかえれば安全性の確認である」と、「工法で対応する」問題でないことをも強調している。
  あらためて問う。安全性を疑われている現行都市計画ルートの近くに、同じく「トンネル構造」で通過するBルート案が入っているのはなぜか。その「安全性の根拠」を示されたい。
 C 今回の三つの比較ルート案においても、インターチェンジの位置だけは都市計画ルート以来、一貫して変わっていない。それはなぜか。「もっと北側になれば住宅も少なく、インターチェンジのスペースも余裕を持って確保できる」との意見も聞いている。インターの場所が変わらない根拠を明らかにされたい。
 D 岐阜市椿洞の産廃不法投棄現場について、国は、「岐阜市の処理方針を待って考える」とのことであるが、現時点で、椿洞地域も一体としてルートの中に含まれている。ルート変更を考えないのはなぜか。
三 住民の意見の調査方法と調査結果の処理・公表について
 @ 国(国土交通省・中部地方整備局・岐阜国道事務所)は、「道からの手紙」を配付し、「計画の再検討について、あなたの声をお聞かせください」とアンケートを行っている。また、各地の説明会をも開催している。しかし、この説明会自体が限られた時間内であり、その内、当局からの「説明」が大半を占め、質疑応答の時間が不十分であるとの声を聞いている。とりわけ、当初の都市計画ルートの南側に位置し、もっとも安全性が危惧されている第二千成団地での丁寧で親身な説明会が行われていない。
  そこで聞く。この間の説明会の概要(会場、回数、参加者とその有権者比率)を明らかにされたい。
  さらに、第二千成団地住民に対する別途説明会開催を求める要望を聞いている。政府として、その用意はあるか。説明する用意がないのならその理由を示されたい。
 A 「道からの手紙」のアンケートの集計は、いつどのように行い、どのような形で結果の公表が行われるのか、明らかにされたい。
四 ルート決定に関する諸問題について
 @ 現行の都市計画ルート案を作る際の調査、とりわけ地質調査を十分に行っていなかったことが、今日の混乱と経費のムダを生じた要因であることが専門家の間から指摘されている。「検討会」報告書では、「どこにルートを変えればよいかの検討はしていないが、より安全性の高いルートがないとは考えられない」とまで言い切っている。これは、新たなルートを検討する上できわめて重要な示唆であると考える。政府は、あらためて御望山調査検討会を開き、これまで関わってきた専門家の意見を聞く予定はあるか。
  また、新たに提示された三つの比較ルートのそれぞれについても、「検討会」の意見を聞くことが重要であると考えるが、政府の見解を求める。
 A そのうえで「最終結論」は、いつどのような過程を経たうえで発表になるのか、明らかにされたい。
 B トンネル掘削ルートを強行し、掘削中およびその後の崩落などにより作業従事者や地域住民、道路通行者などへの被害が出た場合、国としての賠償責任をどのように考えているか。事前にリスクが指摘されているにもかかわらず、危険性が指摘されているルートの建設が行われ、被害が出た場合は、刑事責任も問われると考える。政府の見解は如何。

 右質問する。



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