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平成二十年二月十二日提出
質問第七九号

財団法人日本美術刀剣保存協会における刀剣審査の規程違反・手続き等の不正に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




財団法人日本美術刀剣保存協会における刀剣審査の規程違反・手続き等の不正に関する質問主意書


 公益財団法人である日本美術刀剣保存協会における刀剣審査のあり方、不透明性等について、一昨年来、国会でたびたび取り上げられてきた。私も予算委員会(分科会)や文部科学委員会、質問主意書等において繰り返し問題点を指摘し、公益法人として国民の信頼を得るべく改善の措置等について質してきた。
 その後、昨年五月、主務官庁である文化庁は、同協会に実地検査に入り、数項目に渡る指導を行ってきたと聞く。しかしながら、その後、協会執行部は、国会で指摘された数々の問題点に対し、改善の措置を講ずるべく真摯な対応を行っているとは言い難い。私どもの把握しているところによると、審査申請をめぐる協会執行部の関与した疑惑、実態のない「幽霊会員」による申請疑惑の未解明等、様々な問題をかかえているといえる。これらの諸問題を解決することなくして良識ある協会会員や全国の刀剣愛好家からの信頼を回復することはありえないと考える。
 以下、質問する。

一 〇七年五月の同協会への実地検査はどのような目的、内容で実施されたものか。改めて質したい。日時、検査項目、聴取対象等具体的に示されたい。
二 実地検査の結果について
 @ 実地検査の結果を文化庁としてどのような認識で受け止めているか。また、協会に対して検査の結果内容、文化庁の認識等について、いつ、どのような形で通知したか。
 A 一昨年来の国会での質疑を踏まえ、協会による「改善」はどのように行われているか。また、文化庁として引き続き「改善」を求める点は何か。明確にされたい。
三 「疑惑はなかった」とする協会執行部の対応について
 @ 協会執行部は、〇七年(平成十九年)十一月七日付文化庁長官宛の報告書において、「刀剣審査に対する疑惑について、会長以下新執行部が一年間鋭意調査した結果、疑惑に該当する事実はなかった」との回答を行ったと承知しているが、相違ないか。
 A 私は、昨年三月二十七日、衆議院文部科学委員会で、複数の協会理事・役員が内部規程に違反して審査の申請を行っていること、非会員であるものが「申請者は会員に限る」との定めに反して、重要・特別重要刀剣の審査に多数申請している問題などを指摘した。その後新たに判明した事実だけでも、平成十四年(二〇〇二年)四月から平成十八年(〇六年)四月の四年間で、非会員からの申請数は「特別重要」七十七件、「重要」二百三十六件、合計三百十三件にも上っている。これらのことを文化庁は把握しているか。
 B 昨年五月の実地検査直後からも受付期間外の申請が引き続き行われている。具体的には次の「申請」である。
  (A) 平成十九年(〇七年)六月度の受付期間は、六月四日から六日までである(『刀剣美術』同年五月号「掲示板」参照)。しかし、例えば「bU30」の申請物件は、申請日付が六月十二日であり、受付期間外である。ここには「小林常務理事より依頼され六月十三日に打刻」と明記されている。また「bU32」の申請物件は、申請者高橋正法氏、扱者「真玄堂」である。「bT95」以降の申請物件は、申請期限を過ぎてからの受付分であることから、この「真玄堂扱い」の申請物件も明らかに規程違反である。
  「真玄堂」とは、「架空の名前を使って申請した」とする疑惑を、私が国会質疑で指摘した刀剣商である。
  (B) 同年七月度の受付期間は、七月二日から四日までである(『刀剣美術』同年六月号「掲示板」参照)。しかし、前月同様、受付期間外の申請が行われている。「bP182」の場合、「二〇〇七年七月十三日PM三:四五受付 1182から1189の八本は、岩田課長の指示のもと…本日受付」とのメモ書きも添付されている。
  主務官庁である文化庁は、これらの不正事例を把握しているか。この申請期限外の受付は一例に過ぎないが、同年六〜七月は、国会で審査の透明性、不正な手続き等の問題が指摘され、文化庁としても実地検査に入った直後である。しかも、具体的な規程違反に関わったものとして現職の「常務理事」や「課長」の名前が挙げられている。これ自体、由々しき問題である。さらに、国会で疑惑を指摘された業者が、繰り返し受付期限外の申請に関わっている。
  伊吹文明文部科学大臣(当時)は、〇六年(平成十八年)十月二十日の文部科学委員会で、「一つしかない機関がインサイダーとか行為違反というのと同じ疑いを差し挟まれないように厳正に行動していただくという原点が確立されれば一番いいわけですから、その方向で文化庁が努力すると思います」と答弁している。
  文化庁は、この答弁に即していかなる努力を行ってきたか。また、右に指摘した事態について、協会の報告どおり、「疑惑はなかった」とするのか。明確な答弁を求める。
四 「非会員全員が入会した」とする協会の報告について
