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平成二十年二月二十一日提出
質問第一〇七号

近年の冤罪事件を受けて警察庁が公表した「警察捜査における取調べ適正化指針」に関する第三回質問主意書

提出者  鈴木宗男




近年の冤罪事件を受けて警察庁が公表した「警察捜査における取調べ適正化指針」に関する第三回質問主意書


 「前回答弁書」(内閣衆質一六九第六四号)を踏まえ、再度質問する。なお、冤罪という言葉の定義については、前回質問主意書及び前々回質問主意書同様、富山県氷見市の柳原浩氏が強姦などの容疑で富山県警に誤認逮捕され、二年あまり服役した後に無罪が確定した事件(以下、「富山事件」という。)や、二〇〇三年の鹿児島県議選において中山信一氏と志布志市の運動員ら十五人を公職選挙法違反容疑で逮捕し、強圧的な捜査等により自白を強要し、後に全員の無罪が確定した事件(以下、「志布志事件」という。)の様に、無実の人間に罪を着せることとする。

一 二〇〇八年一月二十四日に警察庁が発表した、「富山事件」や「志布志事件」等近年の冤罪事件により低下した警察庁の信頼を取り戻し、右の冤罪事件の再発を防止するため、警察官による取り調べの監視や取り調べ中の禁止行為を定めた「警察捜査における取調べ適正化指針」(以下、「指針」という。)により設置が検討されている、警察による取り調べを監督する監督担当者(以下、「監督担当者」という。)につき、「監督担当者」が警察官のみで構成されるのなら、「指針」の趣旨にある取り調べの適正化は困難ではないのかとの問いに対して、「前回答弁書」でも「警察庁としては、警察組織内部におけるチェック機能を発揮させるため、都道府県警察において取調べを始めとする犯罪の捜査を直接担当しない総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当させ、必要な体制を整備することにより、取調べに係る不適正行為の未然防止を図ることとしている。これにより、先の答弁書(平成二十年二月五日内閣衆質一六九第二八号)一及び二についてで述べた監督対象行為(以下「監督対象行為」という。)の有無の確認、監督対象行為が行われた場合における監察部門等への通報等が適切に行われるものと考えているが、このような制度を有効に機能させるため、警察庁においては、会議等の場を通じるなどして都道府県警察に対して制度の趣旨の周知及び必要な指導を徹底することとしている。」との答弁がなされているが、直接取り調べを担当しない総務又は警務部門の者が「監督担当者」の任に就くにあたり、警察庁において右の者に対してどの様な研修等が実施されるのか。右答弁にある、「監督担当者」が「指針」にある様に適正な取り調べを監督できる様にするための必要な体制の整備とはどの様なものか、具体的に説明されたい。
二 「監督担当者」を都道府県警察の警察職員から選ぶ理由として、「前回答弁書」では「取調べは事案の真相を解明する上で極めて重要な役割を果たしており、取調べの機能、犯罪捜査の機密性等を確保しつつ、警察組織内部におけるチェック機能を発揮することにより、その適正化を図ることが必要であると考えている。」との答弁がなされているが、事件の真相解明に取り調べが果たす役割の大きさは当方も十分承知しているところ、取り調べの適正化を図る上でなぜ「監督担当者」はあくまで警察職員でなければならないと警察庁が考えるのか、その根拠をより具体的に示されたい。
三 警察における取り調べの問題は、例えば「富山事件」では被疑者となった柳原氏に対して、柳原氏の家族も犯行を認めていると仄めかして自白を強要し、また、「志布志事件」では被疑者にその親族の名前を書いた紙を無理矢理踏ませたりと、真実を解明すべき取り調べにおいて、真実をねじ曲げる様なことが行われていたことであり、「指針」により「監督担当者」を設置することの要諦は、その様な行為をいかにして防止するかということであると承知する。「富山事件」や「志布志事件」の取り調べで行われた様な人格を踏みにじり、人権を侵害する取り調べが行われていないか厳格に監督する為にも、一般市民から選出するとは言わないまでも、被疑者の弁護士や警察庁の上位官庁である国家公安委員会の職員等、「監督担当者」には警察庁とは一線を画した人物を充てなくては効果がないと考えるが、警察庁の見解如何。
四 「前回答弁書」では、録画・録音等の方法による取り調べの可視化(以下、「可視化」という。)について、これまでの答弁書と同様に「種々の問題があるので、慎重な検討が必要であると考えている。」との答弁がなされているが、右は「可視化」実施の是非についての検討自体は、現在政府においてなされていることを指していると理解して良いか。確認を求める。
五 「可視化」の問題点について、警察庁は「前回答弁書」で「可視化」により供述が全て明らかになること、または犯罪組織の上部の人間からの報復を恐れることが心理的な圧迫となり、被疑者に供述をためらわせる要因となると指摘しているが、「可視化」の実施による右の可能性は否定できないにしても、「富山事件」や「志布志事件」での無理な取り調べこそが、被疑者に心理的圧迫を与え、供述をためらわせるどころか、虚偽の供述をさせる原因となったことは明らかである。警察、または検察が、被疑者に心理的圧迫を感じさせる密室において、恫喝等の非人道的手段を用いて、自分達が考えるストーリーに沿って被疑者に供述させようとする傾向があることは、二〇〇二年六月に逮捕され、翌年八月に保釈されるまで四百三十七日間に亘る勾留を受け、その間検察官による取り調べを何度も受けた自身の経験からも十分承知している。「可視化」は、取り調べにあたる警察官を厳正な形で監督し、右の二事件における様な無理な取り調べをさせないことを目的とするものである。また、二〇〇八年二月十五日、最高検が公表した、「可視化」のうち検察官による取り調べの一部をDVDに録画・録音する試みについて検証した結果の中間報告においても、取り調べの全過程を録画・録音することは、事件の真相解明機能を害する恐れが大きいが、供述の任意性を立証する手段としては有効であるとしているところ、「可視化」の功罪両面についての検討をまずは政府として進め、将来的には実施をするべきであると考えるが、政府の見解如何。
六 来年度以降の実施が予定されている裁判員制度において、裁判員が被疑者の供述の任意性を判断する基準としても、「可視化」により取り調べの全過程がわかるということは、一つの有効な手段になると考えるが、政府の見解如何。

 右質問する。



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