 @ 協会執行部は、平成十九年十一月七日付で文化庁に対し、要旨以下のような報告を行ったと承知している。
  「『非会員からの申請については、入会後に申請を受け付けている』と説明したが、平成十六年四月の特別重要刀剣等審査の際に非会員申請者がいるとの指摘については、現在、合格した者に対し会員となるべく交渉中である。……なお、平成十七年の重要、平成十八年の特別重要等の各審査の際の非会員申請については、現在調査中であり、調査が済み次第、対応策についても報告する予定である。」
  この非会員からの申請問題について、昨年十一月の当該報告以降、協会執行部はいかなる「改善の措置」を講じてきたか。明らかにされたい。
 A 協会は今年二月、(A)第十八回(平成十六年四月)特別重要刀剣審査の際、合格者のうち受付時非会員からの申請分については全員が入会した、(B)平成十六年度及び平成十七年度の重要刀剣等審査の際、合格者のうち受付時非会員からの申請分については全員が入会した、との報告を行ったと聞く。この報告が行われたことは事実か。
  この報告が事実なら、「非会員全員が入会した」とする内容を、文化庁は容認するか。
 B 昨年の予算委員会分科会において私は、同じ会員番号の人が次々と名前を使い分けて申請している実態、いわゆる「幽霊会員」の例を具体的に挙げて、徹底した調査と改善のための指導を求めた(〇七年三月一日予算委員会第四分科会)。先述のように平成十四年四月から平成十八年四月までの四年間で、非会員からの申請は三百十三名にも上る。このなかには、特定の業者が故意に偽名や仮名を使って申請しているものが少なくない。協会の報告通り「非会員全員が入会した」のなら、この架空の名前を使って申請した実態はどのように解明されているか。明らかにされたい。
 C 具体的に伺う。『刀剣美術』(〇五年十一月号)において、「重要刀剣」指定物件の一つに「脇指 銘 和泉守国貞 小泉忠雄」と発表されているものがある。当時(平成十七年九月)の受付の際、当該物件申請者の会員番号は「一九九四五」となっている。私どもの調べでは、この会員番号は、存在していない。また、申請者住所に申請者が存在しないことも明らかになっている。改めて確認を求めるが、右「会員番号」「申請者氏名」「申請者住所」は合致しているか。厳密な調査のうえ、明らかにされたい。
 D 〇五年九月の第五十一回「重要刀剣」審査申請において、他にも同様の疑惑がある。(A)別の人の会員番号で申請〈十九件〉、そのうち刀剣商「真玄堂」の家族・親族の会員番号を使用したもの〈九件〉、(B)「真玄堂」の住所で申請したもの〈五件〉――などが際だった規程違反である。さらに、(C)刀剣商「霜剣堂」が仮の名前(偽名)で申請した物件も二件判明している。
  業者との癒着が大きな問題となっているが、これらの実態からも、「根は深い」と指摘されて当然である。「第五十一回重要刀剣等審査の受付について」と題した協会の公告には、「申請人は本協会会員に限ります。」と明記されている。このこと一つを見ても、自らが決めた規程に、協会執行部自らが違反していることは明らかである。
  審査規程が遵守されていないことについて、「なぜ、守られていないのか」「問題の所在はどこにあるのか」――と少なくない会員や一般の人々から疑問の声が上がっている。これらの疑問に対して文化庁はいかなる見解をもっているか。明確に示されたい。
 E 先述のように協会の現職理事や役員など本来「範を垂れる」べく要職にある人物が、率先して規程違反を行っているところに深刻な問題がある。私は、国会質疑で四人の現職理事の具体的違反数を挙げて改善の方向を質した(〇七年三月二十七日、文部科学委員会)。その後の調査では、合計六名の現職理事が違反している。重大なことはこれらの理事がいまだに理事会に在籍していることである。
  このような現状で協会が健全な公益性を守ることができると考えるか。考えるならその理由を明らかにされたい。
五 民法の規定にのっとった対応について
 伊吹文部科学大臣(当時)は、国会の答弁で「公益法人改革ということが今言われている中で、やはりきちっと国民の信頼を得ていかないと当該団体自体も困るわけです」(前出・予算委員会分科会)と強調している。さらに、「余りに非常識なことが起こっている場合は、…民法の規定にのっとって適切に対処していただくようにお願いをしなければならない」とも述べている(前出・〇七年文部科学委員会)。
 この答弁は、きわめて重いものである。民法第六十七条第二項は、「主務官庁は、法人に対し、監督上必要な命令をすることができる」と定めている。主務官庁の「指導」や「実地検査」を受けた直後にも審査に関わる不正行為を繰り返したり、いわゆる「幽霊会員」の解明も行わずに、「非会員全員が入会した」との態度をとり続ける公益法人に対して、「必要な命令をする」時期であると考える。見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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